八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」2019年9月5日放送分

番組初の女性醸造長、清澄白河フジマル醸造所の木水晶子さんがゲストの2回シリ
ーズ(第1回目)。
文学好き少女がワインに目覚め、海外武者修行(?)の末に今の仕事に辿り着くまで
をたっぷりお届けします! 

辰巳:今回のゲストは大阪にできました初めての街中ワイナリー、フジマル醸造所の
、ま、東京支店といいますか「清澄白河フジマル醸造所」の醸造長、木水晶子さんで
す!
木水:こんばんは、よろしくお願いします!
辰巳:きみちゃんきみちゃんとみんなが呼ぶもんだから’きみこさん’かと思ったら、苗字
が木水さんなんですね
木水:そうなんです
辰巳:’木’曜日と’水’曜日、どっちが好きですか?笑笑。あ、そういう話じゃないか笑
木水:どっちも好きです(としか言いようがありませんよね)
辰巳:別にその曜日に生まれたわけじゃないよね?
木水:あ、知らないです
辰巳:えぇ!?自分の生まれた曜日知らない?オレは水曜日なんだ確か。1958年8
月6日水曜日、、だったと思うんだけどなー。
まいっか
この番組初めての女性のゲストでございます。ものすごく若く見えるんですけども、
うちの娘(オペラ歌手の辰巳真理恵さん)よりも年上とさっき聞いてビックリしました。
木水:もうアラサーでもなくなってまいりました笑
辰巳:でもギリギリアラサー・・・(2人で渋笑)はっきりは言いませんが四捨五入すると
。30歳!
木水:ギリギリ!
辰巳:えっと、フジマルに入って何年め?
木水:2015年に東京にワイナリーができるときに入社したので5年目になります。
辰巳:あ、大阪では経験ないんですね。大阪のワイナリーができたのは・・・
木水:(醸造所の稼働は)2013年からです。ブドウ栽培は2010年からやっておりま

辰巳:それでいきなり(東京に醸造所作るから)醸造長にと藤丸社長から言われたん
ですね?
で、その前は何を?
木水:やはりワインが好きで、どんな風にワインが造られてるのかなっていうのが知り
たくなって、
ニュージーランドですとか、アメリカですとか、海外のワイナリーで3年ほどブラブラと
しながら働いてました
辰巳:海外で経験があるという話は聞いてましたけど。つまり、ワインを最初に造った
のがニュージーランドだったということ?
木水:そうです
辰巳:ニュージーランドはどちらに?
木水:マルボロにおったんですですけども、
辰巳:’おったんです’ってどこの言葉やねん!?笑笑
木水:さすが!大阪の方はツッコミが、、、笑
辰巳:マルボロにおったんやね?
木水:はい、おりましたー笑笑
辰巳:どうしてまたマルボロに?
木水:日本でも(ブドウ)畑お手伝いしてたことあったんですが、シーズン通してワイン
造りを見るってことがなかなかできないなぁって思って
辰巳:あ、その前に日本でもやっとったんだ?どんどん遡らなアカンなぁ
木水:それでどこかシロウトでも雇ってくれるとこないかなぁと思って探したときに、
たまたまマルボロのワイナリーさんから「来てもいいよ」って言っていただいて
辰巳:ニュージーランド南島の一大ワイン産地ですよね。マルボロの何というワイナリ
ーだったんですか?
木水:その時は’ニュージーランドワイナリーズ’というすごく大きなワイナリーでして、い
ろんなワインメーカーさんが持ち込んで造るようなところでした。
栽培者もいれば、ワインメーカーさんがブドウを買ってってパターンもあるんですけど

ま、そういうところに季節労働者として雇ってもらいました
辰巳:季節労働者、英語でなんていうんですか?
木水:Seasonal Worker(シーズナルワーカー)ですね。ですから(海外ではあるけれ
ど)フリーターみたいな感じでした
辰巳:フリーターとしてのワイン造り?

木水:そうですね、まさにそんな感じ
辰巳:その前、日本では?
木水:ソムリエの仕事を少しだけしてましてー
辰巳:なるほど!それ先に言ってくれなきゃ笑
木水:最初は銀座のお店にいたんです。ブレッツカフェ(BREIZH Cafe CREPERIE)
というガレット屋さんで働いてまして、
そこの上司がすごくワインが好きだったんです。その人からワインを教えてもらって’あ
、おもしろいなー’と思って
辰巳:それは20代とか?
木水:20代中盤ぐらいですかね。(カフェの)歴は長くないんですが、その後銀座の(
シノワの系列の)ヌガってビストロがあるんですけど、
そちらでもすごくお世話になって。(オーナーの)後藤さんがニュージーランドにご縁が
あったんです
辰巳:シノワといえば、我々よりもちょっと(年)下かな、
オーナーの後藤さんはワインバーの走りというか「飲むならシノワ」みたいなねー、もう
20年ぐらい前かなぁ
木水:日本のワイン会を牽引してきた一人だと思います
辰巳:後藤さんの流れなんだ?
木水:そうなんです「きみちゃん、そんなにワイン好きならニュージーランドに行ってき
たら?」
って言ってくださって行かせていただけることになったという、まぁそっから始まってる
んですけどー・・・
辰巳:ワインを飲むのが好きだった?それとも勉強するのが好きだった?
木水:飲むのも好きなんですが、でもやっぱり、ワインって’ブドウだけでできる’ので、
農業と密接に関わってたり、
造る人たちの考え方がすごく反映されるもので、ちょっと他にはないおもしろさがある
なっと思ってしまってハマってしまいました
辰巳:ではここからはワインを飲みながら話を続けたいと思っていますが、今日はど
んなワインを持ってきたいただいたんでしょうか?

(ワイン登場)

Farmer’s Chardonnay 2018 City Farm

木水:今日は「ファーマーズ シャルドネ シティファーム」というちょっと長い名前の
・・・

辰巳:・・・覚えにくいねー笑
木水:その、シティファームというのが実は農家さんの名前でして、まぁ会社としてやら
れている農家の方々なんです。
私はすごく彼らのブドウが大好きで、いっつも別格と思われるぶどうを届けてくださる
のでワインにも名前を入れたいと。
彼らのブドウだけで造ったものに名前を入れさせてもらっているんです
辰巳:早速飲んでみたいなー

(ワインを注ぐいい音)

辰巳:あーーー、美味そ。えーーー、白ワインですね。
すこーーーし泡が立って濁ってる感じもしますけど、もちろん無濾過?
木水:はい、濾過器持ってない、爆
辰巳:「濾過機買えよっ」っていう前回登場の丸藤葡萄酒工業、大村春夫氏が散々叫
んでましたけど笑笑。濾過器ってそんなに高いんですか?笑
木水:いえ、あのー、お値段のこともあるんですが、如何せんあまりにも狭いガレージ
のようなところで造ってるもんですから、できるだけ物を置かずに。
それほど’長く熟成させて飲むワイン’というよりは、日常に(フレッシュな状態で)気軽
に楽しんでいただきたいということがあって・・・
辰巳:なるほどー。ではいただきましょう、乾杯!!!
あーーー、いいなぁこれ。なんだろな、温度もあんまり冷やさない方がいいと言ってま
したがそれがよくわかりましたね。
この味わいというか、ちょっと苦いような広がりがあんまり冷やすとわかんなくなる
。。。ふぅぅぅん、おもしろい!!!
木水:ありがとうございます!山梨の白州にある畑なんですけど、
あのウィスキーの白州を造っているところ
辰巳:あ、白州は地名だったんだ?
木水:今吸収合併して北斗市ってとこです。標高750mくらいのほとんど長野との県

辰巳:旧は?
木水:多分白州町だと思うんですよね
辰巳:そうか元々は白州町。の中にあるシティファームというブドウ園の方は元々はブ
ドウ農家さん?
それともいろんなもの(果樹)を作っていらっしゃった?

木水:いや、最初から西洋品種、シャルドネとかメルローとかワイン用ブドウだけ造ら
れてます
辰巳:キリっとしてますがちゃんと丸みもあって。マロ(マロラクティックファーメンテーシ
ョン:乳酸発酵)はあるんですよね?
木水:はい、ビンの中で
辰巳:発酵は自然?
木水:はい
辰巳:自然発酵して自然酵母でやって、あとはMLF(マロラクティック発酵)ももちろん
自然ですよね?乳酸菌も入れずに瓶の中で。
なすがまま
木水:すごくブドウがいいので、できるだけ(ブドウ)そのものだけでワインを造りたい
なぁという風に思ってまして
辰巳:酸化防止剤は?
木水:瓶詰め前には温度変化を避けるためにも多少入れてはいるんですけど
辰巳:ほとんどそんな感じもしないし。なんか自然の感じのワインですよね、どっちか
っていうとブドウジュースに近いような。
醸しは?
木水:まったくしていないです。ただ、しっかり絞っておりますので、皮の味わいは多少
でてるかもしれません
辰巳:いわゆるハードプレスとかそういう感じ?
木水:そうですそうです。バスケットプレスと、空気圧式のと両方使ってます
辰巳:下町の住宅街の中にあって、2階建てで1階が醸造所で2階がレストラン、でし
たよね。面積はどのぐらいでしたっけ?
木水:ワンフロア30坪、100平米くらい。ただ、ワインを造る空間も貯蔵する空間も全
部その中にあるので、
そういう意味ではそれほど広くはないかもしれないです笑
辰巳:どうですか?念願のワイン造りを任されるようになって?

木水:はい、長年の農家さんが作り出してきたブドウを預かるので、ものすごく責任を
感じてしまうというか、そういうのはありますね
辰巳:農家さんのところに行っていろいろ話すとか、どこのブドウを買うか、というよう
なこともやってるんですか?

木水:ここ5年くらいは同じ農家さんとつきあわせてもらってますので「もう少しこういう
ふうにできますか?」
とかをお互いに話をしながら、リクエストしあいながらやってるところです
辰巳:これは、垣根?
木水:垣根栽培です、はい
辰巳:収穫はわりと熟してから?
木水:さすが!はい、黄色くなるまで待ってから採ってくださいと(お願いしています)
辰巳:丸み、優しさを重視したようなそんなワインですよね。造り方は様々でいいんで
すよね、それは好みだと思うし。
(このワインは)昔ながらの造りというかね、しっかり熟してしっかりプレスして。そうい
うワインって個性が出やすいんですよね、ブドウの。
なんかキレイにキレイに造ろうとするのもそれはそれでいいんですけど。こう、いろい
ろ飲んでると、個性的なワインが美味しくなってきますね
(もちろん個人的な感想です)
木水:そう言っていただけたら嬉しいです。シティファームの味と思っていただけたらと
ても嬉しい
辰巳:これはちなみにおいくらでしょう?
木水:税抜き2800円でございます
辰巳:若干強気ですけど、ちゃんとしたブドウで造ったシャルドネはそれぐらいしちゃう
んですよねー
木水:やっぱりお互いに造り続けられることが一番なので、、、ブドウを安く造ってもら
うこともしたくないですし、
ワインももちろんコストを抑えながら造るんですけど、妥協しちゃいけないところはしな
いで造ろうって思ってます
辰巳:1年に1万5千本とか2万本とか、それぐらいの(規模でしょ)?
ま、ちっちゃいっちゃちっちゃいけれど、最近もっとちっちゃいワイナリーもあるしね。そ
れなりの本数は造ってる方ですよね
造った分は全部売れちゃう感じ?
木水:そうですね、おかげさまで1年以内には売り切ってっていう形でやってます
辰巳:お店(レストラン)もやってるしね、料理もなかなか美味しいですよね
木水:ゎ、ありがとうございます!
辰巳:レストランは(フジマルの)ワインに合わせた料理という感じで考えてるんですか

木水:そうです。シェフが昨年変わったんですけど、今のシェフになってから産地をブド
ウと合わせてみたりとか。

例えば、山形のブドウをもらっているので(山形のブドウでワインを仕込んでいるので
)山形の肉とか野菜を使うとか、
そういうチャレンジをしてくれててすごく面白いです
辰巳:フジマル醸造所はもともと大阪の心斎橋のはずれにできた街中ワイナリーで、
大阪のブドウを中心に造ってるんですよね?
今でも西日本のブドウは大阪で醸造して、東日本のブドウは東京で醸造するという感
じなんですか?
木水:はい、大阪の方は自分たちで管理してる畑がございますので、そこを使うのが
メインになっております。
あとは近隣の三重ですとか、徳島ですとかそういった西日本のブドウが中心ですね

辰巳:こんな仕事に就くとは思ってました?
木水:まっっったく思ってなかったです笑
辰巳:ほんとは何に?学生時代とか?
木水:あの私、古典文学が好きだったのでー、あの、、、学者になれると思ってはなか
ったですけど、
ずっと本読んでられたら幸せだなーと思ってました
辰巳:ど、どういう?
木水:古事記とか、日本の一番プリミティブな部分がすごく好きで
辰巳:驚驚。へぇぇぇ、そうなんですか!?えらい違い
木水:畑違い
辰巳・木水:それこそまったく笑
辰巳:大学出て最初に就職したのは?
木水:あまり就活にやる気出せなくて、お世話になってた先輩のコネで機械メーカーに
入ったんです笑
辰巳:機械メーカー!?それまたねぇ笑あんまりポリシーがないというかえぇ加減とい
うか笑笑
木水:そうなんです、ずっとそんなふうにやってきてしまいました笑
辰巳:機械メーカーの事務ですか?
木水:営業を。でもふと自分が何をしたいのかなぁと考えた時に、食べること飲むこと
にほんとは興味あるんじゃないかなーと(気がついた)
辰巳:で、スパッと(仕事辞めた)?

木水:はい、2年ほど学ばせてもらったんですけど
辰巳:で、その飲食(前述のガレット屋さん)に入ってー、ワインに興味を持ってー、ニ
ュージーランドに行ったと。
で、ニュージーランドには何年?
木水:最初は1年3ヶ月ほどおったんですが(あ、またどこかわからない方言が)笑笑

そのあとは北半球、アメリカやカナダに行って、またニュージーランドに戻ってきたー、
みたいな感じで
辰巳:アメリカはどこ?
木水:オレゴンに。ピノ(ノワール)が好きで
辰巳:カナダは?
木水:オンタリオ
辰巳:ナイアガラの・・・
木水:そうです、まさに!
辰巳:ペニンシュラ。たくさんワイナリーがあってね。あんな寒いとこでもオンタリオ湖と
エリー湖に挟まれたところで、
冬でも(湖が)凍らないからブドウが生き延びるという、素晴らしい立地ですよね?
木水:アイスワインっていうのがすごく面白いなぁと思って。一度収穫とか絞りにも参
加させてもらったことがあるんですけど、、、
メチャクチャ寒かったです笑。マイナス12度以下じゃないと摘んじゃいけないんです
けど、マイナス26度とかフツーにいきます(観測されます)
辰巳:そうか、ヨーロッパがだんだん温暖化になってきてるし、カナダのアイスワインは
質も量もトップクラスになってるんじゃない?
安いし、ドイツ(の甘口ワイン)に比べたら半額とか?
木水:そんなに違うんですか?
辰巳:(カナダは)とにかく安定して量を造れるじゃないですか。
ま、ドイツの場合はブドウが凍らないと腐らせて使いもんにならなくなっちゃうから、そ
ういうリスクも計算しての値段なのかなとも思うんですけど。
アイスワイン、今でも造ってみたいと思いますか?
木水:いえっ、あれはやっぱり特殊な環境下でしか造れないなということがすごくよく
わかったので
辰巳:人工的に凍らすワイスワインなんかはどうなんすか?
木水:それもワインの楽しみ方の一つだとは思うんですが、なかなかまだ自分の手、
実力が回らないので。今はスティルワインを造るだけでも精一杯。
でも先々にはもっと面白いものというか、ワインに興味を持ってもらえるようなものを
造っていきたいなと思ってます

(話変わります)
辰巳:藤丸君(社長)と出会ったのは?
木水:ニュージーランドなんです。楠田ワイナリーさん(「KUSUDA WINES」楠田浩之
氏がマーティンボロで営むワイナリー)を
後藤さん(前述のシノワのオーナー)に紹介してもらって訪れたんですが、藤丸も何年
も楠田さんの収穫を手伝っていたという背景がございまして
辰巳:’NZつながり’だったわけですねー。日本人が海外で成功してるのはニュージー
ランドですし(ワインで)、まだ増えていきそうな感じもしますし。
実はニュージーランド行ったことなくてね、行こう行こうと思ってながらなかなか時間取
れなくて。
こういう話聞くとますます行きたくなりますね。三次ワイナリーの太田醸造長(当番組
で4月に放送)も長らくいたんですけど、向こうで会いました?
木水:いえ、あまり日本人の方にはお会いしたことはなくて、(日本に)帰ってきてから
実は私もー・・・みたいなことが多いです
辰巳:ニュージーランドねぇ。その辺の経験も全部ワインに出てるんだと思いますが、
この続きはまた次回続けていきたいと思います。今日はありがとうございました!
木水:ありがとうございました!

News Data

八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」

2019年9月5日放送分

ワイナリー

清澄白河フジマル醸造所
大都市ならではの交通網を活かして周辺産地から新鮮で良質なブドウを集める都市
型ワイナリー。
1階はワイナリー、2階はレストランと試飲ルームを併設。街中ワイナリーだからこそ
できる「ワインのある日常」を提案している
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