2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2022年2月のゲストは機山洋酒工業株式会社 代表取締役の土屋幸三さんです。前半は「甲州」のネーミングについて辰巳さんと意気投合(?)。後半は大学卒業後の出向先での運命の出会い♡について。テイスティングは番組始まって以来初登場のブラック・クイーンが登場します。(全4回 3回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/
辰巳:2月のお客様は山梨県塩山市、機山洋酒工業株式会社の土屋幸三社長です。よろしくお願いします、、、ってなんで笑ってんすか?
土屋:だって間違えた・・・。(←現在塩山市はなく、2005年、勝沼町、大和村と共に合併されて甲州市になっています)
辰巳:なんで合併なんかしたんですかね笑。(土屋:まぁいろいろあったんですよ)甲州市っていうとね、「甲州」というブドウ品種名が地名になっちゃうからおかしくなっちゃう。いずれ海外から圧力がかかって「”甲州”というブドウ品種の名前を変えなさい」ってくると思います。その前に早く、、、
土屋:また合併しちゃえばいいんですよ爆。(←ぇw)
辰巳:また合併して大きくするのは難しいかもしれないけど、甲州っていうブドウの品種名を変えるってのも一つの手としてあるんじゃないですか?
土屋:あのー、多分ブドウ品種としての名前の方が地名よりも有名なんで、、、。
辰巳:ま、有名ってったって日本のワインは世界的には・・・なんて言ったらちょっと失礼か。
土屋:でもおっしゃる通りでほんとマズいんすよ。山梨県の中には「甲州市」があって「甲斐市」があるんです。
辰巳:「山梨市」もあるでしょ。「甲府市」も”甲州の中の府中”ですからね。
土屋:そう、「甲斐府中」なんです。
辰巳:僕も一応「山梨大使」やってるので悪口は言いませんが、ヒジョーになんか・・・
土屋:マズいです。
辰巳:ですよね。僕はこれから「甲州というブドウの品種名をどう変えたらいいですか?」を掲げたい。例えば新しい品種名を一般公募するとかね。
土屋:(この計画)みなさんどう思いますって?
辰巳:そう、全国展開したいほどヤバい、マズい。
その甲州市になった’元’塩山市の土屋さんですが笑。戦前は甲府の駅前で石炭商をやってたということですが、ワイナリーは(元)塩山市にあるわけじゃないですか。これはどうして?
土屋:塩山が元々の家なんです。そこを誰かに貸して甲府に出て行って駅前で商売したってことみたいです。
辰巳:で、石炭がもうダメだってなって、
土屋:塩山に帰ってきて、また違う商売を、で”ワイン”。
辰巳:急にこんな話をされて「なんなんだっ!?」と思われている視聴者の方もいらっしゃるかもしれませんが、『ワインを造る前は石炭商、時代の流れでそれを止めて今に至る』という土屋家でした。石炭は花形だった時代もありましたもんね。
土屋:石炭も葡萄酒醸造も時代背景ってのがあって、「石炭をやることが新しい商売になる」「葡萄酒をやることが新しい商売になる」。その時代時代に裏付けられてるんですよね。常に「なんとかしよう」と思ってたんだと思います。
辰巳:歴史をちょっと知っとくと流れがわかってこれはこれで楽しいんですよ。
ところで。機山ワインの機山って機械の機に山と書くんですけど「機山」っていう山があるんですか?
土屋:「機山」という山は山梨にはありません。山梨の武将の武田信玄公って、武田晴信さんが出家して「機山信玄」という”法名”を和尚さんからもらうんです。それから自ら「武田信玄」って名乗るようになって。”機山”っていうのはお坊さんでいうところの苗字、その苗字の部分をお借りして名前にしました。
辰巳:信玄ゆかりの神社でしたっけ?、が近所にあったような。
土屋:お寺です、「恵林寺」、うちから歩いて3分ぐらいのところ。まぁそこに信玄のお墓がありまして。「機山」ってのは信玄の戒名の一部でもあるので、それを使わせてもらってるって感じです。
辰巳:信玄にあやかった?
土屋:そういうことですね。
辰巳:地元の人にしてみれば大切な名前じゃないですかー。
土屋:そーぅなんです!「信玄」という名前を商標に使ってるところはいくつかあるんですけど、「機山」って名前も地元の人はわかります。
辰巳:山梨の人みんなわかるんすか?
土屋:みんなはちょっと・・・笑。
辰巳:何パーセントの山梨県民がわかるんでしょうね?
土屋:30%ぐらいは。全国的には正解率3%みたいなやつですね笑。
辰巳:僕もそういえば大昔に聞いた、ような。記憶の彼方でした笑笑。
では乾杯しましょう。今日は赤ワインです。
全員:カンパ~イ🎶
キザンワイン赤 2020
(機山のワインリストはこちら:https://kizan.co.jp/wine-list/)
辰巳:すごく紫がかった赤ワイン。このワインも久しぶりにいただきました、キザンワイン赤の2020。機山ワインはこの赤と白とスパークリングとあともう一つぐらいしかないんですよね。それだけ各アイテムに自信を持ってる?
土屋:笑、いやぁ不器用なもんですからあまりいろいろ造れないので。
辰巳:なんかどっかのCMかなんかで聞いたようなセリフですが笑。今日もこの会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにもお付き合いいただいております。シェフ、このワインいかがですか?
井村:いちばん最初に思ったのがすごい色がキレイで、飲みたさをそそるワイン。飲んでみたら、*ブラック・クイーンということで・・・。
辰巳:あれ、ひょっとしてこの番組始まってからブラック・クイーン登場って初めて?
土屋:そうかもしれません、マイナーな品種なんで笑。
井村:だから収録前に(ブラック・クイーンって)どんな品種なんだろう?って周囲のスタッフに伺ってたんですけど。
辰巳:マスカット・ベーリーAの兄弟みたいなもんなんですよ。色がよく出るのと酸味が特徴だと思いますけど、そんなにタンニンは強くない。
井村:すごく飲みやすくて、ワインの初心者にもいいんじゃないかなぁと思いました。
辰巳:これ野菜だったらビーツなんか合うんじゃないか?ってシェフなら思いそう笑。
これ樽は?
土屋:使ってないです。
辰巳:”赤ワインには樽”と世の中的には思われてますけども、それは違うんじゃないかなと・・・。
土屋:過去に少しだけ樽を使ったキュヴェをこのラベルのワインにブレンドしたことがあったんですけど、でもだんだんやっていくうちに「そこまでやる必要はないかな」って。醸造家はどうしても複雑さを求めると思うんですけど、このワインはシンプルなんであまり複雑さは要らないかなと樽は何年か前にやめてしまいました。
辰巳:マロラクティック発酵(MLF=乳酸発酵)は?
土屋:してます。もともとブラック・クイーンは酸が残る品種なんですけど、今”温暖化”と言われて夏が暑くなって。どんな果物もそうなんですけど、そもそも必要な酸が不足がちになる。暑ければ暑いほど酸が少なくなるし、着色の不良(ブドウの色付きが悪くなる)が出たりして、赤(ブドウ)品種はみんな苦労してる中、ブラッククイーンは着色もまぁまぁで酸があって。だからこの品種に関しては「酸が不足する」っていう経験がないんです。
辰巳:このキザンワイン、「白は甲州、赤はブラック・クイーン」でずっときてますけど、自社畑はあるんですか?
土屋:うちのは約1ha。でもうちのワイン全部が自社畑からではなくて1/3程度。残りの2/3は近隣の農家さんからブドウを買い入れてます。
辰巳:赤に関してはブラック・クイーンにこだわってこられたんですか?土屋さんは今3代目ですけど初代から?
土屋:始めたのは父だと思います。昭和の中盤ぐらいから広がりつつあった交配品種で、今もそれほどメジャーな品種ではないんですけど。父が自分の畑に植えたのと、何軒かの農家さんに苗木をお渡しして栽培してもらったのを僕が引き継いでる。山梨ですとマスカット・ベーリーAなんですけど、たまたまうちにはベーリーAがなくて。
(ブラック・クイーンのような)酸がある品種で熟成して深みが出る”より本格的なワイン”を造りたいって思ったんでしょうね。
辰巳:シャトー勝沼さんなんかもありましたよね?
土屋:ありますね、何軒か。あと山形のタケダワイナリーさんかもいいブドウを・・・。
(ブラッククイーン:「ベイリー×ゴールデンクイーン」”日本ワインの父”川上善兵衛が1927年に交配した黒ブドウ品種)
辰巳:前回までのお話は、お姉さんが2人いて、子供の頃から「いつかは(ワイナリーを)継ぐだろう」とは思いつつ、大学は関西に行ったと。
土屋:はい。
辰巳:阪大(大阪大学)ですからねぇ。何学科?
土屋:工学部、発酵工学科っていう(今の家業には)ドンピシャな名前なんですけど、発酵とはいえお酒とか醸造物を造るんではなくて。今は’生命工学’なんて言いますけど、’微生物学’?ま、そういう学科だったんです。だからそこで直接ワイン造りを学んだとかではないんです。
辰巳:関西はもともと灘があって伏見があって日本酒処ではあるんですけど、そういう技術を養成するところでは?
土屋:元々はそうなんですよ。灘の清酒屋さんがそういう学科を、っと誘致したらしいですね。
辰巳:そうなんですか、なるほどー。
今お料理が運ばれてきました。今日はちょっと茶色っぽいお料理ですけど笑、これはなんでしょう?
真鯛とオマールのブレゼ
井村:はい、今日は赤ワインではありますがお魚料理をご用意しました。オマール海老の上に黒キャベツ。これが今日のワインには合うんじゃないかと。
辰巳:あとは鯛、マッシュルーム、しめじ、ほうれん草が見えますね。では、いただきまーす。
辰巳:この香り高くてちょっと苦いキャベツをちょっと齧ると・・・
(←黒キャベツは揚げてあって食感はパリパリ)
土屋:ワインが美味しくなりますねー♡ありがたいお料理です。
辰巳:これはみなさんにもぜひ試して欲しいお料理です。
土屋:ブラック・クイーンってそれほどタンニンが強くないので、お魚料理でもぜんぜん悪くないですねー。この付け合わせのキャベツのちょっと香ばしくてグリーンな感じと共通点ありますよね。
辰巳:そうですね。赤ワインだけど、ちょっと青い感じもありますし。
もうちょっと味わいたいんでここでリクエスト曲にいきましょう。
(←この時間は食べながら飲みながら曲に酔いしれるコーナーとなっております笑)今日は?
土屋:プリンセス プリンセスの「ダイアモンド」お願いします!
辰巳:なるほど!ま、いろいろは後で聞きましょう。では、「ダイアモンド」です、どうぞ!
プリンセス プリンセス「ダイアモンド」(1989年)
https://www.youtube.com/watch?v=IKjRLKQo7O0
辰巳:懐かしいっ!このプリプリはどんな思い出が?
土屋:え~語りだすと長いんですけどねぇ笑。
辰巳:30秒ぐらいで笑。
土屋:会社時代3年ぐらい ある研究機関に出向してたんです。
辰巳:ある研究機関?
土屋:*醸造研究所。結局そこで今の嫁さんと出会うことになるんです。そこでいつも行くスナックみたいなところがあって。カラオケがあるんですけど、今はタブレットみたいなやつでピピっなのに当時は電話帳みたいな分厚いやつで。その電話帳も今わかんない人多いと思いますけど笑。
(*独立行政法人 酒類総合研究所:https://www.nrib.go.jp
現在は広島にありますが、土屋さんが在籍していた当時は東京都北区滝野川にありました)
辰巳:今の人は電話帳もわかんないか。我々の頃のカラオケは8トラでしたからね笑。(←もっとわかりません、多分)
土屋:そこは小さなスナックだったんで薄い電話帳しかなくて、歌える曲がほとんどないんですね。(←選択肢が少なすぎて)この曲はその中で数少ない”歌える曲”だったんで、そこに行くともう「これしか歌えない」。これもグルグルグルグル回ってしまって🌀🌀笑笑。しかもそこに行く時間はもう酔っ払ってるんで、大合唱になるんですよ。
各々選ぶ曲は決まってて僕は「ダイアモンド」。みんなで「うわぁ!」って盛り上がった時代を思い出します。
辰巳:その研究所時代に奥さんがいたってことですか?
土屋:たまたまそういうことなんです。
辰巳:あーまた時間ないんですけど汗。ちょっと時間戻しますけど、大学は4年間で卒業しましたよね?阪大ってキビシイから(留年許されず)4年で卒業する人多いんですよ。それから協和発酵に就職されたんですよね?(土屋:頷)本社東京?
土屋:そうなんですけど僕は茨城の工場にいました。
辰巳:関西を4年で終えて一応関東に戻ってきて、奥さんはその時(協和発酵時代)に知り合ったんじゃないんですか?
土屋:嫁さんは、灘の清酒メーカーに勤めていて、その時に同じ醸造研究所に出向していたんです。後で聞いたら(大学時代の)後輩だったっていう(驚)話でした笑。学部も同じ1こ下。
辰巳:学生時代はぜんぜん知らなかったんですか?
土屋:知らなくもなかったんですけど、研究所に入ってから「土屋の後輩が来るぞ」っと知らされて「誰かな?」っと思ってパッと見たら「あーこんな子いたかなー」って印象。
辰巳:「こんな子いたかなー」って、、、。ぜんぜん興味なかったんですか?
土屋:なかったですね。
辰巳:奥さんの方は?
土屋:わかんないです汗。
辰巳:1年上ににカッコいい先輩がいて、醸造研究所に行くっていうからわざわざ追いかけて行ったとかじゃ?笑笑
土屋:それはないですね、残念ながら笑笑。
辰巳:それでカラオケとか行きながら「間違い」が起きたとか?笑
土屋:そこではなかったですけどどっかで間違えたんでしょうね爆。
辰巳:あー盛り上がったと思ったら時間が来る。来週最終回ですがまたよろしくお願いします!
全員:ありがとうございました🎶
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
(辰巳さんが訪問時に撮影した写真です)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2022年2月17日放送回
- ワイナリー
機山洋酒工業株式会社
https://kizan.co.jp- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/