2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2022年4月のゲストは山梨県甲州市の「奧野田葡萄酒醸造株式会社 」代表取締役 中村雅量(なかむら まさかず)さんです。
高校卒業後の進路を決めかねていた中村少年ですが、”バイオテクノロジー”という当時の最新語に惹かれ東京農業大学に進学。
卒業後、まずは中央葡萄酒へ。(全4回 1回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/
辰巳:さぁ、新年度が始まりました。4月のお客様をご紹介いたします。山梨県の甲州市、塩山の方、
奧野田葡萄酒醸造代表の中村雅量さんです!
(いつも通り、この会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています)
全員:よろしくお願いします!
辰巳:なんかのイヴェントではご一緒しているんですけど、
中村:辰巳さん、私どものイヴェントにご自分でエントリーされていらして相当ビックリしました。
辰巳:ぁ、あれかぁ。もう3~4年前ですよね。でもワイナリーに取材に行ったのは10年以上前じゃ?
中村:いや、そんなに前じゃありません。
辰巳:それにしても去年1年間まったく東京にも来ていない、っというか山梨から出なかったという。
中村:だって誰にも呼んでもらえないし笑。みなさん気を遣って呼んでくれなくて山梨にずっといました。
辰巳:お友達が少ないとか?笑。
中村:元々少なめではあります笑笑。
辰巳:そんな印象はないんですけどねぇ。今おいくつですか?
中村:1962年ですから寅年、今年還暦ですー。
辰巳:いつ?
中村:6月1日です。
辰巳:ここは声を大にして、『6月1日に奧野田ワイナリーの中村さんは還暦を迎えますっ!』。
なんか会やりましょうか?
中村:やりたいですね。(←けっこうノリノリ)。
辰巳:このお店で”泡だらけの会”とか笑笑。
今日もこの会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席していただいてますが、
どうですか、春休みに入ってこのお店は?
井村:はい、毎日のように満席をいただいてます。みなさんほとんど日本ワイン飲まれます。
今日もたくさん予約入ってます。(←この日は平日昼間の収録でした)
辰巳:足の便からいうとちょっと不便ですけど八王子の駅からだと車で20分、山梨からもすごく近い。
八王子は「山梨に向けた玄関口」ですから。
中村:そうですね。
辰巳:最近山梨からのお客様は”わざわざ”とは言いません。
中村:ぜんぜん遠いところじゃございません笑。
辰巳:ではさっそく乾杯したいと思います!
60歳(前祝い)おめでとうございまーす!
中村:ありがとうございます!
全員:カンパ~イ🎶
「ヴィンテージブリュット・ヌーベルヴァーグ 2018+」
http://blog.okunota.com/article/188854279.html
辰巳:あらっ、美味しっしぃ♡、ちょっと甘苦い感じがあって。
中村:これは甲州のスパークリングワインです。この甲州の持っている苦味(中村さんは苦味を’くみ’と言いました。)がまず
「くっ」っときて。そもそもこのスパークリングはシャンパーニュのルールでできてるんで、、、。
辰巳:いわゆる瓶内二次発酵ですね。
中村:そして5気圧に仕上げる。
辰巳:「2018年プラス」って書いてあります。
中村:実は2018年を全面に押し出したワインではなくて、ほんの5~10%だけ使ってる甲州種は1990年収穫のものなんです。
辰巳:ぉ!、古酒を使ってるんですね、シャンパーニュの伝統的なリザーヴワインみたいな。(中村:頷)
そのリザーヴワイン、樽は?
中村:使ってないです。
辰巳:なるほど。それにしても1990年ですから。2018年ヴィンテージの普通のスパークリングはこんな色出ませんもんね。
この琥珀色?麦わら色?
中村:その、ほんの5~10%の甲州はサン・スフル(酸化防止剤なし)で造って長いことボトルで寝ていたものなんですが、
それを使うことでそれまでの甲州にはない香りが出たんです。”オリンタルハーブ”、麝香(ジャコウ)や白檀(ビャクダン)のような。
辰巳:”オリエンタルハーブ”、いい言葉。
中村:少し湿ったオリエンタルな香りがこのスパークリングに出現していて、大きな特徴になってると思います。
辰巳:シェフ、いかがですかこのワイン?
井村:深~い香りがします。
辰巳:これ、ブラインドで飲んだらなんて言うかなぁ(品種当て)、っとさっきから考えてたんですけど、甲州とは断定し難いですね。
ドイツ系の品種が入ってるような。
中村:僕ら的には『甲州種からもたらされる”新たな香り”』。
辰巳:僕も古酒けっこう好きでコレクションもしてて飲むこともあるんですけど、これは奥行きのある香りもありながらフレッシュ。
中村:85~90%ぐらいは2018年のブドウですから。
辰巳:これおいくらですか?
中村:3000円、台、です。
辰巳:これあればシャンパーニュ要らないですねー笑。
中村:要りませんよねぇ笑。もう一つ自慢。古酒の甲州使うということは”苦味(くみ)”を隠さずに表現してしまうってことで、
白ワインの仲間が最も苦手としている「魚卵」、いくら数の子・・・。白ワインと合わせると大体において不愉快にしているんですが、
このヴィンテージ・ブリュットと数の子を合わせた時に「驚くほど心地いい!」。
辰巳:ぁ、そうですかー。で、合わせてみたいと思ったのは今日のお料理。これはなんですか?
井村:今日はコンソメゼリーと八王子ののらぼう菜を使ったロワイヤルです。
「のらぼう菜のヴルーテとコンソメジュレのロワイヤル 3種の柑橘」
(画面には見えてませんが、器のボトムにはコンソメのジュレが隠れています)
辰巳:上に乗っかってるのはイクラ?笑。
井村:これはグレープフルーツです。
中村:そういう打ち合わせはしてませんっ笑。(談合なしらしいです)
辰巳:でも(イクラ)乗っかってもいいかもしれませんね笑。グリーンのドロドロのブルーテにお花が散っております。
ではいただきます!
う~ん、青い香りがかなり強烈。のらぼう菜っていうのは菜の花系ですか?
井村:そうです、菜の花系。旨味のある野菜ですね。
辰巳:この青汁系に苦味とこのワイン、いいですね。
中村:苦味がうまいこと合ってますねー。
井村:グレープフルーツの苦味を足したいなーと思いまして。
辰巳:んんんんん(←チョーナットク)。このコンソメジュレはなんでしたっけ?
井村:普通の鶏のコンソメなんですけど、実は柚子の皮を少し入れてます。
辰巳:最近細工がどんどん進化してますね、いろんなもん忍ばせてきてます笑。
スパークリングに古酒を入れるのはいつからですか?
中村:かれこれ10年ぐらい、なんとかシャンパーニュに近づけるべく。彼らは”古酒をものすごく上手に使っている”。
現地で飲ませてもらったりしているうちに”ナットク”、勉強させてもらいました。「そういえばうちにも(古酒があったな)
・・・」で、あったのが1990年。「なんでそんなもんとっといたんだっ!?」ってよく言われるんですが、この独立して2年目って
「今週誰にも会わなかったな」「今週電話1回もならなかったな」みたいな中で独りでワイン造ってて。
サン・スフル(酸化防止剤なし)とかものすごく手をかけてボトリングまで持ってったら出来たワインが可愛くなっちゃって♡笑。
売りたくなくなっちゃってしまい込んじゃった笑笑。
辰巳:何本ぐらい?
中村:4000本爆。
辰巳:! 気持ちはよくわかるんですよ。お金に換算すると・・・、でも今その利子がついたかも。
中村:それからだーいぶ経って嫁いできた嫁は「なんだこの古在庫は!?」爆。でもそれが(このスパークリングに)活きました。
辰巳:それがワインですよねー。マルキさん(マルキ葡萄酒)も古いワインたくさん持ってて、今そんな使われ方をしてるようですけど
奧野田さんにヒントを得たりしたんですかね?あそこもちょっと体制が変わってから薬袋さんが始めたんですよね。
中村:あったと思います。
辰巳:このワイン、けっこう本数あるんですか?
中村:はい、とても人気がありまして。年間3000本前後手回しで造ってます。けっこう大変ですけど楽しいです。
瓶の中の出来事ってホント楽しくて。(ボトル内は)見えないからわからない、想像することしかできない”神のみぞ知る(領域)”。
想像しながらモノ造るのって楽しいじゃないですか?
辰巳:そういう気持ちが大事ですよね。最近は放射能だとかウィルスだとか「見えないものに対する”恐怖”」ってありますけど、
「見えないものに対する”楽しみ”」もありますよねー。そっちの方に持っていきたい。ワインってそういう力があるんだなーと
改めて感じました。
ではこの辺でリクエスト曲を聴いてみたいと思います。今日は何を?
中村:(カルロス)サンタナの、「Flor d’ Luna」。中学生の時に買ったアルバムなんですけど未だに大事に持って聴いてます。
辰巳:70年代?
中村:ですね。僕が15歳の時に買ったアルバム、ま、当時はレコード、今はネットから落としてますけど。
「Flor d’Luna」という曲です。
辰巳:ではお聴きいただきましょう、どうぞ!
Santana「Flor de Luna」(1978)
https://www.youtube.com/watch?v=dTC_A5d1wuA
辰巳:中村さんは1962年生まれと聞いてますが、出身どちらですか?
中村:山梨県、なんですけど河口湖(町)。河口湖にはワインもブドウもないんです。
辰巳:ですよね?いつからワインの世界に?
中村:お恥ずかしい話ですけど、なかなか志望校が決まらない高校3年生で笑。
辰巳:高校はどちら?
中村:吉田高校。(←富士吉田市にある県立高校)担任が生物の先生だったんで、
当時の新しい言葉で”バイオテクノロジー”という言葉がその頃新語で出てきたんです。
辰巳:当時「バイテクバイテク(←大阪訛りです)」って言ってましたね。
中村:そのころはまだ「バイオ」でした。初めてそんな言葉が出現して『カッコいいね』みたいな笑。
そしてその担任の先生が「微生物って面白いぞ」と。調べていったら『「東京農大」って学校がある。
目の前のバス停からバスに乗ったらすぐ渋谷』笑笑、当時ディスコがムッチャ流行ってましたんでここでしょ笑。
「農大前」というバス停から乗ると渋谷まで10分ぐらいなんですよ。
(この”バイオテクノロジー”の言葉に触発されたのは1965年生まれの機山洋酒工業 土屋幸三さんもでした。
今年2月ゲストの当番組の様子はこちら:https://jpwine.jp/topics/26590
辰巳:それで農大志望?
中村:そうです。(上京してからは)用賀に住んでました。
辰巳:じゃ、帰りは渋谷から(田園都市線で)スーッと帰ってこられる。
用賀から学校まではバス?
中村:自転車かバイクか車。3つ持ってたんですよ。
辰巳:へぇ。学科は?
中村:醸造学科。ですから皆さんが知ってる方であれば*小泉先生。僕は小泉先生に直接単位もらってるんですよ。
(*小泉武夫氏 参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/
小泉武夫)
辰巳;彼の方、面白いですよねー。
中村:はい、もうメチャクチャですよ笑。でも彼から単位いただくのはとても名誉なことでした。
辰巳(東京農大の醸造学科といえば)全国の蔵元さんとかワイナリーさんの息子さんたちが集まってくるじゃないですか。
中村:(僕みたいに)まったく関係ないところから受験してくるのは珍しいパターン。
辰巳:例えば?
中村:もう亡くなっちゃったんですけどタケダワイナリーの*武田しんちゃんは同級生。
(*山形県、タケダワイナリーの武田伸一氏:不慮の事故により1999年に逝去)
辰巳:!!! 武田しんちゃん!? あっそうですか?
中村:ま、でも今は妹さんが立派にやってるんで。
辰巳:(岸平)典子さんが活躍されてますよね。しんちゃんとは仲がよかったんですか?
中村:よかったですよ。
辰巳:他には?日本酒とか?
中村:*真澄の、宮坂醸造の杜氏の”那須(賢二氏)”も同級生です。彼は平社員で入って最終的に杜氏になったんです。
(*真澄(宮坂醸造):長野県諏訪市の老舗酒蔵)
辰巳:で、中村さんは農大で勉強されて「自分はお酒造りやるんだ」と思ったわけですか?
中村:僕はディスコに行ったり笑、自動車部でラリーしながらも一応は卒業できてー。
最初はグレイスワイン(←中央葡萄酒株式会社)に就職しました。三澤さんのところで本当に可愛がってもらって、、、。
辰巳:ワイナリーに行こうと思ったのは山梨県の人間だからですか?選択肢で日本酒もあったでしょ?
その頃は日本のワイナリーもそこまで注目されてなかった、どちらかというとマイナーな仕事じゃないですか。
中村:実家(河口湖)から通えて学んだことが生かせるのが”ワイン”だった。
辰巳:22歳で中央葡萄酒の門を叩いて、
中村:三澤(茂計前社長)が(勤務先を辞して)三菱商事から帰ってきたばっかりの時、1985年に入社してすごくかわいがってもらいました。
だから入社した時は彩奈ちゃん(三澤彩奈さん 現中央葡萄酒代表取締役)はまだランドセル背負う前。
もう今はブイブイ言わしちゃってますけど笑。
辰巳:日本を代表するワイン醸造家ですもんね。
中村:当時は可愛かったですよ。
辰巳:今だって可愛いじゃないですか。今でも時々会ったり意見交換したりしてるんですか?
中村:意見交換なんて恐ろしいですけど笑、会うとご挨拶はさせてもらってます。
辰巳:”師匠の娘”って感じ?
中村:そうですそうです。でもご挨拶の返事がフレンチ(フランス語)で返ってくるんじゃないかとドキドキしてます笑。
辰巳:中央葡萄酒、競争率高かったんですか?
中村:わりとすんなり。まだ先代の社長の時代で厳しい方だったんですけど可愛がってくれました。
しばらく先代に言われてたのは、「オマエまだいたのか?早く家に帰れ」と。
(会社が好きで)なかなか家には帰りませんでした。
辰巳:それもわかります。料理人もそうだと思いますけど、すぐに家に帰る人となかなか家に帰らない人がいて。
シェフは?
井村:帰らない方です笑。
中村:ハマっちゃうんですよねぇ。
辰巳:次回はそのワイン醸造を始めた頃のお話から始めたいと思います。4月のお客様は奧野田葡萄酒の中村雅量さんをお迎えしています。
ではまた来週。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
奧野田葡萄酒醸造株式会社
http://web.okunota.com
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2022年4月7日放送回
- ワイナリー
奧野田葡萄酒醸造株式会社
http://web.okunota.com/- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/