2025年8月のゲストは山梨県甲州市、勝沼のシャトーメルシャン事業本部ゼネラルマネージャー、小林弘憲(ひろのり or コウケン)さんです。お笑い芸人と間違われる饒舌トーク&敏腕ワインメーカーのコウケンさんですが、入社当時の配属は医薬品の開発部門でした。(全4回 3回目)
辰巳:8月3回目、今月のお客様はメルシャン株式会社、ゼネラルマネージャーの小林コウケンさん笑、こと小林弘憲(ひろのり)さんです。
小林:もうコウケンでいいです笑。
辰巳:顔がすでにコウケンさんなんで笑笑。
そして日本ワインに合わせたお料理を作り続けて6年。井村貢シェフです。
全員:よろしくお願いします!!!
辰巳:今日は赤ワインをお持ちいただきました。元々評価が高いワイナリーですけど、最近またグイグイと上がってきてますよね。
小林:ありがとうございます!
辰巳:長野の上田の椀子(ヴィンヤード)がかなり樹齢を重ねて、
小林:充実したブドウが獲れるようになりましたねー。2年前までこの椀子のワイナリー長やってました。
辰巳:椀子をここまで引き上げてきたコウケンさんでございます。では乾杯しましょう。
全員:カンパ〜イ🎶

【シャトー・メルシャン 椀子シラー 2019】
https://www.chateaumercian.com/lineup/terroir/mariko_syrah.html
井村:このワイン、なんと表現したらいいんでしょ?軽いタッチなんですけど、ミネラルがしっかりしてるというか、バランスがすごいいいです。
辰巳:椀子シラーの2021年。樹齢はもう15年ぐらいですよね?
小林:それぐらい経ちます。
辰巳:当初は(若木の頃は)「これほんとにシラーなのかなぁ?」とイマイチ薄い印象だったんですけどね。
小林:今は『椀子といえばシラー!』と言われるぐらいの、本当にスパイシーなブドウができてます。
辰巳:ロタンドン!
小林:黒胡椒白胡椒のスパイスボム!ですよね。
辰巳:3〜4年熟成のすごくいいバランス。これもコウケンさんが仕込んだんですよね?
小林:もちろんでございますっ!笑笑。
辰巳:ラジオで見えないのが残念なんですが、このポーズといい動きの激しさといい、「(お笑い芸人の)事務所どこですか?」が売りになってるという。
小林:まぁ”つかみ”です、事務所は人力舎です、吉本じゃぁないんですよと爆。
辰巳:人力舎なかなかマニアック。でもまぁ東京ですからね。サン・ミュージックあたりでもいいかもしれませんね。(←ひぐちく〜ん)

小林:ワイナリーができたことによって、椀子中の畑とワイナリーがすごく近くなったんですよ。それによって、作付けしてる畑毎に樹齢が違いますから、古〜ぃことだけを集めたりだとかもあるし。今日持ってきたのは椀子全体のブドウのワインですけど。
辰巳:シラーは山梨だと鴨居寺もありますよね。
小林:山梨のシラーだと他に天狗沢っていう塩山の上の方にも。今温暖化がどんどん進んでますからね、標高が高い方へ高い方へどんどんと。そこは850mぐらいのところです。
辰巳:椀子のほうは?
小林:650mぐらいです。すっごい強粘土質土壌と風がものすごい吹くんです。この風がブドウのいいストレスになって、こういうスパイシーな香りをブンブン出してくれると。
辰巳:もうカンペキな説明笑。ブンブン出してくれるんですね〜笑。
小林:ロタンドンは外国のシラーと比較してもかなり多いんですよ。昔計った中で日本の中では1、2を争うぐらい。椀子、(シラーの他にも)いろんな品種が植ってるんですけど、実はそれらも「若干スパイシーな香りするね」ってよく言われるんですよ。
辰巳:オーストラリアみたいなガツンとくるんではなく、
小林:「クールクライメットシラーズ」という、”すこ〜し酸がしっかりとしていて、冷涼な地域のシラーだね”ってよく言われます。
辰巳:海外で言うと?
小林:北ローヌとかですかね。海外の人が来られてこのワインを飲むと、「すっごくユニーク」って言ってくださるんですよ。”今まで体験したことのないシラー”だと。
辰巳:これだけ聞くと、話だけでムチャムチャ飲みたくなる笑。
さぁシェフ、このワインいくらで(いくらなら)買いましょう?笑
井村:(上代)6800円ぐらいで。
小林:おっ、おぉぉぉ!?これ6500円なんですよ。ま、オープン価格なので大体これぐらい。
井村:ありがとうございます!これは使わせてもらいたいです。
辰巳:料理にも合わせやすくて、きちんと個性もある。
辰巳:樽も使ってます?
小林:はい、でも新樽比率はそんなに高くないです。年によって若干は違いますけど25〜40%ぐらいの間で。
辰巳:これは何樽ぐらい仕込んでるんですか?
小林:数千本レベルなので、樽にすると20とか25とか。
辰巳:それでもこれだけ(の本数)造れるということはやはりメルシャンの実力じゃないかと。
小林:『椀子ヴィンヤード』(という環境が)がこういうものを造ってくれます。
辰巳:椀子ヴィンヤードは今何ヘクタールぐらい?
小林:30ヘクタールぐらいいきました。
辰巳:!!!そのうち今ブドウが実ってるのは20ぐらい?
小林:23〜24ですかね。数ヘクタールはまだ植え付けたばっかりだとか、これから植えようというところもあるので。
辰巳:今の平均の反収ってどれぐらいなんですか?
小林:え〜っと、1haあたり6〜8tです。
辰巳:そうですか。じゃ、かなり制限してる方ですね?
小林:収量は少し制限してる方ですかね。
辰巳:さ、このシラーに合わせて作っていただいたお料理は何でしょう?
井村:通常なら肉料理かな〜、っと思うんですけど、今日はお肉はやめとこうかな〜と思いまして。
このワインの持ってる酸が非常にしっかりしてますんで、「酸に合う魚料理」を作ってみました。
ジャガイモのバジルとバルサミコ風味、の真鯛のポワレの上にトマトをコンフィにしたものを載せてあります。
ソースはブイヤベースに似たようなものですけど、魚のアラを香ばしく焼いたソースです。
全員:いただきます🍴🍴🍴

【ジャガイモのバルサミコ風味と真鯛のポワレ】
小林:バッチリです!この(ワインの)酸とスパイスの香りがまさにマッチします。「酸がしっかりしてる」っていうのを診ていただいたのが非情に嬉しいですね。「クールクライメット」。まさに冷涼な地域で作られる赤ワインなんです。
辰巳:和でも洋でも、日本人の作るお魚料理は赤ワインも合わせやすいなと思うんですけど。当初は”お寿司に赤ワイン”ってどうかな、と思ってたんですけど、最近はこういうエレガントなワインにお寿司、和食にはすごく合う。僕も和食と赤ワインしょっちゅう合わせてるんですいよ。この手も近々のワイン会で使わせてもらいたいんですけど、もうちょっと安くなりませんか笑。
小林:がんばります💦
辰巳:ここでリクエスト曲を。今日は何を?
小林:モトリー・クルー「キックスタートマイハート」
辰巳:ななな、何ですか?え、ぇ、ぇ?
小林:「モトリー・クルー」っていうロックバンドがあるんすよ。LAメタル、ロスアンジェルスのハードロック。
辰巳:いつ頃の?
小林:80年代だと思います。ちょっと頑張るぞ!みたいな曲なんですけど、この椀子のシラーが”スパイス・ボム💣”なので、この”ヴオーーーン💥って、ウィーーーン”って聴いていただければ爆爆。

Motley Crue「Kickstart My Heart」(1989年)
https://www.youtube.com/watch?v=ybcxIpb-R_0&list=RDybcxIpb-R_0&start_radio=1
辰巳:ハードロックも時々聴くといいですね。
小林:元気出る。
辰巳:毎日聴くと💧

辰巳:話はちょっと戻りますが、山梨大学を出て、就職活動はいくつか受けたんですか?
小林:当時は工学部と呼ばれてたんですけど、メルシャンからお声がけいただいてたので「頑張ってみよう!」と。
辰巳:その頃からトップメーカーだったメルシャン、当時は赤ワインブームだったじゃないですか?
小林:そうですね、1998〜1999年ごろですから。入って「よし!ワイン造るぞーっ!」っと思ったところで
「土を掘りに行きなさい」と。
辰巳:植え付けのために?
小林:いやいやいやいや、「日本中のいろんなところの土とか葉っぱとかいっぱい採ってきなさい」。ん?何をするのかなーと思ってたら、私は医薬品の化学事業部に配属になっていて、いろんな微生物の中から合成物質を・・・あら?ってなって。
こう見えて最初はワタクシ”DNA”を取ってたんですよ。DNAの中にどういう菌がいる?とか。当時、キリンと一緒になる前ははメルシャンの中に製薬部門もあったりしたんで。「あれ、ワインやらせてもらえないのかなー?」
辰巳:当時の研究所はどこだったんですか?
小林:(神奈川県の)藤沢です。
辰巳:当時は(親会社)味の素でしたよね?
小林:そうです。ワインも医薬品も同じ建物の中だったんですけど、それぞれ所長がいらして、その化学品の方の所長に直訴したら「そっち行ってみる?」と。
辰巳:そこからは勝沼?
小林:いや、研究(医薬品)から研究(ワイン)だったんで、藤沢から藤沢。あくまで研究員ということで移動さしていただいて。
そしてその1年後に’きいろ香の発見’に繋がるんですよ。藤沢でワインに異動した所が日本ワインだったんでシャトー・メルシャンの勝沼にはよく行っていて、その頃いろんな偶然がたまたま重なって「きいろ香」の香りの発見ができた。2001年ぐらいから勝沼に行って「きいろ香」は2002年ぐらいから始まったんです。「これはイケるんじゃないかっ!?」。
辰巳:勝沼醸造の「イセハラ」がその頃から?
小林:2002年ぐらいからかな?そういうのを見て、「(甲州は)優しいよね、少し穏やかだよね」って。じゃ、これをどうしよ?
その中でいい香りがする甲州もあったので、「ポテンシャルあるんじゃないの!?」じゃ『甲州アロマプロジェクトやってみよっ!』っで始まったんです。当時製造にいた勝野(泰朗)さんという人がいて、、彼とやりとりしながら研究所(藤沢)にいました。
辰巳:でもその後ボルドー大学に行ってたんでしょう?
小林:えーっとね、1年の間に数ヶ月、毎回ボルドーに果汁を背負って行きました。当時は持込めたんですよ。それを4年間。その4年の間に1回だけ「その荷物開けろ!」ってイミグレで言われたんですけど、「僕ねー、これからボルドー大学でワインの研究するんですよ」って言ったら、その人通してくれたんですよ。フランス人が。
全員:すごっ!
小林:だから向こう(海外)に果汁を凍らせて持ってって、分析はだいたい冬、2月ぐらいから。4月5月ぐらいに帰ってきてそっから日本では栽培が始まる。(←それの繰り返しだったようですね)
富永先生はボルドーにいらっしゃるので年明けに私が行かしていただいて、春先までいるというサイクル。
辰巳:安蔵さんは?
小林:安蔵さんはね、私が向こうに行っていた間駐在していたんですっごいお世話になったんですよ。(←メルシャンが所有しているシャトー・レイソンに駐在されてました)
辰巳:でもそのあたりからかな。メルシャンがキリンに(吸収された)・・・。
小林:それが2007年だったかな?ちょうど私がボルドー行ったり来たりしてる終わり頃キリン(ビールさん)と一緒になりました。
辰巳:話また変わりますが、大学院に行って博士課程に行っったのはいつなんですか?
小林:そのあとです。いろんなデータの結果もあったので、せっかくなら(博士号)獲りましょうとなって。山梨大学の博士課程に入らせてもらったのが2009年かな。
辰巳:じゃぁもうキリンになってから?
小林:でしたかね?まぁ当時は端境期でしたんでね。
辰巳:そのどさくさに紛れて?笑笑。
小林:紛れて論文書いて博士号獲って笑。って論文頑張ったんですよー、かなりたくさん書きました。
僕ねー普通は2〜3報書けばいいところを10報書きましたから。高柳(勉)先生と鈴木(俊二)先生にお世話になりました。
鈴木先生は今ワインセンターの所長さんやられてます。
辰巳:博士なのに、
小林:(お笑いの)事務所に所属してるんじゃないか!?、とサッカーの解説してるんだろっ!?疑惑爆爆。
辰巳:どんどん松木安太郎に見えてきました爆。
ま、これも一応芸風ですからね笑笑。日本のワインメーカーの中でも1・2を争う喋くり系です。
小林:雨宮吉男さんってのがその上にいるんです。(ダイヤモンド酒造のこの人ですね↓)

(2021年8月 当番組のゲストにいらしたヨシオさん 頭髪は夏仕様でした笑)
辰巳:・・・歳は一緒ぐらいでしたよね?
小林:彼の方が上です。この年代同じことができない人が多い笑笑。
辰巳:ちょっと高いけどいいワイン造ってる人笑。
っということでまた来週!
全員:ありがとうございました!!!


News Data
- プリオホールディングスpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2025年8月21日放送回
- ワイナリー
シャトーメルシャン 勝沼ワイナリー
https://chateaumercian.com/winery/katsunuma/- 収録会場
エネコ東京
https://eneko.tokyo/