八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」2019年11月21日放送分

ゲストはサントリーワインインターナショナル、執行役員 生産研究本部長の渡辺直樹さん。入社から三十余年、登美の丘ワイナリーでワイン造り一筋でしたが、現在はお台場のオフィスに単身赴任されています。
今回は会社として、そして業界全体としての日本ワインの展望、未来を期待を込めて語っていただきました!
2回シリーズ後編。

(冒頭からコルクを抜く音、ゲストの渡辺さんが抜栓しています)

辰巳:ぉ、いい音ですねぇ!今日のワインは「岩垂原メルロー2012年」

(そして注ぎます)

辰巳:はい、なんで最初に抜栓したかと言いますと、今日はフルボディの赤ワインです。だから飲む前にちょっと時間を置いたほうがいいかな、と。
今回のお客様は前回に引き続き、サントリーの生産研究本部長、渡辺直樹さんです!

辰巳・渡辺:よろしくお願いします!

辰巳:岩垂原(いわだれはら)って信州の松本の近くですよね?

渡辺:そうですね、塩尻市にはなるんですけども。

辰巳:今抜栓してとてもいい香りがしますが、もう少しだけ待ったほうがいい感じがします。でもちょっと一口だけ舐めます笑。
あーーー、これもどんどん美味しくなってきましたねー。これファーストヴィンテージ何年でしたっけ?

渡辺:2007年ですね。

辰巳:サントリーさんが一回ポートフォリオを新しくして「ジャパンプレミアム」を作ったのが2007年だったんですか?

渡辺:2010年なんですけど、そのタイミングで2007年のヴィンテージをリリース。2年間樽熟してボトリングしてちょっと経ってお出しした。
タイミング的にはちょうどよかったんです。

辰巳:ジャパンプレミアム(お披露目)の試飲会にも行ったの覚えてますよ。当時は桜井さんの時代で・・・

渡辺:いや、その頃は八木さんが社長で桜井さんが専務。

辰巳:長いことサントリーさんとはおつきあいさせていただいておりますが。
やはりサントリーさんとメルシャンさんが日本のワイン界を引っ張り上げてると言っていいと思います。
前回は渡辺さんの生い立ち、愛知県出身だとか、仙台で学生やってたとか、高校時代からウィスキーが好きだったとか笑(当時は飲んでませんと言い張ります)、
そのウィスキーが好きでサントリーに入社したとか・・・。でも今はね、どっぷりワインに浸かって日本のワイン界を牽引されてるんですが。
僕も去年’旧日本ワインを愛する会’を’日本”の”ワインを愛する会’に改名して日本のワインを応援を続けてきて、今のような時代になって嬉しいんですが、
今回はこれからどうなっていくのかなぁとか、現段階でのいいところ、あるいは問題点、今後どうすればいいかの展望も含めて伺えればいいかなと思っております。

渡辺:わかりました!

辰巳:こんな風になるとは思ってました?15年前ねぇ、(生産)量も少ないし、飲む人も少ないし、まぁ2倍3倍くらいにはなるかもしれないけど、
日本を代表する産業になるのかなぁとは思いつつ応援してきたわけですけど。今、量はその頃の倍くらいかな?

渡辺:まぁどこからカウントするかですけど。ワイナリーの数だと今300以上、2010年から比べると倍近くにはなってますよね。

辰巳:ある種感慨深いですけどね。

渡辺:そうですね。多くの方に日本ワインを飲んでもらえてるのはね、日本ワインの認知度が上がったなと思います。
ただまだ日本で飲まれてるワイン全体の5%くらいってとこなのでね、もっと飲んで欲しいなってのはありますね。
10%・・・夢かもしれませんが「日本でいちばん飲まれてるのは日本のワインです」、そこを目指したいなという思いはありますね。

辰巳:日本の場合は人件費も土地も高いしね、輸入した方が安いという、値段の部分では如何ともし難いものがあるんですけど。この辺りはどう考えてます?

渡辺:そうですねー。値段、すごい安いレンジところから始める、というのは正直難しいと思うんですね。
千円以上のところから勝負していく品質と、それに伴う量というものを、サントリーだけでなく、日本のワイナリー全体で構築していくというのが大事だと思うんですよね。

辰巳:先日「畑を倍増する」発表をされてましたけど、今現在はどれくらい持ってらっしゃる?

渡辺:元々登美の丘に自社畑が25haあって、そのほかに山梨の豊富(旧豊富村、現在は中央市)ってとこに4ha、穂坂のあたりに数ヘクタールの規模、
南アルプスの麓あたり、ここは着手したとこですけど10haと、あとは塩尻と蓼科に自分たちの管理する畑を増やしているので。
まぁまだ増えてるところなので正確な規模はアレなんですけど、倍を目指してるところです。

辰巳:最終的にはどこまで?100ha?

渡辺:そこまではちょっとわからないですが、、でもその辺りが目安になるのかな、すぐには無理ですけど。
ただ私たちの山梨のワイナリーの周辺、という所では”甲州”中心でやらせてもらって、塩尻、蓼科ではいわゆる国際品種。
蓼科はかなり冷涼なエリアなので、そこでどんな品種が向いているだとか、この土地がどんなキャラなのかっていうのは、一応甲州も植えたりだとかはしてますが(実験中)。

辰巳:蓼科はどのエリアですか?

渡辺:北、立科の方ですね。東御だとか上田とかそっちに近い。標高が700m超えのエリアです。

辰巳:りんごの糖度が最高に上がる。花の咲く時期に行くと本当に甘い香りがするっていうりんごの一大産地ですよね。

渡辺:日本の場合、りんごのおいしい産地はブドウもいいんですよね。りんごのおいしいところはブドウも美味しいっていう一つの目安になってますね。

辰巳:青森もそうですよね。津軽の岩木山の麓のあたりとか。

渡辺:あそこのリンゴは本当に美味しいです!そういう意味では今日お持ちした岩垂原メルローの岩垂原はリンゴも最高に美味しいですよ。

辰巳:この岩垂原の畑、元々は何が植わってたんですか?

渡辺;ここは契約栽培です。今のメルローを植える前はアメリカ系の品種を栽培してたところですね。2000年前後に植え替えたり色々して。

辰巳:じゃ、もう樹齢も15年以上経ってる。

渡辺:そうですね、このメルローに関しては90年代に棚で植えたもの。


サントリー ジャパンプレミアムシリーズ 岩垂原メルロー 2012

辰巳:ではこのメルロー、さっそくいただこうと思います!
かなりこれ、香りからしてグヮっと締まった感じしますね。
いや、ほんっっとに美味しくなった!2012ってすごくいい年ですよね?

渡辺:はい。夏雨が少なくてね、秋もとても気候に恵まれた。

辰巳:美味しいよ、これーーー(感涙に近い)
ま、メルローといえばボルドーの右岸、サンテミリオンとかポムロールとか連想しますが、ほんとにそっち方面の上質な、でもしっかりしてる・・・。

渡辺:おっしゃっていただいた通り、非常に凝縮感があって、柔らかさもあるけど強さもあって。
アタックから中盤にかけて、切れ目なく重層感を感じる仕上がりになった年ですね。香りの完熟感が味わいの重層感にマッチしてると思います。

辰巳:これは塩尻(ワイナリー)で造ってるんですよね?塩尻のフラッグシップ的な?

渡辺:そうです!

辰巳:どんどん値上がりしてますよね?笑

渡辺:そうです苦笑

辰巳:今いくらです?

渡辺:¥8000

辰巳:もうすぐ¥10000かな笑。最初¥5000くらいだったんですよ、確か笑。でもその価値はあると思います。
これ何本ぐらい造ってます?

渡辺:これは少量ですよ、200ケース、2000本、10樽ちょっとくらいかな。

辰巳:渡辺さんはずっと登美の丘ワイナリーの所長だったわけですが、塩尻の方も?

渡辺:そうですそうです、2007年から。味わいを設計してく責任者っていうんですかね。
と同時にどういうタイミングで収穫するかだとか農家さんとも連携して理解してもらうとか、もちろん塩尻のチームもあるのでこちらとも連携して醸造して。
ま、定期的にワインを見ながらいいタイミングで樽熟してアッサンブラージュして、を2013のヴィンテージまで関わらせてもらってました。

辰巳:今各メーカー、メルシャンやサッポロ(グランポレール)、アサヒ(サントネージュ)もそうですかね、
どんどん畑を広げていって日本ワインを盛り上げようという感じがありますよね。
ま、ビールではライバルでしのぎを削ってますが、ワインの世界では割と情報交換しながら連携してる感じはしますけど?

渡辺:実際そうですね。山梨であれば山梨にある80のワイナリーの連携もあるし、
全国区でみても日本のワインを勉強していこうっていう鹿取みゆきさん(ワインジャーナリスト)や東京大学の東原先生(東原和成教授)もバックアップしてくれて、
もう十何年やっている造り手の勉強会の中でも情報交換したり。栽培方法などのやりとりも最近はやってたりするんですよ。

辰巳:ビールの世界って本当大変、戦争状態じゃないですか!?笑

渡辺:ビールは大変!!!笑

辰巳:どうですかね、日本ワインこれから伸びてきたらどんどん仲悪くなるんですかね?

渡辺:ワインはですねー、世界的にもそうですけど、主役はやっぱり”土地”になってくると思うんですよ。
もちろん”人”って大事な要素ですけど「マネれない」っていうのはやっぱり土地に根付いてくるので、
結局全部オープンにしても(情報開示しても)、同じものって絶対できないんだよね。そういう特徴っていうのがあるんで、ずっと協力してくと思いますよ、私は。

辰巳:山梨、塩尻、余市・・・だんだん産地形成されてきてその地域間の争いってのもこれから出てきそうですね。

渡辺:より活発にはなると思います。

辰巳:そういう競争ってのはいいことだと思いますよ。

渡辺:ほんとにそう思います。ただの”仲良しチーム”じゃダメで、やっぱり競い合うってところは常にあって、それで強くなっていくってのが大事だと思うんで。
そういう意味では(日本の)それぞれの産地でワイン造りをしている中で、その土地の特徴を引き出すワインがこの後どんどん出てきて、そして競い合った中で
「日本のワインって面白いね」とか「日本のワインって美味しいね」って言ってもらえるといいなっていうイメージはすごくあります。

辰巳:異常気象とか、地球温暖化とか今いろいろとある中、例えば函館あたりは今何十ヘクタールという畑が開墾されたりしてるじゃないですか?
サントリーさん、というより渡辺直樹さん個人としてどの辺の産地が興味あったりします?

渡辺:そうですね。北海道は個人的にも非常に高くリスペクトしてて、皆さん素晴らしいところに畑構えてらっしゃいますし、その可能性ってのはすごくあると思います。
一方でもうちょっと南、(我々が関与する土地であれば)津軽ってのは、ブドウが成熟するための期間がしっかり取れる。かつ、成熟時期には気温が下がるので、
ソーヴィニョン・ブランなんかは香りだけじゃなく、ボリュームがあってゆったりしてる味わいが取れる実態が見えてるので、そういう意味でも津軽は魅力があるなぁと思います。

辰巳:そこにワイナリー作ろうかって話はないんですか?

渡辺:笑。さすがにそこまでは笑。ただ契約農家さんが栽培してくれてるブドウを弘前、青森の人たちともっと増やせないかー、みたいな話はしてますよ。

辰巳:今その津軽のブドウは収穫してトラックに積んで山梨(のワイナリー)まで持っていくわけじゃないですか?これちょっとロスな感じするんですけどね笑。

渡辺:そうですね。先を見ればそこ(今回の話では津軽)がワインブドウの産地として認識されれば、その場所にワイナリーっていうのは一つの考え方かなって思いますね。
ただ今は山梨と長野にワイナリーがある。その土地に紐づいてるっていう意味で、そこでどんな品種が向いてる、どういう土地の良さを引き立てられるかっていうのがすごく大事だなっという思いがあるので。

辰巳:例えばね、今サントリーを辞めて自分でワイナリーをやる、なんてことがもし(あくまで”もし”です)あるとしたらどこ選びますか?

渡辺:僕甲州が好きなんでー。。。やっぱり山梨で勝負したいなってのはありますよ。あとは甲州がどんな土地だとどんな風になるのかも興味あります。

辰巳:(日本ワインコンクール2019で金賞とった)島根ワインとか鳥取とか、日本海側の甲州。結構昔から飲んでましたけど、今回評価されてね、最近の象徴される甲州ネタでしたね。一方で山形の甲州もいいでしょう?

渡辺:そうですね、庄内地区の寒いところの。元々の甲州の産地でもありますしね。

辰巳:甲州って山梨だけのものじゃない・・・

渡辺:ま、それもあります、おっしゃる通りで。

辰巳:「甲州」という名前がだんだん邪魔になっていくんじゃないかと。原産地呼称とかGIとか、、、「甲州」と呼ぶのはどうか、という議論は必ずでてきますよ。

渡辺:はい、宿命をちょっと背負ってますね。

辰巳:話いろいろ飛んじゃいましたが。日本ワイン、こんな風になってきてね、この先どうなっていったらいいのか、大きな意味でも、抽象的な意味でも構いませんが?

渡辺:当たり前ですけど、お客さんが美味しいと喜んでもらうワインを造り続ける。それは私達だけじゃなく、日本ワインを造ってるみんながそう思って造ってく。
もちろん飲んでくれる人あってのことですが。「日本のワインを愛する会」の”愛する”という意味。
”愛するワイン”を造っていこうという思いを持った人が、心を込めてワインを造り続けるってことが、やっぱり道を切り開いていくんじゃないかなー、と私は思いますね。

辰巳:根本的な話に戻りましたけど、造ってる側に愛情がないとねってのはわかりますね。

渡辺:ワインって一人で造るもんじゃない、チームみんなの”愛を持って”という想い、そこだと思います!

辰巳:「ワインは愛だ!」笑。という結論になりました笑笑。
今回のゲストはサントリーの生産研究本部長、渡辺直樹さんでした!

辰巳、渡辺:ありがとうございました!

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八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」

2019年11月21日放送分

ワイナリー

サントリーワインインターナショナル
登美の丘ワイナリー(山梨県)でのブドウ栽培・ワイン醸造、新潟県の岩の原葡萄園の運営など、日本ワインの普及・発展・品質向上を牽引するほか、
ボルドーのch.ラグランジュやch.ベイシュヴェルの経営、海外のファインワインの輸入等、グローバルな視野でのワインビジネスを目指す。

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