2025年8月のゲストは山梨県甲州市、勝沼のシャトーメルシャン事業本部ゼネラルマネージャー、小林弘憲(ひろのり or コウケン)さんです。今回は椀子ヴィンヤード醸造所設立年の2019年、メルローで乾杯!大きな会社のワイナリーならではのあんなことこんなこと、しゃべり倒した最終回です!(全4回 4回目)
辰巳:はい、8月も終わりです。今月は4回しかなくて残念なんですけど、前回までにもたっぷり喋っていただきまして、今月の文字起こしの文字数はすごく多いんじゃないかと思います。(←「日本のワインを愛する会」https://jpwine.jpでご覧いただけます)
ゲストはシャトー・メルシャン、ゼネラルマネージャーの小林コウケンさん、もとい、ヒロノリさんです。
小林:だからもうコウケンでいいですっ!笑笑。
辰巳:昔はヒロちゃんとか言われてたんですかね?そしていつも通り井村貢シェフ、会場はエネコ東京です。
全員:よろしくお願いします!!!
辰巳:先週まででどこまで話しましたっけね?メルシャンに入ってから大学に入り直して博士号取って・・・。
小林:えっと、後藤先生いらっしゃるんで💦(←この日は「公益財団法人日本醸造協会」の後藤奈美さんが見学にいらしてました)、今は芸人やってるんですけど笑(←ウソです)、ちょっと前は研究員をやってたこともあるんです。香りの研究をしてまして・・・。
甲州ワインに含まれる香りでチオールっていうのがあるんですけど、それがどういう風にブドウの中で増えていくのかーとか、どういう風に発酵するのがいいのかーとか、そういうのをやってました。
辰巳:学生時代にやってたテニスはもうやってないんですか?
小林:今ソフトテニスをやってるんですよ。もうカラダ動かないので中学生や小学生に教えてもらって笑。
辰巳:1974生まれ、今50歳?
小林:そうなんです、アラフィフ。
辰巳:お子さんは?
小林:小学生、まだちっちゃいです。だから今は住んでる甲府から勝沼に通っていて、週に1回ぐらい上田と塩尻(の畑に)行ってます。だいたいが「ゴミ拾いしろ!」って言われてて、「あそこの葉っぱがあーなってるから入れ込みしてください」「あーわかりました」笑笑。
辰巳:メルシャンも大きな会社で、組織としてもしっかりしてるし伝統もありますから、前から”教え”っていうのがあるんでしょ?
小林:ぁ、麻井(宇介)先生っていう方がいらしたでしょ。なので歴代の先輩たちが作ってきた彼の歴史を頑張って継いでいこうと。
辰巳:でもコウケンさんは同じことをしたくない性格だから仕込みを毎年ちょっとづつ変えてる。とすると、麻井先生の教えも変わってきているんじゃないですか?
小林:いや、メルシャンは昔から仕込み料が多かったじゃないですか。だから麻井先生は「他のワイナリーに比べると5倍10倍できるんだから、(いろいろ)違う仕込みをやりなさい」と。『10年分を一度に出来るじゃないか』。そういう教えがあったんですよ。
しかも、昔は新酒を試く会っていうのがあって、午前はレストランのソムリエや関係者に試ていただいた後、午後は地元のワイナリーさんを呼んで、「これはどういう仕込みだからこうなった」っていうテクニックを公開してたんですよ。メルシャンは昔から情報を共有して、「産地を盛り上げろ!」、つまり1社でやっててもしょうがなくて、産地をちゃんと形成してみんなでやってくんだよ、っていう先輩からの教えを聞いて。。。
辰巳:麻井チルドレンとして?
小林:僕はその孫とかひ孫とかかもしれないすけど笑。
辰巳:メルシャンみたいな大きな会社だと自民党みたいな’派閥’とかないんですか?笑。
小林:上野派とか齋藤派とか味村派とかですか?爆(←わかる人にはわかる)あんまそれはなかったですかね。
「いいワインを造る」、という目的はみんな一緒ですから。
辰巳:でも個人的にはあるでしょ?この人と一緒に飲みたい、とか、。
小林:齋藤(浩)さんとはよくゴルフに行きますけど。
辰巳:齋藤派ですか爆。
小林:塩尻に行ったらドメーヌコーセーの味村さんともよく話しますよ。上野さんの畑だって収穫に一緒に行かせてもらってるし・・・。「僕はなんでも派、全員派」爆。

辰巳:今日も赤ワインです。
小林:これは椀子のメルロー。しかも今日は2019年を持ってきました。このヴィンテージが大事で、実は椀子ワイナリーができた年なんですよ。畑は2003年からあるんですけど、できたブドウは(椀子ヴィンヤードができるまでは)勝沼のワイナリーで醸造していたんです。それから16年経ってようやく椀子にワイナリーができまして、初めて”畑からワイナリーまで一貫したワイン造りができるようになった年”という記念すべき年なんです。
辰巳:その時のワイナリー長は、
小林:も〜ちろんワタクシでございます爆。このリアクションが(ラジオでは)伝わらないのが残念ですが😂。ただね、知ってます?
辰巳:・・・知らないですよ笑笑。
小林:ワタシ山梨から長野行ったでしょ。山梨(勝沼)って暑いんですよ。長野からもブドウが入ってくる10月は、タンクを冷やさなきゃいけない、要は発酵熱が出ますから。だからいちばん最初に椀子ワイナリーを設計した時には”冷やす設備”ばっかり入れたんですよ。「冷まそう冷まそう」。そしたらね、長野ナメちゃ〜いけませんよ。10月になったら寒いんです。急に寒くなってタンクがあったまんないんです。発酵はするんですが、抽出には温度必要じゃないですか。その目的とする温度までいかないんですよね。
ぇw、っと思って2年目からは若干設備を変えたんですけど、1年目は山梨から行ったばっかだったので、抽出が・・・。
辰巳:ちょっと薄くなってしまった?
小林:デリケートに、穏やかに、フィネスを持ったワインが出来たと💦。
辰巳:では乾杯しましょう!
全員:カンパ〜イ🎶

【シャトー・メルシャン 椀子メルロー 2019】
https://www.chateaumercian.com/lineup/terroir/mariko_merlot.html
井村:すごいバランス!酸味とミネラル感と渋み。色もキレイで整ってると思います。ついついもう一口飲みたくなるようなワイン♪
辰巳:そう、なんでかな?
小林:僕が造ったからでしょ爆。
辰巳:そりゃそう、造り手を目の前にして飲むとオイシイ。
井村:今の話聞いて余計そう思いました。
辰巳:ワイナリーとかでテイスティングする時よりも、この環境は美味しく感じます。
小林:ギャラリー(見学者)もいっぱいいらっしゃるしね。でも抽出はちょっとだけ穏やかだったかなーと。
辰巳:最近は、日本の赤ワインも抽出が強すぎるなーと思うことが多くて”食事に合わせること”考えると、そんなにギシギシにタンニン要らないんじゃないか、、、ま、これは好みの問題なんですけど。だからこのタッチはすごく好きです。
小林:椀子ヴィンヤードの特徴の一つ、”スパイシー”ってのがありますが、本当にすごくよく熟すので青さが少ないんです。
辰巳:収穫もけっこう遅いんでしょ?
小林:とはいえ9月の下旬からは始まるんです、10月の上旬まで。また化学用語になっちゃうんですけどメトキシピラジンは少ないと思うんですよ。
辰巳:で、これはどれぐらいの量を造られてるんですか?
小林:これは1万本2万本レベル、椀子のメルローですからね、ガッツリ造ってます。
辰巳:樽は?
小林:100%。発酵が終わった後18か月ぐらい樽で育成をします。新樽の比率はだいたい5%ぐらい、1割弱です。
辰巳:今月は井村シェフに「このワインをレストランで使うとしたら、いくらなら買いますか?」コーナーを設けてますが(←w)どうですか?このワインはかなり量も造ってますし、私はかなりリーズナブルに値付けしてるんじゃないかと勘繰ってますが?
井村:数造ってるって最初に聞いちゃったんで6500円ぐらいかなと思ったんですけど、でも、自分が買うんだったら7800円ぐらい出してもいいかなと思います😳
辰巳:すごい評価ですね!
小林:あたーーっす!
辰巳:オオサカジン5000円キッタラウレシイ。
井村:大阪人やったらそれぐらいで笑。(←辰巳&井村はコテコテの大阪出身)
小林:€40ぐらいで笑笑。(←€1≒¥150換算ぐらいだそうです)
辰巳:いい線いってますよね〜。さ、これに合わせたお料理ですが、いつもジャストの時間に作ってもらってるんですけど、今月前置きの話が長すぎてここまで行き着くまでの時間が💦笑笑。
井村:まだちょっと暑いこの時期にワインを飲みながら食べられる、っというシチュエーションで考えてみました。
シンプルに鶏肉をグリルして夏野菜を乗せたお料理です。ソースもシンプルにラヴィゴットにして鶏肉をコブみかんの葉っぱで香り付けをしてワインに合わせてみました。
全員:いただきます🍴🍴🍴

【鶏肉と夏野菜のグリル ラヴィゴットソース】
小林:このソースの酸味とちょっとしたスパイシーさ感がワインとすごくいいマリアージュです。
辰巳;これにガツンとくる赤ワインが来ちゃうと「もうやめてよ」ってなっちゃいますけど、
井村:疲れちゃいますよね。
辰巳:そういう意味ではこれは使いやすいメルローですよね。
辰巳:時間もなくなってきたんですけどリクエスト曲。今日は飛ばしますか?笑笑。
小林:いいんですか、そんなんで笑。(一応番組にも段取りがありますので→)じゃぁガンズアンドローゼスの「パラダイスシティ」ってのをお願いします。

Guns N’ Roses「Paradise City」
https://www.youtube.com/watch?v=Rbm6GXllBiw&list=RDRbm6GXllBiw&start_radio=1
辰巳:はい、ディレクターにあと3分とか言われましたけど、こんなにまとまらない月はこれまでなかったんじゃないか?っという、
小林:💦すいませんっ。
辰巳:熱い方なんです。もちろんこういう造り手さんたちが全国にいろいろいらっしゃるということが、このラジオをお聞きの皆さんにはわかっていらしたとも思いますけど。でもやはり、日本一のワインの会社ですからコウケンさんはこれから勝沼、椀子、桔梗ヶ原、、、のワイナリーを全部統括して・・・。
小林:ありがとうございます!
辰巳:メルシャンがどんどん先をいくんでサントリーさん焦ってますよ笑。
その日本ワインを引っ張っていく立場として、あるいは日本ワイン全体を見てどうですか?あと2分ぐらいでまとめてください。
小林:よく「どういうワインを目指してるんですか?」と聞かれるんですが、僕は、ワインというのは主役じゃない、と思ってまして。
例えば、料理であったり会話であったり、雰囲気ってありますよね。それを繋いであげる”潤滑油”だと思ってます。
ですから、「このワインを飲んだ時に、いつもは言わないことを言ってしまう」とか、会話が(弾む)、あるいは料理が美味しくなる。。。そういうワインが出来ればいいかなぁと。甲州でもマスカット・ベーリーAでもメルローでもシャルドネでもなんでもいいんですけど、皆さんを繋いであげられる、その場の雰囲気を楽しくするワインをこれからも造っていきたいなぁと思ってます。
辰巳:普段は言えない言葉を喋ってしまう、、、今日は喋りましたか?
小林:もうもうもう、美味しいワイン飲んだんで、普段言えないこと言いまくってます笑笑。ほんとは寡黙な人間なのに(←ぇw)
辰巳:”寡黙”はウソだということは訂正しときますけど笑、お酒の種類にもよるんでしょうけども愚痴るとかね、少なくともマイナス方向にいくお酒はイヤですね。
小林:楽しく、明日の活力に!
辰巳:(ワインは)元々明るさを持ってるラテンのお酒だからかもしれませんね。ワイン以外は飲むんですか?ほんとは泡盛好きとか笑。
小林:蒸留酒が好きなんですよ🤭(驚)、ぁ、ワインも好きですよ💦
辰巳:量はどれぐらい?1日2本とか?
小林:いやいや、適正飲酒、ということで笑。
辰巳:ジンなら1本?
小林:ま、ま、、、え〜っ!?笑笑。そこまでは・・・
辰巳:なんでジンが好きなんですか?
小林:なんかね、ジンというか蒸留酒は翌日も残らないし・・・。
辰巳:蒸留酒ってわりと頭スッキリするんですよね。
小林:しますします。
辰巳:シャープになりたい時にはいいけど、ワインの方が意識が混濁していい笑笑。
小林:混濁しましょう笑。

辰巳:今(メルシャンは)キリンの傘下に入ったりして大改革してますよね。
小林:新しいことどんどんどんどんやっていきたい。
辰巳:今お酒の力を借りて「これからこんなことやりますー」みたいなまだ言えない企業秘密みたいなのあります?
小林:んーーーーー、難しい・・・。
辰巳:もう1杯グーっと笑笑。
小林:他の皆さんもそうだと思いますが、実は今やってることは先代から引き継いでることなんです。椀子ヴィンヤードだって20年やってきて、やっと私たちがいろんな表現をできるようになった。だから私たちが今やってることは次の世代に繋ぐことなんです。
これから20年先は、おそらく気象条件なんかもいろいろ変わってくると思うんで、その次の皆さんにバトンタッチできるように、例えば適地適品種になるように。新しい環境になってもしっかりと美味しいワインができるように伝えて、そういう土地を探してまた新しいブドウ畑にしていけたらなぁと思っています。
辰巳:答案的には100点満点の答えですけど、イマイチ面白くない爆、コウケンさんぽくない。
小林:今日(ガンズの)「パラダイスシティ」リクエストしたでしょう?これはね、椀子ヴィンヤードのことなんですよ。椀子ってほんとにパラダイスシティなんですよ。すごいことがいっっぱいできそうなところ。だからいっっぱい暴れようかなと思ってます。
辰巳:今3つのワイナリーを統括してますが、なかでも椀子ヴィンヤードがいいと?
小林:いやいやいや💦勝沼も塩尻も椀子も、、、ぜーーーんぶスバラシイですから、皆さん、どこのワイナリーでもいいから来てくださいっ、はい!
辰巳:でも椀子はとってもいいところです。また遊びに行きたいと思ってます。その時はどこにいても呼び出すと思いますのでまたお付き合いください。
小林:モチロンでございます!
辰巳:ということで、8月のお客様は、メルシャンのゼネラルマネージャー、小林コウケンさんこと弘憲さんでした。
全員:ありがとうございました!!!


News Data
- プリオホールディングスpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2025年8月28日放送回
- ワイナリー
シャトーメルシャン 勝沼ワイナリー
https://chateaumercian.com/winery/katsunuma/- 収録会場
エネコ東京
https://eneko.tokyo/