ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2023年6月22日OA

2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2023年6月のゲストは山梨県勝沼の「丸藤葡萄酒工業」代表取締役の大村春夫さんです。
御年72歳の大村さん。「人生最後の」が最近の口癖らしいですが、ここにきてワイナリー投資の借金を次々と!
人生100年時代、まだまだ楽しませてくださいませ。(全5回 4回目)

辰巳:6月4週目、今月のお客様は山梨県勝沼の「丸藤葡萄酒工業」の大村春夫さんをお迎えしています。
そしていつも通り、この番組の会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています。

全員:よろしくお願いします!!!

辰巳:まずは乾杯しましょう!前回もキレイなサーモンピンク色のロゼでしたけど、今回もさらにオレンジがかった・・・。これはオレンジワインと言っていいんでしょうか?

大村:以前、田崎(真也)さんから、「白ブドウから造るのが’オレンジワイン’であって、甲州は白ブドウじゃないんだよね」、「グリ・ド・グリ」ってのが本当なんだと言われたことがあって。「今さらそんな頃言われてもねー」なんて笑笑。別にこちらは”オレンジ”なんて言ってないんですよ笑。

辰巳:そこらへん田崎さん細かいですから笑。彼もB型なんでめんどくさいんすよ笑笑。大村さんも僕もB型笑。多いんですよね、ワインの世界。でもこのワイン、どこにも’オレンジ’とは書いてないんですよね。

大村:はい、聞かれたら「オレンジ」って言いますけど。「ロゼ」とか言う人もいますけどね、さすがにそれは違う笑。

辰巳:では乾杯したいと思います。

全員:カンパ〜イ🎶

【2022 ルバイヤート甲州醸し】https://www.rubaiyat.jp/item/296/

大村:渋いですよこれは。皮ごと種ごと仕込んでますから。

辰巳:「グリ・ド・グリ」。仕込みによっていろんなワインがあって、ほとんど色がつかないものもあるじゃないですか?でもこれはしっかりと、

大村:野生酵母というのか、「ピエ・ド・キューブ」、英語だと「スケールアップ法」って言うんですけど、畑から取ってきたブドウを潰して(野生酵母で)発酵するの待ってて、そこにまた果汁を足して、で、どんどん増やして本チャンにブレンドするスターターを作るんですけど。

辰巳:なんか日本酒みたいな感じですね。

大村:これは、今は独立しましたが、うちの醸造を長いことやっていてくれた安蔵正子さん(←現在は独立して山梨市に「カーヴ アン」を立ち上げました。メルシャンの安蔵光宏氏の奥方)が「ピエ・ド・キューブ」ではなく、果汁を潰していきなりコンクリートタンクに突っ込んで発酵待ってたと言うワインなんです。これは本当は怖いことなんですよ。

辰巳:ピエってフランス語で’足’でしょ?そしてキューブは’タンク’?’容器”?

大村:そう、その容器の底に酒母がある、みたいな(意味)。

辰巳:井村シェフ、どうですかこのワイン?

井村:ほどよい苦味と酸味、、、いろんな複雑な要素が混ざり合ったような。

辰巳:酸味も割と特徴的ですね。色づく前のグリーンの(ブドウの)イメージ。

大村:これはうちの農園で、若い連中が管理してる畑なんですけど、この畑だけブドウが渋いんですよ。だからシュール・リーなんかを造ろうとしても渋くなる。じゃぁいっそのことオレンジワインにしてみれば?、っていうことになって醸してる。

辰巳:色はつくんですか?

大村:付きます付きますしっかりと。ジョージアが古来茎から何から全部放り込んでクヴェブリ使ってやってますけど、それに近いやり方ですね

辰巳:全房で?

大村:いや、ジョージアは900Lぐらいのクヴェヴリに全房でぶち込んでると思いますけど、うちは茎は抜いてると思います。それをうちはオープンでやってて、その後またコンクリートタンクに貯蔵するんです。

辰巳:この酸味はどっから?

大村:補酸も若干してますけど、基本はブドウから。ブドウが日陰にあったりするのもあるんで。”皮の裏に旨みがある”のでシュール・リーみたいに果汁だけで発酵させるよりは、渋さは伴いながらも、旨みという点では面白い。
昔は「こんな渋いワインはダメっ!」って言われる時代だったですよ。だからこういうワインが認められる時代に日本もようやくなったなと。
(ワインの)何もかもを知ってる人が、これを承知で飲んでくれれば「面白い!」ってなる。

辰巳:お料理の選択肢も広がりますよね。シェフ、今日のお料理はなんでしょうか?

井村:真鯛、ほうれん草、トマトを使ったパイ包み焼きです。このワインにバターの香りを合わせてみたいなぁと思ったのと、このパイの香ばしい香りに合うんじゃないかなぁと。

辰巳:このワイン、樽は使ってないっしょ?

大村:一部使ってます。コンクリートタンクで野生酵母で発酵させた後に、一部樽、一部コンクリート、一部ステンレス、最後に一緒にする。遊んでますよ、(安蔵正子さん辞めた後の)うちの現場の連中は笑笑。

辰巳:自社畑?

大村:自社畑、正確には自社管理畑、借りてる土地なんですけど。

辰巳:2619本、限定醸造。2640円。使い勝手良さそうでいいっすね。ワインを知ってる人にもようやく認知されてきた。ではお料理、いただきます!

全員:いただきます!!!

【真鯛とトマトのショーソン プロヴァンス風】

辰巳:このソースは?

井村:オマール海老、アメリケーヌソースです。

辰巳:んーーー、単独でもすごく美味しい♡

大村:醸造家はね、渋いワインにはとかく渋い味の料理がいいと勝手に思ってるわけですよ。「タラの芽の天ぷらに合う」とかね。ほとんど間違えてる爆。

辰巳:タラの芽はけっこう繊細ですから、逆に蕗の薹とか蕗味噌とかもうちょっとパンチのありそうなのは合いそうですね。

大村:このパイ包み、ほんと美味しいです♡

辰巳:このシェフね、けっこう料理上手なんですよ爆。

大村:それってヒドくないですか?’とりあえず’みたいじゃないですか。

辰巳:このシェフ、今や日本ワインに合わせる料理のプロとしては日本一ではないかと。

大村:シェフがワインのこと知らないとダメですよね。昔はそんなことなかったんですけど、今はシェフがワインのこと理解してないと。

辰巳:この番組が始まる前、シェフは日本ワインをほとんど飲んだことなかった。で、始まったとたん、毎日毎日千本ノックみたいな感じで笑
いろんな(日本)ワイン飲んできて、今やむしろいちばん日本ワインを知ってるシェフ笑。
お店の壁際にこんなに日本ワインの空瓶並んでるのもここだけじゃないかと笑(←本当です。嘘だと思ったら確認しにいらしてください笑)。

辰巳:さ、今日のリクエスト曲は?

大村:渡辺真知子さんの「かもめが翔んだ日」。

辰巳:これも蔵コン(ルバイヤートワイナリーコンサート)繋がり?

大村:です。来ていただきました。

辰巳:ではお聴きいただきましょう。

渡辺真知子「かもめが翔んだ日」(1978年)

https://www.youtube.com/watch?v=6SxMVaZyMfw

辰巳:シェフはこの曲知ってました?

井村:子供の頃に聞いたことある(1972年生)。

辰巳:笑。僕らはここらへんの曲はどんどん歌詞が出てきますよね。昔は本当にいい曲多かったなと、年寄りの話になってしまいましたが笑笑。

大村:爆。

辰巳:大村さん僕より確か7つ上。最初にお会いしたのは2003年に「日本ワインを愛する会」が発足して以来、いろんなところでお会いするようになって、イヴェントの2次会なんかで山本博先生(弁護士でありながら日本におけるワイン伝道師 当会の前身「日本ワインを愛する会」会長)から紹介されたような記憶があります。
その頃大村さんは50代前半で現場でバリバリ。外でもバリバリ遊んでたりも?笑。

大村:ワイン一筋ですからー。タンクからタンクへ飛び歩いてましたよっ!

辰巳:そのお会いしたとき、確か(中央葡萄酒の)三澤(茂計)さんも一緒でしたね。それからのお付き合いでいろいろお世話になってますが。でもこの20年で本当に変わりましたよね、日本ワイン?

大村:変わりましたね。昔は「日本のワインってデパートで売ってないじゃない」って散々言われたもんですよ。以後、東急さん、伊勢丹さん、京王さん、小田急さん、、、
(東急と小田急は”デパート冬の時代”で終わっちゃいましたけど)
日本のワインがだいぶ認知されてきてありがたいなと思ってます。

辰巳:ルバイヤートの売り上げも伸びてるんですか?

大村:コロナで売り上げこんなんなっちゃったでしょ?(⤵️)それから比べると元通りではないですけど、だいぶ回復してきましたね。

辰巳:20年前から比べると、今の現状ってまったく景色が変わってきたんじゃ?

大村:今日本のワイナリーは500軒近くなってるんですよ。ブドウ畑を持ってる人たちが、”ワイナリーを持たずしてワインを造れる時代”になってる。
委託醸造したワインを販売するワイナリー入れたら500超えてるんですが、山梨はワイン王国で昔からワイン造ってますんで、うちはある程度のボリュームで”安定的に”いいワインを造っていきたいな。親父が僕に残して死んでいった言葉は『いいものを安く売れ』。だから値段をなかなか上げられない😅

辰巳:今の年間生産本数は?

大村:16万本、そんなにたくさんじゃない。どうも「いいものを安く」、が引っかかっててー笑、できないままいるんです。ブドウの値段も資材の値段も人件費も上がってきてて、でも、親父のその言葉があるから。
親父の言葉3つ。「いいものを安く」はその一つ。あとは「共同事業に手を出すな」。

辰巳:?

大村:「船頭多くして船が山に登っちゃうから手を出すな」

昔親父が共同事業に手を出して(共同事業でワイナリーをやっていた)、ことごとく失敗した。

そしてもう一つは「借金は怖いぞ」。昔親父と第一勧業銀行(現みずほ銀行)の前を通るとそう擦り込まれるんで、だから俺は60過ぎまで借金しなかったですよ。そしたら勝沼醸造の有賀雄二っちゅのがいるんですけど、こいつが「丸藤の借金は借金じゃねぇよ」とかって言うわけですよ。(そんなちっちぇー額は借金とは言わないと)

それに反発してここ何年かで次々に借金をして、今借金だらけになってまして笑。

辰巳:何のために?

大村:熟成のための「もみじ蔵」っていう貯蔵庫を作りー、本宅のリノベーション、それからR棟っていう仕込みバーを作って。3つ借金してるんですよ。

最初の借金は(次にするはずだった)4つ目の借金で最初の借金返して、、、のつもりがコロナになっちゃって融資受けられず。だから未だ借金3つ笑。

辰巳:でもワインに対して、国から、自治体からとかいろんな補助金が出てるんじゃないですか?

大村:その補助金のもらい方がすごい下手な会社なんですうちって笑。世の中には上手い人がいっぱいいるんですよー笑。技術的な後援は要らないから「補助金のもらい方」のセミナーしてほしい爆。もらう人は何度ももらってる。

辰巳:例えば山梨でいうとアノヒトですね笑。(←だれ?)

大村:借金もあまりせずここまで来たんですけど、安倍さんの時代に金利も安かったんで人生最後の借金だと思って。

辰巳:女性に貢ぐわけじゃないですよね?笑。

大村:山本博先生が「大村さんの悪口を言う人はいない。だけど丸藤は”オンボロワイナリー”だ」って言うわけですよ。「そう言う山本先生がいちばん俺のこと悪く言ってないですかー?」爆。それに触発されて、また借金。

今タンクを変えようとか思ってて。4年前に家族でボルドー行ってシャトーを巡った時に、今は寸胴や円柱のタンクじゃないんですよ。卵型でもなくみんな’円錐台形’?ステンレスもコンクリートも、どこ行ってもみんなこれ。ボルドーって広いから敷地に余裕があるんですよ。

だけど僕らは手いっぱいなんで、今あるタンクを出して新しいタンクを入れるとしたら、効率よく四角いタンクにしようと思うんですよ。そのほうが25〜30%効率がいい。丸いと無駄になる面積が大きいじゃないですか。

でもちょっと待てよ、「四角いタンクって発酵中の対流はどうなるんだ?」。って考えたんすけどよく考えたら昭和37年からうちは四角いコンクリートタンクでやってきてた。「特に弊害ないんじゃない?」ってことで、今検討始めてるところです。

辰巳:最後の借金って?まだまだ若いじゃないですか。

大村:いやいや、最近やることのすべてに『人生最後の』が付くんですよ笑。

辰巳:だってまだ72歳でしょ?人生100年時代ですよ。

大村:買ったですよ、電気自動車を。僕はね、10年または10万キロ乗る主義なんで、こないだまで10万キロ乗ってきたですよ。そして「最後の」1台を買ったら電気自動車についてけない爆。タブレットなんですよ、「OKGoogle」とか言わないと爆。

辰巳:でもしゃべって指示できるんだったらいいじゃないですか?

大村:いいんですけどね。変なところに触っちゃって後ろのワイパーが動いてるんだけどこれどうやって止めたらいい?

辰巳:「ワイパー止めて」って言えばいいんすよ笑笑。

大村:そんな発想なかったなー笑笑。言えば止まるんすかねーホントっすかねー笑笑(←その後試されたでしょうか?)

辰巳:他にも;’人生最後の恋’ってのもありますから笑。

大村:花魁の恋ってやつ?

辰巳:っっっというわけであと1週、来週もよろしくお願いします!

全員:ありがとうございました!!!

お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
https://www.rubaiyat.jp

News Data

ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2023年6月22日放送回

ワイナリー

丸藤葡萄酒工業株式会社
https://www.rubaiyat.jp

収録会場

ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/

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