プリオホールディングスpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2025年1月30日OA

2025年1月のゲストは新潟県「カーブドッチ」取締役・ワイン部門担当の掛川史人さんです。
今月5回目にして初の赤ワイン、動物シリーズの「おうむ」で乾杯!「ワインのクラシックとJAZZ」について語る熱熱な最終回!(全5回 5回目)

辰巳:1月5回目。新潟からお越しくださいました「カーブドッチ」の取締役、掛川史人さんです。そして今日の収録会場「Villas des Marriages さいたま」の総料理長、井村貢シェフです。

全員:よろしくお願いします!!!

辰巳:まずは、乾杯です。白・白・オレンジ・オレンジからのー、5週目にして初めての赤ワイン!赤ってあんまり造ってないんでしたっけ?笑。

掛川:いや、そんなことはないです。半分は赤ですよ。

辰巳:とりあえず乾杯しましょう!

全員:カンパ〜イ🎶

【2023 おうむ】
https://nwinecoast.thebase.in/items/71441055/

辰巳:こちらどんなワインでしょうか?

掛川:2023年の「おうむ🦜」というワインです。品種はツヴァイゲルト。

辰巳:ツヴァイは新潟でも作ってるんですか?

掛川:はい、これは自社畑の砂地で作られたツヴァイゲルトです。私のつくり的には一昔前の南仏の赤ワインが好きなので、タンニンが粗っぽくてちょっと怪しげな香りがして、、、。だからローヌというよりプロヴァンス。2023年は天気が良くて、黒々としたブドウが獲れたからそんな感じにしてみようかなと。

辰巳:樽には?

掛川:古〜い樽には入れてますけど。

辰巳:そこまでは感じない、ツヴァイの品種をちゃんと出してる感じがします。

掛川:ツヴァイゲルトは色鮮やかで香りがあるのが特徴なので、そこに怪しげな香りが・・・。

井村:好きな味♡

辰巳:プロヴァンスって聞いたから?(←井村シェフはプロヴァンス料理のスペシャリストです)

井村:いや、それは今聞きましたけど笑。なんかフルーティで、味のメリハリもあって、毎日飲みたくなるような。

辰巳:なるほどー。これはおいくら?

掛川:3520円です。

辰巳:(価格帯的には)毎日飲むにはギリギリ?いや、数日に分けて飲めば、、、。

掛川:3日ぐらいに分けて飲んでもらえれば笑。

辰巳:(数日経てば)このタンニンも穏やかになるでしょうしね。先日からずっとヴィニフェラや食用ブドウの品種の話をしてますけど、掛川さんにとってツヴァイゲルトってどうですか?

掛川:なんて言うんですかね、”品種のブランド力が低くてみんなが困っている”。

辰巳:そうか。確かにメルローだぁソーヴィニョンだぁに比べると地味かも。でも日本のツヴァイって全般的に素晴らしいと思ってるんですよ。

掛川:そうなんですよね。だからそこがすごく難しくて、”美味しいかどうかはそんなに重要ではない”と思ったりもします。”美味しい”ってあくまで個人の感想。「ツヴァイゲルトで造りました」ってのと「ピノ・ノワールで造りました」っていうのではみなさんまったく異なる印象になるわけで。

辰巳:(品種の)名前聞くとね。でも単に赤ワインを飲んで品種わかってなかったらそうでもないんじゃない?

掛川:もちろんそうですけど、皆さん全員がブラインドで飲むわけでもなく、様々なものが付帯した上で飲むわけで。

辰巳:でも、品種を明かさない平川さん(←北海道余市の平川ワイナリー)のような人もいるわけで。そういうやり方もあるわけでしょ。

掛川:ですからツヴァイはどんどんそうなっていくんです。北海道の人は”ツヴァイゲルト”という名前を伏せるんです。なぜかというと「その方が売れるから」。個人的には品種が持ってる様々なストーリーやヒエラルキーや、いろんなものがあった上で(ツヴァイゲルト)「いい品種なんだけどなー」って思ってるんですけどね。

辰巳:さ、シェフ、今日のお料理はなんでしょ?

井村:今日は牛ほほ肉の赤ワイン煮込みを。

【牛ほほ肉の赤ワイン煮込み 八王子産里芋のエクラゼと青梗菜のブレゼ添え】

辰巳:なんかシンプル。

井村:そうですね。この赤ワインがそうさせたのか笑。

辰巳:この赤い粉はなんですか?

井村:ピンクペッパーです。付け合わせはいっかい煮込んで柔らかくしたものをさらに炒めた里芋、と、緑は青梗菜。それぞれが八王子で獲れたお野菜使ってます。黄色いのは’黄色い’ビーツ。

掛川:美味しいです♡ちょっと甘みを感じるお肉がツヴァイゲルトの果実味を補強する感じでいいですねぇ。

辰巳:このピンクペッパーのアクセントがワインを繋いでる感じがして。これは旨い!やっぱりね、料理を引き立てて初めてワインが生きるといつも思うんですけどね。

掛川:ほんとにそうですよね。

辰巳:食べることはお好きなんですか?

掛川:大好きです♡エンゲル係数高いのはアレなんですけど苦笑。

辰巳:料理もする?

掛川:夕食はほとんど僕が作ります。奥さんが保育園の給食やってるので、家に帰ったらやりたくない。「OKOK俺が全部やるから」笑。ぜんぜん上手じゃないんですけど。

辰巳:でもね、料理とワインって同じじゃないですか、発想は。どういうのが好きだとか、どれとどれを混ぜ合わせたらこうなるとか、方程式はあるとは思いますし。だからワインの造り手は、すべからくそうじゃないのかなぁと思ってますけど?(ワインの)味決めに関しては料理がわかってる方がいいと思います。

掛川:そういう意味で言うと僕はお酒が弱すぎて、普段の食事ではあんまり合わせないんですよ。だから「お料理に合わせた時にどうなるか?・・・」そこら辺が弱いのかな?

辰巳:お酒元々弱くて?

掛川:はい、今でもすごく弱いです。今日は酔わないようにお薬たくさん飲んでますから笑笑。

辰巳:ウコンとか?

掛川:そういうの3種類ぐらい併用してます。普段だとビールこのぐらいのちっちゃいの(生小🍺ぐらいですかね)でゴメンなさいですから。

辰巳:3兄弟全員?

掛川:(弱いのは)私だけ。お母さんがいちばん強いです笑。お父さんはまったく飲まない。その血を僕がひいたみたい、残念。

辰巳:でも、優秀な杜氏さんは飲まない人多いんですよ。”飲めると’飲まれちゃって’味がわかんなくなる”らしくてね。逆に、冷静に言うとテイスティングができる。

掛川:でも僕は出来ないのでその辺はソムリエさんに託して。。。

辰巳:奥さんは?

掛川:奥さんんん・・あんまりワインは飲まないですね。お酒は好きなんですけどね。ぁ、亜硫酸無添加のワインは好きです。

辰巳:そういう人に、「どうやってワインを飲ませるか?」が大事なわけじゃないですか笑笑。

掛川:ほんとそうなんすよ。だからこの「動物シリーズ」が生まれたみたいな。例えばアルバニーリョみたいなのを造った時って僕は美味しいと思うんですよ。でも嫁さんは「なんか硬いから嫌!」なんですって。酸が立ってるから飲みたくないと。その後もいろんなワインを飲んでるうちに、どうも彼女は亜硫酸が入ってないワインばっかり飲んでるとわかったんです。

一応僕は『すごい熱意を持ってワインを造ってる』じゃないですか?その熱意を持って造ったワインを嫁が飲まない。まぁまぁショック爆。ま、理由は他にもあるんですけど、じゃぁ「亜硫酸無添加で造って嫁さんに自分のワイン美味しいと思ってもらいたい」と思ったのが、この『動物シリーズ』ができたきっかけのひとつです。

辰巳:奥さんのために『動物シリーズ』ができたと?

掛川:そうですそうです。

辰巳:まだ奥さんにはお会いしてないですけど、お会いした時にはその辺も伺ってみようかな。

辰巳:ここで今月最後のリクエスト曲に参りましょう。今日は何にしましょう?

掛川:アーティスト名は「にしな」、曲名は「ヘビースモーク」。

辰巳:タバコの曲ですか?タバコ吸うんですか?

掛川:吸いますよ。

辰巳:今でも?

掛川:今でも。

辰巳:いつから?

掛川:それは、、、昔っからです、そこは包んでください爆。

辰巳:僕は’小学生ぐらいからお酒飲んでましたー’は公言してるんですけどね。

掛川:今もタバコないと生きていけない。

辰巳:そうですかー。これも個人差あってね、一概に言えないんですが。こないだ和田秀樹という精神科医から”タバコ吸ったからって寿命が短いわけじゃない、タバコに向いているか向いてないかという体質”、と言う話を聞きましたけど。だから(喫煙者で)死ぬ人は若いうちに死んじゃうんですって。吸い続けて長生きするする人もいると、、、。ではにしなさんの「ヘビースモーク」、お聴きいただきましょう。


にしな「ヘビースモーク」
https://www.youtube.com/watch?v=uidm-GLH9Co/

辰巳:先週”ワインをもっと(音楽みたいに)ジャンル分けした方がいい”という話が途中で終わっちゃって、今月はここで締めようと思うんですが。

掛川:はい、でもこの話コンパクトにまとまるんでしょうか笑笑。ではなるべくコンパクトに笑。クラシック音楽は、楽譜が決まってるじゃないですか?だから楽譜から逸れるとそれはもう間違いなんですよ。ワインで言ったら、ソーヴィニョン・ブランというすごく特徴的な品種がありますけど、その品種をラベルに書くのであれば”その系統の香り”がしないとよくないんじゃないかなぁと思うんです。(飲み手も)求めるし、造る方も”そこは大事にしたい”ワインでいうところの「クラシカルなもの」。ベートーヴェンは誰が弾いたとしても第九は第九、とおんなじで、ソーヴィニョン・ブランを謳うなら、その香りがしないとダメだよねーと。

辰巳:そうですね、それはワインの官能審査とおんなじ。

掛川:だから僕らはアルバリーニョは濾過をするんです。なんでかって言ったら、透明じゃない’澱’は酵母。酵母の香りって世界共通なんで。品種の香りでもなく大地の香りでもなく、単なる澱の香りなんで、ない方がいいんです。

辰巳:自然派においては品種がわかんなくなることが多いんですね。

掛川:それはなんでかって言ったら、僕は”JAZZだから”って思っていて。JAZZは曲名やサビは同じなんですけど、それ以外はプレイヤーに委ねられるじゃないですか。だからその楽曲、ワインでいうならならその品種やブドウを解釈できると思うし、楽譜や曲名の前に’圧倒的にアーティスト(造り手)’。何が言いたいかというと「俺の味」「自然派を造りたい俺」「培養酵母は使いたくない俺」「濾過をしたくない俺」。。。要は『私はこうしたい!』。結果、品種(の特性)が隠れてしまったとしても、あるいは、非常に特徴的な香りができてしまっても、『私がこうしたい』がいちばん前面にきてしまっているんです。品種の特性についてはリスペクトはあるかもしれないけどそれは先頭ではない、ので、「造った人の味わいが生まれる」。クラシックとは別の音楽ですよ。

辰巳:それはよくわかるんですけど、逆にいうと、でもみんなおんなじようなJAZZになっちゃってる???その辺りのヴァリエーションというか、幅の広さがあんまりないような感じがして・・・。

掛川:それもおっしゃる通りで。なぜならば。音楽ほど繊細なものでもなく、ワインの中にあるのは酸化物質や微生物、決まったものしかないので。

辰巳:「こういうワインを造りたい」って頭の中にあっても、自然任せ、(自然)酵母任せで自分の思ってたワインにならないワインが出来たりもするでしょ?

掛川:う〜ん、そこは技術だと思います。あとは’それを許すかどうか’。ロマネコンティが多分そうで、あそこも自然派で造ってますが、いわゆる”ナチュラルテイスト”ってゼッッッタイ出ないじゃないですか?そこは『持ってる責任が違う』。彼らはそういう次元ではない。『歴史と文化を背負ってる』んで崩せない、崩さない。。。
やりかたってあくまで手段であって、その先に”何を目的に持ってるか”がすごく大事で。ナチュラルな手法を用いて栽培醸造しても、本当に気をつければキレイなワインになります、’ナチュラルワイン(では括れない?)’ではないワインができます。ですが。どっかに『俺はこうしたい』っていう造り手自身のエゴが、例えばラベルに、キャッチーなラベルに出てくる。
あれは文化や土地のリスペクトよりも『俺』が前に出ている気がする。同じワインではあるんですけど、クラシックという厳密なルールに定められた、爪の先のルールを100年かけて突き詰めて、歴史・文化を積んでいくか?ある種の即興性を持って楽しむJAZZか?っという大きな大きな隔たりがあるんですが、今は少し混同されていて、クラシックしか聴いたことがない人が、JAZZを聴いて「これはクラシックじゃないよ君」と怒っている。

辰巳:だから飲みにいく時に”クラシック”に飲みに行こうか”JAZZ”に飲みに行こうかがわかればいいわけで。もっとたくさんあったっていい。

掛川:はい。実際には”J-POP”という日本ワインがあってもいいし、演歌があってもいい。名前がないというのが非常に多くの誤解を生む。

辰巳:ただ『ワイン』という言葉に括りすぎてる。

掛川:そうです。多くの人が日本ワインとフランスワイン比べたりするじゃないですか。「やっぱりフランスワインには勝てないな」みたいな。じゃ、J-POPの「ヨアソビ」を聴いてべートーヴェンの「第九」に勝てるかって言ってるのと一緒。そうじゃなくて『違うものである』ということ。大変だとは思うんですけど、これはみんなで一緒に考えていかないといけない。

井村:ナットク。料理も似たところがありますから。

辰巳:どういう料理をいくらぐらいでどういうシチュエーションで食べるか?

井村:あくまでそこがベースになりますから。クラシックにこだわりすぎてもダメだと思いますし。

辰巳:最後、今日のワインの「おうむ」ですが。

掛川:「ツヴァイゲルト」の香りをあえて出そうと思ってないので、(ラベルには)あえて品種名書いてない。結果的に(ツヴァイ)っぽくなってても、僕はこの砂地のツヴァイのニュアンス出そうと造ってなくて。採れたブドウに関して「俺このブドウで好きな味に造ってみてぇな〜」と。それがJAZZなんです。

辰巳:でもさ、今月5回の中でのリクエスト曲で、JAZZは一回もなかったですよね。

掛川:別にJAZZに詳しいわけじゃない爆。

辰巳:ということで時間が来ちゃいました。来週もまた来ますか?笑。

掛川:笑。

辰巳:またなんかの機会でお会いするとこはあると思うし、また新潟方面のワイナリーツアーも計画します!ということで、2025年1月のお客様は新潟県「カーブドッチ」の掛川史人さんでした。

全員:ありがとうございました!!!

CAVE D’OCCHI WINERY
https://www.docci.com/

収録会場:Villas des Marriages さいたま
https://villasdesmariages.com/location/saitama//

News Data

プリオホールディングスpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2025年1月30日放送回

ワイナリー

CAVE D’OCCHI WINERY
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収録会場

収録会場:Villas des Marriages さいたま
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