ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2021年8月12日OA

2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
8月のゲストは山梨県勝沼の株式会社ダイヤモンドワイナリー3代目の雨宮吉男さんです。約3年、ボルドーとブルゴーニュで勉強したヨシオさんが帰国後特化したのはカベルネ、メルローやピノ・ノワールではありませんでした。「Mr.マスカット・ベーリーA」と呼ばれる男の決断とは?(全4回 2回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/

辰巳:8月のお客様は山梨県勝沼の「ダイヤモンド酒造」雨宮吉男さんです!

全員:よろしくお願いします!

辰巳:今週からいよいよマスカット・ベーリーAシリーズということで。今日はまずロゼをお持ちくださいました。ロゼはこの1種類だけでしたっけ?

雨宮:あとは新酒と、この遅摘み。うちは特にロゼ用に原料(ブドウ)を買ってるわけではなくって、セニエと言って、赤ワインを造る際酒質を強くするために捨ててしまう初期の果汁だけを使って造ったワインなんです。

辰巳:「Rosado(ロサード)」、これスペイン語?

雨宮:ですね、スペイン語です。

辰巳:どうして?アマリージョ(ダイヤモンド酒造の甲州種で造られる白ワイン)、とかスペイン語多くないすか?

雨宮:”スペイン好き”ってのはあるんすけど、、、。

辰巳:あれ、だって留学はフランスだったでしょ?

雨宮:頷笑。ま、ちょくちょくスペインには遊びに行ったりしてたんで。ま、英語でもフランス語でも日本でもロゼワインのことは”ロゼ”って言うので、なんかしら他に言葉ないかなぁと思ってたらスペイン語の”ロサード”が。イタリア語だと”ロザート”になったりだとか。ま、その中でスペイン語の方をチョイスしました。

辰巳:ではいただきましょう、カンパ~イ🎶


Chanter YA Rosado 2020

辰巳:んー、甘やかだけどしっかりした、ロゼだけど凝縮感のある味わい。美味しいな♡

雨宮:ありがとうございます!

辰巳:今日も「Villas des Marriages 多摩南大沢」で収録しておりますが、こちらの井村貢シェフにも同席していただいています!

井村:よろしくお願いします!

辰巳:このロゼ、どうすか?

井村:なんかすごく上品な酸、ですね。酸っぱいとかそう言う言葉では表せない、でもスッキリでもない。(”上品な酸”としか言いようがなかったらしいです)

辰巳:酸度はそれほど高くはないですよね?落ち着いていてしっとりした、「夏のワイン」っと言うより「秋のワイン」って言うイメージ。これはマスカット・ベーリーA 100%?

雨宮:そうです、そのセニエ。

辰巳:シェフ、セニエってわかりますか?(井村:頷)もう1年間この番組やってますから、ワインだいぶ詳しくなりましたよね?セニエは赤ワインを造るときの副産物、簡単にいうと。
セニエのロゼって総じて美味しくないのもけっこうあるんですけど笑、でもそのイメージが最近変わってきたんですよ。「薄いなーシャバシャバしてるなー」で、結局はロゼ造るためじゃないし、どうなのかなーと思ってた時期もあったんです。が、最近どのワイナリーも美味し~いセニエのロゼを造り始めてるなという感じがします。ヨシオちゃんその辺はどうですか?

雨宮:うちの場合は契約栽培なんですけど、ざっくりいうと昔に比べて(ブドウの)品質が上がってきて、だからそっから出てくるセニエの果汁もクオリティが上がってる、っと思うんです。

辰巳:なるほど。でね、マスカット・ベーリーAというブドウは日本で最も(量が)作られている品種なんですけど、この品質の向上が本当に目をみはる。*OIVにも2013年に登録されて世界でも認められたんですよね。川上善兵衛さんが昭和2年に作ったブドウですけど、その流れを引き継いで・・・ご本人はどう思ってるかはわかりませんが、今”Mr.マスカット・ベーリーA”なんて呼ばれてますけど?
(*OIV参考サイト:https://wine-link.net/pc/dictionary/detail/2310

雨宮:むふふ、まぁありがたいことです。

辰巳:でも若い頃はブルゴーニュで修行してたわけでしょ、何年ぐらい?

雨宮:ボルドーとブルゴーニュで合わせて3年弱ぐらいです。

辰巳:そこで”何を学んでどう活きてる?”

雨宮:マスカット・ベーリーAってヨーロッパ種でいうと、カベルネ・ソーヴィニョンやメルローみたいな「ガッチリ」したっていうより、果実感があって華やかなピノ・ノワールに近いと思うんですよね。ただ僕が行ってた2000年ごろは、まだ「日本から赤ワインを勉強しに行く」ってなるとやっぱりボルドーに行かれる人が多かった。ヨーロッパ種を勉強したくて行ったんですけど、結局帰る頃にはもう「甲州とマスカット・ベーリーAで頑張ろう!」と思ってました。

辰巳:! 向こうで甲州やマスカット・ベーリーAを作ってたわけでもないのに?

雨宮:ブルゴーニュって言うとみんなが勝手に”ピノ・ノワール””シャルドネ”思い浮かべるし、”ピノ・ノワール””シャルドネ”っていうと「やっぱブルゴーニュだよね」ってなる。それを山梨で体現できる品種は何か?って考えた時に結局こうなった。で、僕はどっちかっていうとチーズとかお肉好きなんで、好みが赤ワインに偏ってる。だったら”フルーティでちゃんと食事に合う”っていう品種という意味で選択肢がマスカット・ベーリーAに自然になってったんです。

辰巳:ダイヤモンド酒造は創業何年?

雨宮:ダイヤモンド酒造としては1963年なんですけど、その前は葡萄酒組合っていう形でしたんで、トータルで約90年ぐらいですね。

辰巳:ぁ、もうそんなになるんですか、昭和の初期ぐらい?

雨宮:そうです、おじぃさんの代から。

辰巳:今雨宮家としてのワイン造りは?

雨宮:それも3代目です。最初は地元の農家さんが集まって、”石原田葡萄酒組合”という形でやってました。

辰巳:じゃ、その後皆さんの株を買い取って?

雨宮:そうですね、どちらかっていうと税務署の指導で。ま、各農家さんは1年に300Lぐらい造る権利をそれぞれ持っていたんですけど、結局は「うちはこれぐらいしか造れないから誰かやらない?」とかお金が動き始めちゃったんで笑。税務署が「それじゃ雨宮さん、悪いけどみんなの権利を買い上げて会社として設立してください」ってことで1963年からダイヤモンド酒造があるんです。

辰巳:その時はおじぃさんが中心になって?(雨宮:頷)その時は(ブドウ作りだけでなく)ワイン造りもやってたんですか?

雨宮:会社になった頃は実質親父の方がやってましたけど、社長という存在はおじぃさんでした。

辰巳:醸造はお父さんってこと?

雨宮:そうです。もうその当時は少し人を雇ってましたけど。

辰巳:それが昭和38年、まだ(ヨシオさん)生まれる前ですよね?(雨宮:頷)じゃ生まれたころからワイナリーにいて育って、当然次は継いで「ワインやるんだー」みたいな風に思ってたんですか?

雨宮:んん、まぁぁぁ、、、僕が思うというよりも親類が・・・「そういうもんだよ」って出口を。「もうそこしか通れないよ」っていうような笑笑。

辰巳:で、フランスに行ったのは自ら?親に言われて?

雨宮:その当時は勝沼にワイナリーが24~25社あったんですけど、僕の中ではフランスに行く前から「多分この中でトップ1/3に入ってないとこの先生き残れない」ってことをイメージしてました。「ちゃんとしたワインを勉強しなきゃダメだ、だから行くんだ」っていう決意で行きました。

辰巳:ほぉぉ!?!?!?20代後半でしょ?

雨宮:27の時ですね。

辰巳:じゃぁもう将来的な展望を持って進んでフランスに飛んだと?

雨宮:ですね。親父の時代は”甘口の巨峰”のワインがメインだったんで。僕自身が甘いものが好きじゃないんで、「こんなもので商売が一生続くわけがない、だったら今まで家系の中でちゃんと勉強をしたことのないことをする、本場をちゃんと見てくる」ことをしなきゃなーと思って。

辰巳:そういう意味ではバランス感覚があったというか、先を見る目があったというか、、、。

雨宮:あっ、でも勝沼のどこのワイナリーも(今だ)潰れてないから大丈夫ですよ笑。僕が勝手に想定した妄想でした笑笑。

辰巳:ではお料理をいただいきましょう。シェフ、これはなんでしょう?


アカザ海老・帆立貝・キノコのプロヴァンス風ソテー 香草のサラダ添

井村:はい、先ほど”秋のワイン”っと辰巳さんがおっしゃってたんですけど、僕もそういう印象を受けたので、今日はキノコを合わせてみました。、と赤座海老と帆立貝を香草でまとめたお料理です。

辰巳:先週の甲州のことを”秋のワイン”って言ったんですけど、でもこのロゼもそうかもしれません。夏より秋に合うかも、確かに。
ではいただきます!このグリーンのソースは?

井村:ピストゥ(≒バジルペースト)っていうプロヴェンスの調味料のようなハーブのペーストです。

辰巳:ナッツは?

井村:これには入れてないです。

辰巳:うん、美味し♡

雨宮:美味しいす♡

辰巳:ハーブといえばプロヴァンス、プロヴァンスといえばロゼワインじゃないですか!?白ももちろんハーブ系には合うのかもしれないけど、”ロゼとハーブ”ってかなり・・・。

井村:はい、かなりいいです。

雨宮:海産物とロゼはかなり相性がいいとは思ってたんすけど、ビックリしたのは”キノコとすごく相性がいい!”

井村:キノコの旨味を包み込んでくれるワイン。

辰巳:マッシュルームと舞茸とシメジ、シイタケ?

雨宮:口の中に残ったハーブと噛み締めてる爽やか感とがロゼとすごい合いますね。

辰巳:「ワインと食事のマリアージュ」とはよく言いますが、それぞれが抜きん出るよりも相乗効果でよくならないとダメ。料理も美味しくないとダメなんですけど、ワイン飲んでるとより広がりが出てくるんですよね。この辺がマリアージュの基本だったり、目指すべき方向だったりするんでしょうね。
はい、このワインとお料理のマリアージュ、こちらの「Villas des Marriages 多摩南大沢」にお越しいただくと楽しめます!もうすぐ緊急事態宣言も開けてお酒も飲めるようになると思いますので、開けたらドーーーーっと押しかけてください。
ではリクエスト曲に参りましょう、今日は何を?

雨宮:カナダのバンドなんすけど、「ピンク・マルティニ」ってバンドの、、、今日はロゼワインなんでつい、単純にピンクを選んでしまったんですけど笑笑。曲は「ジュ・ヌ・ヴ・パ・トラヴァィェ」。

辰巳:「仕事したくね」って曲?

雨宮:頷。実はこのマスカット・ベーリーAをセニエしてロゼにしてる頃がいちばん忙しくて”忙しすぎて仕事したくない”っていう気持ちもちょうどこぼれ出てしまったのかな?笑笑。9月の終わりから10月中旬までの時期・・・。

辰巳:これいつ頃の曲?

雨宮:ちょうどフランスにいる頃流行ってたので2000~2003年ぐらいの間ですね。

辰巳:では「ピンク・マルティニ」で「ジュ・ヌ・ヴ・パ・トラヴァィェ」


Pink Martini 「Je Ne Veux Pas Travailler」(1999年)
https://www.youtube.com/watch?v=U6yp07372es

辰巳:いい感じ♪気だるいというよりなんかラクな気持ちになるような。ワインが一層美味しくなる曲だなぁという気がしました。
フランス語はペラペラなんですか?

雨宮:一応・・・は喋れます。

辰巳:シェフも、でしょ?

井村:んもうだいぶ・・・忘れました笑。

辰巳:シェフも(フランス)修行してたんでしょ、親方もフランス人で?(井村:頷)
そういう意味でも、料理界もワイン界も公用語はフランス語なんですよね。僕もフランスは大好きで公私併せたら100回ぐらい行ってるんですけどね(周囲:おぉ~)、なんかだんだんフランスの”巧さ”?
なーんか全部やり込められてる気がして、、、。それからフランスに対してなんとなく(←なんとなくどころではありません)抵抗感爆。やっぱりイタリアとかスペインの方がフランクだなと思い始めてるんですけど、そんなことないっすか?笑

雨宮:んーーー、僕も毎年勉強というか、新しい資材を見に行ったり、今パリでマスカット・ベーリーAを売っていただいたりしてるのでその関係もあって行くんですけど、、、なんだかんだいって僕もスペインに逃げちゃいます💨爆。

辰巳:”ロサード”というネーミングもそこから入ってきたのかもしれませんね。ま、フランスも南西の方はけっこうスペインに通じますし、コート・ダジュールは元々はイタリアでしたからね。ま、でもその混ざってる感じがまたヨーロッパのいいところかなぁという感じもするし。日本も今”縦割り行政”とかですけど、もっとフランクに・・・。そういえば先週も長野が好きじゃないとかなんとか?爆。

雨宮:いや、嫌いじゃないんですけどちょっと「ライバル視」、させていただいています爆。

辰巳:ライバル視はいいことですけどね。長野の人も、なんとなく”甲州”という山梨の名前がついてて「なんで長野で甲州作んなきゃいけないの?」ってな感じになったりして、、、笑。もっとボーダレスになった方がいいと思うし、何度かこの番組でもいってますけど、世界的基準からすると「甲州」という(地名がついた)品種名は今後差し障りがあるんじゃないかと思ってるんですけど。

雨宮:「平成の大合併」の時に『*甲州市』っていう町になってしまったんですよ。その時はお客さんの方でちょっと誤解が生まれてくるんじゃないか?っていうことがワイン業界でも地元でも懸念されてたんですけど、まぁまぁみんなそのまま使い続けてるんで笑笑。
(*2005年11月1日に塩山市、東山梨郡 勝沼町、東山梨郡 大和村が合併され甲州市が誕生しました)

辰巳:フランスでは”ミュスカデ”っていう品種名は(ロワールの)地名だからやめて!”ムロン・ド・ブルゴーニュにして!」って動きになってるんですけど。甲州種だって大阪でも作ってるし山形でも・・・。

雨宮:あとドイツでも、ラインガウ。

辰巳:ショーンレーバー(・ブリュームライン)、行きましたよ。甲州がドイツでどんなになってるか???僕が行った時はもうひとつ元気がなかった笑。あとオーストラリアでも作るとか作ってるとかいう噂ありますけどね。
で、マスカット・ベーリーAは海外で作ってないんですか?

雨宮:アジア圏では台湾、韓国では作ってるとは思うんですけど、、、。

辰巳:へぇ、そうですか。その辺も今後注目していきたいと思います。というわけで今月のお客様は山梨県勝沼、ダイヤモンド酒造の雨宮吉男さんをお迎えしています。次回は赤ワインをいただきながらお話を伺いたいと思います。今日はありがとうございました!

全員:ありがとうございました!

(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載にはそれぞれ時差があります。また、コロナ禍における様々な政府の対策によっては「ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢」のメニュー提供等が変更になっている場合があります。詳しくはお店にお問い合わせください。)

News Data

ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2021年8月12日放送回

収録会場

ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/

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