2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2022年9月のゲストは(株)キャメルファームワイナリーの木下正行さんです。
大学卒業後大阪の酒販店に入ったのちワイン修行のため渡仏。今回は現在の木下さんの原点?運も秘めたる才能をも駆使し尽くした
フランス時代の無茶修行のお話。(全4回 3回目)
辰巳:9月の3回目。今月のお客様は北海道余市から来ていただいています「キャメルファームワイナリー」の木下正行さんです。
(いつも通りこの番組の会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにもご同席いただいています)
全員:よろしくお願いします!
辰巳:今日は白ワイン、2021年のケルナーです。2021年の余市はすごくいい年だったとか?
木下:その通りです!開花(余市は6月上旬)後1ヶ月ぐらいはずっと雨が降らず、非常にドライなヴィンテージです。
辰巳:本州が梅雨に入る時期にも北海道はカラッとしてるのでブドウ作りにはいいとされてるんですが。
木下:台風もないんで。7月後半から8月もカラッとしてたので赤ワインにも適してました。ただ、量はそこまで造れてないです。
開花時期の問題。
辰巳:花ぶるいがあったとか?
木下:んまぁよくご存知で。その通りです。結果できたワインはこのケルナーでさえアルコール13%ありますんで。
辰巳:だから糖度が25とかあるんですよ。
木下:補糖補酸一切してない本当ナチュラルな・・・。
辰巳:ではいただきましょう。
全員:カンパ~イ🎶
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キャメルファームワイナリー「ケルナー 2021」
https://camelfarmwinery.jp/products/kerner_2021
辰巳:ん~、香りがまずいいっ!フレッシュ感の中にも独特の苦味があってすごくいいですね。アロマの前に旨味がきます。
井村シェフ、今月に入ってからだいぶ喋りが減ってますが(←木下さんに完全にもっていかれてます)、もうちょっと絡んでいただいて笑。
いかがですか、このワイン?
井村:何を言おうか忘れてしまいました笑。いや、”ふくよかな”という言葉が合うワインだと思いました。
口に入れて膨らみがすごくあるというか、香りがぶゎぁっと広がってそれが抜けていく、、、。
辰巳:すごくナチュラルな味わいになってますよね。
木下:ブドウ作りでもワイン造りでも余計なことはしない。ワインの持ってるポテンシャルを引き出してこういう形にしてます。
ケルナーはこういうアロマティックな品種で、この年はアルコール度数も高くてふくよかさもしっかり出てくれたので、樽にも入れてません。
辰巳:やっぱり「美味しいブドウができると樽は要らない」というこれも一つの典型ですよね。これいいなぁ。
亜硫酸も少ないでしょう?
木下:はい、ギリギリのラインですね。”入れないことはない”です。健康的に飲んでいただくために最低限は入れてます。
醸造過程の後半に少し入れますが、それもみなさん(業界関係者)ビックリするような(少ない)量。
辰巳:これは品種の特性がすごく出てる。ケルナーのお手本みたいな。
ちなみにこれはおいくら?
木下:3800円でお出ししてます。
辰巳:税込?
木下:税別です。なんか細かいですね笑。
辰巳:だって税込でも4000円越えってけっこう高級ワインですから。
木下:確かに。でもそこは意識しながら取り組ませてもらってます。
辰巳:さ、この素晴らしいケルナーに合わせたお料理はなんでしょう?
井村:佐渡のメバルとスルメイカ。ワカメを使って蒸してます。
辰巳:メバルって春のイメージですけど?
井村:そうですね。でも日本海の方ではちょうど今獲れます。その上に豆乳を泡だてて、ライムの香りを少しつけて
ケルナーの香りに合わせてみました。
辰巳:ではいただきます!Buon Apetito!(伊)
木下:Bon Apetit!(仏)
「佐渡島産メバルとスルメイカの海藻蒸し」
木下:素晴らしい!ワインとのマリアージュばっちりですね。
辰巳:このライムの香りがケルナーと・・・。
井村:やっぱり香りの共通点がありますんで。
辰巳:この魚の臭みもまったくなく。
木下:ほんと、まったくないですね。
辰巳:このスルメイカも今ひと切れですが1匹食べたい笑。
井村:サクッと一切れ食べるこの食感がワインには合うんじゃないかなと。
木下:ほんとですね、この(ワインの)ふくよかさに合いますね。
辰巳:このシェフ本当に素晴らしいんです。日本ワインに合わせて料理をこれだけ頑張って作ってる。
木下:ワインの良さをよくわかって引き立ててくれてる。逆にワインを主役にさせていただいていてホントにありがとうございます!
辰巳:ケルナーやっぱりいいな。ケルナーに対する思い入れってありますか?
木下:あります。やっぱりこの畑を藤本(剛)さんが40年前から作っててすごい大事に育てられてたので。
ケルナーに関しては北海道でも他の地域の皆さんにも人気なんで、それに恥じないようなワインを造りたい。
うちではスパークリングワインとこのスティル(←この2種はステンレスタンクでのみの発酵熟成)、あともう1種類は
樽発酵樽熟成したものにステンレスで発酵させたものを20%ブレンドしたものがあります。
(←ケルナー プライベートリザーブ 2021:https://camelfarmwinery.jp/products/kerner-private-reserve-2021
)
辰巳:なるほど。こちらはフレッシュ感があってどちらかというとヌーヴォー的な弾け感があるんですけど、
でもこれが熟成するとどうなるのかなぁと。ケルナーも熟成するんでしょ?
木下:余市で作るブドウは酸度がしっかりあるんで、熟成にも耐えられます。2017年からケルナー造ってるんですけど、
今のフレッシュなケルナーとは違う飲み頃を迎えていますので、是非楽しんでいただきたいなと思います。
辰巳:さ、先にリクエスト曲聴きましょうか?そのあとフランスの(留学?)話をゆっくりしましょう。
今日は何にしましょ?
木下:今日はフランス語のタイトルなんですけど、フランス語難しいので和訳。「私の人生にようこそ」。
カナダ出身のニッキー・ヤノフスキーさんの歌です。すごく若くて素敵なジャズシンガー。
辰巳:「ビアンヴニュ ダン マ ヴィ」?では、どうぞ。
Nikki Yanofsky 「Bienvenue Dans Ma Vie」
https://www.youtube.com/watch?v=zJS6q0rm7rc
辰巳:あれ、フランス語もしゃべるんですか?
木下:フランスでソムリエやってた時代がありまして。
辰巳:あの、順番にいくと(先週からのお話です)近畿大学卒業されて?
木下:最初に就職したのが酒の専門店。当時はハードリカーや地酒がブームだったんで男性陣はそっちをやりたがったんですが、
私は’なぜか’ワインに惹かれたんですよね。フェンシングをやってたってのが少しあるのかなと。
辰巳:ワインブーム始まった頃じゃ?
木下:大学卒業したのが97年ごろでフランスに渡ったのが98年。多分その頃じゃないですか?
辰巳:95年に田崎真也さんがコンクールで優勝して(これが第一ブーム?)。その前のバブルの頃からもイタメシブームがあったりして
90年代にダァーーーっときたんですよね。で、98年がピーク。
木下:だから日本に帰ってきた当時は仕事がたくさんありました笑。
辰巳:ワインが好きだったってのがワインブームの初っぱなだった?
木下:そうですね、94年ぐらいかもしれません。
辰巳:最初の波をちゃんと捕まえてた?
木下:はい、波だけは笑笑(←バリバリ現役サーファー)。でもまぁご縁というか偶然というか・・・。
辰巳:いやぁこういうのは「(ブームの予兆は)わかってましたっ!」っていうのがカッコいいんですよ笑。
木下「もちろんわかってましたっ!」爆。
辰巳:さすが関西人!笑。そして波に乗って、、、
木下:「もうこれしかないと思いましたっ!」爆。
辰巳:で、酒屋さんに就職して、どういう経緯でフランスに?
木下:専門店でワインを学ぶうちに、田崎さんも活躍されてた頃だし「今からワインにどう携わろうか?」。
日本でソムリエ?って考えたんですけど、年齢も考えて「本場のフランスに行って勉強しよう」と。知り合いもいないのに。
辰巳:それは田崎さんが世界一になったっていう影響はありました?
木下:今冷静に考えるとその影響は大きかったと思います。ただ、それよりは自分が”学びたい”という気持ちの方が強かった。
辰巳:それはやっぱりフランスだった?
木下:そうですね。ワインを語る中で、本で得た知識を一生懸命話してたんですけど、なんか自分が”ニセモノ”の気がしてきたんですよね。
これは本場で、その場で学ばないとダメだなと思うのがいちばん強かったですね。
辰巳:先ずはフランスのどこに行ったんですか?
木下:パリです。語学学校に学生として行きました。250万円ぐらい貯めて笑。親は「ハタチ超えたら自分でやれ」というスタイルなので
(全く関与せず)。
辰巳:2年働いて250万円ってなかなかじゃ?
木下:あの、意外と節約家笑笑。
辰巳:その頃サーフィンは?
木下:やってました。ハタチからだからフェンシングやってる途中。
辰巳:フェンシングやってサーフィンやってワインやって。。。けっこうお金かかるでしょうに?
木下:すべてワインにお金つぎ込んでますんで今まったくお金ないです笑。
辰巳:なんか外見に似合いませんが(←「精悍で色黒」と表現してました)、なんか哲学者っぽくもありますね。
やっぱ2年で250万も貯めるなんてストイックですよ。
木下:ぇ、ぁ、ホントですか?逆にそこ初めて誉めていただいたんで嬉しいです笑笑。
辰巳:ボク今でも貯まりませんもん爆、ホンマに。借金ばっかり。
)
辰巳:で、パリに行ってフランス語勉強して?
木下:それでワインも勉強、ってなった時にパリってなかなか私に合わなかったんです。
田舎で’地に着いた’感じがもともと好きなので、じゃぁどうしようか?
その時期「フランスに銀行口座がなければ住むところの契約ができない」という問題にぶち当たりまして。
パリのホテル暮らしもそう長くは続けられないですから。。。
そういうわけで、パリで日本人見かけたら全員に話しかけて(驚!)。もうギリギリだったんで。
辰巳:女性に?
木下:おっしゃる通りっ!爆。いや、違いますよ。で、片っ端から声かけたらそのうちの一人がご結婚されてご主人とリヨンに住んでると。
辰巳:ほら、やっぱり女性じゃないですか笑。
木下:偶然です!笑。しっかりとしたマダムでした。
辰巳:で、ナンパしたと笑?
木下:ちょっとちょっと、言葉が違いますよ笑笑。それで「住むとこ一室あるよ」ということで、紹介いただけて。もうその方におんぶに抱っこ。
銀行口座も住むところも。私日本語しか喋れないし。
辰巳:だってパリでフランス語勉強したんでしょ?
木下:いや、まったく。もう心が通じれば問題なし笑.
辰巳:ボディランゲージ?
木下:おっしゃる通りっ!笑笑。
辰巳:シェフもしばらくはフランスにいたんでしょ?フランス語は?
井村:もうほんとにちょっとだけ。
辰巳:ちょっと2人でフランス語で会話してくださいよ笑。
木下:多分無言が続きますよ爆。
辰巳:コマンタレヴ~ン、とか、サヴァビヤ~ン、とか笑。
木下:その程度でございます、1年半いてその程度笑笑。ほとんど関西弁で乗り切ってたと思います。
*アリアンスフランセーズをパリからリヨンに転校して、学生を続けながらレストランを紹介してもらったんですけど、
無給で地下の倉庫からレストランに上げるだけの仕事をもらってたんです。
1998年にちょうどフランスで(サッカーの)W杯があってアジアからのお客さんがすごい増えたんですよ。
で、「オマエ表に出るか?」という話になりまして。”(無給だけど)チップだけはいただける”という契約で最初は3テーブルを任せてもらってたんです。
そしたら「あいつフランス語しゃべれないのになんか面白いよ」と評判になってフランス人からも人気になりまして。
日本に帰る直前までには15テーブル任されるようになってました笑。
(*アリアンスフランセーズ参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/アリアンスフランセーズ)
辰巳:チップだけでどれぐらいになりました?
木下:15万円ぐらいには。(驚)学生VISAだったんで給料はなかったんですけど。
辰巳:なかなかやりますね。もうちょっといてもよかったんじゃ?
木下:はい、いてもよかったしその頃ドイツからもお仕事いただいていたんですが、
なぜか日本に帰って「もっと美味しいワインを広めたい!」って思いが強かったんですよね。
辰巳:その頃女性の影が?笑。
木下:”その頃”だけじゃないすよ、ほんとまったくないです。
辰巳:ノリがいいもんだからリヨンから日本帰国までの話、めちゃくちゃ時間かかりますね笑。関西人面白い笑。
この続きは次回お送りします。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
https://camelfarm.co.jp
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2022年9月22日放送回
- ワイナリー
キャメルファームワイナリー
https://camelfarm.co.jp- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/