2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
11月のゲストは大阪の株式会社パピーユ代表、島之内フジマル醸造所の藤丸智史さんです。プロサッカー選手になり損ねた高校時代から束の間、今度は阪神大震災に見舞われ早くも2度目の転機が訪れます。今の道に導かれるエピソードを「大阪デラウェア」を飲みながら。(全4回 2回目)
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https://775fm.com/timetable/tatsumi/
辰巳:はい、11月のお客様は大阪、島之内醸造所代表の藤丸智史さんにお越しいただいております!そして、「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフです。
全員:よろしくお願いします!
辰巳:前回は、中学高校とサッカー少年だったというお話でしたけど、今日はその後ぐらいのお話を伺っていこうと思います。まずは飲みましょ飲みましょ♪。
全員:カンパ~イ🎶
大阪デラウェア 2020
https://www.wineshopfujimaru.com/SHOP/sfj1909.html
辰巳:これまた酸がスキッとピリッとした、デラウェアの少し濁った感じのワインですけど。これはなんでしょうか?
藤丸:これも大阪のブドウなんですけど、(契約)農家さんからのブドウが入っているキュヴェです。
辰巳:前回は自社畑のデラウェアでしたけど、どちらも羽曳野のデラウェアですか?
藤丸:そうです、あとは(奈良県)橿原。
辰巳:なんていうんですかね、大阪の”河内”の方で奈良につながる二上山の麓が羽曳野丘陵。大阪の一大ブドウ産地ですけど、今畑は何箇所ぐらい持ってるんですか?
藤丸:細々と8箇所ぐらいに散らばってます、合わせて2haぐらい。
辰巳:一昨年雨で崩れて大変だった?
藤丸:3年前です。
辰巳:ぁ、もう3年?この月日の経つ速さっ笑。
藤丸:台風と豪雨とで畑の2割は無くなった。地滑りがあって今でもそこは立ち入り禁止になってしまってます。
辰巳:ブドウ栽培はね、やっぱり普通の開墾された畑より丘陵地だったり斜面だったりでリスクは抱えてるんでしょうね。
この(ワインの)ブドウも近くの畑でしょ?
藤丸:そうです、近隣の農家さん。
辰巳:日本では”種無しブドウ”、食用ブドウとしていちばん有名なデラウェアですけど、ワインにしても美味しいですよねぇ?
藤丸:っと思います。最初はデラウェアではなくマスカット・ベーリーAから造り始めたんですけど、北海道から鹿児島までで作っているブドウってデラウェアなんですね、もう100年くらい。だから日本にデラウェアが向いていることは歴史が証明してくれてる。
辰巳:日本に入ったのはもっと前ですよね、130年ぐらい前にアメリカのデラウェア州から入ってきた、ラブルスカ州でもなく。
藤丸さんはどんな風に聞いてます?
藤丸:僕たちはラブルスカ系、とは聞いてます、けど。
辰巳:アメリカ系品種はだいたい5~6ぐらい系統があって、ナイヤガラとかコンコードはラブルスカ系でデラウェアはちょっと違う。あとは甲州みたいに1/4ぐらいがヴィニフェラとか。。。「でも(デラウェアは)粒がちっちゃいんだから絶対にワインに向いてるはずだ」、と藤丸さんが何年か前に熱弁してたのを覚えてます笑。
藤丸:よく覚えてますね笑。ワインの教科書には”ワインに向いてる品種”って「粒が小さくてー、種があってー、皮が厚くてー」って書いてあるんです。確かに大粒系のものはどうしても水分量が多くなってしまうんですけど、(デラウェアは)メルローやカベルネのように粒がちっちゃいんで、ワイン用としていいものができるんじゃないか?特にこのキュヴェがそうなんですけど、グレープフルーツみたいな綺麗な酸味があるんです。それが白ワインにした時にしっかりと残っているので僕はいいんじゃないかと思っています。
辰巳:糖度も上がりますよね?
藤丸:甘くすることもできるし逆に若く出すこともできる、けっこう使い勝手がいい品種。
辰巳:このワイン酸味もあるんですよ。早摘みしたんですか?
藤丸:そうですね。自分たちの畑は熟すまでメチャクチャ待つんですけど、農家さんたちのブドウはそこまで待つと量が減ってしまうので最低限の糖度があれば大丈夫と言っています。これも補糖なしです。
辰巳:これで何パーセント?(アルコール度)
藤丸:11%。ちゃんとしたブドウを持ってきてもらって、なおかつ酸も十分に残ってるんで。
辰巳:これまた美味しいなぁ。前回のもそうだけど、いろんな造り方があるな、とは思います。これも自然発酵?
藤丸:そうです、自然発酵で無濾過。完全に濁り笑。
辰巳:やっぱり澱があったほうが旨味が・・・?
藤丸:そうですね。無添加でやってるので多少要素があったほうが”強い”ってのもあるんですよね。(←酸化防止剤も使っていません)
辰巳:最近”自然派”のワインも増えてきて、それは一つの主張としていいとは思うんですが。なんかね、だんだん品種の個性が感じられないのがつまらないと思ってるんですが。どうですか?
藤丸:同感です。あとは造り手の個性が出すぎると品種(の個性)が覆いかぶされてしまったりしてバランスが、、、。だから何を残したいかを考えたほうがいいんじゃないかと。
辰巳:メルローだシャルドネだってヨーロッパ品種の自然派よりも、逆にデラウェアだとかナイヤガラの方が向いてるんじゃないかとちょっと思ってるとこなんですけど。
そういえば。料理食べるの忘れてました笑。シェフ今日の料理は?
海老原ファームのじゃが芋のタルト トリュフのソース
井村:笑。今日はジャガイモのタルトでトリュフのソースです。
辰巳:ん、ソーセージの輪切り見たいのがのっかってますけど?
井村:これがジャガイモです。
辰巳:ぁ、これがジャガイモ?赤ジャガ?
井村:そうです。
辰巳:ではいただきます!(←なんかサクサクした歯ごたえが聞こえてきます)美味しっ♡
このソースの酸味はどっからきてるんでしょ?
井村:これは牛肉のソース。長時間煮込むとそこから出てくるんです。
辰巳:どうですか藤丸さん?
藤丸:ソースめちゃくちゃ美味しいですね。
辰巳:藤丸さんもお店いくつか経営していてね。東京と大阪で何軒ぐらい?
藤丸:5軒。
辰巳:よかったらこのメニュー使ってください、お金取りませんから笑笑。いやぁホントに美味しい。シェフどうですか?
井村:ブドウの皮の香りだったり美味しさだったり。ワインに複雑味を感じるので、そういう時はこのパイみたいな香ばしい香りが合うのかなと。
辰巳:やっぱりデラウェアいいなぁ。スパークリングにしてもいいしデザートワインにしてもいいし。
辰巳:ワイナリーは「島之内」という阪神高速道路が通ってる大阪のど真ん中にあるんですけど。元々は倉庫かなんか?(藤丸:頷)いわゆる”街中ワイナリー”。始めたのが8年前?街中としては日本で初めて?函館の農楽蔵さんの方が早い?
藤丸:農楽蔵さんの方が若干早いかもしれません。何をもって”街中”っていうところはあると思いますけど笑。
辰巳:函館だって街ですから笑笑。じゃぁ2番目ということで。ブドウ栽培を始めたのはもうちょっと前?
藤丸:2010年です。
辰巳:もうちょっと遡って。飲食の仕事をしてて、そっからワイン造りに移ってったわけですよね?
藤丸:高校3年生の時、法律の勉強がしたくて東京の大学、一橋大学に行きたくてセンター試験を受けてたんですけど、翌日が阪神大震災。
辰巳:そうか、その世代か!?
藤丸:倒れてる阪神高速道路のまん前が父親の会社で、倉庫業だったんですけど半年ぐらい動けない状態になってしまって。「これは自分の小遣いは自分で稼がなきゃいけない、これは東京の大学に行ってる場合じゃない」。取りあえず大阪に残って”割りのいい”アルバイトを探した時に時給が良かったホテルの配膳があったので始めたのがスタートでした。
辰巳:どこ?
藤丸:ホテル阪急インターナショナルです。できて間もない頃。
辰巳:1995年の1月17日。
藤丸:それがセンター試験の翌日。
辰巳:センター試験の出来が悪かったからやめたわけではない?笑。
藤丸:ない笑。
辰巳:一橋受けるぐらいだから優秀だったわけじゃないですか?
藤丸:頑張ってました。
辰巳:関大一高の中でもトップクラスでしょ?
藤丸:まぁ10番以内には・・・。
辰巳:やってること見てたら「この人頭えぇ人やなぁ」とホンマに思うし。阪神大震災もそうですし、福島の原発も今回のコロナも、いろんな天災、災害があって人の人生変わるもんだなぁってつくづく思います。
さて、ここで1曲聴きたいと思います。今日は何を?
藤丸:トム・ウェイツの「グレープフルーツムーン」という曲を。
辰巳:どういう曲なんすか?
藤丸:酒場でこれがかかってるとどんどん杯が進んでしまうような、独りでお酒が飲めるというか。
辰巳:そうですかー。我々の世代は「酒と泪と男と女」笑笑、でしたけどね。あれでグイグイ飲っちゃって笑。18(歳)違うと世代もねー。まぁしゃーないな、聴いてみましょう!
https://www.youtube.com/watch?v=7bpZjkjo3Tw
辰巳:今調べたらこの曲けっこう古いんですねぇ、1973年の歌でした。「酒と泪と男と女」は1982年で、これは僕の学生時代ズバリ(←留年中)なんですが。なんでこの歌?
藤丸:大学時代にアルバイトを兼任してたんですけど、そのうちの働いてたワインバーでかかってた曲なんです。
辰巳:学生時代から働いてワインを飲んでた?
藤丸:はい。そこでずっと(この曲が)かかってて、そこで飲んでる年配の男性がメッチャ格好よかった。
辰巳:団塊の世代の人たち、我々より上の人たちでしょうね。(←後で計算したら辰巳さんと同世代でした)
ちなみに大学はそのまま(関大一高から関西大学に)行ったんですか?
藤丸:はい、東京は諦めて。
辰巳:この辺りをまた来週聞きたいと思います。今日はありがとうございました。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2021年11月11日放送回
- ワイナリー
株式会社パピーユ 島之内フジマル醸造所
https://www.papilles.net/shimanouchi_post/- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/