2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2年目の8月のゲストは山梨県勝沼の株式会社ダイヤモンドワイナリー3代目の雨宮吉男さんです。「日本ワイナリーアワード」創設以来4年連続で5つ星(最高位)を獲得しているワイナリーの3代目。普段はマスクからはみ出る豪快な髭がトレードマークの吉男さんですが、今回は頭髪共々夏仕様、(これでも)小さっぱりしての登場です。(全4回 1回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/
辰巳:さぁもう8月になってしまいました。今日もこの「Villas des Marriages 多摩南大沢」からお送りしていますけど、すごいですこの蝉の声。まぁ環境がいいからですよね、シェフ?
井村:はいそうですっ!笑。もう蝉の穴が(地面に)いっぱい開いてます。
辰巳:これ「止まれ!」って言っても止まりませんからね、今日はこの環境でよろしくお願いします!
今月のゲストは山梨県勝沼の「ダイヤモンド酒造」雨宮吉男さんです!
雨宮:こんにちは、よろしくお願いします!
全員:よろしくお願いします!
辰巳:あの、ヒゲはそのまんまだけど(←いえいえ、これでもいつもよりだいぶさっぱりされてましたよ)、髪の毛けっこう長いイメージだったし。先日まで伸ばしてましたよね?
雨宮:そうですね、この時期になるとわりと汗っかきなんでいつでもどこでも頭が洗えるように坊主にしてます笑。
辰巳:ホント坊主です、あご髭口髭無精髭の方がずっと長い。で、これでマスクするからね笑。
ところでシェフ、ご存知でしたか、ダイヤモンド酒造?
井村:いえ、今回初めて知りました。
辰巳:あのね、日本のワイン界を引っ張っている、特にマスカット・ベーリーAのエキスパートとして非常に有名な方、憧れの人と言っていいかもしれません。ということですが、そのベーリーAは来週以降ということで、今週は白ワインを用意していただきました。こちらは何でしょう?
雨宮:こちらは甲州の下岩崎という商品です。うちの住所は勝沼町下岩崎なんですけど、ま、そこのブドウだけで造ったワインです。
辰巳:少し色が濃いですね。黄色というかちょっとオレンジがかってるというか、、、。
雨宮:甲州ってもともと色が薄い(≒透明?)印象があるんですけど僕は白ワインは黄色だと思っていて、その色を出したいと思ってる方なんです。ちょっと醸造方法なんかを工夫して試しに造ってみたらこれだけ色が出た。ま、特産物ですね。
辰巳:ではまずは乾杯しましょう!
全員:カンパ~イ🎶
CHANTER イグレック「甲州 下岩崎 2020」
辰巳:っんまいっ!ビシッときますねぇ。どうですかシェフ、このワイン?
井村:すごい深みのあるワインだなぁと思いました。甲州はわりとスッキリしたタイプが多いイメージだったんですけど、これはなんか口の中で膨らみがあるというか、独特の苦味がいい意味で膨らむような印象でした。
辰巳;色はね、懐かしいんです。昔こういう感じの甲州けっこうあって、それでいてもう少し甘めで。だから昔ながらの甲州の甘みを抜いたような笑。ざっくりいうとそんなイメージがあるんですけど、”造り”にどんな秘密があるんでしょうか?
雨宮:これはですね、”ホールバンチ(・プレス製法)”。普通だと徐梗してそこからプレスして果汁を取るところを、これは(茎ごと)タンクに入れて漬け込んでからプレス、その後発酵っという手順です。
辰巳:”漬け込む”っというのは?ある程度破砕はする?
雨宮:本当に軽く破砕だけはして、そのタンクで一回休ませて、、、。最近”オレンジワイン”っていう醸し発酵した甲州なんかも出てますけど、これに関しては発酵してない状態で置いといてその後でプレス。ちっちゃな会社だから少量だと自重で潰れて勝手に果汁が出てくることはないんで軽く潰してから。その時にいろいろガチャガチャやってしまうと酸素がたくさん入ってしまうので、その酸素があまり入らない程度に軽くだけ潰してます。
辰巳:そのほか二酸化炭素だったり窒素だったりいろいろ入れるんでしょうけどこれはどうなんですか?
雨宮:破砕の際とそのあとのタンクにドライアイスを少しだけ入れて
酸素の少ない状況を作ってます。
辰巳:ドライアイスを使って二酸化炭素の重みで酸素に触れないという。。。MC(マセラシオン・カルボニック)を目指してるというわけでもないんですか?
雨宮:この状態で発酵までさせてしまうと、ま、僕は「仁丹臭」って言ってるんですけど、薬草みたいな感じの独特の香りがでてしまうので、スッキリするためには発酵させないで、単純に低温でスキンコンタクトをしてから抽出するっていう。
辰巳;スキンコンタクトはどれぐらいの時間?
雨宮:そんなに長くない、3~4時間の話ですよ。
辰巳:あ、そんなもんですか。いやぁ美味しいです、旨味をものすごく感じます。
雨宮:甲州の醸造技術もどんどん進歩して、クリアというか今はどちらかというと柑橘系の香りを引っ張り出すというか、そういうものを抽出する酵母だったりとか技術だったりだとかがあるんですけど。でも甲州って元々皮に渋みの成分、ポリフェノールがたくさん含まれててそれが個性でもあると思うので、まぁ「それを表に出す」かつ「イヤミじゃない」っていう、それが目指すところなんです。
辰巳:え~今日はちょっと難しい話になりがちなんで、シェフ、わかんなかったらわかんないってちょっと挟んでください笑。
では今日のお料理、ぉw、なんか色合わせてきました。ちょっとオレンジがかったブルーテですね?
中西ファームの茄子とトマトのヴルーテ バジル風味
井村:はい、今日はナスとプチトマトを使ったブルーテです。ナスは皮をむいて、オリーブオイルで漬け込むように炒めると色が変わらないでアクも出ないので柔らかい味に仕上がるんです。
辰巳:ではいただきます!どうぞヨシオちゃんも、、、ヨシオ”ちゃん”って笑笑。でもわりとそう呼ばれてますよね?
雨宮:そうですね、地元だと鈴木佐藤より雨宮の方が多いんですよ。醸造業界も雨宮っていう名字が多いんで、大概は屋号で呼ぶか下の名前で呼ぶんで。基本的にはヨシオちゃんでも、ダイヤモンド(酒造)の”ダイヤ”でも爆。今オリンピックで活躍しててちょっと前お騒がせしたダイヤさんがいますけど爆。
辰巳:うん、うん、、、いかがですか?
雨宮:思ったよりパンチがあって、でも基本的に植物性の食材なので、それこそ甲州の主張しない味わいとバランスは取りやすいのかなぁと思います。
辰巳:’主張しない甲州種’ではあるけど、この甲州はわりと主張してる笑。やっぱり造り手の性格?個性?が出てる。だから普通のスープ、よりもトロミとか少しの脂を感じる方が。
井村:そうですね、今日は3種類のナスを使ってます。緑と白と普通の長ナスと。それぞれ個性がありますんで、それをオリーブオイルで炒めました。
あらためて甲州とブルーテの色の同調と3種のナスです
辰巳:このヌルッとしたオイリーな感じがマッチしてる。このシェフなかなかやるんですよ。この1年以上にわたって毎回違うワインに違うお料理を合わせてきてて、このお店のポートフォリオはすごいんですよね。今は緊急事態宣言なので叶いませんが、基本的にこのマッチングはお店に来れば召し上がられるという企画になっております。
雨宮:僕も今ご相伴に預かって「役得役得」っと思いながら笑。
辰巳:(最初に出演依頼した時ヨシオちゃんは)「バイクで来たいんですけど」っと言うので「やめてくださいっ!、ちゃんと食べて飲んで感想を言ってもらわないと困りますんで電車で来てください!」っとお願いして中央線でやって来ていただいてます笑。それにしてもこのお料理美味しいな♡
雨宮:ちょっと残身が強めのワインなんで少し脂っ気があるのもいいのかなぁと思っていて、上に垂らしてるオリーブオイルがマリアージュしてくれているので、その柔らかさがワインの酸味を包み込んでくれる。すごくいいっすね。
辰巳:このエクストラヴァージン(オイル)のちょっとピリッとした辛味も効いていて。これも初めて作ったんでしょ?
井村:そうですね、素材も毎回変わりますし。
辰巳:畑にも足を運んで素材選んで、そこから発想する。。。
あれ、歳はヨシオちゃんと同じぐらい?
雨宮:僕73年生まれです。
井村:僕は72年生まれです、ほぼ同じでしたね笑。
辰巳:今年年男?
雨宮:そうです丑年ですから。
辰巳:なんかね、知り合った頃はもっととんがってて”勝沼を代表する若手”みたいな感じで、多分30代前半ぐらいかな。もう今や重鎮笑。
雨宮:まぁそうならざるを得ない年になってしまい。だいたい協会の中で役がついてしまったり、次の会長がどうのこうのとか笑笑。
辰巳:人生そんなもんですよ。我々の仲間はもうみんな定年退職して”第二の人生”、そういう世代ですから。
辰巳:ではここでリクエスト曲を聴きたいと思いますが、第1回目は何にしましょ?
雨宮:グリムスパンキーの「大人になったら」っていう曲。
辰巳:グリムスパンキー???・・・すいませんちょっと疎いもので・・・笑。
雨宮:甲州も昔ながらの品種ですけど(進化してる)、この曲も昔ながらのロック的だなんだけど、でもちょっとパンチのある曲。「昔を懐かしながら、でも新しいもの」っということでチョイスしました。
辰巳:な る ほ どー。ワインと音楽をマッチングさせたという・・・。
雨宮:残念ながら長野県のバンドということで山梨県民としてはちょっと・・・なんですけど爆。
(←この長野県へのvs感は来週も引きずります)
辰巳:ではお聴きいただきましょう、グリムスパンキーで「大人になったら」
GRIM SPANKY「大人になったら」(2015年)
https://www.youtube.com/watch?v=23ySlAM_9nQ
辰巳:なんか懐かしさのある中に気だる~い感じは、なんかこの甲州に合わせたのがなんとなくわかったというか。昔のフォークっぽい語り”言葉がきちんと伝わってくる”感じがありましたけども。
・・・その間にですね、な、なんか、ケーキをご用意していただきまして。。。
井村:お誕生日おめでとうございます!
雨宮:おめでとうございます!
辰巳:ありがとうございます!そう、誕生日明日なんです(このOA日翌日の8月6日)がまったく予想してなかったけど嬉しいな♡桃がたっぷり乗っかったケーキです。そうそう、今これ見てさー、この数字なんだと思ったら63歳(自分の歳)!ねぇぇぇ、嬉しいような悲しいようなこんな歳なんだという。さっきも年の話したけど俺ヨシオちゃんより15歳も上なんすね。
じゃじゃ、今ろうそくだけ消しますけど番組終わってからみんなで食べましょう。シェフ、デザートも作るんですね?
井村:そうっす、作りたくなっちゃうんで笑。
辰巳:幾つになっても誕生日は嬉しいもんですけど、ただ去年も今年もこのコロナ禍であんまりお祝い事とか非常に難しくなってますよね。だからこういうのはお気持ちだけでもホントに嬉しい♡
さ、来週からはマスカット・ベーリーAの話を聞くとして、甲州に関しては地元としてやっぱりこだわり、大事にしていこうという気持ちはある?
雨宮:そうですね、フランスで勉強してる時も思ってたんですけど。(マスカット・ベーリーAは山梨のものじゃないにしても)やっぱり山梨でワイナリーをやる限りはこの2つの品種をしっかりやる、それによって商売が成り立つ、っていうのが僕たちの”使命”なのかなと思います。だからこの2つの品種にこだわりを持ってます。
辰巳:甲州、栽培は?
雨宮:契約農家さん、うちは第一共選(笛吹農場 御坂西支所 御坂第一共選場)っていうご近所のグループから買い上げてます。
辰巳:自分で手をかけて栽培するのはマスカット・ベーリーA だけ?
雨宮:いや、マスカット・ベーリーAも基本買いブドウです。
辰巳:あっ、そうですか、すごいなそれは。
雨宮:前はちょっとデラとかシャルドネやカベルネ・ソーヴィニョン作ったりしてたんですけど、ま、最終的にうちは甲州とマスカット・ベーリーAに特化していくと決めて、今はヨーロッパ種の方は栽培やめてるんです。
辰巳:で、今は栽培自体はご自分はやってない?
雨宮:はい、農家さんたちには「あーしてほしいこーしてほしい」ということは伝えますけど、でも最終的にはブドウのことは農家さんがいちばんよくわかってるので。
辰巳:畑に手伝いに行ったりすることはあるんですか?
雨宮:そうですね、ありますけど、今はブラック・クイーンであったり、勝沼において赤ワインに合うだろう品種を取り組み始めてるところです。
辰巳:そうか、今取り組み始めてるんだ?
雨宮:なので今農家としてはあり得ない(外見が日焼けしてない)白い状態笑。
辰巳:では次回からはマスカット・ベーリーAの話を中心に伺っていきたいと思います。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載にはそれぞれ時差があります。また、コロナ禍における様々な政府の対策によっては「ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢」のメニュー提供等が変更になっている場合があります。詳しくはお店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2021年8月5日放送回
- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/