八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」2019年12月5日放送分

今回のゲストは北海道の岩見沢に10Rワイナリーを構えるブルース・ガットラヴ氏。
ニューヨーク出身のアメリカ人が日本に来ることになったわけとは?もしかしたら今のワイナリーは北海道じゃなかったかも・・・?
氏のルーツも含めあれこれと掘り下げます。それにしても流暢な日本語!
辰巳:え~今回のお客様、なんと、ブルースさんです!笑。
ブルースと言いましてもね、ブルース・リーでもブルース・ウィルスでもありませんっ笑笑。ブルース・ガットラヴ!
辰巳:ブルース:よろしくお願いします!!
辰巳:知らない方もいるかもしれませんが、もうワイン業界の中ではね、大御所の一人と言ってもいいかなぁ笑。
ブルース:いやいや、それはちょっと言いすぎだと思うけど。
辰巳:ブルースは元々栃木県足利のココ・ファーム出身。実は今、この番組は収穫祭前日のココ・ファームにお邪魔して録ってるんです。
多分ブルースいるだろうなと思って来てみたらやっぱり・・・笑。捕まえました!現在は、北海道の岩見沢の方で10R(トアール)ワイナリーを経営されてる。
トアールってのは10Rと書くんですけれど、(畑が)10アールしかないという意味じゃないですよね?
ブルース:そういう意味じゃない。
辰巳:じゃぁどんな意味?
ブルース:ま、”とある場所”の”とあるワイナリー”という意味ですね。
辰巳:「昔々、とあるところにブルースという変なアメリカ人がおりました」みたいな笑?
ブルース:はい笑。受託醸造専門(のワイナリー)なので、いろんな人がワイン造るから、
他のブドウ栽培家が一生懸命ブドウ作って醸造しても、製造元が「ブルース」なのはちょっとおかしいと。透明感のある名前でいいかなと思って。
辰巳:なるほど!この辺がね、アメリカ人でこの感覚は素晴らしいなと思いました。
いろんな人が北海道に渡って、どんどんブドウ栽培初めていいブドウを作ってるけども醸造する場所がない。
だったら各々で作ったブドウを持って来て、そこでワインを造れるような「醸造所」を作ろうというところから始まった・・・。
そのブドウ栽培家が「どこでワイン造ったの?」と聞かれたら「とあるところで。」と答える・・・。
ブルース:はい、その通りです。
辰巳:ブルースさんはアメリカ人で、ニューヨーク出身。幾つの時に日本に来たんですか?
ブルース:26歳、30年前。
辰巳:今56歳?最初に会った時から年上だとばっかり思ってたんですけどね、5歳も年下なんだよね。
ブルース:爆。まぁ老けてる感じですよね笑。
辰巳:日本には何のために来られたんですか?
ブルース:ココ・ファームのコンサルティングです。ココ・ファームの皆さんが声をかけてくれて。
元々カリフォルニアのナパでワインコンサルティングをしてたんです。
辰巳:若干26歳でワインのコンサルティングをしてるなんて!当時からそんな肩書きでやってたんですか?
ブルース:んー、やってたのよねー笑。
辰巳:学校どこですか?デイヴィス?(カリフォルニア大学デイヴィス校)
ブルース:ここを出て、しばらくはカリフォルニアでワインを造ってて、それからコンサルティング始めました。
辰巳:もう20年近いお付き合いなのにあまり聞いたことなかったんですけど、ちょっと掘ってみます。
ニューヨークで生まれでしょ?東海岸から西海岸に行くってアメリカの中じゃ大変なことじゃないですか。ニューヨーク嫌いだったんですか?
ブルース:嫌いってことじゃないですよ。ただワイン好きだった。ニューヨークの大学時代にたまたまワインと出会って、、、。
辰巳:ニューヨークでは何を勉強してたんですか?
ブルース:あのー・・・いろいろ。いろんなことに興味があって次々に勉強して。
けっこう面白い(いい)学校だったんだけども、その時は若くて「何がしたいか?」がわからなくて。
最初は医学部、それからいろんなこと、理科部、歴史、ロシア語・・・。そして有名なホテル経営の部門があって。
辰巳:どこの大学ですか?
ブルース:コーネル大学。
辰巳:!。ローザンヌ(スイス)とコーネル大学は2大ホテル学校ですよね。
ブルース:そのホテルマネージメントの中にワインテイスティングのコースがあった。
田辺由美さん(ワインコンサルタント会社「ワインアンドワインスピリッツ株式会社」代表)とはちょっと時代が違いますけど、同じコースでした(年齢は違いますが、ブルースの方が先だったようです)。
それでワイン好きになっちゃってー。結局大学は植物生理学のディプロマもらって出たんですが(このディプロマあっても)研究や教育者になれても実地ができない。
悩んだ挙句、マンハッタンでワインの流通の仕事を始めた。
ワインショップとかインポートとかソムリエも大昔させてもらってますますワインにハマっちゃって、しまいには自分でワインが造りたくてカリフォルニア。
辰巳:カリフォルニアワインが凄いと言われ始めたころですか?
ブルース:そうです。
辰巳:今ニューヨークもね、ロングアイランドとかフィンガーレイクとかいいの出てますけど、その頃はまだね、東海岸のワインって考えられない時代だったでしょうからねぇ。
で、カリフォルニアに行ってデイヴィスに入り直して?
ブルース:大学院に入って勉強し直して、しばらくはカリフォルニアのワイン業界で働いて、コンサルティングがきっかけでココ・ファームに呼ばれた。
辰巳:ココ・ファームというのは「こころみ学園」という、知的障害者の施設でもあって、(今ではいくつかありますが)そういう施設がワイン造りを始めたという走りでもあるし。
ここのブドウ畑の開墾を始めたのは昭和33年、僕が生まれた年ですよ。
ブルース:僕は生まれる前笑。
辰巳:そんなこともあってとてもご縁を感じてね。本当に素晴らしいワイナリーだと思います。
目の前の最大38度の傾斜の畑!登ったら大変なんです!
ブルース:キッツイです。
辰巳:先日の台風19号で斜面がえぐられて、地滑りで畑がだいぶ被害を受けたのを今日は見てきたんですけど。。。
このココ・ファームに26歳の時に呼ばれた?(ココ・ファーム側はブルースを)よく見つけましたね、?
ブルース:当時はココ・ファームが海外の原料も使ってたんです。カリフォルニアのブドウを仕入れてて、そのグレープブローカーがたまたま私のデイヴィスの時の同級生だった。
その彼がココ・ファームに行ってワイン造りを一通り見せてもらった上で「悪くはないけど頑張ればもっといいものができる」とアドヴァイスをしたら、
園長先生が「どなたか紹介していただけませんか?」、となって『私』に回ってきた。
辰巳:そういうことだったんですか?「日本ワイン」という言葉が今でこそ出てますけど、
以前は「国産ワイン」と言っていて、海外のブドウを使って日本で醸造したワイン、ココ・ファームもその国産ワインも多かったんですよね?
ブルース:そうですね、昔は海外の原料もけっこう使ってました。
辰巳:だからこそカリフォルニアとの繋がりができて、ブルースとの繋がりもできたと。
そして日本にやってきて日本でワイン造りをやってる中で、海外原料はやめようと、すべて日本のブドウでやろうと言い出したのもブルースですよね?
ブルース:そうです、わりと早い時代に。
辰巳:ちょっと、お酒飲みませんか?お話面白いから飲むの忘れてました。まず白からいきましょうかね。
これ実はブルースが造って、ココ・ファームで売ってるワインです。

こことあるシリーズ ぴのぐり2018
ブルース:ココ10Rのピノ・グリ。ココ・ファームと10Rのコ プロデュースです。
辰巳:ご自分でワイナリーを立ち上げましたが、今もココ・ファームの取締役として、毎月のように来られてる。
ブルース:柴田くん(現ココ・ファーム醸造部長 柴田豊一郎氏)たちはもう私は必要ないと思うんですけど笑、たまにはいろいろ話をさせてもらってます。
辰巳:ではカンパイしましょう!
辰巳・ブルース:カンパ~イ!!!
辰巳:う~ん、なかなかふくよかなピノ・グリ!
余市のココ・ファームの契約農家のブドウを岩見沢の10Rのワイナリーで醸造して瓶詰めして、ココ・ファームで売ってる。北海道(10R)でも売ってるんですか?
ブルース:いや、売ってないです。ココ・ファームだけ。
辰巳:アルザス系の、、、。若干残糖ありますよね?
ブルース:若干感じますよね。でも基本的に辛口。やっぱり野生酵母で発酵させるとそういう感じも残るんです。
辰巳:ニューヨークからカリフォルニア、足利から北海道に来て。面白いもんですよねー。本拠を北海道に移し何年になりますか?
ブルース:移住して畑を持ったのは2009年で、ワイナリーは2012年から。
辰巳:ココ・ファームは自社畑が5~6haありますが、そこだけではまかないきれないからいろんなところからブドウを買って造ってる。
そして北海道のブドウも使い始めた。今ある岩見沢もいいブドウができるし、余市のブドウも使ってきたってことですよね?
(ナカザワヴィンヤードの)”栗沢ブラン”も委託醸造で以前からココ・ファームで造ってきた。ブドウ品種はなんでしたっけ?
ブルース:主に4品種。ケルナーとシルヴァーナとピノ・グリとケヴルツトラミネール(さすが、発音が’いいです)。
その4つがメインですけど、そのほかのたくさんの品種を中澤さんたちが加えるから、多い時は13種類のブドウが入ってるんですよ。
辰巳:そんな経験をしながら’北海道のブドウはいい’となった。だから北海道でブドウを作りたい、ってとっから最初は始まったんでしょ?
ブルース:そうです。こっち(ココ・ファーム)にいて、若いスタッフ、柴田君や、当時は曽我貴彦君(現在は余市で”ドメーヌ・タカヒコ”を経営)も一緒で。
ワイン造りは芸術的なセンスもあるから、教えてはきたんですけど決して「上から」ではなくね、だって出てきた質問に私が延々と答えると、それは「ブルースのワイン造り」になっちゃう。
そうではなく、「柴田のワイン造り」だったり「曽我のワイン造り」だったりが見たかった。
だから私がココ・ファームから少し離れたほうがいいかな、私がいる限りみんなの翼が広がらないなと思って。
それで池上専務と相談して、(ブルースの)個人的プロジェクトを始めることになったんです。
辰巳:元々はワインコンサルタント、ココ・ファームにきてその務めも果たして後輩も育ったんで、あとは任せてどっか行こうと。
その選択肢の中にアメリカはなかったんですか?
ブルース:それも考えた。でもそれより可能性が高いのはヨーロッパ。ご存知かと思いますけど、私はヨーロッパ派なんですよね。
アメリカのワインは好きだけどやっぱりヨーロッパ笑。
辰巳:確かブルースの祖父母4人のうち3人がイタリア人で、1がロシア人でしたよね?イタリアの血を濃く引いてるわけで。
イタリアに行きたいとかも思った?
ブルース:イタリアにも一時行きましたよ。次どうしようかってなった時に妻と一緒に、2~3年の間毎年違う地方にね。
それで土地はいくらかどうかとか(調べに)。
辰巳:あ、イタリア移住も考えたんですね。
ブルース:そうです。その次考えたのはフランス。
辰巳:奥さん日本人ですよね?結婚されたのも足利でしょ?
ブルース:ま、奥さんは関西人ですけど。1996年に結婚して。
で、私にあまりお金がないのを知っていて、フランスはボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュ以外だったら安い土地もあるということで、ちょっと見に行った。
ロワールとかジュラとかあの辺ですね。だけどその頃ココ・ファームで北海道のブドウ使い始めて「この(北海道の)ブドウなら自分が造りたいワインができるんじゃないか」と思った。
奥さんと池上専務に相談したら池上専務は「海外行っちゃうとココ・ファームとは離れすぎる」と。それじゃぁ日本で、基本的には大好きな国ですからね。
子供もできて、(子育てには)アメリカよりは日本の方がいいし、ヨーロッパもわからないことだらけだから。
辰巳:イタリア語やフランス語は?
ブルース:いやぁ、今はもう・・・。子供の頃はおじいちゃんおばあちゃんが(イタリア語)喋ってたからなんとなくわかってたんでけど。
あとは大学ではフランス語を勉強してたんですけど。でも言葉はあんまりできないです。
ワイン造りを日本で20年くらいさせてもらった段階で、日本のワイン造りは面白いと思ってたので、ここでよその国に出ちゃうと(日本と)縁が切れちゃうという心配があって留まることにしました。
辰巳:ワイン以外に日本に愛着って、もちろん奥さんもですけど笑、他にもあるんですか?
ブルース:もちろん!日本は素晴らしいところ!大好き!もうこのまま日本にいるでしょうね。
辰巳:日本の国籍は取ってるんですか?
ブルース:永住権は持ってるけど国籍はアメリカ。
辰巳:取ろうとは思わない?
ブルース:実は最近考え始めたんですよね。あまり政治の話をしたくないけど、今のアメリカのこと考えると・・・トランプさんが・・・ゴニョゴニョ。
辰巳:アメリカはアメリカで、そうせざるを得ない部分もあるし、トランプさんがそうだからでなしにアメリカがあーなったからトランプさんが・・・。
ブルース:その通りだと思うけど、自分がそのことを理解すること、自分の国があーだと思うとちょっとショックだよね。
日本が好きな理由はいろいろあるけど(物事の)”優先順位”が正しい気がする。
とにかく日本はどんどんもっと活躍してほしい。
辰巳:日本のワインを応援する、あるいは表現することで、日本を理解するヒントが得られるんじゃないかという想いを持ってずっと応援してるんですけどねー。
ブルース:ありがたいです。どんどんどんどん応援してください!
辰巳:そう、日本ワインにとって今大事な岐路なんですよね。
消費は伸びてますけど、今きちっと方向性を定めていかないと、どうなるかわからないなという部分はあるし、混沌としてきましたからね。
その中でちゃんと語れる人とネットワークを広げていこうと思ってます。ブルースはそういう意味でも大切な一人。
ブルース:ありがとうございます!
辰巳:またこの続きは次回お話ししたいと思います。今日はありがとうございました!
ブルース:ありがとうございました!
辰巳:今日のゲストは北海道は岩見沢市にある10Rワイナリーのブルース・ガットラヴさんでした!

News Data

八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」

2019年12月5日放送分

ワイナリー

10Rワイナリー

北海道岩見沢市栗沢町にあるカスタムクラッシュワイナリー(受託醸造所)。

道内のブドウ栽培家が他所にはないワインへと創り上げていく手助けを通して、ワイン産地としての潜在能力を最大限に引き出すことを目標としている。

http://www.10rwinery.jp

ココ・ファームワイナリー

栃木県足利市に昭和33年開墾、ワイナリー創設は昭和55年。

ワイナリーの目の前にそびえる平均斜度38度のブドウ畑は、障害がある子供達を預かる施設、「こころみ学園」の生徒たちが管理、(ブドウの)生育を見守っている。

https://cocowine.com

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