2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
12月のゲストは山梨県勝沼、原茂ワイン株式会社の古屋真太郎社長です。白ワインが3週続きましたがここでようやく赤ワイン登場。
ラベルには「Harmo noir」の文字が踊ってます。”Haramo(原茂)”とのありえないミスプリかと思いきや、なんと品種名でした。古屋さんが運命を感じたという”アルモノワール”とは?(全5回 4回目)
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https://775fm.com/timetable/tatsumi/
「Villas des Marriages 多摩南大沢」のエントランスに飾られていたクリスマスツリー。冬の夜空によく似合っていました。
辰巳:今日は12月23日。クリスマスイヴ、のイヴでございます。以前の天皇誕生日だったんですけど、あと1週間で今年が終わっちゃうんですよねぇ。19・・・、じゃない、2021年が笑。未だに1900と言ってしまう自分が恐い笑。はい、今回も勝沼の原茂ワイナリー3代目社長、古屋真太郎さんにお越しいただいてます。
辰巳・古屋:よろしくお願いします!
辰巳:(歳をとると?)だんだん1年早くなりますが、古屋さんはどうでしたか?
古屋:今年の4月に「勝沼ワイン協会」の会長を仰せつかったんですけど、このコロナで「毎年やってたものができない」「じゃぁどうするんだっ!?」ってやってるうちに終わってしまいました。あっという間、なんだったんだろっ?笑。
辰巳:これからの勝沼の盛り上げをお願いしたいと思います。そして「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにもご一緒していただきます。
井村:よろしくお願いします!
辰巳:まずは乾杯しましょう。今日はクリスマスイヴイヴということで赤ワインで乾杯です。
全員:カンパ~イ🎶
ハラモ アルモノワール 2018
https://www.haramo.com/products.html
辰巳:タンニンのキリっと効いた、でもソフトなワインですが、これはなんでしょうか?
古屋:”*アルモノワール”という品種です。
(*アルモノワール 参考サイト:https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010892697)
井村:初めて聞く品種です。
辰巳:これ日本で作られた品種でした、よね?
古屋:はい。ヨーロッパの品種は日本で直接栽培すると難しい。だから日本ではマスカット・ベーリーAが有名ですけど、アメリカ系ブドウとヨーロッパ系ブドウを掛け合わせて”ハイブリッド”を作ることがあるんです。でもこれはツヴァイゲルトレーベとカベルネ・ソーヴィニョンというヨーロッパ系品種同士。これを”クロッシング”というらしく”ハイブリッド”とは違うらしいです。
辰巳:なんでしょうね、この区別の仕方は?
古屋:”*ヴィニフェラ系とラブルスカ系”が違うからじゃないですか?
ヴィティス・ヴィニフェラ/ラブルスカ 参考サイト:https://www.wine-life.me/wine31)
辰巳:なんかすごく人種差別的な感じするんですけど笑。アメリカ系品種をバカにしてるような気がしません?
古屋:まったく、、、そのとおりです爆。ヴィティス・ラブルスカは”野蛮”という意味ですから。
辰巳:僕はナイヤガラもデラウェアもキャンベル(・アーリー)も大好きなんで、こんなふうに区別されるとちょっとカチンときちゃう笑笑。
古屋:クリスマス前ということで。母がクリスチャンなんですけど、ワインの歴史を勉強しようとするときにどうも(キリスト教と)重なってしまって。「最後の晩餐」を思うとワインだなぁキリスト教だなぁ、っと思う時があります。ヨーロッパの歴史はそこにあると思います。
辰巳:お母さんはカソリック?
古屋:いえ、プロテスタントです。まぁその影響もあって、ヒュー・ジョンソンの「*ワイン物語」読むと、「ワインは神聖な飲み物である」、「人間から離れちゃいけないものだ」と。
(*ヒュー・ジョンソン「ワイン物語」:https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000087181990.html)
辰巳:お母さんがクリスチャンだったらクリスマスの習慣は早いうちから経験してた?我々が子供の頃はクリスマスってあまり重視されてませんでしたけど?
古屋:プロテスタントなんで、派手なことはせず歌うぐらい。
そんなこともあって「キリスト教とワイン」は今すごく私に影響してます。ヨーロッパ2000年の歴史が「(アメリカのラブルスカ系と)ヴィニフェラ系を分けたよ」っていうことだと思います。
辰巳:元はといえばキリスト教はワインを禁止してたんですよ。お酒は跳ねつけてたのに、ワインがどんどん広まったことを利用してキリスト教を広めたという経緯がある。でもまぁあまり難しいことは考えずに、飲んで楽しめればそれでいいと最近は思ってるんですけど笑。
シェフ、このワインどうですか?
井村:複雑味のあるワインといいますか、冬の果実の香り。
辰巳:思ったより果実味があるけど、色は薄めで。日本ワインの繊細さを備えたワインだっていう気がします。
古屋:日本は夏に雨が降るので、皮の比率が低くなって優しい味になりがちです。タンニンが少ない、そういう意味でマスカット・ベーリーAやブラッククイーンは「食べてもいいよね」、なんですが、これはもうちょっと渋みを感じるんです。日本人も肉料理をたくさん食べるようになったんで、この渋みを感じるようになっていいだろうというところに達しました。
辰巳:、ということで今日は肉料理。シェフ、これはなんでしょうか?
豚バラ肉のラグー シャリアピン仕立て
井村:はい、豚バラを煮込んだお料理のシャリアピン仕立て。
辰巳:シャリアピン、ってだれかの名前でしたっけ?
井村:オペラ歌手のシャリアピンって方の名前をとってます。
辰巳:ナニジンでしたっけ?(←ロシア人でした)もうね、最近ポロポロ忘れる笑。ではいただきます!
古屋:この脂がすごくしみ込む感じでいいですね。
辰巳:角煮か沖縄のラフティーのちょっと洋風な味付けのような。
古屋:これにはやっぱりちょっと渋みのある赤ワインがいいですね。
辰巳:この組み合わせ美味しいな♡ボルドーじゃちょっとキツい感じしますけどこれは丁度いい。
井村:肉料理でも軽めの方なので。
辰巳:だんだんね(←お年頃のことでしょうか?)、カロリーのこと言い出すとキリないんですけど、やっぱり脂身好きだなぁ。
井村:実はちょっと健康のためにリンゴを使って煮込んでます。ソースにはカボチャを使ってます。豚の脂身とリンゴ、玉ねぎ、カボチャ、それぞれ甘さが違いますんで、いろいろと掛け合わせてみました。
辰巳:「アルモノワール」と合わせたこのお料理もこちらに来ればお召し上がりいただけます。これはちょっとみなさんにも体験してほしいなぁ。
辰巳:古屋さん、食の好みとか変わって来たりしてます?僕は年々肉が苦手になってったりしてるんですけど。
古屋:太りやすくなって来ちゃったので、
辰巳:ぜんぜん太ってないじゃないですかー。
古屋:いや、ちょっと気を抜くと太っちゃう。先輩がスーツを買い換える、とかいう話を聞いてたら”晩御飯には炭水化物を食べないようにする”とか”〆にそば・うどんを食べないように”っていう風にはなりました。逆にこういう美味しいお肉はいただくと。
辰巳:でもこの角煮(←角煮ではありませんよ)には白いご飯が食べたくなる~笑笑。(←自他共に認める炭水化物好きです)
もっと食べていたいので笑、食べてる間にリクエスト曲聴きましょう。今日はなんでしょうか?
古屋:はい、今度はヴァン・ヘイレンの「パナマ」って曲を。
辰巳:今月は超絶ギターのオンパレードでございます笑。ではどうぞ。
Van Halen 「Panama」(1984年)
https://www.youtube.com/watch?v=fuKDBPw8wQA
辰巳:なんか今月こういう曲を聴いて古屋さんと話してると、だんだんワインに合うような気がしてくるから不思議です笑。
この「アルモノワール」やっぱりいいですね。ローマ字の表記は”HARMO”。真ん中にAを一文字加えると”HARAMO”。この品種古屋さんがつけた名前なんですか?(←違います)
古屋:これには運命的なものを感じました。最初は「クリスタルノワール」という名前だったんですけど、商標登録が重なったとかなんとかで、「アルモノワール」に変わったんですね。「まるで原茂のために作った品種じゃないかー!!!」笑笑。「増やさなきゃ~」っていう気持ちもあって力を入れてます。
辰巳:これ自社畑ですか?(古屋:頷)棚?垣根?
古屋:棚、一文字(短梢)です。
辰巳:どうですか、作りやすいですか?
古屋:色づきはいいです。優しいんですけどタンニンを感じる色なんです。でも房はちっちゃいので収量は自然にセーブされてます。
辰巳:このワイン、あんまり凝縮感を求めなくてもいい気がしますけど。
古屋:”強ければいい”ってわけじゃないですよね。優しいタンニンの感じが私はとてもいいと思ってます。
辰巳:これ樽使ってるんでしょ?(古屋:頷)樽なしだとどうなるのかなぁが気になる。
古屋:それはちょっとできないです。これに”想い”があるといちばん大事な造り方をしたい。そうなるとやっぱり「樽」になっちゃうんです。ステンレスは機械的な感じがするんです。「優しく世話をする」という意味では木樽に入れてあげるのがいちばんかなぁと。
辰巳:そうですか、それぞれの造り手のイメージやこだわりがあると思いますしね。これはどのぐらいの量造られてるんですか?
古屋:ま、300本、よければ600本。
辰巳:! 1樽か2樽?
古屋:畑がちっちゃいんです。樹齢10年の区画のところからやっと1樽できるようになりました。新しく作った畑はもうちょっと広いんですけど樹が若いんで合わせて2樽やっといくかなってところ。
辰巳:これからどうなるか、なかなか面白い品種だと思います。栽培するワイナリーも増えてきたような・・・?
古屋:はい。あんまり世話をしすぎちゃうと(ワインの)価格が高くなっていっちゃうので、その自然環境に適応してる品種に制約してきてる気もするんですね。ちなみに日本ではなかなかうまくいかない品種、勝沼でも難しかったのがカベルネ・ソーヴィニョンなんですよ。
辰巳:カベルネ・ソーヴィニョンは勝沼でも難しかった!?
古屋:だから今みんな切り替えて(植え替えて)ますよ。「カベルネ・ソーヴィニョンのイメージはなんですか?」=「フルボディ」。なのに優しい味になっちゃう。色づきを待ってたりすると腐って*晩腐(バンプ)病になっちゃう。だから収穫を遅らせることがすごく難しいくてワインにはならないなってことで。そしてヨーロッパの専門家なんかが「夏に雨が降る日本では垣根でやったほうがいいよ」って言うんですけど、この日本の棚っていうのは実は理にかなってるんです。(*晩腐病 参考サイト:https://www.agries-nagano.jp/pest/172.html)
辰巳:そう思います、地面に近いほうが湿気が来るから病気になりやすい。最近棚が見直されてる風潮にようやくなってきたかな。
古屋:天候的にはここ3年苦しめられてます。春先に雨が多いのが2年続いて病気になっちゃったんですよね。今年はいいよって言われてたのに8月に秋雨前線の停滞が続いてブドウが水分吸っちゃって糖分が上がらない。。。来年は天候に恵まれますように・・・。ってな意味も含めて環境に合ったブドウをと。
辰巳:だからこのアルモノワールを?病気にもなりにくいんですか?
古屋:・・・可愛いと見に行きますよね♡笑。やっぱり’畑に通う’ってのが大事なんですよ。ほったらかしにしちゃうと病気が心配だったりするんですけど、ここの畑は家の近くにあるし。買いブドウは昔から長く続く習慣だったけれど、それがもしかしてワイナリーにとってはよくない影響だったかも。KOJ(KOSHU OF JAPAN)でロンドンに甲州を売りに行った時に質問されたんです。「この畑の土壌は?、樹齢は?」。買いブドウで造ったワインはそんなのわかんないし、だったら自社畑でやろうと。今北海道でもそんな流れになってるので「山梨ちょっと遅れてんじゃないの?」っていう危機感に煽られないように県全体で取り組もうという話に今なってるところです。
辰巳:なるほどー。でも畑が’家の近くにあって、頻繁に世話しに行けるのがいちばんいいのかも笑。しかもこの運命的なアルモノワールだし。これから原茂さんの大事な品種になってきそうですね。
古屋:はい、これで頑張りたいと思います!
辰巳:今月のお客様は勝沼 原茂ワイナリー3代目社長の古屋真太郎さんでした。また来週。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2021年12月23日放送回
- ワイナリー
原茂ワイン株式会社
https://www.haramo.com/- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/