
2020年7月から始まった*ラジオ番組「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」。2024年7月放送分から『**プリオホールディングス提供』になりました。引き続きお楽しみください。
(*Tokyo Star Radio:https://775fm.com/ **プリオホールディングス:https://prior.co.jp/)
2024年11月のゲストは埼玉県小川町「武蔵ワイナリー株式会社」の代表取締役有機農家発酵おやじ(←、と名刺に書いてあります)、福島有造さんです。
妙な巡り合わせで小川町で無農薬のブドウとワインを造っている福島さん。最終回は「10%のメルローをアッサンブラージュした妙、のワイン」で乾杯!
(全4回 4回目)
辰巳:11月最後の放送になります。今月のお客様は埼玉県小川町「武蔵ワイナリー」代表、福島有造さんです。そしてプリオホールディングス総料理長、井村貢シェフです。
全員:よろしくお願いします!!!
辰巳:話めちゃめちゃ面白くてあっという間に最終回。この1回で上手くまとまるかどうか心配だなと思いつつ笑、乾杯しましょう!
全員:カンパ〜イ🎶
【饅頭なんまら怖い2021 Mizunara】
https://musashiwinery.shop/items/658de9d0bc017d1a0447f792/
辰巳:今日も赤ワインです。これはどんなワインでしょうか?
福島:饅頭まんなら怖いという、北海道弁で「なまら」という”非常に”という方言の最上級「なんまら」です。
辰巳:北大で金属工学というぜんぜん違う畑で勉強していたということなんですけど、やっぱりここら辺もまだ北海道引きずってる?
福島:引きずってますね〜。北海道大好き♡
辰巳:余市とか南北海道のエリアにはどんどんワイナリーできてますよね?だったらね、なんで北海道でワイン造りをやらなかった?っという話を今日は聞きましょうか。
福島:このシリーズはメルローが10%ほど入ってるんですけど、先週お出しした小公子にブレンドしたのが”饅頭怖い”というこのワインです。小公子がほとんどなのにメルローが前面に出てくる。だから「怖っ!」って感じがするんですよね。
辰巳:ぁ、メルローが怖いのか。畑にメルローはどれぐらい植ってるんですか?
福島:最初は2畝ぐらいから始めて、このメルローはその2畝の畑です。そのあと3反ほど増やしてます。
辰巳:畑は全部でどれぐらい?
福島:今4.6haあります。
辰巳:そんなに!?それで毎年何本ぐらいのワインができるんですか?
福島:2.2haがワイナリーができる2019年までの面積、そのあとに白ワイン品種植えたりメルローやヤマソー増殖したり。最終的にはおそらく40tぐらいいく、、、いきたいな、、、ってところはあるんですけど、今はその2.2haの畑からできるワインが主体です。
辰巳:じゃ、10000〜15000本ぐらいですね。
井村:先ほどメルローの話ありましたけど、僕もメルローの比率がもうちょっと高いのかなと。酸もしっかりしてるしバランスがすごくいいなと思いました。
福島:2024年のワインに関しては、メルローがそこそこ獲れたもんで単独で仕込んだワインもあるんですけど、他の品種とアッサンブラージュしてどの比率がいいのかやってみたんですよ。もちろん(メルロー)100%もいいんですけど、10%がいちばんいいんじゃないかと。
辰巳:今日のお料理は?
【牛肉のロティ バターナッツのスパイスローストと赤ワインソース】
井村:しっかりとしたバランスのいいワインだったので、黒胡椒を効かせた牛肉のロースト。付け合わせはクミンを使ってスパイシーに焼き上げたバターナッツカボチャに赤ワインソースという、スタンダードなお料理に仕上げました。
福島:ぁぁ、やっぱり肉ですよね。この肉とメルロー・・・。
辰巳:メルローって肉食べたくなりますよね〜、なんででしょうね、この感じ?前回の小公子(100%)よりこっちの方が『肉』。このワインの樽はミズナラ?
福島:そうです、有明産業ってところの樽で工場は宮崎(←本社は京都)です。
辰巳:ではこの間にリクエスト曲を。
福島:奥田民生さんの「息子」。奥田民生さんは琴線に刺さってくるような歌を歌ってくれるので、「僕のために歌ってくれてんのかなぁ」って勝手に思ったり爆。
辰巳:これもカラオケで歌うんですね?(人に)ウケるほう?泣かせるほう?
福島:これは点数出すほう爆。
奥田民生「息子」(1995年)
https://www.youtube.com/watch?v=KWDnS9kQ2QY/
辰巳:シェフは世代?(1972年生)けっこうノってましたね。福島さんは息子は3人いるんですね。
福島:高校生から小学生まで。
辰巳:大変じゃないです?
福島:上二人は別居なんですけどね(前妻の元に)笑。
辰巳:前回の最後に、大変な覚悟で”こんなに人気もなくて大変な産業”に飛び込んだ覚悟、というか男気というか話を伺いましたけど、農業を選んだんでしょ?その農業を選ぶっていうのとワイン造りはまたちょっと違うじゃないですか?当初から「農業=ワイン」だった?
福島:『成功する農業はなんだろう?』をいろいろ調べて、加工・販売も含め、ま、6次産業化ですね。お酒好きだったのもあり、それと絡めようと。だから日本酒でもよかったんです。さらに調べたら日本酒の方の(醸造)免許は近年出してないことがわかり、
辰巳:今ある蔵元の免許買うしかない。
福島:そんな資金あるわけもなく、新規でできるとしたらワインしかなかった。”日本ワイン”はそうと決めてから飲み始めたのが現状でした。
辰巳:インスピレーションを得たのはどの辺、どういうワイン造りたいと思ったんですか?
福島:カーヴ・ドッチとか小布施ワイナリーとか、そういう名前がいろいろ出てきて飲んでみたんですけど、自分の中では委託しようとも思っていた小布施ワイナリーさんはかなり刺さって、ひとつの目指すべき方向かなぁと。
辰巳:曽我彰彦くんには会いました?
福島:いや、実はお会いしてなくて、委託醸造も断られて笑。変人とは聞いてたんでまぁいいや。
辰巳:でもワイン造るのには先生というか、どっかに修行に行くとか醸造試験場にいくとかあると思うんですけど?
福島:私の場合は「先生いない」が現状。小川町で農業初めたんですけど、小川町にはワイナリーありませんので日本酒の酒蔵「*武蔵鶴酒造」で。
(*武蔵鶴酒造:http://www.musashitsuru.co.jp/)
辰巳:ん?それにしても小川町との出会いはなんだったんですか?
福島:「有機農業が盛んな町」ということで、
辰巳:最初から結構大変な有機農業をやろうと?
福島:はい、もう「無農薬でやらないと意味がない」と思っていて。小川町には金子美登(かねこよしのり)さんという有名な方がいて、NHKのプロフェッショナルっていう番組にも出てたりした方。ある日夜中に眠れなくてテレビつけたら金子さん出てたんですよ。「これは行け!ということかな?」。で釘付けになってテレビ見ちゃって。
辰巳:だったら中島みゆきでもよかったんじゃ?爆
福島:そうですよね、しまった、やらかしました笑笑。
辰巳:そんなに刺さったんだ?
福島:「これは小川町行かなきゃ!」で当時住んでた東京の目白から。足を踏み入れたら、自分の意図せす”引っ張られる”感じがあって、他でやろうと思ってたブドウ栽培も”小川町でやんなきゃいけない”気すらしたんです。
辰巳:他って例えば東御だとか余市だとか?
福島:考えたりはしました。東御は一つの候補だったんですけど、(電話した市役所の)対応がすっごい悪かった笑笑。「金持ってますか?」からいきなりくるんすよ笑。
辰巳:名前覚えてないんですか?笑、きのうも東御市長といっしょだったんですよ。これはちゃんと言っとかないと笑。
福島:「こういうのって巡り合わせ?」と思いました。
辰巳:その人につっけんどんにされて逆によかったのかも。
福島:だからその人のことぜんぜん恨んでないし方向性だなと思ってるんです。巡り合わせでたまたまそうなって「僕は小川町にいる」。
辰巳:で、やるとなったら自然派で。有機だけじゃなしにボルドー液も使わない人ってあんまりいないですよね?なんでボルドー液だけは使っていいのか僕にもよくわからないけど。
福島:ボルドー(液)はブドウを不味くします。だから僕は使わない。
辰巳:それは比べてみてわかったんですか?
福島:(ボルドー液はブドウの)成長を止める。今「植物の生体ホルモンを利用した自然栽培」に則ってやってるんですけど、
辰巳:それは誰がやってるんですか?金子さん?
福島:道法正徳(どうほうまさのり)さんという人の教えなんですけど、実践してみたらすごいことがたくさん起こるんですよ。ブドウ栽培の基本って、「樹勢を弱めて枝を伸ばさずに実にいかせる」んですけど、それをやってたら小川町で僕は成功してないと思います。
だって樹勢を強くすることでメルローができた。摘芯するといわゆるジベレリンが出てしまってブドウが美味しくなくなっちゃうんです。つまり、ボルドー液使うと成長が止まっちゃうということは、ジベレリンが出るってことにも繋がってるのかな、、、と。
辰巳:ボルドー液とジベレリンの関係は?
福島:ボルドー液自体が成長を阻害してるわけです。三養醸造の山田さんも「ボルドー使うとブドウが不味くなるから使わない」って言ってました。
辰巳:(ボルドー液も)口にするのはよくないとは言われてますけどね。硫酸銅だし。
福島:いいわきゃない。JAS有機に認められた農薬ではあるんですけど、これは「人間都合」ですから。
辰巳:農業は基本的に人間都合。元々野生の植物を人間の都合に合わせて作るんですからね。
福島:安全性基準なのに、人間都合で捻じ曲げてる。安全性考えたらボルドー液は除外するべきなんです。
辰巳:そう考える人が日本にもだいぶ増えてきたんですかね?まだあまり聞きませんが何人かいるようですね。
辰巳:13年ブドウ作り続けてみてどうですか?今後の見通し、手応えとか?
福島:この「植物の成長ホルモンを利用した自然栽培」に出会って、「これでも出来るんだ」っていう確信につながっています。この栽培方法を使うと、いわばどこでもブドウ栽培できちゃうんですね。例えば山梨では、温暖化に向かっているから今の場所からもっと高地に畑を移した、なんて話も聞きますけど、うちはそもそもがそれよりも悪い条件で始めてるわけで。僕からすれば、(その山梨の)移す前の畑は天国じゃない!?と思うわけですよ笑。
それをさらに極楽浄土に行っちゃうの?笑笑。だったらその前の畑僕にちょうだいって言いたい笑。だからうちの栽培手法を取り入れていれば、おそらくその前の畑もやり続けられたんじゃないかと思います。
辰巳:”酸が残る品種”を選んだっていうのも賢案だったと思うし。畑は棚ですよね?垣根はおそらくブドウ本来の力が出てなくていじめてるんだって声をよく聞きます。日本でも垣根から棚栽培に変えてるところもあるみたいだし。福島さんはそれを最初から実践してたんですね。そう思うといろいろ’ついてる’方ですね。
福島:一応考えてるんです笑。近くで小公子を栽培してる人がいて、棚、ではないんですけど房ができるところを棚ぐらいの高さに上げる方法でなんとか栽培できてた。それもあって「棚じゃないと小川町では成功しないだろう」というのはありました。
辰巳:日本のワインの歴史ってまだ150年かそこらで、今は全国いろんな造り手がいるし、そういう意味でも今の日本ワインってほんと面白い。福島さんはその中でも非常に突出しているけど、ど真ん中になるかもしれない期待してる造り手の一人です。これからもいいブドウ、ワインを造ってください。というわけで時間がきちゃいました。11月のお客様は埼玉県小川町「武蔵ワイナリー」福島有造さんでした。
全員:ありがとうございました!!!
【お断り】上記は2024年11月5日に収録した内容です。現状とは異なる場合がありますがご了承ください。
武蔵ワイナリー
https://musashiwinery.com/
収録会場
日比谷パレス
https://hibiyapalace.co.jp/
News Data
- プリオホールディングスpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2024年11月28日放送回
- ワイナリー
武蔵ワイナリー
https://musashiwinery.com/- 収録会場
日比谷パレス
https://hibiyapalace.co.jp/