7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』10月のゲストはシャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘さんです。大学入学時は日本酒に携わる仕事に就きたかったはずなのに。。。様々な出会いと偶然が安蔵さんを”ワイン道”に導く事になります。(全5回 1回目)
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辰巳:はい、今回のゲストはシャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘さんでーす!
辰巳・安蔵:よろしくお願いします!
辰巳:こうやって、改めてお話しするのは初めてかな?
安蔵:そうですね、いろんなイベントの会場とかで短くお話ししたことはあるんですけど。
辰巳:日本ワインを引っ張ってるワインメーカーの第一人者としてこれからの活躍がますます期待されていて、且つですねー、山梨県の「ワイン酒造組合」の会長までなっちゃったっていう。
安蔵:はい、今年の6月にご指名いただきまして、ちょっと荷は重いんですけれども笑、お引き受けさせていただきました。
辰巳:え、今体重キロぐらいですか?笑
安蔵:ま、かなり笑。これからも増えそうな・・・笑笑。
辰巳:そうですか。ではではまずはカンパイを!
ではカンパ~イ♪
全員:カンパ~イ♪♪♪
メルシャン 日本のあわ マスカット・ベーリーA ロゼ
辰巳:「メルシャン 日本のあわ マスカット・ベーリーA」のロゼです。
んんー、柔らかいんですけどちょっっとヒトクセ、面白い酸味持ってますよね?
安蔵:そうですねー。
辰巳:普通のかったるい泡じゃないんですよね。
安蔵:マスカット・ベーリーAの香りが非常にいいのと、タンニン分はそれほど強くないので、口当たり柔らかくて綺麗な酸がありますよねー。
辰巳:僕も大好きなブドウ。ベーリーAを飲むと”The 日本のワイン”、と思うんですよ。どうですか、シャチョー?
ベーやん:いや、ほんとに後味に酸味が”キュッ”っとくる、一口ですぐわかる。そういう印象ですねこれは。
辰巳:今日も井村シェフがお料理を用意してくださってますが、シェフ、これなんですか?
カンパチとリンゴのセビーチェ
井村:はい、これはカンパチを使ったリンゴのセビーチェです。
辰巳:これは南米かどっかの?
井村:そうです。香草だとかリンゴ、キューリ、、、いろんなもの入ってるマリネです。
辰巳:このシェフなかなかいろいろなことしてくれるんです、小ネタいっぱい持ってるんですよ笑。どうですか、このワインとは?
井村:飲み口がすごく奥が深いんで、あえて青魚を合わせてみたんですけども。このワインが魚の甘みを引っ張ってくれるんじゃないかなっていうのを感じたんで。ぜひ召し上がってみてください。
辰巳:じゃ、食べますね。すいませんがラジオじゃ何食べてるのかとかワインの色もわからない状況で、ヒジョーに不自由な番組なんですけど笑、ぜひHPなどで確認してください。実際ここにきていただけると今ご紹介した”お料理とワイン”が楽しめるという仕掛け。自称スバラシイ番組でございます笑笑。今は想像しながら聴いていただければと思います。
安蔵:ワインと合わせるとですね、お魚がすごくシャープになるというか、魚の旨味がすごく良く出てくる感じがします。単独で食べるよりもワインと一緒になることによって”いい相乗効果”。
辰巳:この黄色いのは?
井村:これはニンジンを使ったピューレです。ワインの酸味とニンジンの甘みと調和がとれていいんじゃないかと。
辰巳:さ、今日のゲスト安蔵さん。
今おいくつになりました?
安蔵:こないだの8月で52歳になりました。
辰巳:そうですかー、もっと年上に見られるでしょ?
安蔵:笑、54歳ぐらいに笑笑。けっこう白髪が増えてしまったので。以前は年よりも若く見られることが多かったんですけど、最近年より上に・・・。
辰巳:なんか貫禄がつきましたよね。最初に会ったのはフランスから帰った後ぐらいですかね(フランスのお話は後述します)。
安蔵:そうですね、30歳半ばぐらい。
辰巳:何度かポツポツとお会いしたりしてたんですけど。なんだか最近重みを・・・。
安蔵:重みもあります笑。
辰巳:メルシャンに入社されたのは何年?
安蔵:1995年、今年ちょうど四半世紀ですね。
辰巳:田崎真也さんが世界最高ソムリエを獲った年。
安蔵:そう、僕が入社してすぐで、「なかなか*こんなの見られないから行っといで」って(会社に言われて)会場の高輪プリンスホテルで観てました。
(*世界最優秀ソムリエコンクール:3年に1度開催されるコンクールで、開催国は持ち回り。1995年は日本で開催されました。)
辰巳:へぇぇ、観てたんですかー?、羨ましいなー。だってそんなの観てるだけで語り草になりますよ。
どうですか、当時のこと思い出してみて?
安蔵:フランス代表の方と田崎さんが切磋琢磨というか、ワンツー争ってる感じがすごく出てまして。最中、(決勝戦のブラインドで)どちらかが”レセルヴァ”、どちらかが”グランレセルヴァ”と答えたんですけど、「すごいビミョーなところまでコメントされるんだな」っていうのがとっても印象的でした。
辰巳:確か、オーストラリアのシャルドネかなんかで差がついたんでしたっけ?
安蔵:そうです、セミヨンとシャルドネで答えが分かれて。
辰巳:それで勝敗がついたとかって後日田崎さんから聞きましたよ。もう歴史の1ページですよね。
辰巳:それからメルシャンでずっとワイン造りを担当されてきて。どうですか、25年やってきて?
安蔵:25年前は同級生に「どこに就職したの?」って聞かれて、当時”日本ワイン”って言葉もなかったですし、「山梨でワイン造ってるんだよ」って言うと、すんごい不思議な目で見られた笑。「日本でワイン造ってんのか?」みたいな。
辰巳:でも1995年ってのが一つの経点で98年にピークがきて、ある意味上り調子になってきたきた頃ですからね。でもどうしてワインをやろうと?
安蔵:いろいろ経緯はあるんですけれど。大学生の時は微生物が専門で、、、。
辰巳:東大の農学部?
安蔵:(農学部)農芸化学科。そこで微生物をやってまして、当時は日本酒の方で国税庁に入ろうと思ってたんですね、お堅いところに。
当時国税庁の研究所が東京の王子にありまして、そこに行きたいなぁと(現在は広島県にあります)。ひょんなとこから日本酒の全国利き酒大会ってのに東京都代表で出まして、なぜか!3位をいただいたんです。なのに!その時優勝した人なんかと話していたら、「安蔵さん、どんなワインを飲むんですか?」って。。。みなさんワインがお好きな方々だったんです。
辰巳:日本酒の人たちは実はワインが好きだったっていう・・・。
安蔵:笑、そうなんです。で、自分はその頃あまりワインを知らなくて、「へぇ、ワインって面白いんだ?」って思って、ちょっとワインに興味を持ったんです。その頃ちょうど英語を習おうと思っていて、そういう情報誌を買ったんですね。そこから英語の教室を探していたら、ワインの学校の広告が出てまして、「アカデミー・デュ・ヴァン」っていう、、、なんか面白そうだなと思って。将来国税庁に入りたいとは思ってたんですが、その前にちょっと行ってみようかなーと。
辰巳:それ、大学生のとき?
安蔵:(大学)院にちょうど上がったところ。
辰巳:じゃぁ大学には6年?
安蔵:はい、その合間にアカデミー・デュ・ヴァンに。
辰巳:けっこう(受講費)高いでしょ?国立の学校の授業料に比べたらべらぼうに!?
安蔵:笑。親には「英語を勉強する」と言って、そのお金で笑笑。
辰巳:(コソコソ話)親に嘘をついてー笑。
安蔵:はい、週1回。いやぁ、おもしろかったです。4月から通ったんですけれども、その8月にはフランスにひとり旅。ワイナリー巡りをして、それでワインをやろうと(決断)。”発酵”という意味ではすごく近かったんで、そこで大きな転換が・・・。
辰巳:いやいや、ちょ、ちょっと待ってください。あの、おもしろかった?美味しかった?な、なんなんですか?それまで日本酒やろうと思ってたのになぜワインに惹かれた?
安蔵:あの頃はですね、アカデミー・デュ・ヴァンってのは渋谷駅近くの雑居ビルの地下にあって、そこで同級生ができたわけですよ。
辰巳:可愛い女性がたくさんいたわけですね?笑。
安蔵:可愛い女性もいましたね笑。年上だったんですけどね。
辰巳:女性?
安蔵:女性。JALの・・・
辰巳:大体そうなんですよね笑。僕知ってる人かもー、なんて方?
安蔵:いや、何人もおられる爆。
辰巳:当時ねー、ワイン会とか行くとJALの”飛んでる”皆さんが必ずいるんですよ。そういう人たちに引っ張られて、、、。
安蔵:そういう人たち、も、です笑。大学の先生とかもおられて。授業が終わったあと飲みに行くのがすんごい楽しくてですね、そうこうしてるうちにすっかりワインにハマってしまって。。。
辰巳:割と流されるタイプなんですね爆。
ベーやん:ね、聞いてるとなんかいい方にいい方に、嗅覚で動いてる感じが笑笑。
安蔵:日本酒の大会断ってたら多分、、、ワインの方にいかなかったかもですね。実はこの大会は卒論の前日で、これも教授には黙って行きました笑。
ベーやん:いろいろと嘘をつくんスね爆。
辰巳:嘘をつくのと黙ってるのはまた別かもしれない、ま、どっちが罪かはわかんないけど笑。
その頃のアカデミー・デュ・ヴァンの先生はどなた?
安蔵:原先生、今は事務局長をやられてるのかな。当時はその原先生のデビューのクラスだったから。1993年でした。四半世紀以上前ですね。
辰巳:あの頃はね、まだバブルが弾けて間もなかったけど、日本に”イタメシブーム”とかあって、ある程度ワインが広まってきてわりと面白くなってきた頃でもありますよね。
安蔵:そうですよね。ワインのそういう雰囲気を感じられる時代でしたね。
辰巳:あーそれでメルシャンに?
安蔵:はい、その流れで。
辰巳:「自分はワインをやるんだ、造るんだ、一生の仕事にするんだ!」みたいな?
安蔵:そうですね、”自分が造ったワインが瓶に詰まって商品になる”ってところに非常に惹かれまして。お酒の研究をされる方もいるんですけど、自分は研究よりは現場で造るほうが性に合ってるのかなぁと、その時点で思いました。
辰巳:ちょっとこの辺で安蔵さんのリクエスト曲をかけようと思いますが、なんにしましょ?
安蔵:はい。じゃぁフランスの曲なんですけど、「J’ai encore reve d’elle 」っていう「Il etait une fois」っていうグループの曲を。
辰巳:シャンソンですか?
安蔵:そうです。
辰巳:聴いたらわかるかな?ではお願いしまーす!
J’ai encore rêvé d’elle
辰巳:この曲は何か思い出が?
安蔵:会社から派遣でボルドーに4年ほどいたんですけれど、その頃、2001年ぐらいにフランスのある番組で使われていた曲で。この曲自体は1975年の曲なんですけど、その番組で使われたことで大ヒットしたんですよ。
辰巳:いやぁ、知らなかった。日本ではあんまりヒットしなかったんじゃないかなぁ。安蔵さんは今の曲聴いてフランス語の歌詞わかるんでしょう?
安蔵:歌詞の内容を読んで把握しているので・・・。
辰巳:フランス4年も住んでればペラペラでしょ?
安蔵:いやいやいや笑。
辰巳:これがいちばんカッコいいな、羨ましいなと。フランス語の響きが昔から好きだったんスよ。美しい発音で気持ちいい!僕もね、仏文科に入ろうと思ってたんですけど、ぜんぜんフランス語の単位が取れなくて諦めた経緯がありますから笑。そういう意味ではフランス語に対してものすごいコンプレックスがある。
安蔵:笑笑。
辰巳:じゃぁ、フランス時代の話は長くなりそうなんで次回にしましょう。
で、東大の農芸化学科に入って日本酒をやりたかったのは聞きましたが、元々は何になりたかったんですか?
安蔵:ちょうどバイオテクノロジーが流行していた時期でもありますし、*坂口謹一郎先生という方が書かれた日本酒の本をひとり旅をしていた時にずっと読んでまして、”お酒って面白いな”って。
(*坂口謹一郎:https://ja.wikipedia.org/wiki/坂口謹一郎)
辰巳:でも大学に入った時って別に日本酒を専門にしようとは思ってなかったんじゃないですか?
安蔵:えっと、バイオテクノロジーはやりたいと思ってたんですけど、大学1年の時に*岩波新書の「日本酒」という本を読んで、それで”お酒”をやろうと思って。もう大学1年生でハタチを過ぎていましたんで笑。
(*岩波新書 日本酒 https://www.iwanami.co.jp/book/b268153.html)
辰巳:(浪人)だったんスか?
安蔵:はい、2年ほどかけて入りましたんでハタチで東大の門をくぐりました笑笑。
辰巳:だから入った頃からお酒は飲めたと。
安蔵:はい、合法的に飲めました笑。
辰巳:ご出身は?
安蔵:茨城県の水戸です。
辰巳:水戸も最近ワイナリーできてきたみたいですね。水戸に対する思い入れとかはあるんですか?
安蔵:水戸ってすごくいいところ。ただワインをやるなら山梨、ブドウがないとできませんので。もう山梨に家も買いまして、本籍地も昨年移しましたんで。それまでは移す理由もなく水戸のままでした。特にこだわりもなかったんですけど、、、。
辰巳:じゃなんで突然移したんですか?
安蔵:6年ぐらい前に(山梨に)家買ったんですけど、本籍地の戸籍謄本とか取る時にいつも親にお願いしなければならないのが面倒だということで、そろそろ移そうかと。
辰巳:奥様(安蔵正子さん)も醸造家なんですよね?今はもう丸藤葡萄酒工業の醸造責任者ですよね?
安蔵:醸造責任者は大村さん(丸藤葡萄酒工業代表の大村春夫氏)ですけど。まぁ現場でやってます。
辰巳;ご夫婦ですごいワインを造ってるっていう。。。
メルシャンのチーフワインメーカー、そしてゼネラルマネージャーの安蔵光弘さんにお話を伺ってますが次回は何お話ししていただこうかな?
(ベーやんに)何聞きたいですか?
ベーやん:フランス時代の話と学生時代の話をもうちょっと。
辰巳:わかりました!飲みながら喋ってると時間経つの早いですね。次回も楽しみたいと思います。今日はありがとうございました!
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組のOAとこの原稿の掲載には時差があります。現在提供されているワインとお料理はお店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2020年10月1日放送分
- ワイナリー
シャトー・メルシャン
https://www.chateaumercian.com/aboutus/安蔵光弘
https://www.chateaumercian.com/aboutus/winemaker/- 収録会場
★ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/