2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2023年11月のゲストは山形県の株式会社高畠ワイナリーの村上健(たけし)会長です。
収録直前に代表取締役社長から会長に就任された村上さん。さてどんなお話が聴けるのでしょうか?(全5回 1回目)
辰巳:さ、11月になりました。今月は5週ございます。ゲストは東北地方の’横綱ワイナリー’ですね、山形県高畠ワイナリーの代表取締役会長、村上健さんです!
村上:よろしくお願いします!
辰巳:ずっとシャチョーシャチョーとお呼びしてましたが、
村上:そうなんですよ。つい最近、9月22日の取締役会で社長退任いたしまして会長になりました。ま、ワンランクアップしたのか下がったのか、ようわかりませんけど笑。
辰巳:以前はどなたが会長だったんでしたっけ?
村上:我々のグループ、本坊(酒造)の取締役がしておりました。
辰巳:(高畠ワイナリーは)鹿児島の焼酎酒造、本坊酒造の系列の一つ。山梨県のマルスワイナリーもそうですし、熊本ワインもそう。
村上:今日本では3軒のワイナリーをやっております。
辰巳:長野県でウィスキーやってたところも統合して今3軒。
村上:私は1990年に高畠ワイナリーが創業した年から働かしていただいて。
辰巳:それは新入社員として?
村上:それまでは食品会社や日本酒のメーカーにほんの少しいたりしたんですけど。
辰巳:ワイナリーは創業もう33年ですよ。今はもう「ワイナリーの顔」。
村上:もともと長野県の塩尻でワイン事業してた会社を山形に移転してるんで、今期で77期(!)。だから歴史的には大正時代から経営してる系列。
辰巳:へぇぇぇ、それは知りませんでした。
村上:塩尻の井筒さんと五一さんのちょうど後ろにあったんです。私が2011年に社長になって、まだ土地建物あったんですが、それを売却させてもらって。
辰巳:どこに売却されたんですか?
村上:昭和23年に法人になって、最終的には宅地造成。
辰巳:村上さんおいくつですか?
村上:62、の年になろうとしてます。
辰巳:ぇw、僕より若いんすか!?笑笑。ずっと年上だと思ってました。(辰巳さん65歳)
村上:いやいや、とーんでもない。
辰巳:ねぇシェフ、そう思いませんでした?
井村:笑、思いました。
辰巳:ほら正直笑。今日もこの会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています。さ、乾杯しましょう!今日はスパークリングです。
全員:カンパ〜イ🎶
【高畠醗泡シャルドネ PRISE DE MOUSSE 2017】
https://takahata-winery-club.com/item-detail/1303958/
辰巳:発泡のハツは”醗”で醗泡シャルドネ。
村上:「高畠醗泡シャルドネ(PRISE DE MOUSSE)プリデムース」。シャンパンメソット(瓶内二次発酵)で造っておりまして、二次発酵の糖分を砂糖の代わりに果汁を入れてます。
辰巳:二次発酵に「果汁と砂糖」を入れるところもありますよね。
村上:高畠のブドウは非常に糖分が高いもんですから、果汁だけで再発酵するんです。国税といろいろやりとりして、この方法がルールに合うのかどうなのか、確認しながら造っております。
辰巳:これヴィンテージはあるんですか?
村上:はいこれは2017年。
辰巳:この商品自体はいつからリリース?
村上:2015年からです。
辰巳:シェフいかがですか?
井村:スッキリしてるのにふくよかな香り、ものすごい飲みやすい、美味しいです♡
辰巳:果実味もしっかりありますよね。東北のワインなのにもうちょっと暑いところで造ってる感じもします。
村上:高畑はシャルドネが非常に収量が多くて、古い統計資料ですが、シャルドネの全国の生産量が1200t〜1300t。高畠だけで取れるシャルドネが140tぐらいあるんですよ。だから全国の約1割、それを高畠ワイナリーで醸造してる。
辰巳:言い方いろいろあるでしょうけど、”日本でいちばんシャルドネのワインを造ってる”?
村上:そうです。
辰巳:言い切っていいんですよね?
村上:はい、大丈夫です。
辰巳:長野県でもシャルドネたくさん作ってますけど、いろんなワイナリーで造ってますからね。高畠は高畠町(たかはたまち)?高畠町(たかはたちょう)?だいたい北の方は”まち”って言って南の方は”ちょう”って言うんですよね?
村上:おっしゃる通りです。うちのほうは高畠’まち’です。
辰巳:高畠町のブドウはほとんど高畠ワイナリーのワインになるんですよね?
村上:県外に出てるブドウもありますけど、私どもは63名の(契約)栽培農家さんに苗木をお渡しして栽培していただいてやっております。
辰巳:大きくて素晴らしい醸造設備。かつ、大量に造ってるスケールメリットなのか、コストパフォーマンスがいい!
村上:そうなんですー、比較的安いんでなかなか儲かってないんですー笑。
辰巳:儲かんなくていいんすよ、それなりに持続できれば。ワインで儲けてるところってなんか腹たってきません?笑笑。
村上:確かにその通り笑。
辰巳:ま、海外では「ぇw、なんでこんなにお金あるの?」みたいな、貴族みたいなワイナリー。もちろん文化として牽引するには必要なんでしょうけど。普通にやってたらそんな’ボロ儲け’できるような仕事じゃないですよ。
村上:どうしてもね、収穫して発酵して寝かして・・・で、現金化するまで3年、4年かかってしまうので、資金繰りはどこのメーカーも大変だと思います。
辰巳:「濡れ手で泡」はどこにもあるんですよね。ほんとに泡造ってるんですけどね笑笑。
村上:水商売ですから笑笑。
辰巳:ちなみにこの泡はおいくらですか?
村上:税別で5823円。
辰巳:これのもう少しリーズナブルなランクの「嘉(よし)」という有名なスパークリングがありますが、
村上:これは2000円切ってるので、日本でいちばん多く飲んでいただいてると思います。高畠町のシャルドネですけどガス注入なんで、リーズナブルな価格設定。
辰巳:こちらは何本ぐらい造ってるんですか?
村上:1500本ぐらい。「嘉」はシャルドネだけで5〜6万本は造ってます。スパークリングは全部で10万本以上造ってます。
辰巳:白はシャルドネ中心ではありますが、ほんとに日本ワインの初心者が最初に「飲みやすい、手頃」と言う意味では「嘉」の存在はすごく大きい。
村上:日本のスパークリングワインの”基準”を作ったのが「嘉」じゃないかと。
辰巳:こっちの泡の方が発泡性が少し弱い気がしますが?
村上:確かに「嘉」は最初ガツーンときますよね。
辰巳:さ、今日のお料理です。なんでしょうか?
【中西ファームのキタアカリとルッコラのヴルーテ ロワイヤル】
井村:地元(八王子)の農家で作ってるキタアカリとルッコラを使ったヴルーテで、二層になってます。
辰巳:北あかりって北海道のジャガイモじゃ?
井村:ま、ま、今はいろんなとこで作ってます、割とどこでもー。
辰巳:そうですか、ではいただきます!
村上:美味し〜い♡
辰巳:はい、’美味しい’いただきました!
井村:ワインの香りが高いので、食材も香りがあるものをと思っておりまして。
辰巳:ルッコラとかね。あとはこのシルキーな感じとワインがすごくマッチしてますね。(いつもヴルーテには人工の甘さを一切加えてません)、これも何も加えてないんですか?
井村:じゃがいも、と、野菜の甘さだけ。
辰巳:こちらのレストランにいらっしゃると、しばらくはこのペアリング(料理とグラスワイン)が楽しめます。今回のワインが(単価)ちょっと高いんですけど大丈夫ですか?笑。
井村:大丈夫っす汗。
辰巳:ここだけの話、このワイン、グラスで出すとけっこうなお値段。ほとんど原価で出すことになるでしょうね苦笑。でもそれ目当てで来ていただいても、来て召し上がっていただければ、ね?
井村:(一呼吸ありました)だ、大丈夫です笑。
村上:ご迷惑かけます笑。
辰巳:ここでリクエスト曲を。今日は何にしましょう?
村上:ワイナリーでイヴェントをする際に、いろいろなミュージシャンの方に来ていただいてコンサートをするんです。そのミュージシャンの中で高畠クラブというのがあって、小室等さんがいます。
辰巳:!もう重鎮!
村上:ですので、この小室等さんの「出発(たびだち)の歌」をお願いしたいと思います。
*六文銭「出発の歌」(1971年)
https://www.youtube.com/watch?v=3-PJB_JwbvY/
(*小室等が中心となって結成された音楽ユニット)
辰巳:とても懐かしい曲です。シェフが生まれる前、1971年なんすよ。僕が中学校1年生。だから会長は、
村上:9歳。
辰巳:この歌は上條(恒彦)さんの歌唱で大ヒットしました記憶があります。どんな思入れがあるんですか?
村上:小室さんは毎回イヴェントに参加していただいてるんで、お嬢さんのゆいさんと一緒に歌っていただくんです。
辰巳:この収穫祭はいつからやってるんですか?
村上:震災とコロナの時には残念ながらできなかったんですが設立以来ほぼ毎年。
辰巳:高畠町以外のブドウを使うこともあるんですか?
村上:県外のブドウもありますし、一部海外のブドウも。
辰巳:そういえばありますね、海外原料のワイン。まほろばの・・・
村上:「まほろばの貴婦人(甘口)」。とか「オレンジマスカット」というオーストラリアのブドウを使ったワインもあります。(←これらは「日本ワイン」ではなく「国内製造ワイン」区分です)
辰巳:まほろばの・・・はハンガリーでしたっけ?、のブドウ。
村上:はい、フルミントです。やはりあの香りと甘さは日本では出せないですね。
辰巳:今の年間生産本数は?
村上:500klぐらい。ワインの量でいうと430klぐらいですか。
辰巳:キロリッターでしょ?だから、
村上:70〜80万本。
辰巳:ですよね。そのうち「日本ワイン」は?
村上:9割以上です。
辰巳:1990年にこのワイナリーができたんですが、高畠町はその前からブドウ生産は盛んだったんですか?
村上:デラウェアというブドウでいえば、市町村単位では生産量はいちばん。
辰巳:今も昔も?
村上:はい。で、生食用はどうしても価格の上げ下げが激しくて、価格の安定した醸造用のブドウはいかがですか?ってことで雨よけの傘をかけて栽培いただく。それによって農薬の散布量が極端に減るわけですよ。
同じエリアの農薬が半分以下ということで、県から「とくさい(特別栽培)」という指定を受けて今栽培してます。
辰巳:レインカット?ハウス?
村上:ハウスなんですけど、そのサイドがない(屋根はあるが壁がない)。今はどうしても生産者が少なくなってしまって、我々も限定で作るしかない状況になってしまってる。
辰巳:今は赤湯とかそのあたりのデラウェアってすごく注目されてるじゃないですか?新しいワイナリーが(デラウェアを)欲しがってけっこう使ってますよ。
村上:おっしゃる通り、北は北海道から南は九州まで、買い付けがすごいんですよ。
辰巳:一方で高齢化がどんどん進んでるし。難しいところですよね。
村上:だからこれからは、「自社で少しずつ広げていくしかないのかな」、っという風には思ってます。
辰巳:今自社畑は?
村上:4.5ha。
辰巳:高畠ワイナリーさんが本気出せばすぐに10ha笑笑。
村上:いやいやいやいや、”採算”というところを考えるとなかなか難しいところがあります。
辰巳:そろそろ時間が来てまいりました。11月のお客様は高畠ワイナリーの村上健会長です。また次回以降よろしくお願いします!
全員:ありがとうございました!!!
お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
高畠ワイナリー
https://www.takahata-winery.jp/
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2023年11月2日放送回
- ワイナリー
高畠ワイナリー
https://www.takahata-winery.jp/- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/