2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2023年3月のゲストは山形県上山市「タケダワイナリー」代表取締役社長、岸平典子さんです。
若くして亡くなってしまったお兄様、伸一さんの思い出話をしみじみ語ります。
そして典子さんは、急遽ワイナリーを継ぐことになりました。(全5回 2回目)
辰巳:3月2回目の放送でございます。今月のお客様は山形県の老舗、タケダワイナリーの岸平典子さんです。
(いつも通り、この会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています)
全員:よろしくお願いします!!!
辰巳:今日はまず、ワインからいきましょうね。前回あんまりワインの話できなかったんで笑。
では乾杯しましょう。今日は白ワインです。
全員:カンパ~イ🎶
【シャトー・タケダ シャルドネ2019】
https://www.takeda-wine.jp/SHOP/0405.html
辰巳:あぁいい香り。樽を使ったキレイなワインという感じがします。
岸平:これは自社畑のシャルドネを使ったシャトー・タケダの2019年です。
辰巳:生産量はどれぐらい?
岸平:シャルドネは、年間だいたい2000本前後でしょうか。
辰巳:6樽7樽ぐらい?、でシャトー・タケダは自社畑。
岸平:そうです。
辰巳:このワインどうですか?
井村:シャルドネのクセがあまりないというか、スーッと入ってくる感じがします。キレイ⭐️
岸平:シャルドネのクセっておっしゃいましたけど、私の感覚では”ワインにしてから(樽に入れた方が)クセが出やすい”。
これは樽で醗酵してるんですよ。樽醗酵だとすごく(樽との)なじみがよくて、酸化的なニュアンスが少なく果実香が勝ってる。
私の大好きな造り方です。
辰巳:僕も出てたんですけど、「*シグナチャー」っていう映画の中で、『”発酵から樽に入れるのか?”あるいは
”ステンレスで発酵してから樽に入れるのか?”どっちが香りがつくと思う?』みたいな問いかけがあってね。
実は「ステンレスで発酵させて樽で熟成の方が樽の特徴が出やすい」。らしいですね。
(*シグナチャー:https://www.signature-wine.jp/)
岸平:出やすいですね。1990年代にフランスに留学してたんですけど、その頃ブルゴーニュでは樽発酵がすでに主流になってて。
でもボルドーではまだステンレス→樽の過渡期でしたね。
辰巳:フランスにはいつ頃どれぐらい行ってたんですか?
岸平:1990年から94年までいました。
辰巳:いくつぐらいの時?
岸平:大学を出て1年間お勤めをした後に・・・。20代ですね~笑。
辰巳:え~と、逆算すると???笑。別に内緒にしてるわけじゃないでしょ?何年生まれ?
岸平:1966年生まれです。
辰巳:丙午!?
岸平:そうです。悪名高き丙午笑。
辰巳:たくさんいるんですよ。小泉今日子とか斉藤由貴とか芸能界にもいっぱい笑。
お兄ちゃんとは何歳違い?
岸平:お兄ちゃんは4つ上。寅年でした。
辰巳:奥野田ワイナリーの中村(雅量)さんとか大和葡萄酒の萩原(保樹)さん辺りがみんな同い年で東京農大で。
辰巳:僕がいちばん最初にタケダワイナリーを知ったのは、そのお兄ちゃん(の時代)からなんですよね。
お兄ちゃんが東京出てきてるときにいろんな人に紹介されて、「山形の武田です」って独特の訛りで朴訥な方で。
もう最初に会った時から忘れられない。
我が家を新築した時のパーティーにも来てくださって、まぁ散々飲んだ記憶しかなかったんですけど、、、。
99年でしたっけ?まだ36歳、40歳前、まだワイン造りバリバリやられてる頃にお亡くなりになって、、、。
・・・なんか悲しくなるけど、思い出さなくちゃなと思ってきてね。雪の降る中事故に遭われて。
お葬式も覚えてますよ。田崎(真也)さんと雪の中一緒でした。お父さんお母さんの憔悴しきっていて、、、。
その時は(典子さんは)もう結婚されていて、ワイン造りはされてなかったんですよね?
岸平:そうですね。ワイン造りからは少し離れてました。ワインの仕事はしていましたが、、、。
辰巳:”ワインを造りたい”気持ちは?
岸平:ありました。(造るとは違った)ワインの仕事の準備をしていた時(兄が亡くなった)。
その道に進むかどうか悩んだときに話を(生前)お兄ちゃんとしてたんです。(結果兄が継ぐという話に)。
でも亡くなって私が継ぐことになったら「結局私はお兄ちゃんのスペアじゃない?」。
もちろん(ブランクはなく)ブドウもワインも造れるのですぐに継げたんですが、、、。
兄が死んだっていうのもありましたけど自分の中では「まとまらない」。まだ雪の降る3月に亡くなって、、、
でも春になったらブドウは芽生えてきちゃうんですよ。
辰巳:人間の事情とは関係なしにね。
岸平:その時の畑見たら「もうやるしかない!」。
辰巳:ブドウの芽吹きに促された、みたいな?
岸平:夫に相談したら「ワインを造りたい顔してる」笑笑。まだ結婚して3年ぐらいの時です。
辰巳:頭切り替えた時から全国から注目を集めて。大変だったでしょうけど。
岸平:でもありがたかった、みなさん本当に応援してくださって。今日みたいに辰巳さんが「あー典子さーん」って言ってくださって。
いろんな方が、兄が作ってくれた人の繋がりを皆さんが、絶えないようにしてくださったのがすごくありがたかったです。
辰巳:今でも”典子ちゃん”って言っちゃいそうな笑。(←ガンガン言っちゃってますよ)
お兄ちゃんの伸一さんの話も避けて通れない一つの流れなんでしょうね。
運命っちゃ運命かもしれないし、今のタケダワイナリーがあるのは岸平典子ちゃんがいるから。
辰巳:ちょっとお預けを喰らわせてしまいましたが、お料理がきております。
シェフ、今日はなんでしょう?
井村:ま、簡単にいうとカニサラダ笑。
辰巳:カニが上に乗っかっててセルクルに入った。下は何?
井村:ジャガイモとセロリときゅうりにマヨネーズベースのアイオリソース。ビーツと人参を使ったピューレを添えてます。
味変させながら食べていただければと思います。
全員:いただきま~す!!!
【蟹とジャガイモのサラダマセドワーヌレモン風味のマヨネーズソース】
辰巳:ほんとにサラダだ。ぽろっと崩れて・・・。って、ラジオで食べたり飲んだりってホントに大変なんですよ。
だって聴いてる方はまったくわからない。美味しいことだけは確かなんですけど。
お聴きの皆さまもこの「Villas des Marriages 多摩南大沢」にお越しいただければ、このお料理とワインがグラスで飲める同じ体験ができますので、ぜひお越しください!
典子さん、このお料理どうですか?
岸平:サラダなのでグリーンな感じがします。ワインはちょっとトロピックなところがあるので、その相乗効果がすごくいいなぁと思いました。
辰巳:トロピック?笑。面白い!普通トロピカルっていう言い方するじゃないですか?今そのトロピックとトロピカルのニュアンスの違いを認識したというか。
井村;フランスではトロピック笑。
辰巳:なんかマグロみたいなって?(←トロチック?)爆。
辰巳:ではここでリクエスト曲を。今日はなんにしましょう?
岸平:先週に引き続き(ジュゼッペ)ヴェルディの「(オペラ)シモン・ボッカネグラ」の
シモンと生き別れになったアメーリアという娘さんとが再会して話をしてるんですけど、
「ぁ、お前は実の娘だったのか?」っとわかるシーン。「貧しい家の卑しい女が』という曲です。
辰巳:ま、オペラはだいたい曲のタイトルつけませんからね。冒頭の歌詞からつけたタイトルでございます。
岸平:指揮は(クラウディオ)アバド、
辰巳:指揮者で選ぶタイプですね?先週は(リッカルド)ムーティだったし。
岸平:(バリトン)はレナート・ブルゾン、(ソプラノは)カティア・リチャレッリです。
https://youtu.be/KrYMuVtGwbI
(お断り:典子さんリクエストの指揮者、ソリストの演奏が見つかりませんでした。上の楽曲はRoyal O pera House、Marina Poplavskaya、Placido Domingoによるものです。)
辰巳:なんか、僕も娘(ソプラノ歌手 辰巳真理恵さん)とよく共演してるんですけど、オペラとワインって合いますよね。
オペラがスーッと入ってきてワインがスルスルーっと笑。「歌に酔い酒に酔う」、みたいな笑。
普段からこんな曲聴いたりもしてるんですか?
岸平:(現地に)観に行けない時はCDだったりDVDだったり、よく聴きますね。
辰巳:ご夫婦とも?
岸平:そうですね。結婚してから一緒に観劇に行って「あ、オペラって面白いな」、ってなったんですよ。
クラシックはずっと好きだったので(オペラに)行ってみたい行ってみたい、「『オペラ』っちゅものを聴いてみたい(←山形弁)」と笑笑。
で、観に行ったら「面白かった!」。
辰巳:さてそのタケダワイナリー。シェフは知ってました?
井村:知ってます!
辰巳:別に見栄張らなくてもいいんですよ笑。
井村:このワインのピンポイントは知らなかったですけど。
辰巳:この番組始まって2年半。今や日本ワインを語らせたら日本一、かもしれない笑、という井村シェフです。
辰巳:「タケダワイナリー」という名前ができたのが1920年?
岸平:はい、その時は「武田葡萄酒工場」とか「武田食品工場」とか、そういう言い方でしたね、全部漢字で。
辰巳:それまでブドウ畑はもう何十年もやってたんでしょ?
岸平:うん、その時は武田食品工場とか武田葡萄園。武田葡萄園から採れたものをジュースとかに加工してたので。
辰巳:幕末、明治初期ごろからブドウ畑があったんですね。
岸平:はい、私の曽祖父っていうんですか、5代前が畑を始めてますね。ぁ、高祖父か。(高祖父は4代前、5代前なので五世の祖父ですね)
辰巳:その頃のブドウってデラウェアもシャルドネもマスカット・ベーリーAもありませんでしたし、どんなブドウ作ってた?
岸平:ヤマブドウとか、コンコード・・・
辰巳:でもコンコードは明治に入ってからですからね。
岸平:うちの家系は新しもの好きなので、「ブドウが”商品作物”になる」と。知ってからはヤマブドウはいいんじゃないかーとか
次はコンコードがいいんじゃないかーとか。甲州の記録はないんですけどね。
辰巳:ナイヤガラとかキャンベル(アーリー)?
岸平:、もやってました。
辰巳:ヤマブドウもやってたんですねぇ。
岸平:みたいです。今でこそヤマブドウって”ポリフェノールもたくさんあって酸もしっかりして”って認識ありますけど、
当時の人にしてみれば”酸っぱすぎて”口に合わなかったので「すぐやめた」ってなことは聞いております。
そのあと川上善兵衛さんが新潟(上越)でマスカット・ベーリーAを育種なさってすぐ山形に入ってきた。
辰巳:善兵衛さんが直接山形へ行って広めたって。
岸平:そうですそうです。
辰巳:だから日本で最も古いベーリーA の木は山形にあるという。
岸平:赤湯の須藤ぶどう酒さん。
辰巳:ベーリーAができてもうすぐ100年?
岸平:1927からかな。
辰巳:タケダワイナリーの100周年はコロナ禍で?
岸平:そうですね、何もしませんでしたね。
でもなんていうのかな、華々しくやるよりは、「ぁ、100年やってきたんだ」って自分の中では身が引き締まる思いがありました。「頑張らなくっちゃ」っとしみじみと。派手にやっちゃうと気持ちが散漫になっちゃうから。
辰巳:まぁね、ワインの世界では100年はそんなに長いスパンではないんですけど、フランスやイタリアなんか古い産地では、
品種も淘汰されていったでしょうし、ブドウやワインの造り方も変わってってるみたいですし。
でもこうやってようやく日本ワインが注目されるようになって、今まで地道にやってきたことがスポットライトを浴びて。
でもそれに左右されずきちんとスタイル守ってやり続けてるって素晴らしいです!
岸平:ありがとうごさいます!時代とともにいろんなことが変わっていくんでしょうけど、やっぱり「1本筋を通す」ことは父から教えてもらってきたんで、そこは曲げずにやっていきたいな、っと思ってます。
辰巳:お父さん、そんなことをいろいろ喋って?
岸平:「畑に出ないやつは跡継ぎにならないでくれ!」「うちの土地でブドウを作ってワインを造るんだからそれに意味があるんだ」「うちはワイナリーであってワイン屋ではない」。
っというのはすごい厳しく言われました。
辰巳:暇さえあれば畑にいる人でしたからね。典子さんもそうでしょ?
岸平:はい、もちろんです。今は雪で出られないんですけど(収録は2月下旬でした)、そろそろはじまりますね。
辰巳:こうやって東京に出てきてくださったり、オペラ観にいったり、そういう緩急あれば。ブドウもこの寒い時期は’エネルギー蓄えて寝てる’んでしょうから。
辰巳:そういうわけで第2回目も終わってしまいました。あと3回、今月のお客様はタケダワイナリーの岸平典子さんでした。また来週!
全員:ありがとうございました!!!
お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
有限会社タケダワイナリー
http://www.takeda-wine.co.jp
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2023年3月9日放送回
- ワイナリー
有限会社タケダワイナリー
http://www.takeda-wine.co.jp- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/