2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2023年3月のゲストは山形県上山市「タケダワイナリー」代表取締役社長、岸平典子さんです。
4年間留学したフランスから帰国した典子さんは、お父上、お兄さんと一緒にワイン造りを始めます。
決して優しくはない2人の監督でしたが、それよりも厳しかったのは「日本の気候」でした。
(全5回 4回目)
辰巳:3月の4回目です。お客様は山形県、タケダワイナリーの岸平典子さんです。
(いつも通り、この番組の収録会場「Villas des Marriages多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています)
全員:よろしくお願いします!!!
辰巳:すっかり春めいてまいりましたが。山形の方の芽吹きっていつぐらいですか?
岸平:ブドウの品種にもよりますけど、早いのは4月ぐらいからデラウェアが。
辰巳:デラウェア!
岸平:4月の上旬には萌芽しますね。結実も早いですし。デラウェア→シャルドネと白の品種がきて、その後赤の品種が芽吹く感じ。
いちばん遅いのはカベルネ・ソーヴィニョン。
辰巳:連休前ぐらい?
岸平:最近温暖化でちょっと早いので、連休前には芽吹きますね。あんまり早いとドキドキします。
辰巳:カベルネは遅霜の危険とかないんですか?
岸平:そんなにないですね。芽吹きが遅いですから霜も降りた後なので。でも去年は雹が降ってすごく大変でした、ちょうどデラウェアが満開の時に。
辰巳:ゴールデンウィークの後ぐらい?
岸平:そうですそうです。満開の時に氷が当たると結実不良を起こしてしまうんです。
辰巳:花(開花)の時がいちばん辛い感じ?
岸平:辛いですね。あとは展葉2〜3枚の時。だから”芽吹き→展葉→開花(満開)”の時期がいちばん厳しい。去年はデラウェアにとっては厳しい年、
他は比較的順調な年でした。
辰巳:さ、今日は赤ワインでございます。ぁ、これですか。ヴィエイユ・ヴィーニュの2020年、マスカット・ベーリーA。ラベル変わりましたね。
岸平:はい、少しだけ。
辰巳:マスカット・ベーリーAとブラック・クイーンの古木があってね。樹齢80年ぐらい?
岸平:平均すると70〜80年ぐらいの樹ですね。
辰巳:こういう樹が残ってるんですよねぇ。以前は”古木”っていう言い方してたんですけど、今はフランス語の”ヴィエイユ・ヴィーニュ”。
岸平:でも裏(ラベル)には”古木”と記してあります笑。
辰巳:「古木 樽熟成」ね。では乾杯したいと思います。
全員:カンパ〜イ🎶
【ドメイヌ・タケダ ベリーA古木 赤(辛口)2020】
https://www.takeda-wine.jp/SHOP/0208.html
辰巳:古木なんですがわりとスルっといけますね。シェフ、いかがですか?
井村:すごいスパイシー。料理も今日はチャレンジなんですけど、赤ワインに魚を合わせてみました。
辰巳:ロールキャベツみたいに見えますけど魚料理?一応お料理もワインのテイスティングしてから考えるんでしょ?
井村:そうです。今日は(キャベツの)中に真鯛とドライトマトが入ってるんです。ケールのピューレで苦味を足してみました。
付け合わせはラタトゥイユで、こっちにもトマト使ってます。
【真鯛のキャベツ包み 八王子産ケールのピューレ】
辰巳:旨そう♡いただきます!なんかすごい手がかかってそうな料理。
井村:もちろんかかってます苦笑、そのいつも手間かかってないみたいな言い方笑笑。
辰巳:どうですか、典子ちゃん?
岸平:真鯛が黙って食べると鶏かな?ってぐらい味が深いというか濃い。
辰巳:うん、ワインとは?
岸平:ぁ、、、トマトですね。トマトとワインが繋がってます。
辰巳:このグリーンの方、ケールのソースとも合うような。
岸平:そうですね。
井村:この古木の濃厚な感じがケールに合うんじゃないかと。
辰巳:以前はワイン自体もっとガツっとした感じがしたんですけど?
岸平:ワインの造りを少し変えてみたんです。醸し(皮と実を一緒に漬け込む時間)をグッーと長くしてみたんですよ。
辰巳:ぇ、長くした?逆にその方がまろやかになるんだ?
岸平:えぇ、熟成まで長く時間がかかるタンニンだけでガツンガツンっていうよりは、もっと”後からの旨味”を出したいな。日本ワインらしく。
醸し期間を長くとると”後味の旨味が出る、柔らかくなるけど旨味がある”。
辰巳:へぇぇぇ!醸し期間はどれぐらい?
岸平:これは1ヶ月半ぐらい醸しましたね。アルコール発酵が終わった後も分離しないで皮ごと漬け込んでるんです。
辰巳:これは自然発酵?(天然酵母?)
岸平:スタートは自然(発酵)なんですけど、後から(培養)酵母を。置いておくのに危なくないように。
辰巳:途中で(発酵)止まっちゃわないように?
岸平:そうです。
辰巳:発酵もいろいろ管理してるんですね。これは何本ぐらい造ってます?
岸平:これは3000本造りました。
辰巳:いいなぁこれ。すでに看板商品の一つに成長しましたよね。これ3500円ぐらいでしたっけ?
岸平:今は4500円。
辰巳:!・・・。そうかぁ、また気軽に飲みづらくなってきた汗笑。まぁ仕方ないですけどね。
岸平:申し訳ないんですけど。
辰巳:でもそれだけの価値があるワインだと思います。シェフ、お店でこのワイン使っていただけますか?
井村:もちろん使います!これはほんとに気に入りました。
辰巳:このシェフ、ワインはなかなかここまで褒めないんですけどね笑笑。っていうか、わりと全般に「美味し美味し」って言うんですけど、
このワインの反応がいちばん良かった笑。いろんな発想が浮かぶ料理人を刺激するようなタイプのワインですよね。
井村:今話を聞いてて手間暇かかってるんだなっていうのが繋がったので。
辰巳:で(続き)、低温発酵とかしてるんでしょ?
岸平:一応温度管理はするんですけど、自然に任せるところもあって。だから高い時には30℃ぐらいまでは上げます。
辰巳:それでヴィンテージの差も出てくるんでしょうね。
岸平:そうかもしれませんね。
辰巳:2020年はデラウェアには辛い年だって言ってましたけど、ベーリーAは?
岸平:秋から晴天が続いたので、ベーリーAにとってはいい年だったんですよ。
辰巳:そうですか。ではこれをゆっくり味わいつつリクエスト曲を。今日は何にしましょう?
岸平:今日も(ジュゼッペ)ヴェルディです笑。
辰巳:(初回から)ヴェルディ、ヴェルディ、ヴェルディ(←ヴェルディ祭🎶)。ほんと、お好きなんですねぇ。
ワーグナーよりヴェルディ?
岸平:ヴェルディですー。プッチーニも好きですけどやっぱりヴェルディ♪。
今日はオペラ「ナブッコ」の合唱「行け、我が思いよ。黄金の翼に乗って」。ローマ歌劇場の指揮は(リッカルド)ムーティです。
バビロンに収容されたユダヤの民が、祖国を思って歌う。イタリアの”第二の国歌”とも言われている曲です。
辰巳:「Vapensiero」。僕も*六本木男声合唱団で歌ってきたんで大好きな曲。ではお聴きいただきましょう。
(*六本木男声合唱団:https://rokudan-zz.com)
Giuseppe Verdi「Nabucco『Va pensiero』」
(オーケストラ・合唱:ローマ歌劇場/指揮:リッカルド・ムーティ)
https://www.youtube.com/watch?v=MBYmhYxEvUM
辰巳:はい、今月のお客様は山形県のかみのやま温泉にありますタケダワイナリーの岸平典子さんにお越しいただいてますが。
これまで3回放送してるのに話があまり進んでないという笑。
先週はフランスから4年留学してして帰ってきたのに、家族は誰もチヤホヤしてくれなかったというお話でした笑。
シェフもフランスで修行して帰ってきたんでしょ?そういう(先輩風吹かせてた?)感じだったんですか?
井村:僕はいじめたりしないですよ、でもちょっと調子に乗ってる奴もいますから爆。
辰巳:なんかねーちょっとあるんですよね、海外から帰ってくると。
で、典子さん。「(ワイン造りは)なんでもできますよ」となってフランスから帰ってきた。その後どうなりました?
岸平:でもね、いちばん打ちのめされたのは”気候”なんですよ。フランスは、ま、雨は降るけど乾燥しているので、ブドウの栽培も
その土地にあった品種が元々栽培されているわけですし、醸造も(空気が)カラッとしてるので、微生物学的にも管理がラクなんですよ。
変な雑菌が繁殖しない(←大学時代、社会人時代はこちらのプロでした)。日本に帰ってきたのは1994年で、この年は記録的な雨の年。
「何でこんなに雨降る!?」。畑見るともうハイカビにやられてて、ほとほと困ってて。で、醸造すると今度は醸造所に湿気が多いんですね。
ちょっと気ぃ許すと雑菌が繁殖する。『ナンジャコリャ!?』ですよ。だから「チヤホヤしてもらえなかった」ことのショックよりは爆、
この気候の違い、今まで’血を吐く思いで’勉強してきたつもりなんですけど、それがもしかして通用しないんじゃ?って方がかなり焦りました。
辰巳:そうだったんですね。でもそこまではお父さんとお兄さんと一緒にやってたわけですよね?
岸平:これからイチからやり直さなきゃいければいけないのかなと思って。父はいろんな意味で厳しい人で、(私に)教えてはゼッタイくれない。
聞き直すことができないから”見てやって覚えて”。でも決して褒めない、逆に怒るんです。で、どうしていいかわからなくなった時に
兄に「今日これこれこうでお父ちゃんからこんなこと言われて・・・」って相談するといろいろ嗜められました。
「オマエはスタンドプレイが過ぎる(一人で何でもできると思ってるだろ)」と。
「フランスで何を学んできたんだ?どこのワイナリーでも歴史の礎として、石を積み上げるつもりでいいワインを造ってきた」。
「だから”岸平典子というスタープレイヤー”は要らない」。
「土台がないとワインは造れない」。。。何回も言われました。
辰巳:お兄ちゃんもお兄ちゃんで向こう(フランス)で勉強してきて、そうなってきたんでしょうねぇ。
きっと(お兄ちゃんも)お父さんにいろいろ言われて感じたことがあったんだろうなぁ。
岸平:兄は父とはどうしても男対男なので軋轢は強かったでしょうから、それを見込んでか、私にはそういう教え方をしてくれました。
辰巳:でね、家にはお兄ちゃんがいるから、いずれは出ていって他(でワイナリー)やろうという気持ちはあったんですか?
岸平:当時そこはいろいろ揺れていて。一回離れてもいいかもしれないけど、でも最終的には”兄の下で”働きたかった。
兄は社長にもなるわけで、だったら職人的なところは私が背負った方がキレイにまとまるんじゃないかとは思ってました。
辰巳:栽培と醸造、どっちが好き?
岸平:比べられないかな〜〜〜。
辰巳:大きなワイナリーだと専門職でどっちかに分けられる場合があるじゃないですか?そんなこともなく全部一つの流れとして?
岸平:そうですね。
辰巳:で、結婚されたのは日本に帰ってきてどれぐらい経ってからですか?
岸平:その3年後ぐらいですね。
辰巳:だいぶ付き合ってたんですか?(←辰巳芸能レポーター出動)
岸平:いや、付き合ってないです。お見合いしたんですよ。
私が大好きな伯母の飲み友達が山形市の副市長さんだったんです。昔でいう助役?
その人が「ちょっと面白いの入ったから」。
お見合いってもう私たちの時代でも”前時代的”だったけど、でも「一回ぐらい面白いな」で好奇心のまま、よくドラマでも見るじゃないですか。
辰巳:どこでやったんですか?
岸平:その助役さんが館長をしている山寺の美術館笑。
辰巳:風流ですねぇ笑笑。初めて岸平(和寛)さんに会った第一印象は?
岸平:「おっきい人だな」笑。
辰巳:彼のほうが年はちょっと下なんですよね?
岸平:そうなんです。だから男性の方が年下ってのはお見合いとしてもイレギュラーっぽいんですよね。
でも面白いし、すごくいい人だからってんで・・・。
辰巳:彼はどう思ったんでしょう?
岸平:どう思ったんでしょう?笑
辰巳:隣にいるんでね笑、言いづらいんじゃないかと思いましたがあえて笑。(←辰巳レポーター食い下がります)
岸平:最初に助役さんから「どういう人が好きなの?」って聞かれたから「一つのことを突き詰める学者みたいな人」
、っと答えたら「あ、じゃピッタリだっ!」っとか言われて笑笑。
辰巳:最初からレールに乗っちゃった。
岸平:乗っちゃったんです笑。話をしてて’ウマが合う’感じがすごくして。変な意味じゃなく”オタク”という言葉が・・・笑笑。
理系な人好きなんです♡
辰巳:ぁ、理系なんですか?
岸平:んもうバリバリ!工学部の博士課程なんで。修士取ってから博士になるって時。
辰巳:ん?じゃまだ彼が学生の時に結婚?
岸平:卒業して間もない頃ですね。単位取得退学というのがあって、その後(彼は)役所に勤め始めた。
辰巳:そうかそうか。でも役所勤めで(身も)固いし、(ワイン造るような)モノヅクリとは対局じゃないですか。
岸平:そうですね、確かに。でも父は「『転勤がなくてタバコ吸わない人』、だったらお前はずっとここでワインが造れるじゃないか」。
辰巳:それでお父さんも気に入った?
岸平:『転勤がなくてタバコ吸わない』爆。(←大事なことなので2度言いました)
辰巳:今日はこの辺にして続きはまた来週にしたいと思います。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas
des Marriages多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)

有限会社 タケダワイナリー
http://www.takeda-wine.co.jp
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2023年3月23日放送回
- ワイナリー
有限会社タケダワイナリー
http://www.takeda-wine.co.jp- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
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