ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2021年8月19日OA

2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
8月のゲストは山梨県勝沼の株式会社ダイヤモンドワイナリー3代目の雨宮吉男さんです。今回はテイスティングした「ますかっとベーリーA 2017」のパワフルな味わいの’痛い’理由、と、ちょっとプライベートなこと。(全4回 3回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/

辰巳:8月も半ばを過ぎて、もう少しで緊急事態宣言も明けるのかなぁと期待しておりますが、、、。今月のお客様は山梨県勝沼、ダイヤモンド酒造の雨宮吉男さんです!

全員:よろしくお願いします!

辰巳:社名はダイヤモンド酒造なんですけど、”シャンテ”っていう名前は商標なんですか?

雨宮:まぁ”ブランド名”みたいな形でしょうかね。

辰巳:「(フランス語で)歌う」(という意味の)シャンテ?昔から?

雨宮:そうですね、親が「仲間が集まってうちのワインを飲みながら楽しく歌い出す」、そんなことに貢献したくてこんなブランド名になってます。今は正確にいうと「シャンテ・イグレック.アー(ヨシオ.アメミヤ)」(←『Chanter Y.A』と表記されています)。私がフランスから帰ってきた銘柄に関しては「Y.A」をつけてます。

辰巳:では今日のワインは「シャンテ イグレック.アー」の2017年をお持ちいただきました。ではこちらで乾杯しましょう。

全員:カンパ~イ🎶


ますかっとべーりーA Chanter Y.A Y cube 2017

辰巳:ん、これもビシっとエッジが効いてて旨味がすごく回ってくるワインです。今日もこのレストラン「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフに同行していただきます。

井村:よろしくお願いします!

辰巳:このワイン飲むのは初めて?

井村:初めてです。

辰巳:日本のマスカットベーリーAとしてはかなり注目されてますし、このクラスにしてはかなり本数も造ってますよね?

雨宮:うちのベーリーAの中ではいちばん量造ってます。

井村:すごい飲み応えがあるなぁというのが第一印象、ブラックベリーの香りがします。でも色は黒っぽくなくて綺麗な色で、、、

辰巳:、果実味もすごく感じますし、これ樽は?ノンバリックとバリック合わせてるってわけじゃないんですか?

雨宮:全部樽熟成です。

辰巳:樽好きなんですよね?

雨宮:笑、どちらかというと。一時期樽のインポーターもやってましたんで笑。

辰巳:そりゃまたちょっと違う話でしょうけど笑笑、ワイナリーとしてインポーター業務もやってたんですか?

雨宮:ん、まぁ仲間というか、”共同購入会”みたいなのを立ち上げて、元々輸出していなかったフランスの樽メーカーから直接買い付けて、コンテナのチャーターから何からしてって形で。

辰巳:ぁ、そうなんすか。仲のいいワイナリーさんで?(雨宮:頷)じゃ、ベーリーAはすべて樽に入ってる?

雨宮:前週のロゼと同じシリーズのあと1種類の*カジュアルなベーリーAだけ樽に入ってないんですけど、他のマスカット・ベーリーAの90%は樽熟成してます。
(*「シャンテ Y.A Tinto」 このほかに不定期にリリースしている「シャンテ Y.A Chabudai」があるそうです)

辰巳:これは具体的には何本ぐらい造ってます?

雨宮:4000とか4500本とかそんぐらいですかねぇ。

辰巳:”イグレック.アー(Y.A)”ってシリーズ、他にも?

雨宮:そうですね。今回のイグレック・キューブに関しては穂坂(地区)で初めて契約栽培していただいた2軒の農家さんなんです。それも2軒とも”横内さん”。横内2つとヨシオのYが集まって”3つのY”。数字って3を掛けるより3乗した方が大きくなりますし、フランス語でキューブは立方体と言う意味でもあるので、「3Dで、より膨らみのあるワインを造ろうよ」ってことで。

辰巳:いわゆる”3次元のワイン”って言うcubeですね。横内政彦さんさんと横内才仁さん。(←お二人の名前はエチケットにローマ字で表記されています)ブドウの作り手の名前もちゃんとラベルに書かれてるってのは作り手としても嬉しいですよね、多分?

雨宮:ま、それもありますけど、このうちの商品「『イグレック・キューブ』のクオリティに対して責任がありますよ」っていうことを先方にも明確に伝えてますし、

辰巳:、「逃げられないぞ」っていう?笑。

雨宮:「手ぇ抜かないでね」っと笑。

辰巳:マスカット・ベーリーAをひらがなで書かれてるんですよね?(ぁ、”A”以外です)それには何か意味が?

雨宮:単純にあれですよ「字がカワイイ♡」っていう、のと笑、山梨市にある*養老酒造っていう日本酒蔵の同級生のお姉ちゃんに書いてもらったですけど、そのお姉ちゃんが習字的に’カタカナ’より’ひらがな’の方が得意だってことで・・・笑笑。
(*養老酒造:https://www.sakagura-kai.jp

辰巳:笑、ぇw、それだけ?

雨宮:そうです笑。でも実際ベーリーAって書いてみるとひらがなの方が’ワインの’丸み’であったり’柔らかさ’が合うのかな、と。

辰巳:確かに「これは”日本のブドウ”ですよ」っていう主張がそこはかとなく感じられますし。これはこれで一つの手かもしれませんね。
マスカット・ベーリーAという品種への想いは「山梨に根付いていた品種だから」って先週おっしゃってましたけど、元々好きだった?好きになろうと努力した?やってるうちに好きになった?

雨宮:実はフランス留学中一時帰国した際に飲んだ、親が造ったマスカット・ベーリーAが、、、ま、正直飲み込めなかったっす。

辰巳:おぉーっとっ!

雨宮:フランス行く前は普通に飲めてたものが、フランスでいろんなワインを飲んだ後に飲んだベーリーAは「なんじゃこりゃっ!?」。
ただ、マンズ(ワイン)さん、だと思うんですけど、そこで造られたマスカット・ベーリーAの小樽熟成の瓶熟したのを飲んだ時に”枯れたピノ・ノワール”の雰囲気があって、「ぁ、こういう可能性もあるんだな」と。だったらブルゴーニュで経験したことだとか技術だとかをそのまんま使ってみたらどうなんだろう?『ベーリーAをブルゴーニュのピノ・ノワールの伝統的な醸造法で造る』。2003年にフランスから帰った時に初めに取り組んだんです。この時仕込んだのは大丈夫、ちゃんと飲めました笑。最終的には技術になっちゃいますからねー笑笑。

辰巳:お父さんの技術がダメ、とか言ってる?笑。

雨宮:ま、正確には”技術”というより”どこに落とし込むか?”。最終的には(自分は)この方向に着地して間違ってないなってのを確認しました。

辰巳;へぇ、、、。さぁ、このワインに合わせたお料理が登場しました。井村シェフ、これはなんでしょうか?


丸茄子とフォワグラのローストと鶏肉のコンフィ マッシュルームのクリームソース

井村:はい、今日はナスが主役のお料理です。ただ野菜と赤ワインを合わすのはなかなか難しいので、フォアグラと鶏のコンフィを添えて助けてもらってます。

辰巳:それぞれサイズは同じぐらいなんですけど、あくまで主役はナスで、フォワグラは’添え物’なんですね?

井村:そうです。本来はナスをもうちょっと大きいサイズでお出ししてます。鶏はコンフィにした後’瞬間スモーク’にしてあってワインの樽の香りと合わせてみました。ソースはキノコのエッセンスをベースにマデイラ酒と生クリームを使ってます。ワインの完成度が高かったんでちょっと複雑なお料理にしてみました。

辰巳:ではいただきます!このナスもちょっとキャラメラぜみたいになってます?

井村:そうですね、丸茄子をゆっっっっくり焼いてます。

辰巳:ラジオでお料理をどうやって伝えよう?って毎回思うんですけど、、、。

雨宮:このキノコのエッセンスが入ってるのがいいですね。マスカット・ベーリーAってちょっと「土臭い」って表現されることもあるんですけど、それとキノコが”アーシー”ってとこでマリアージュのバランスが取れてる。

辰巳;ワインのアタックもかなり強めだと思うんですけど、このお料理はそれをきちんと支えてる。

井村:こういうしっかり目のワインにはちょっとクリーミィな方が合うのかなぁと思いました。

辰巳:このワインはここ近年造りは同じ?以前飲んだ時はもうちょっと柔らかかったイメージがあるんですけどこれはしっかりしてる。ま、僕の曖昧な記憶の中のイメージですけど。

雨宮:2017年自体がちょっと全体的に硬めに仕上がる年だったんですね。それもそうだし、このヴィンテージの樽熟成は28ヶ月と長いので。

辰巳:いいブドウができたから熟成は長いほうがいいという判断?

雨宮:いや、2019年に(僕が)コンテナから落っこちて骨折したんでなかなか瓶詰めとかができなくてそのまま樽に、、、「ゴメンなさい、長くいていただいて」・・・爆。(←周囲もリアクションに困りました)

辰巳:驚!そうだったんですか!?骨折?コンテナから落下?

雨宮:はいそうです、船舶コンテナ。

辰巳:あの、ワイナリーの中で冷蔵庫代りに使ってるやつですよね?

雨宮:2段目の上に登ってるところから脚立がスコーンと抜けてしまいまして・・・かかとから着地してそのかかとの骨が・・・。病院の先生に「こんなに綺麗に2つにパックリ割れてるの初めて見た」って。


「コンテナと呪われた脚立です」談・写真提供共にヨシオさん

辰巳:話聞くだけで痛いなぁ。痛かったよね?

雨宮:痛かったです笑笑。手に酵母を持っててそれをタンクに入れなきゃいけなくて、(落下しても)その酵母は溢れてなかったんでそれをもう1回脚立で登って入れて、その後自分で車で運転して(病院へ)。。。笑笑

辰巳:あの、、、意外と痛みに鈍感なんですか?笑。

雨宮:いえ、骨折経験が何回かあるので、「これ別にかかとが折れてるだけで他はダイジョブだなぁ」と笑。

辰巳:折れてるだけで、、、はぁぁぁ、なんか我慢強いというか野生児というか笑笑。(治るまでに)どれぐらいかかったんすか?

雨宮:3ヶ月。あの、足の裏に米粒1つついてるだけで気持ち悪いじゃないですか。(医者に)「あれが一生続くよ」って言われたんで、ちゃんと(骨が)くっつくまで。

辰巳:それで瓶詰め作業が遅れて?

雨宮:そうですね。他にも醸しが6ヶ月ってのもあったりだとか。

辰巳:長かったんだ?じゃぁその次の年は逆に短くなったんじゃないですか?

雨宮:いやっ、そういうのに慣れちゃうとそういうふうな流れになっちゃうので。この年はルーティンが勝手にずれちゃった笑笑。

辰巳:ふぅぅぅん、そっかそれで(このワイン)しっかりしてるのか。よかった、気のせいじゃなくて笑。

雨宮:いつもより若干樽が強かったりだとか逆に果実味が熟成長いことで少し削られたりだとか、、、。

辰巳:なるほどー。ではここでリクエスト曲を聴きましょうか。今日は中島みゆきさんの「ファイト」?なんで?骨折した時にかけてたとか?爆。

雨宮:一番忙しい時期、この曲を聴きながらテンション上げて仕事するんです。

辰巳:では聴きましょう、中島みゆきの「ファイト」。


中島みゆき「ファイト」(1994年)
https://www.youtube.com/watch?v=Jpp8SO4YHjE
(こちらの配信は吉田拓郎Ver.)

辰巳:あのー・・・どこかのタイミングで聞こうと思ってたんすけどー・・・。骨折ったり病気したりね、、、看病してくれる人はいるんすか?

雨宮:にぇ(←なんですかねこのリアクション?実はロシア人?)笑、野生動物と一緒で、”自己中、治るまで動かずに止まってる”という爆。

辰巳:結婚して、ませんよね?

雨宮:あー独身です(←もちろん的ニュアンス)。

辰巳:(訳ありで)結婚できない人がいるとか?

雨宮:にぇ、なかなかやっぱりアレですよね。あのーーー、多分無理だろうな、ま、結婚は合わないだろうなと。

辰巳:それはなんとなくわかるけど、ぁw、わかっちゃダメなのか?笑。でもブドウ作り、ワイン造りって代々受け継がれるもんじゃないですか?兄弟は?

雨宮:妹が。兄もいますけどちょっと体壊しちゃってるので。あとは姪っ子一人。

辰巳:まだ若いからいいけどね、これまで造ってきたベーリーAのノウハウなりワイナリーの歴史をどう未来につなげていくか?、は考えないんですか?

雨宮:アレですよね「やる気のない身内より熱意のある御他人さん」の方がベターのことは多いと思うんですよね。料理の世界もそうですよね?世襲ってあんまりないですよね?

井村:そうですね、料亭とか日本の文化の中ではありますけど。でもフレンチもなくはないです。

辰巳:ダイヤモンド酒造の歴史はもう50年以上でしょ?

雨宮:おじぃさんの代からだと90年ぐらい。

辰巳:そっかそっか、じゃ、これをこの先どうやってくか?
今度新たにマスカット・ベーリーAの協会というか組織を立ち上げたんでしょ?

雨宮:はい、「マスカット・ベーリーA」を短くしてMBA、そしてこれを川上善兵衛さんが作出して登録したのが1927年。これを旗本に全国のマスカット・ベーリーAの生産者さん醸造家さんを結んでみんなで集まって情報交換して技術の共有を進めてよりよいものを造ろうという生産者集団をスタートさせました。
(↑「MBA 1927」:https://m.facebook.com/pages/category/Winery-Vineyard/MBA-1927-108204391556926/

辰巳:その旗振り役?言い出しっぺ?

雨宮:っというか、こんだけ全国でマスカット・ベーリーAを作ってるならそれを一度東京に集めて「生産者と消費者も一緒になって”味わう””楽しむ”をして確認したいな」という夢を共有して今に至ります。

辰巳:ではその話を来週の最終回に詳しく伺いたいと思います。今月のお客様は勝沼のダイヤモンド酒造、雨宮吉男さんをお招きしております。ではまた来週!

全員:ありがとうございました!

(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載にはそれぞれ時差があります。また、コロナ禍における様々な政府の対策によっては「ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢」のメニュー提供等が変更になっている場合があります。詳しくはお店にお問い合わせください。)

News Data

ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2021年8月19日放送回

収録会場

ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/

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