八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」2020年5月21日放送分

今回のゲストは東京ワイナリー代表の越後屋美和さん。ワイナリー立ち上げの前に様々な場所で研修された越後屋さんの「日本ワイン」に対する思いを熱く語ります。全2回後編!

辰巳:今回のお客様は東京ワイナリーの代表、越後屋美和さんです!

辰巳・越後屋:よろしくお願いします!

辰巳:2回目、前回は群馬県のシードルをいただきましたけどね、良かったですねー。今日は、、、早速飲みながら話しましょうか?
赤ワインを用意していただきました。
東京スペシャル!いいですね~、どんなワインですかね?


東京ワイン 東京スペシャル 2019

越後屋:東京のブドウだけを使ったブレンドのワインです。毎年ブレンドを変えてるんですけど、今回は4種類のワインをブレンドしてます。

辰巳:東京ワイナリーの「東京スペシャル 2019」。

(辰巳さんが抜栓します)

辰巳:あんまり音を鳴らすのは良くないという指導もあるんですけどね、このポンっという音がいいんですねー。ではいただきましょう!

辰巳・越後屋:乾杯!!!

辰巳:あ!これ結構好きなタイプだな。

越後屋:あらっ、うれし笑。

辰巳:色はそんなに濃くはないんですけどね、ギュッと凝縮感と酸味があって香りもいいですね。なんのブドウか、、、なかなか難しいところ。東京で作ってるブドウですからね。メインはなんですか?ヤマブドウ系?

越後屋:「高尾」っていう東京生まれのブドウを使ってます。

辰巳:!!!巨峰の系列ですよね?

越後屋:はい、巨峰より少し長い形をしてますが、巨峰っぽいフルーティーな香りは出ます。それにベーリー・アリカントと(マスカット)ベーリーAと、この酸味はすこーしヤマブドウ。

辰巳:ヤマブドウは1割も入ってない?

越後屋:そうです。

辰巳:川上善兵衛さんのベーリー・アリカントAとマスカット・ベーリーAを合わせて4割ぐらい?

越後屋:そうです。

辰巳:なかなか特徴的なワインですよね。

越後屋:購入しに来てくださる方は「東京のものが飲みたい」とおっしゃる方が多くて、この「東京スペシャル」や高尾やヤマブドウ単体のワインを好む傾向がありますね。

辰巳:ちなみにこちらはおいくらですか?

越後屋:税込3000円です。

辰巳:これが高いか安いか・・・僕は十分価値があると思いますが。何本ぐらい造ってるんですか?

越後屋:今年はちょっと少なくて200本ぐらい笑。

辰巳:そんな貴重なものを!?さっき店の奥から出して来てね、販売終了したワインなんですよね?今回はワイナリーのショップから調達して来て、今は保谷に近いところにあります開拓中の畑(「鉄塔ヴィンヤード」)で収録しています。


辰巳:ブドウ畑は今いくつあるんですか?

越後屋:手伝っているところも含めれば7つ、練馬区内に。

辰巳:全部で広さはどれぐらい?

越後屋:小さいところから大きいところまでありますが、合わせると1haぐらいは。

辰巳:で、いわゆる”自社畑100%”のワインはこれから?

越後屋:そうですね、これからです。今見てもらってる通り、まだちっちゃいので(「鉄塔ヴィンヤード」は昨年秋に開墾しました)、来年もまだどうかな?やっぱり2年後3年後ぐらいにならないと・・・。

辰巳:現在、ブドウの材料はどこから入れてるんですか?

越後屋:いろんなとこから入れてます。東京から入れてるのは2割で、他いちばん多いのは山形・長野。あとは群馬とか。北のブドウの酸味が好きなので青森や北海道の余市からも。

辰巳:新潟出身の越後屋さん、新潟のブドウは?笑

越後屋:笑笑。好きですよ、飲むのは笑。流れ的には”地元のものを地元で”っていうのがスムーズなんだと思うので、無理して引っ張ってくることはないとは思ってます。山形・長野のブドウはお世話になってますけど汗。

辰巳:新潟出身でしたよね?

越後屋:えっとーーー、ホント生まれただけなんで。越後曽根っていう新潟のワイナリー(地帯)があるところの直ぐ近くの駅なんですけど、(母方の)祖父母の家が今でもあって。

辰巳:岩室温泉とかあの辺?

越後屋:そうですそうですその通りです!

辰巳:子供の頃は何になりたかったんですか?まさかワイン造りをしようなんて思いもしなかったでしょ?

越後屋:爆。そうですね。それこそ20歳になった時でさえワイン造るなんて思いもしなかった。お酒飲めるようになってからは好きだったので飲んではいたんですけど。30(歳)になるときに1回転職をして、40(歳)になる時にこれから先のことを考えて、会社に属するんじゃなくて、自分の好きなこと立ち上げたいな、と。

辰巳:結構年齢いってるんですね?今間接的には聞きましたけど全く年齢不詳笑。ワイン造りの勉強はどこで?

越後屋:畑も含めていろいろなところにはお世話になったんですけど、いちばんお世話になったのが広島の酒類総合研究所です。2回行かせてもらったんですけど、最初はまだ何もわからない時に4~5ヶ月ぐらい。

辰巳:そこの後藤さんって僕の同級生ぐらいかな、京大の。女性で初めての理事長。

越後屋:すごいカッコいい人ですよね。私が行った時は後藤先生はもう偉くなってたので、直接教えられてはなかったんですけど、お話しする機会や飲む機会はありました。
ここがいろいろものを使わせてもらったり、理論を学んだりのスタートですね。(培養)酵母や亜硫酸を使わなくなってきてますが、それはやっぱり”しっかりとした土台”を教わったからだなと思ってます。

辰巳:え、今は自然酵母なんですか?

越後屋:はい、自然酵母です。

辰巳:東京で自然酵母で!?(今回の「東京スペシャル」も自然酵母でした)

越後屋:(酒類総合研究所で)酵母の使い方、違いや酵素のことなどを教わったんですね。”ないものを作る”って時に(こういう)知識があるから出来ることなんだな、と私は思ってるんです。

辰巳:そこで勉強したあとはどっかのワイナリーに行ったりはしたんですか?

越後屋:はい、丸藤さん(山梨・勝沼の丸藤葡萄酒工業)やマルスさん(山梨・石和のマルス山梨ワイナリー)の畑にお世話になったり
ワイン科学研究センター(山梨大学のワイン専門の教育・研究機関)
に通ったり・・・。

辰巳:けっこういろいろ勉強してるんですね!

越後屋:頑張ってます笑。立ち上げてからもいろいろ勉強したいと思ってます!毎年いろいろ試してみたいし、より美味しいワインを造りたいし。

辰巳:そうか、いろんな経験をしてるからいろんなヴァリエーションがある、それはあるよね。

辰巳:個人的に「こういうワインが好き」とかいうのはある?

越後屋:そこを目指してるってわけではないですが、濁りワインを初めて飲んだ時に「すごい面白いな」って思いました。酒類総研で”クリアなワインを造る”ことを教わって、その時に「クリアなワイン」と「そうでないワイン」を比べることがあったんですよ。

辰巳:それはどこの?

越後屋:ヒトミさん(滋賀県のヒトミワイナリー)のデラウェアの微発泡(「カリブー」という製品)。そのデラウェアというブドウにも衝撃でした。当時は海外のワインもけっこう飲んでたし「日本のワイン(甘口のお土産ワイン)ってそんなに美味しくないよね」なんて思ってたんですよね。でもヒトミさんのデラウェアを飲んで「日本のワインの未来ってあるんじゃないかな?」って。そういうものを自分の畑で造りたいなと思ったんです。

辰巳:なるほどー。今のワイン造りは全部自然酵母?

越後屋:9割はそうですね。

辰巳:でもそうじゃないのもある。

越後屋:はい、やっぱりブドウを見極めてって感じですかね。特に自然派的なワインを造ることを目的とはしてないので、でもなるべくなら’負担をかけない優しいワイン’、を造ろうと思った時に、結果的に酵母を使わなくてもいいのかな、って。あとは委託もあるので、その時はお客さんの希望を聞きながら、、、。

辰巳:へぇ、委託も?それはどういうお客さん?東京の農家さん?

越後屋:私は東京の農家さんを応援しているので、もし農家さんがこういうのやりたいっていう希望があれば、少量でもやります。あとはワイナリーをやりたい方が増えて来たので”畑はやってるけどまだワイナリーがない”方々がブドウを持ってくる、長野とか山形からとか。

辰巳:長野や山形にもいっぱいワイナリーあるのにわざわざ東京に?越後屋さんの人徳ですか?

越後屋:笑笑。うちは少量からやってるからだと思います。長野なんかの大きいワイナリーだと「500kgとか1t持って来てねー」になるんですけど、逆にうちはそれは受けられない。何でもかんでもやってしまうと大変なことになるので、ある程度のつながりがある所にはなってしまうんですけど。

辰巳:それを瓶詰めして、製品化する。

越後屋:もちろんです。

辰巳:1本いくらぐらい?千円ちょっと?(突っ込みますね~)

越後屋:んーーー、もうちょっっっと。その人(委託者)が売るのか、自分で飲むのかによってですけど、まぁそれぐらいです。

辰巳:こういうことも必要ですよね。醸造設備ってお金もかかるし。
まず自分のブドウでどんなワインができるか?(これを具現化するのは)非常に重要なジャンルで、きちんとフォローしてあげるのが、これからワイン造りをしていこうとしている人たちにとっては、すごくありがたいことだと思うんですよね。

越後屋:そういうビジネスもありなんじゃないかなって思うんですけどね。もうあるんでしょうけど。

辰巳:長野の高山村にマザーヴァインズさんがありますね。北海道のブルース(ブルース・ガットラヴ氏の10Rワイナリー)も。北海道今ワイナリー立ち上げる人すごく増えてますから、もう大変。ワイナリー内びっしり!もうちょっとデカくしないと無理だな笑。

越後屋:私も3年ぐらい前に研修に行かせてもらったんですよ。その時もたくさんの方が来てましたけど、次の年も行こうとしたら(ブルースが)「もう一杯だよ~」って笑。でもあそこではすっごいいい勉強させてもらいましたね。

辰巳:さぁ、日本のワイナリーも今もう350近くになってる。これから日本のワイン、どうなっていくかなぁ、とかこうなればいいなぁとか、予想と夢、ありますか?

越後屋:「地域に根ざしたワイン造り」っていうのがいちばんだなぁって思ってます。そこの物を使う、そこの人たちに応援してもらう、っていう。もちろん海外に出すとか都心に出すとかっていうのもあるんですけど、ワイン好きな方であれば、まず近くのワイナリーのものを飲んで欲しいしオススメして欲しい。

辰巳:基本的には大賛成なんですけど、そんなこと言ったら東京は(人口的に)最強じゃないですか笑。練馬は東京じゃない?笑笑。
海外のワインなんかはどうなんですか?

越後屋:いろんな食に合ったものを選べばいいと思うので「みなさん日本のものを飲んでください!」ってことではなくて、いろいろ楽しんでもらえればいいかなと思いますし。個人的には日本のワインを飲むことは増えてます。日本のワインは日本人の体には合うのかなと。

辰巳:もうとにかくブルゴーニュが好きでピノ・ノワールが好きで、(栽培)大変だってことはわかってるんだけどどうしてもやりたい!って人がけっこういるじゃないですか?こういうのに対しては?

越後屋:笑。(前述の)科学士の受講時の研修先がオーストラリアだったんですけど、もう全然違うじゃないですか!?何も手を加えなくても勝手にオーガニックになって。でもそこから考えてもその”土地”を活かしたワイン造りだなって思ったんですよね。そのレシピを日本に持ってきてもまったく当てはまらなくって、だからブルゴーニュのレシピも日本には当てはまらなくって、、、。

辰巳:要するに否定的なんだな笑。
最後に一つだけ。自分が造れるかどうかは別として、日本にこんなワインがあったらいいなぁとか、今どんなワインが求められてると思いますか?

越後屋:日本生まれのブドウって面白いなと思ってます。お客さんで「重くて渋くてガッツリしたワインください」って買いに来る年配のお客さんがいらっしゃるんですけど、うちにはそういうワインはないし、価格も高くなるし、そういうのは日本ではないと思います。

辰巳:そういうガッツリしたのはヤマブドウなんかで造れると思います?

越後屋:私は、造れるかもしれないけど造らなくてもいいんじゃないかなぁと思ってるんですけど。ヤマブドウの旨味を生かした日本っぽい赤(重くない)が造れればいいんじゃないか、と思ってます。

辰巳:ぜひ造ってください、楽しみにしております!

越後屋:頑張ります!

辰巳:今日は東京ワイナリーの越後屋美和さんにお話を伺いました。
ブドウ畑で飲みながら収録しましたが、いいですね。昼間あんなに暑かったのに今ひんやりしてね、気持ちいいです。カラスも鳴いてます笑。楽しいお話ありがとうございました!これからも注目してます、頑張ってください!

辰巳・越後屋:ありがとうございました!

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八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」

2020年5月21日放送分

ワイナリー

*東京ワイナリー
「東京の農業をもっと元気にしたい!」と2014年に東京初のワイナリーとしてスタートした。「手作り」感にこだわったホームメイドマイクロアーバンワイナリーとして、気軽に来て楽しんでもらうことを目的にしている。
https://www.wine.tokyo.jp

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