「深川ワイナリー東京」「大阪エアポートワイナリー」に続き、8月には「渋谷ワイナリー東京」をオープンさせた(株)スイミージャパン代表の中本徹さんがゲストの2回目。国内各地にワイナリーオープン計画があるものの・・・。全2回後編。
辰巳:今回のお客様は前回に引き続き「深川ワイナリー東京」の中本徹社長です。
辰巳・中本:よろしくお願いしまーす!
辰巳:えー、大阪出身ということでー。なんか私までずーっと大阪弁で喋ってしまってるという笑。
「深川ワイナリー」を5年前にオープンして、そのあと大阪の伊丹空港に世界初のエアポートワイナリーをオープン、今度はもうすぐ「渋谷ワイナリー」をオープンさせようという、ものすごいノッてる・・・
中本:借金だらけなんですけど笑。
辰巳:ワイナリーは各々に醸造責任者を置きつつ、実質経営ですよね?
中本:ぁ、、、はぃ苦笑。そんなええもんやないですけどね。
辰巳:深川、伊丹空港、渋谷にワイナリー作って、そのあとはどんな感じですか?詳しくはまだ言われへんかもしれないですけど。
中本:7月上旬にワインバルが・・・
辰巳:もうすぐじゃないですか!?
中本:もうすっごい焦ってるんですけど。必死のパッチですゎ笑。ビル一棟借りたんです。ミッフィーちゃんの生みの親のディック・ブルーナさんって方がいらっしゃいましてね、すごいいいお爺ちゃんだったらしいですけど。そのお爺ちゃんの世界観を表現したワインバルを(オープンします)。フェリシモっていう通信販売の会社がやっていていて、神戸の大丸の前、もうシャレオツタウンですゎ。元々東京でやりたい言うてて、青山や代官山なんかのちょっとシャレオツなところ探してたんですけど全然なくて。
(補足*中本さんは新卒でフェリシモに入社。中国赴任になって、そのままご自分の貿易会社を設立し、独立しました。今回の神戸の店舗はそのご縁もあって、スイミージャパンが運営しています。
補足**「Dick Bruna TABLE」は7月17日にオープンしました。
https://dickbrunatable.com/?xid=p_nr_2007172_RELEASE_brunatk)
6月21日がミッフィーちゃんの65歳のお誕生日なんですよ。
辰巳:オレより年上やなぁ笑。
中本:そうですそうです。「ミッフィーちゃんでお酒売ったらアカーン」言われてまして、もう一人(?)ブラックベア言う大人のキャラクターがいましてね、「それやったらビールもワインもなんでも売ってえぇよー」と。そのブラックベアをエチケットにしたワインを売ってます。2Fは物販とちょっとシャレオツカフェですね。ここはミッフィーちゃんの世界です(アルコールなし)。
辰巳:そのビルは新築?
中本:僕とおんなじ年ぐらい(築48年?)ぐらいですね。フルリノベしました。
辰巳:醸造所は?
中本:ないんですー。
辰巳:作ったらいいのに。
中本:その話は別途出てるんですけどね。(ここは物件が)老朽化してるし地下もないので無理です。
4Fがギャラリーになってましてね、そこにセラーが・・・。奥をギィィィと開けるとVIPルームがどーんと出てくる。ここはちょっと高いワインも売ろうと・・・。深川ワイナリーやエアポートワイナリーのワインもこっそり販売リストにも入れてまして、(前述の)ブラックべアのエチケット貼ってね。
辰巳:いやぁ、でもワイナリー作って欲しいなー。
中本:来年ぐらいにできる予定です。
辰巳:あそっ!?
注:この後「絶対言うたらアカン」件と「言うたら殺されるー」件の話が続いたため、内容を端折らせていただきます。ご了承ください。(収録日の5月末現在)
(ワイン試飲)
辰巳:えー、ではワインを注いでもらえますか?白ワインです。
(注:中本さんはこの日車なので飲めませんでした)
深川ワイナリー 山形県寒河江市産シャルドネ2018 木樽熟成
中本:山形の我孫子悦郎さん言うお爺ちゃんが作っておられるシャルドネですね。木樽熟成、2018年ですからまだフレッシュです。
辰巳:寒河江って書いてありますね。山形市のちょっと北のほう、さくらんぼで有名なとこ。
中本:さくらんぼ農家さんでもあるし、ブドウ農家さんでもある。うちに出してくれるブドウはいちばんしょーもないブドウだったんですって。それからテレビ取材とかが我孫子さんとこ来られたり、我孫子さんもここに来られた時に「銀座の寿司屋さんにも我孫子さんとこのワイン出てるんですわー」言うたらもう大喜びで笑。
辰巳:ラベルに”GROWN BY ETSURO ABIKO”って書いてありますけどこれは最初から?
中本:そうですそうです。我孫子さんものすごい訛っててー、まぁ私も訛ってるんですけど笑。何言うてるかよくわからんかったんですけど、ただものすごい喜んでるのだけはわかったんですよ。翌年からはいっちばんええブドウくれはるようになったんですよ。
辰巳:今(ワイン醸造用)ブドウは取り合いやからね。山形のブドウ品質いいですからね。全国のワイナリーが山形のブドウを使おうとしてるし、値段も上がってるかもしれませんしね。
中本:そう、結構取られる笑笑。
辰巳:ちなみにこのワインおいくらですか?
中本:税込で3960円、ちょっと高いですー。
辰巳:樽は?
中本:3ヶ月ぐらいですね。
辰巳:これ、わりと早飲みできるタイプですね。
中本:そうですね。うちのワインは”お食事に寄り添う”っていうことをいちばんのポイントとしてますのでね。”ワイン”っていう主張をせんと、和食だったり日常食べていただくものと一緒に合わして「あー美味しいな、リーズナブルだなー」と思ってもらえればー・・・ぁw、
ちょっと高い苦笑。
辰巳:普段のみにしてはちょっと高いけど、そのブドウの値段が上がってきたから・・・それなりの値段で購入しないと農家さんも困るし。
中本:ホンマにそうなんです。農家さんあんだけがんばって、365日がんばってはってね。うちの醸造長なんかも高い高い言うんですけど、、、。
辰巳:400円/kgぐらいとか?
中本:そうですねー、シャルドネとかやったら400円くらいですねー。デラウェアだったら200円台とかあるんですけど。
辰巳:だいたい1kgのブドウでワイン1本できるんですよね。
中本:また瓶代が高いんですゎ、100円ぐらいします。大手さんならもうちょっと安く買えるはずなんですけど、うちは1ケース毎に買いますんでね。ただうちはケグ(飲食店がサーバーにつないで注ぐ生ビールの小さなステンレスタンク)でお出してますんでね、それだと少し安いんですよね、ワイン代だけなんで。
辰巳:ワインバルとかの出口を持ってるとそういうことができると。
安く飲む方法を知ってるワイン好きはそういうの、どんどん利用してますよね。
中本:そうです。ケグはそこでしか飲めないフレッシュ感とか、ガス圧上げるとスパークリングっぽくなるんで。
辰巳:あ、あれケグっていうんですか?
中本:そうです。よく居酒屋さんとかに積んでるアレですね。(1社を除く日本の)ビールメーカーのサーバーの規格に合うので、そちらのサーバーに繋がせてもらって。メーカーさんにはムッチャ嫌がられるんですけどね。
辰巳:ビールメーカーさんの営業の弱みに付け込んでうまいことにやってるなっちゅね笑。
中本;例えばサッポロさんなら(3本のサーバーリースしてもらった場合)こっちエビス、こっち黒生、そしてもう一本は深川ワイナリーのワイン。
(注*ほとんどの大手ビールメーカーは、飲食店にビールを卸すと、サーバーをリースできるシステムが構築されています)
、というちょっとした飲食テクニックを使いまして笑。舌打ちは聞こえる気もするんですけど笑笑。
辰巳:で、ワイン造りに関しては、(中本さんは)口出ししない?
中本:口出しどころか、僕プロのシロウトやと思うてますんでね、もう「ウマいっ!」「マズいっ!」っていうことだけなんで。
辰巳:この傷つけんように「マズいっ!」って言うのがプロ笑。
中本:「ちょっと酸っぱいなぁ」言うたりね笑。
辰巳:でもやっぱり好みの味ってあるんでしょ?
中本:そうですね。ホンマ酸っぱいのはアカンので、今の深川の醸造長はどっちか言うとナチュラルを造りたい(深川以前は滋賀の「ヒトミワイナリーに18年いらっしゃいました)ので、酸化防止剤もほんのちょっとでー自然酵母でー無濾過でー、ちょっと田舎臭い味になったりするんですけど、、、。
辰巳:このシャルドネはでもちょっと違いますよ。
中本:そうですね、これはキリッとしてて。濾過もしてるんです。
うちのワイナリーで無濾過と濾過と瓶内2次の3種類飲んでいただければ、お客さんも喜んでいただけるんで。飲み比べで出したりね。
辰巳:この深川ワイナリーは年間何本ぐらい造ってます?
中本:3万本ぐらいですね。去年造りすぎて4万本で「余っとるやないかー」言うと、今年ちょっと減産で2万本ぐらい笑。
辰巳:まぁワインはね、置いとけるから。熟成すれば大体良くなるからね。
中本:なるほどー・・・。私ら今コロナ禍で資金ぐりが大変なんで、置いてる在庫が全部現金に見えてくるんですよね笑。「早よ売りたいな、早よ売りたいな」で笑笑。
辰巳:売るのに苦労してるところは?
中本:やっぱり日本のワイナリーさんのワインがすごい美味しいので、なんか差別化せんと売れへんなぁと。
辰巳:差別化は大事ですよ、これからはますます。街中ワイナリーとして、みなさんに飲んでもらったり食べてもらったりしてますけど、ワイン単体というか、ワイナリーの特徴としては?
中本:深川ワイナリーはまだまだ地元に知られてへんのですよね。
辰巳:周辺にブドウ畑もないしー、地元感っていうか地酒感がないからね。その分何か別の特徴があったほうがいい感じはしてます。
中本;門前仲町の駅に直結してる赤札堂さんいうスーパーの屋上にブドウを植えだしたんです、100苗。もう3年になるんですけど。
竹中工務店がお金出したるー言うて。
辰巳:そのお金出してくださるー言うのは畑のお金?苗のお金?
中本:そこにビアガーデンならぬワインガーデン(深川ワインガーデン)いう場所がありましてね、500㎡ほどの。最近のデベロッパーさんは景観をちゃんとしてかなアカンいうことで、たまたま知り合いのニューヨークのブルックリンで屋上ワイナリーやってる「ルーフトップレッズ(Rooftop Reds)」のトマスさんってこれまたいい人がいましてね(奥さんが和歌山出身なのでカタコトの日本語を話すらしいです)。彼を竹中(工務店)さんと繋げたら、そのニューヨークの棺桶2個分ぐらいあるプランター(コーネル大学と5年かけて屋上栽培の研究をしてる)を輸入したるー言うて。じゃぁ一緒に研究しよ言うことで、竹中工務店さん、うち(スイミージャパン)、深川ワイナリー、ルーフトップレッズ、が一緒にブドウを作っていこうと。
ブルックリンの「Rooftop Reds 」のHPより(写真はブルックリンの「Rooftop Reds」の景色)
辰巳:ワインガーデン?それは何階に?
中本:3階の屋上です。それで竹中さんがこれで儲けていくビジネスモデルを作りたいらしいんです。屋上緑化を東京都も進めてまして、それに加えて江東区は竹中さんの東京本社があるとこ(東陽町)なんですね。もともと江東区はブルックリンとおんなじで、、、。
辰巳:隅田川を挟んでちょっと下町。
中本:「イースト・ベイ構想」言うてね、”江東”を英語で逆にした、要はカッコよくしただけなんですけど笑。躯体がわりとしっかりしてはる倉庫の上にも置けると。
辰巳:土の厚さは?
中本:ブルックリンのそれ、棺桶は90cmあります。そしてブリックス(糖度)は28度。
辰巳:なんのブドウ?
中本:カベルネとか、シャルドネとか。ニューヨークの異常気象で28度のブドウができたと言って。
辰巳:アルコール度数15%ぐらいのワインできますよね?
中本:そう、それで今$1000のワインが飛ぶように売れてる言うて。ま、希少性と言う意味もあってね。うちも$1000のワイン売れるかなぁ笑。
辰巳:それもすごい話やなぁ。
中本:今大手のデベロッパーさんから「都市型農業をやる」ってことでいっぱい(話)きてます。
辰巳:あーーー、時間なくなってきました。本日のお客様、ワイナリー経営者というより、ホントに起業家なんでね。また喋りが上手だし、非常にスポークスマンでもあるんですけど。今日は秘密の話いっぱいしました。まだまだ話は尽きませんが、こういう”夢を語る”人がいないとね、ワイン業界もどんどん大風呂敷を広げて、そして質が伴っていくといいなと。これからも注目、応援していきたいなと思います。今回のゲストは、スイミージャパンの中本徹社長をお迎えしました。
辰巳・中本:ありがとうございました!
News Data
- 八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」
2020年6月18日放送分
- ワイナリー
(株)スイミージャパン
主にワイナリー・飲食店をプロデュース。2015年の深川ワイナリー、2018年の大阪エアポートワイナリーに続き、2020年には宮下公園跡に渋谷初のワイナリーをオープン。また、地元(深川)の大学と共同で「海底熟成ワイン」を実験するなど、多角なジャンルで展開している。