2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2024年1月のゲストは新潟県の「フェルミエ」代表取締役の本多孝さんです。
まずは「フェルミエ」といえば、のアルバリーニョで乾杯!前半はこのアルバリーニョの話をたっぷりと。
本多さんがワイナリーを興そうとしたタイミングで、決定的な後押しをした’あの’ワイナリーのプロジェクトとは?(全4回 2回目)
辰巳:1月のお客さまは「新潟ワインコースト」の2番目のワイナリーとして、あるいはアルバリーニョの素晴らしい造り手として知られる、「フェルミエ」の本多孝さんです。そしてこの会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフです。
全員:よろしくお願いします!
辰巳:今日はアルバリーニョですね。今はだいぶ増えてきましたけど、日本では最初の頃からですからね。まずはこれで乾杯しましょう。
全員:カンパ〜イ🎶
【エル・マール アルバリーニョ 2022】
https://fermier.jp/products/elmar-albarino/(←こちらのヴィンテージは2023年です)
辰巳:2022年のエル・マール、ですね。「海」っていう意味のスペイン語ですよね?
本多:そうです。
辰巳:僕も大好きな品種で、日本でももっともっと造られればいいなと思ってる品種の一つなんですけど。
井村:キレイな香りしていつつ、味の輪郭もしっかりしてる。
辰巳:2022年って酸味も強い感じしますが。このワインのご説明を。
本多:はい、「エル・マール アルバリーニョ」といいまして、まさに”海のアルバリーニョ”でして。私どものワイナリーの目の前にあります海の砂が堆積した畑です。特徴としては、海のミネラルだったり、酸がしっかりしてる。世界中にいろんなワインがありまして、品種、あるいはそのテロワールがありますが、フェルミエの畑の1番の特徴は重ね重ねですが、海の砂なので、ミネラルの中でも’ガラス’’鉄’っぽい鉱質感が自然に表れたら「このテロワール」かなと。膨よかさとか果実味とか、スペインの方ではあるんですが、それよりもこの「硬い感じ」にこだわって造っていきたいと思ってます。
辰巳:カーブ・ドッチさんから植えたばかりの畑を譲っていただいたって話を先週伺ったんですけど、このワインはその畑?
本多:そうです。この畑からは1000本ぐらい造ってます。他に本家のリアスバイシャスと同じように棚栽培のアルバリーニョの畑もありまして。
辰巳:それはもうちょっと内陸ですよね?以前取材にも行きましたけど。ワインコーストには今はこの畑だけ?
本多:そうです。今また樹齢の若い畑増やしてますけど、それはこれからですね。このワインの方は2005年に植えてますからもう(樹齢)17年になります。
辰巳:でも現地(スペイン)は砂地じゃないじゃないですか。
本多:スペインはだいたい花崗岩なんですけど、現地の方は「シャブレ」って言っていて、表層がちょっと崩れて砂っぽい感じになってる。ま、似てるといえば似てますね。
辰巳:それにしてもアルバリーニョ造ってるとこ本当に増えましたね。
本多:辰巳さんがいろいろ宣伝してくださって、生産者の方がやり始めたってのもあるかもしれませんけど笑。
一応うちの畑が日本で最初のアルバリーニョってことになってまして。この畑のアルバリーニョをお戻ししてカーブドッチさんもやってますし、あとはメルシャンさんとか、小布施さんとか、安心院さんとかはうちの畑の苗を差し上げてます。苗木屋さんにもお出ししてるので、そういうところからも(渡ってるかもしれません)。
辰巳:じゃぁ日本中にアルバリーニョが増えてきましたが本家はフェルミエ?
本多:本家かどうかはわかりませんが笑。日本ワインの応援団長のおかげじゃないですか?笑笑。
辰巳:そんな持ち上げなくても大丈夫ですから笑。でも「日本の気候に合ったブドウ、日本の食事にに合ったワイン」ってのは最初から変わらない主張なんでね。別にフランスワインに似たワインを造る必要はない、と言い続けてるだけ。だんだんとこういう品種に重心が移りつつあるのがすごく嬉しいですね。
本多:うちは白品種はアルバリーニョしか植ってませんで、そのかわしこの品種の2箇所の畑で”畑違い”や”造り方の違い”で6〜7種類造ってます。
辰巳:オレンジや陰干しや樽、、、。
本多:ま、今のところアルバリーニョがうちの畑にはいちばん適してる、海の特性を表現してくれてると思ってるんで。例えばシャルドネなんかは温暖化でなかなか厳しくなってきてるし、「モンラッシェみたいなワイン造りたい」って思ったりするんでしょうけど、でも病気が出るってことは、その土地や気候に拒絶反応を起こしてるってことだと思いますんで。それなら(その土地に)適した品種でヴァリエーションを増やしていった方が、考え方としては僕は正しいんじゃないかなと。
辰巳:(アルバリーニョは)病気は出にくい?
本多:出にくいです、でも出ないわけではないです。。特にこの畑は2016年から有機栽培でやってるんで、非常に手がかかるし病気も出ますけど、続けようと思ったらそういうやり方のほうがいいのかなと。この畑に関してはそうしてます。
辰巳:なるほどー。さ、今日のお食事はなんでしょう?
井村:”カブのひと皿”ということで、白いカブをローストしたものと、「もものすけ」という赤いカブをサラダにしてグリーンのソースはカブの葉っぱを使いました。
【中西ファームのカブの一皿 生ハムのコンディマン】
辰巳:これはどれをアルバリーニョに合わせようと思ったんですか?
井村:ま、両方なんですけど、特に焼いた蕪っていうのは水分が飛んで凝縮された甘味がギュッと出てきますんでそれとアルバリーニョの甘さと合うんじゃないかと。
辰巳:ほんのり奥に甘みを感じる。
本多:野菜のいい甘味ですね。先ほどこのワインのこと”輪郭が”っておっしゃっていただいたんですけど、このお料理と一緒に飲みますと、よりワインの輪郭がくっきりと出てきますね。
辰巳:こっちのほうの「もものすけ」もビネガーの酸とマッチしてきました。
井村:こっちの方は生で食べた方が美味しいような気がするんですよねー。
辰巳:では食べながらリクエスト曲を聴きましょう。今日は何を?
本多:では本日は、サザンオールスターズの「真夏の果実」で。
サザンオールスターズ「真夏の果実」(1990年)
https://www.youtube.com/watch?v=8OCvkuxnIuw/
辰巳:この歌は、、、知ってますよ笑。なんか思い出あるんですか?
本多:大学生の時。まだ野球やってまして。練習が終わってグランド整備をするんですけど、「ぁ、やっと終わったー」でホッとした時に聴いたこの曲が印象に残ってまして。練習の時はわりとポップな曲が流れてるんですけど、、、。
辰巳:そのころ、お酒は飲んでたでしょ?なんですか?ビール?
本多:ビールでしょうねぇ。ワインは飲んでない。
辰巳:自分がワイン造ることになる予感はどっかにあった?
本多:んまさか思ってないです笑。
辰巳:ワイン飲んだことはあったでしょ?そのころはバブルだし、イタリアワインやいろいろ・・・。
本多:いやいやいや、学生の頃はまだですねー。私が(ワイン)飲み始めたのは30歳近くになってからです。
辰巳:驚!ぁ、そうですか。その興銀の頃?
本多:はい。独身寮にいたんですね。昔なんでロビーなんかあって、そこにヒマな人たちが集まってくるんですよ。その時に2人ぐらいワインの好きな先輩がいらっしゃって、買ってこられたワインを「みんなで飲もうよ」、で開けた記憶があるんですけど。初めて「あーワインってこうなんだー」。
辰巳:白?赤?
本多:赤ですね。何を飲んだかは記憶ないんですけど、それで興味が出まして、自分でも金曜のよりに1本買って帰って飲む、みたいのが楽しみになりましてー。そこからですね。その頃飲んでたのは、カリフォルニアだったりボルドーだったり。赤の渋くて重いやつから入りました。
辰巳:赤ワインブームの頃ですね。でもその頃はまだワインを造ろうとは思ってなかったんでしょ?じゃぁどこで?
本多:そうやってワインを飲み進めていくうちに、品種の違いだったり産地の違いだったりヴィンテージや造り手の違い・・・。その多様性が面白いなって。で、「ワイン造りたいな」と漠然とは思ってたんです。
一方で仕事。M&Aのアドバイザーをやってたんですけど、要は経営者に提案をしたりする。でもそうじゃなくて、自分で意思決定して、経営・事業をやってみたい。じゃぁ!って思った時に「自分はワインが好き、ワイン面白い」。
辰巳:だんだんワインに浸食されてったのは事実なんですね笑。
本多:そうですね。いろんな方がよく「『このワインを飲んだから』ワインを造ろうと思った」っておっしゃるんですけど、『この1本』とかそういうのはなく”ジワジワ”です。
辰巳:僕もそうですよ。そんなもんじゃないんですか?「このワインを飲んだから」とかなんかちょっと信じられない爆。「初めて飲んだペトリュスが美味しかったから」とかそんーなの絶対ないと思う笑笑。シェフありますー?
井村:料理に例えるとー。やっぱり「この一皿」じゃないですね、全体像です。楽しそう、やりがいありそうだなと思ったから。
辰巳:やりがいですよね。
本多:そんなふうに思った頃に、カーブドッチさんが「ワイナリー経営塾をやります。対象は新潟でワイナリーを始める方です」と。「このタイミングでこんな機会があるのか!?」
辰巳:出会いですよね。それは新聞記事かなんか?
本多:いや、私は帰省するたびにカーブドッチさんに顔出してたので、その会報誌みたいなのにアナウンスメントがあって。(カーブドッチが)始まって10年ぐらい?のとき。
辰巳:90年代前半ぐらいでしたっけ?(←設立は1992年)
本多:そうですね、今もう30年ぐらいですから。だから運も良かったし、カーブドッチさんの存在がなければ、多分自分で始めることはできなかったんじゃないかと思います。しかも最初に畑も譲っていただいて。
本当に感謝してもしきれないです。
辰巳:ワイン造りを始めようってころはもう結婚されてたんですか?
本多:はい。
辰巳:そのあたりはどうだったんですか?仕事を捨ててワイン造りって、、、。
本多:私の父が銀行員で、家内の父親も銀行員で笑、私も銀行員笑笑。
辰巳:もうガチガチの家系ですね。
本多:”銀行的考え方”からするとですね、多分バッテンなんでしょうね笑、必然性ないですよね。しかも私が銀行に入った頃って、バブルでまだ日本もすごく元気がよかったんで。
辰巳:初任給からボーナスもすごかったでしょ笑。(本多さん否定しません)
本多:今はアップルだとかマイクロソフトが会社の価値っていうか時価総額が世界一なんですけど、その頃ってNTTとか興銀だったんですよ。’そういうところ’に就職したのに、なんでわざわざ農業?ってなるじゃないっすか。でも僕としては、ブドウを作って、そのブドウからワインを造って、そのワインを直接お客様に説明して飲んでもらうっていう「自分のワインを通じてワイン好きの方とつながっていく」。この生き方が世界で一番幸せな仕事なんじゃないか?そう信じて疑わなかったんですよ。
辰巳:それはカーブドッチさんが信じさせてくれた?
本多:自分でそう思ったんです。なおかつ、ブルゴーニュの”ドメーヌ”みたいな形が頭にあったので、「代々家族で継承していく」のはすごいいいことだなとも。いろいろ周りから言われても「だって、これがいちばんいいじゃんっ!」笑。
辰巳:とはいっても反対はいっぱいあったでしょ?
本多:そうですそうです。でもわかってはもらえないので、平行線というか見切り発車。最後は私と家内、ま、家族の問題なんで、我々が「やる」って言ったらもうしょうがないじゃないですか。
辰巳:じゃ、奥様は逆に応援してくれた?
本多:家内は応援、というよりむしろ「自分もワイン造りたい」って感じなんですよ。
辰巳:ほぉぉぉ!
本多:(家内は)元々そんなにお酒強い方じゃなかったんですけど、今ではソムリエの資格も取って一緒にワイン造りを。ところが、辰巳さんもご存知の通り小さなワイナリーなもんですから、私が主にワインを造って彼女は(併設する)レストランのマネージメントやったり経理的、総務的なことをやらなきゃいけないので、なかなか思う通りにワイン造りには携われないっていうことがちょっとストレスになってると思います💦
辰巳:その辺も含め、また次回お伺いしたいと思います。1月のお客様は新潟から「フェルミエ」の本多孝さんにおいでいただいてます。ではまた来週!
全員:ありがとうございました!!!
お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
Fermier(フェルミエ)
https://fermier.jp/
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2024年1月11日放送回
- ワイナリー
Fermier(フェルミエ)
https://fermier.jp/- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/