ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2020年10月8日OA

7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』10月のゲストはシャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘さんです。今回は「きいろ香」が誕生するきっかけとなった”甲州の香りの発見”のお話をたっぷりと。後半は、東大時代に受講していた意外なゼミのことなど、安蔵青年を語ります。(全5回 2回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/

辰巳:今月のゲストはシャトー・メルシャン、ゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘さん。今日は2回目です。
よろしくお願いしまーす!

安蔵:よろしくお願いしまーす!

辰巳:さ、まずは飲みましょう、カンパイ!飲みながら話すのがいちばん楽しいですよねー。

(全員で乾杯!)


シャトー・メルシャン 玉諸甲州 きいろ香 2018

辰巳:今日は、シャトー・メルシャンの「玉諸甲州 きいろ香 2018」です!最初このワインが出た頃はビックリしましたけど、今はね、甲州(種)の1つのジャンルとして確立したって感じ、どうですか、ベーやん?

ベーやん:いや、初めてですよねー、こういう感じは。香りもブヮっと来るわけでもなくー、ほんのりする感じで、、、。

辰巳:黄色い香り、あるいはソーヴィニョン・ブランの香りという表現もされてましたけどね。
シェフ、どうでしょう?

井村:パッションフルーツのような香りが奥の方に感じますんで。

辰巳:ね、このワインを(前もって)味見して料理を考えるんですか?

井村:はい。だから料理も”黄色い”ものを使ってます。目の前に・・・


秋のキノコと真鯛のエスカベッシュ

辰巳:レモンが見えますけど・・・。

井村:薄く切ったレモン使ってるんです。今日は真鯛とキノコでエスカベッシュに仕立てました。

辰巳:洋風南蛮漬けですね。

井村:そうですね、それにちょっと山の香りをプラスして。香りの部分はレモンを。キノコは舞茸とマッシュルームと椎茸としめじ、っていう一般的なものなんですけど。

辰巳:それにビーツのソースをちょっと垂らした・・・。

井村:レモングラスとレモンバームをちょっと香りに隠してあります。

全員:いただきまーす!

辰巳:この、ちょっとマリネしたキノコすごく合いますね、不思議な感じ。安蔵さんいかがでしょう?

安蔵:とっても美味しいです。シェフが言われたように”パッションフルーツ”の香りがこのワインにあるんです。”甲州”ってブドウには昔はそんなにアロマはないって言われてたんですけども、”酸化させないで造ること”で、こういうパッションフルーツなどに含まれている香りを残す造りが確立したんです。

辰巳:そうそう、このきいろ香。このワインの歴史の簡単なレクチャーをお願いします。

安蔵:はい、2004年ヴィンテージから出してますので、今16年目です。きっかけは、ボルドー大学の(ドゥニ・)デュブルデュー教授の元に*富永敬俊博士という方がおられて、その方が**「きいろの香り」というワインの研究に関する本を書かれたんです。その中に”柑橘のアロマ”を持つワインの話とか、その辺の研究が出てまして。ちょうどその本が出た頃に、たまたまある畑の試験醸造をしていたら今まで甲州の香りに出たことのない柑橘の香りが出まして、その富永先生とメルシャンが知り合いだったんで、(私の先輩が)電話をしたんですね。そしたら「甲州に柑橘の香りなんてあるわけないだろ!?」って最初は笑われました。でも、「一応分析してみるから(サンプル)送ってみてー」って言われて送ってから1週間後、ボルドーから電話がありまして。「測ってみたら、ものすごい量の香りがあるよ!」と。
(*富永敬俊https://ja.wikipedia.org/wiki/富永敬俊
(**きいろの香り ボルドーワインの研究生活と小鳥たち
https://www.amazon.co.jp/きいろの香り-ボルドーワインの研究生活と小鳥たち-富永-敬俊/dp/489479067X

辰巳:なんていう成分なんでしたっけ?

安蔵:「3-メルカプト・ヘキサノール(3MH)」という舌を噛みそうな笑笑。

辰巳:ソムリエ試験に出るんスかねぇ?

安蔵:あ、出るみたいですねぇ。

辰巳:(ベーやんに)覚えました?

ベーやん:3メル・カ・・・む、難しいス笑。

安蔵:あの、硫黄を含んだ化合物なんですね。それがすごい量あることがわかりまして、メルシャンから研究員を(ボルドーに)送って。

辰巳:それ2004年でしょう?

安蔵:とっかかりは2003年。その頃(僕は)ボルドーにいて、*シャトー・レイソンに赴任してたんですが、(この件では)受け入れ態勢としてボルドー大学と交渉しました。
(*シャトー・レイソン:ボルドー オー・メドック地区にある「クリュ・ブルジョワ」認定シャトー。キリングループの所有
https://www.kirin.co.jp/products/wine/dourthe/s_reysson.html

辰巳:ビックリしました?

安蔵:しましたねぇ。モノ(データでしょうか?)見せてもらった時には「甲州でこんな香り出るんだなぁ」と。

辰巳:同じ頃、勝沼醸造の「イセハラ」という単一畑のワインがあって、やはりこの香りを見つけて。あれ、どっち先だったのかなぁ。

安蔵:同じぐらい、か、イセハラの方がちょっと早かったかも。

辰巳:それからこの”黄色い香り”が一大ブームになって、いろんなワイナリーが造り始めて。けっこう大変なんですってね(造るのが)。

安蔵:酸化させるとなくなってしまう香りですから。

辰巳:醸造過程でかなり気を遣わなくては?

安蔵:そうですね、この香りは酸化に非常に弱い香りですので。ブドウって潰すと一気に酸化が進むんです。りんごは皮をむくと茶色になりますよね?あれとおんなじメカニズムで、ぶどうも皮に傷が付くと果物自身がすごい酸を出すんですね。なので、ブドウを破砕したら絞るところまで二酸化炭素(炭酸ガス)をかけたりして、酸素を遮断して仕込んでます。

辰巳:栽培の時にもボルドー液を使わずに?

安蔵:ボルドー液に含まれている成分って”銅”なんです。この銅もこの成分と反応して香りを壊してしまうんですね。なので、ボルドー液を全く使わないわけではないんですけども、使うのを極早い時期だけにしてます。

辰巳:収穫時期も早めなんですよね?

安蔵:そうなんです。よく”早摘み”って言いますけど、ブドウって花が咲いてから収穫まで、ボルドーだと100日って言われてるんですね。この「きいろ香」は100日よりはちょっと短いんですけど、ボルドーの標準とそれほど変わらないです。逆に従来の甲州が130日とか140日ですんで、その”従来”が遅摘みなのかなぁと。

辰巳:まぁ日本の場合はね、雨降ったり曇ったり、梅雨もあるしね、ちょっと時間がかかるってのはあるんでしょうけど、、、。
どう、美味しいでしょこのワイン?

ベーやん・井村シェフ:頷

辰巳:僕も今回久しぶりにいただきましたけど、初登場してしばらくはよく飲んでました。ホント流行りだったの。

ベーやん:酒屋さんとかにけっこう置いてあるんですか?

安蔵:置いてありました。ただ最近は”富永さんとのエピソード”がだんだん忘れられてしまったところがあって。今我々はこの背景をもう1回ちゃんと打ち出さないといけないなぁと社内で言ってまして。。。

辰巳:糖度が上がる前に収穫するのでアルコール度数も低いんですよね?

安蔵:10.5%。

辰巳:補糖は?

安蔵:ちょっとしてるんですけれども、甲州ってこんな低いアルコール度数って思わないと思うんです、通常はもっと飲みごたえのある・・・。でもこれは酸も自然、補酸してませんので甲州ブドウが本来持っている要素が出ていると思います。

辰巳:これはおいくらですか?

安蔵:オープン価格なんですけど、想定小売価格では2380円。

辰巳:このレストランでもこのワインをグラスで出していただけるんですよね?このヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢に来ていただけますと、今ここで飲んで食べてるマリアージュが楽しめる!シェフけっこう大変でしょ?最初はノリで始めた(番組)けど、毎週毎週新しいワインとのマリアージュ考えなきゃだから?

井村:けっこうプレッシャーです苦笑。

辰巳:でも今日のお料理ともとってもいいですよ。キノコがほんとに効いてるんです。いやぁ美味しい!安蔵さんのお墨付き!

安蔵:柑橘の香りがお料理にあるのがすごくいい。

辰巳:ではここらで安蔵さんのリクエスト曲を。聴きながらもうちょっとお料理楽しみましょう笑。
安蔵さん、今日のリクエストは?

安蔵:山梨県出身の方の曲、The Boomの「風になりたい」を。

ベーやん・井村:おぉ!

辰巳:おぉ!って知ってんの!?

ベーやん・井村:知ってますっ!!!

辰巳:山梨県出身って知ってました?

ベーやん・井村:山梨県、、、は知りませんでした汗

辰巳:それが大事なんですよ!笑笑。さも知ってるみたいな笑。
僕は聴いたらわかると思いますが、多分汗。

ベーやん・井村:!知らないんスか!?そこまで言っといて知らない!?!?!?

辰巳:だって知ってんだったら”山梨県出身”まで知っといて欲しいって話ですよ(←ヘリクツもいいとこです)。

辰巳さん除く全員ブーイング

辰巳:ではどうぞ~


The Boom 風になりたい
https://www.youtube.com/watch?v=1A6l9VkFbFU

辰巳:The Boom、山梨県出身、ボーカルの宮沢さんは勝沼にある「*ミルプランタン」っていうワインレストランのオーナーソムリエの五味さんと同級生だとか?
(*ビストロ・ミルプランタンhttps://mille-printemps.com

安蔵:同級生かどうか、、、。高校は同じなのでもしかしたら先輩後輩の仲かもしれません、甲府南高校という、、、。

辰巳:ぁ、そうですかー、やっぱり山梨詳しいな笑。
ところで、学生時代はどんな風だったんですか?

安蔵:まぁ2年も浪人して入ったので笑。

辰巳:東京の予備校?

安蔵:はい、駿台予備校に1年でいいところを2年ほど通いまして笑。

辰巳:水戸から通ってたんですか?

安蔵:いえいえ、東京に住んでました。

辰巳:それはそれは楽しい浪人生活じゃないですか!

安蔵:(浪人)1年目はほんとに東京来たのが楽しくてですね、、、、。

辰巳:そりゃ落ちますよね笑笑。でもね、そうやって初志貫徹して東大入ったんだからそれはやっぱりスゴイ!

安蔵:2浪目はもんのすごいプレッシャーでした。1浪目のツケが、、、笑。

辰巳:僕は入ってから3年留年しましたからあんまり大きなこと言えないんですけどね、結局どこでダブるかみたいな笑。
学生時代は駒場に通ってたんでしょ?

安蔵:駒場に2年いまして。その時はバイオの授業も出てたんですけども、実は映画のゼミにも出てたんですよ、映画が大好きで。*蓮實重彦先生という方が当時いまして、映画ゼミをやってたんです。
その後東大の総長もやられた方なんですけども、”メディア論”とかもやっておられる方。たまたま理系の学生でも取れる講座だったので、2年間ずーっとその”映画論”取ってました。
(*蓮實重彦https://ja.wikipedia.org/wiki/蓮實重彦

辰巳:どうでしたか?

安蔵:(蓮實重彦先生は)私のことは覚えてないでしょうけれど。フランス語の先生なんで、もし機会があるならフランスワインについてお話ししてみたいなーと思ってました。でもすごい偉大な方なので、、、。

辰巳:今70代ぐらいでしたっけ?前前総長?ま、わりと最近ですよね?

安蔵:そうですね、偉大な先生でした。映画のゼミは20人ぐらいだったんでなるべく前の方には座ってましたけど、理系の学生なのであまり接点は・・・。

辰巳:そのゼミの中で女性は何人ぐらいなんですか?(←お約束の質問)

安蔵:4~5人、1/4ぐらいですかねー。

辰巳:東大はまだ(女性が)多い方。京大はもっと少なかったですからー。(辰巳さんの在籍してた)文学部はまだ女性いた方だけど、全体的にはほんと少なかったですからねー。
そんなことは関係なしに?(←つまり女子多いとか)

安蔵:そうですね、映画好きだったので。週1回の授業だったんですけれど、1回も休まずに通ってました。

辰巳:大学入ったらね、僕らは遊ぶことしか考えてなかったんですけど、真面目に勉強してたんですね。

安蔵:でも受験の時は得意かな、と思ってた物理がなんか入ったらさっぱりわからなくて。農学部でよかったなと笑。

辰巳:教養部の成績によって専攻を決めるんでしょ?だから自分の行きたいところに行くためにはそれなりに点数取らなくちゃいけない。ほんと東大って厳しいんですよ。京大はぜんぜん大丈夫な分(僕は)卒業に時間かかっちゃった笑。
それで、日本酒を目指したわけでしょ?

安蔵:実は東大の学園祭”五月祭”ってのがありましてー。農芸化学科では4年生は”全国の酒蔵から’日本酒を集めて振る舞う”っていう会があるんです。それに責任者として立候補しまして。要するに酒好きなんですねー。

辰巳・安蔵:ねー♡

安蔵:80人ぐらいの学科だったんですけど、それまであんまりそういう責任者とかやったことがなくて、今思うとあの時やってよかったなと思います。んー、成功体験というんですかね、それまで「そんなの誰かがやればいいんじゃない?」って思ってたんですけど、ま、”お酒”ってこともあって手を挙げてしまったんですね。

辰巳:”リーダー”に目覚めた瞬間みたいな。

安蔵:そうかもしれません。

辰巳:そんな今や日本ワインのリーダーでもあります、シャトー・メルシャンのチーフ・ワインメーカー兼ゼネラルマネージャー、安蔵光弘さんにお話を伺いました。また次回もよろしくお願いしまーす!

全員:ありがとうございました!

(お断り:番組のOAとこの原稿の掲載には時差があります。現在提供されているワインとお料理はお店にお問い合わせください。)

News Data

ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2020年10月8日放送分

ワイナリー

シャトー・メルシャン
https://www.chateaumercian.com/aboutus/

安蔵光弘
https://www.chateaumercian.com/aboutus/winemaker/

収録会場

★ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/

「日本のワインを愛する会」入会申込

登録無料

入会申込フォーム