ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2022年11月10日OA

2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2022年11月のゲストは(株)井筒ワイン 代表取締役社長、塚原嘉章さんです。
大学卒業後、すぐに実家のワイナリーに帰り改革を始めます。まずはヨーロッパの品種を塩尻の地に植えることから奮闘しますが・・・。
2週目は自社畑の「岩垂原 シャルドネ」で乾杯!!!(全4回 2回目)

辰巳:今月のお客様は長野県、塩尻市の老舗ワイナリー「井筒ワイン」の塚原嘉昭社長です。
(いつも通り、この会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています)

全員:よろしくお願いします!!!

辰巳:前回歴史の話はしましたが、ほとんどワイン造りの話を聞けなかったんで、今回はそのあたりを伺いたいと思います。
ではまず乾杯しましょう!

全員:カンパ~イ🎶

井筒ワイン「NACシャルドネ 2020」
https://shop.izutsuwine.co.jp/products/80

辰巳:井村シェフ、このワインいかがですか?

井村:すごいフルーティ。洋ナシのような香りや、酸がスッキリしててお料理には合わせやすいと思います。

辰巳:こちらは2020年の岩垂原(いわだれはら)のシャルドネですね。僕はこれに”旨味””コク”を感じました。
どういうこだわりがあるワインなんでしょうか?

塚原:「岩垂原」というところは土質が違いましてね。

辰巳:そうらしいですね。岩がゴロゴロしてるから岩垂原?

塚原:河川敷です。石は確かにゴロゴロ。

辰巳:で、このワインはその岩垂原の農家さんから?

塚原:いや、これは自社農園。岩垂原は全部自社で栽培してます。桔梗ヶ原と対照の場所ですから、自社でどんどん増勢してます。
今12haかな。そのうちシャルドネが8割。

辰巳:岩垂原は「岩垂原メルロー」というサントリーのフラッグシップがありますが、シャルドネにもいい地域なんですか?

塚原:えぇ、いいですよ。

辰巳:この「岩垂原」を名前にしたワインって井筒ワインさんが商品出したのはいつぐらいですか?

塚原:2~3年ぐらい前でしょうかね。その前、サントリーさんが(岩垂原の)商標取ってますからね。メルローとシャルドネ出してますけど、
いいもの作ってますよ。

辰巳:この”岩垂原”の名称は?

塚原:サントリーさんが(うちが”岩垂原”名称使っても)「いいじゃないか?」と。井筒ワインさんはその前から作ってるから、
ってことで。

辰巳:いろいろなワイナリーが作って、そして”岩垂原”という産地が盛り上がるわけで。それはそれでいいと思います。
でもこうやって岩垂原のシャルドネを分けて飲むのは初めてかもしれません。

塚原:このシャルドネは金賞をいただいた年もあるし、品質が結構安定してます。

辰巳:しかも税込2530円という。最近は社会情勢もあってワインも値上がりしている中、このコストパフォーマンスはすばらしいと思う。

塚原:ありがとうございます!

辰巳:井村シェフ、今日のお料理はなんでしょうか?

「秋鮭のムニエル 緑ナスのピューレとトマトフォンデュ タイム風味」

井村:秋鮭をムニエルにしました。今最盛期の皮が緑色のナスがあるんですけど、

辰巳:いわゆるヒスイナスってやつですか?

井村:そういう分類に入るやつです。その雑味の少ないナスをピューレ状にしまして・・・。

辰巳:この’ピューレ’、と、毎月いただいている’ブルーテ’の違いってなんでしょ?

井村:単純にいうと「濃厚さの違い」。’ブルーテ’は少し柔らかく作って’飲む’。

辰巳:なるほど。少し出汁の量を多めにって事ですね。

井村:そうです。今日はピューレ、アクセントにトマトを使ってます。

辰巳:ではいただきます。鮭にしっかりとした塩もついていて旨味もあります。ぁ、いいかも。ね、社長?

塚原:うん、いいマリアージュだ本当に!

辰巳:秋鮭は?これは八王子ではないですよね?笑。
(←シェフのお料理はこの会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」近郊のお野菜をふんだんに使っています)

井村:笑、違います。これは北海道の鮭。

塚原:鮭、今旬ですよね?

辰巳:でもどんどん魚もシケてるって言いますし。

井村:でも養殖の技術がかなり進んでるんですよ。

辰巳:じゃぁ、この食べている時間に曲を先にいきませんか?聴いている間に食べちゃって、それからお話を。
今日はなんにしましょ?

塚原:これもちょっと若い時の曲なんですけどね、加山雄三なんかいいと思いまして。私と同い年なんです。

辰巳:ちょっと調子悪いみたいでね。うちのすぐ近所に住んでたんですけど、今引っ越したみたいで。

塚原:彼が元気だった頃、私も彼から元気もらってたんですよ。
「君といつまでも~♪」を。

辰巳:これを塚原社長もよく歌うんですか、カラオケとかで?

塚原:昔は歌いました、10年前まではレパートリー笑。

辰巳:では昔を思い出しながら聴きましょう、加山雄三さんの「君といつまでも」。

加山雄三「君といつまでも」(1965年)
https://www.youtube.com/watch?v=bBhe_flTjU0

辰巳:いやぁ懐かしい。僕は多分小学校ぐらい、で、井村シェフは多分生まれてないかもしれない頃の歌ですよねぇ。
(←生まれる7年前です)

塚原:そうですね、だいぶ古いですね。

辰巳:「君の瞳は星と輝き・・・♪」いぃ言葉ですよねぇ。で、これ歌ってたという、今日は社長の若い頃の話を伺おうと思います。
ワイナリー(の家)に生まれて、将来は当然継ぐもんだと思われてたんですか?

塚原:そうでもないですよ。

辰巳:兄弟は?

塚原:7人兄弟。

辰巳:、の何番目?

塚原:(男では)いちばん目笑笑。あの頃はね、「長男は家を見なきゃ(継がなきゃ)いけない」時代ですからね。
下に弟が1人だけであとは女姉妹。姉が1人、妹が4人笑。

辰巳:弟さんはワインはやらなかった?

塚原:やんなかったです。法律の方をやりたいって言ってね、中大(中央大学)の法科出ました。弁護士目指してたんですけど、
体壊して亡くなっちゃった。

辰巳:ぁ、亡くなっちゃったんですか。じゃぁ男一人ですからね。

塚原:えぇ、女の中に一人。

辰巳:でも妹さんのご主人もワイナリーにいるでしょ。鵜沢(和)さんというワイナリーの大番頭が。

塚原:えぇ、まだ元気にしてますよ。

辰巳:こないだたまたま塩尻で食事してたら同じ店で会って、ワインご馳走になりました。
鵜沢さんのやってた「*シャルドネ」っていうワインカフェはもう閉めちゃったんですか?
(*「コーヒー&ワインシャルドネ」もう閉じられたとのことですが、こんなお店です:http://p-albion.jp/syarudone.htm

塚原:えぇ、鵜沢のやってる店は閉めました。歌を好きな人たちが定期的に集まって使ってますけど。

辰巳:塚原さん自体は志学館高校からワインを勉強し始めて、大学でも醸造を勉強して。
卒業してすぐに実家に就職した感じでしょ?どっか丁稚奉公とか遊んでた、とかのブランクはなかったんですか?

塚原:いやぁ、なかったです。昭和35年、1960年にワイナリーに入りました。

辰巳:安保の年ですね。

塚原:そうそうそう。生まれてました?

辰巳:生まれてましたよ(←2歳)。僕もけっこう年なんでね笑。

辰巳:ワイナリーに帰って「あんなことしたい、こんなことしたい!」とか改革なかったですか?

塚原:まだあの頃は東京も戦後10年ちょっと、東京オリンピックより前ですから。それでも東京は面白かったですね。
(東京農大の頃は)東京の匂いを嗅がせてもらいました笑笑。でももう帰らなきゃいけない。。。

辰巳:「もはや戦後ではない」という言葉がようやく出始めた頃ですもんね。でも帰らなくちゃいけない、で
実家帰ってまずは何から手をつけたんですか?

塚原:やるんだったら「世界一のワインを造る!」気持ちはありましたよ。早速ヨーロッパ系のぶどうを植えなきゃいけない。
でもその頃長野にはまだヨーロッパ系のブドウがなかったんですよ。

辰巳:桔梗ヶ原で五一ワインさんがメルローを植え始めたのは?

塚原:五一さんが植えたのは私より10年前。昭和20年代に山形県から苗木もらってきたという話は聞いてます。

辰巳:冬場を乗り切れずに枯らしちゃってね、藁を巻いたりすごい苦労したという話は伺いましたけど。
井筒さんの苗木はサントリーさんの登美ヶ丘から?

塚原:サントリーさんにちょうど知り合いがおりまして。剪定の残った枝を分けてもらいましたけど、
ナイショ、、、だったのかな笑。そりゃわからない汗。
カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、セミヨン、、、世界的な品種でしょ。だから「ぜひ分けてください」と。

辰巳:(サントリーとしては)剪定した後の燃やす枝ですからね。

塚原:それを(うちの)コンコードの樹に接ぎ木したんですよ。コンコードを地べたから30cmぐらいのところで切ってしまって、
そこから根を継ぐわけです。それが始まり。

辰巳:ブドウは、増やすのは種からじゃなしに接ぎ木で増やす植物なんですけど、でもそんなに最初からうまくいかなかったでしょ?

塚原:接ぎ木した年にはもう芽が出てブドウは成りました、2房ぐらい。カベルネ・ソーヴィニョン初めて見て「わぁすごいなー」。
秋になったらちゃんと色がついて味も試れましたよ。それが1962年。

辰巳:その後はどうなったんですか?

塚原:ワインにもしたんですけど、ダメでした。寒さで枯れちゃった。接ぎ木した部分から枯れちゃって春先になって芽が出ない。
それの繰り返しでしたね。

辰巳:何年ぐらいして軌道に乗れたんですか?

塚原:昭和38年ごろ、サントリーさんが初めて「苗木を作った」んですよ、双葉の山で。
試験農場がありまして、そこで苗木を売るようになったんですよ。
その苗木を塩尻のワイナリーの組合で買いまして、各ワイナリーで10本づつぐらい分け合いました。それが本当の始まりです。

辰巳:その頃のワイナリー、五一さんとか信濃ワイナリーさんとか?

塚原:そう、そういうメーカーで試験栽培を始めたのが始まり。

辰巳:「これはいけるな!」?

塚原:ぜんぜんわかんなかった。

辰巳:でもそのころ植えたのがまだ残ってるとか?

塚原:残ってるのもありますね。東京オリンピックが昭和39年でしょ。それで外国人が大勢みえるからそれまでになんとか、、、。
でも出来なかった。その次(のチャンス)が昭和45年の大阪万博博覧会。その頃はようやく出来ましたよ。
でも売るほどの数は出来なかった、まだ試験栽培・醸造でしたから。でもその頃からメルローがいちばん有力でした。
やっぱり冬枯れちゃうでしょ。メルローはまだまだ枯れない方。セミヨン、カベルネ・ソーヴィニョンなんかすぐ枯れちゃった。

辰巳:井筒ワインさんはよく耐寒性のあるブドウ使ってらっしゃるでしょ?例えばケルナーとか。
長野でケルナー植えたの井筒ワインさんが初めてでしょ?

塚原:よくご存知でっ!

辰巳:それからザラジェンジェ?

塚原:「ザラジェンジェ」は塩尻市の農政課ってのがありまして、そこの推奨品種だったんです。
東欧の品種(ハンガリー原産?)なんで寒さに強いんですよ。でも塩尻でワインにしたら酸がどうしても強すぎて、、、。

辰巳:僕はそれがいいと思ってたんですけどね。(←酸っぱいブドウ大好き♡)今どうなってるんすか?

塚原:今全部やめちゃったね。

辰巳:!!! やめちゃったんすか!?

塚原:サラジェンジェはね、一時期塩尻中が作ったんですよ。でも酸が強すぎる。

辰巳:でも、ヨーロッパの味に近づけようとするからそうなるわけであって。ナイヤガラとかコンコードは海外にはないわけであって。
でも(サラジェンジェが)無くなったのはちょっと残念。気候に合ってたわけでしょ?

塚原:そう、合ってた。

辰巳:そういえば長野県の官能審査委員会にも出てこないなぁと思ってたんですよ。

塚原:やめちゃたから。もうない。

辰巳:まぁ時代だから仕方ないのかもしれませんが。あとピノ・ブランは?

塚原:ピノ・ブランは塩尻の寒さにはわりと合ってます。

辰巳:いろんなチャレンジという意味では井筒さんは最先端ですよね。

塚原:もう試験場みたいな笑。塩尻に合ったブドウができないか?っといろんなもの埋めてみてます。

辰巳:若い頃から主導権を握って?

塚原:そうですね、この分野は。

辰巳:お父さんはあまり口出しせずに?(塚原:頷)
その辺は良かったですよね。だから一つのポリシーが完結していいんだと思います。
ぁ、もう終わりですか?今回もあっという間でした。
この続きはまた来週!

全員:ありがとうございました!

(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)

http://www.izutsuwine.co.jp

News Data

ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2022年11月10日放送回

ワイナリー

株式会社井筒ワイン
http://www.izutsuwine.co.jp

収録会場

ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/

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