ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2022年3月10日OA

2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2022年3月のゲストは社会福祉法人 サン・ビジョン「サンサンワイナリー」シニアアドバイザーの戸川英夫さんです。
山梨大学で発酵を学びマンズワイン(キッコーマン)に入られますが、7年間はひたすら酵母の研究だったそうです。
後半は遡ること学生時代、夢中になった映画のお話。(全5回 2回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/

辰巳:3月は5週ありますが今回は2回目。今月のお客様はサンサンワイナリーの戸川英夫さんです。
(いつも通り、会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています)

全員:よろしくお願いします!

辰巳:まずは乾杯しましょう、今日は白ワインです。

全員:カンパ~イ🎶


「サンサンエステート柿沢 シャルドネネイキッド 2019」
サンサンワイナリー リストはこちら:https://sun-vision.or.jp/sunsunwinery/winelist/

辰巳:ちょっと不思議な香り・・・。シェフ、これいかがですか?

井村:すごいフルーティ。洋ナシの印象受けたんですけど。

辰巳:桃やリンゴのコンポートみたいな感じもしますし。戸川さん、このワインは?

戸川:この後通常は樽熟成させるんですが、それをしないで「着の身着のまま=ネイキッド」という意味で。

辰巳:最近は”*アンウッデッド”とか言いますけどね。”ネイキッド”ってなんかいいですね。
(*アンウッデッド(≒ネイキッド):木樽を使わず、主にステンレスのみで醸造したワイン)

戸川:「素顔」笑。今お話いただいた”フルーティな香り”ってシュール・リーしてるところから酸化させてないので、かなりフレッシュな香りがすると思います。

辰巳:これは2019年、「SunSun エステート 柿沢シャルドネ」。柿沢っていう地名?

戸川:そうです。

辰巳:シャルドネはかなりたくさん造られてるんですか?

戸川:(柿沢エステートの)約半分、9tぐらいです。

辰巳:戸川さんにとってシャルドネってどんなブドウなんでしょ?

戸川:私も料理が好きなんですけど、それでいうと「白米」です。

辰巳:ぁ、いい表現。初めて聞きました。

辰巳:前回も言いましたけど、戸川さんは”日本ワイン界のレジェンド”。先週は広島出身で子供の頃には原爆にも遭って、その後山梨に出てきて(山梨大学で)発酵を勉強したという。その時からもう「ワインをやろう」と?
お酒の発酵と言ったって日本酒も(焼酎も)あるわけで。

戸川:えぇ。*付属設備で発酵施設研究所ってのが大学の脇にありまして、我々は「発研」って言ってたんですけど。
そこはワイン専門に研究してました。
(参考サイト:https://www.city.kofu.yamanashi.jp/daisuki/rekishi/yamanashidaigakuwain.html

辰巳:昭和35年ぐらい?日本には赤玉ポートワインぐらいしかなかったころじゃないですか。

戸川:その通りです。成人1人あたりのワインの(年間)摂取量が40cc.爆、その当時のフランスが120L。
この”3000倍”に夢と希望を持っていったんですが、「豈図らんや」でなかなか育ちませんで。

辰巳:その時の同級生は何人もいたんですか?

戸川:その時は3人か4人でしたね。まだ他にワイナリーも開けてませんでしたので。キッコーマンから「ワインを始めたい」、お醤油の中にワインを入れて”テリヤキソース”(坂本九さんの”スキヤキソング(上を向いて歩こう)”のイメージ)を作りたいと。
それまでは輸入ワインを使ってたんですが、やっぱり「自分のところで」ワインをやりたいということになったんです。

辰巳:昭和37~38年ぐらいでしたっけ。で、戸川さんが大学卒業したのは?

戸川:昭和41年です。1年遊んでることになってます笑(←さて、浪人?留年?このあと発覚します)。

辰巳:僕は3年遊んでおります笑。

戸川:それで(キッコーマンは)自社でワインを造ろうということで、ワイナリーを買収してできたのが「マンズワイン」なんです。

辰巳:それは最初から就職先として「マンズワインに行きたい」、と思ったのかそれとも他にいくつかあってどうしようと悩んだのか・・・?

戸川:お世話になった講座の先生がキッコーマンと懇意にしていたので、その教授から情報を得て「それじゃぁ」っということで。

辰巳:それでマンズワインに?

戸川:マンズワインにはすぐには行けず、7年ほど研究所に。「ワインを造る『酵母の研究』をやりなさい」と言われまして。
日本ではワインはまだ珍しかったので、世界的に有名な研究所から酵母をいただいてそれをワインにしたらどういうものができるか?という研究をしばらく。

辰巳:へぇぇぇ!じゃ20代はずっとその研究を?

戸川:そうです。「*セルカルチャー」と言って胞子から一個ずつ酵母を拾ってそれをまた戻す。(これをしていると)ワインになるまでけっこう時間かかりますんで。
(セルカルチャー(細胞培養) 参考サイト:https://www.healthcare.nikon.com/ja/ss/cell-image-lab/glossary/cell-culture.html

辰巳:まず修行時代?研究時代があったんですね。
そろそろお料理もきましたんで食べながらお話し続けたいと思います。
シェフ、これはなんでしょう?


「会津産ホワイトアスパラガスと浅利のフリカッセ 香草風味」

井村:今日はホワイトアスパラガスとあさりの組み合わせ。ハーブと一緒に軽く煮込みました。

辰巳:ホワイトアスパラはもう日本のものが出てるんですか?

井村:はい、これは会津産のアスパラです。

辰巳:ではいただきまーす。

戸川:これ、ハーブの匂いがすごいですねぇ。

辰巳:イタリアンパセリとシブレットですね。このスープの出汁はアサリと?

井村:白ワイン。シャルドネのワインの甘みがふわぁっと広がって。

辰巳:やっぱり(このお料理には)シャルドネのネイキッド(樽熟成なし)の方がいいですね。

井村:そうですね。

辰巳:なかなかマッチしてます。ちょっとパスタ入れて食べたい気もしますけど(←無類の炭水化物好き)
いかがですか、戸川さん?

戸川:「牡蠣にシャブリ」とよくいいますが、『アサリにネイキッド』笑笑。貝類はよく合いますねー。

辰巳:まだ小さいですけどアサリがよく引き立つ。これはどこのアサリ?

井村:これはまぁフツーの爆。(←まぁ海のない八王子産ではありませんね)

辰巳:アサリはこれからの季節、大きくさらに美味しくなってきますからね。この番組を聴いたお客様が来られる頃には、大きなアサリがお目見えすると思います笑。今日ご紹介したお料理、それに合わせたワインをグラスでいただけるというこの企画。
今回のペアリングは3月、4月と2ヶ月間いただけます。いやぁ、アスパラ食べると”春”って感じしますよねー。

井村:特に国産のは苦味もないので。

辰巳:ドイツではフランケン地方などでシルヴァーナ種(のワイン)と太いアスパラ合わせたりして季節の風物詩ですけどね。

戸川:そうですね。

辰巳:さぁ、戸川さんがマンズワインに入られて、卒業されてからもいくつかのワイナリーを巡られて、ずっと造り続けて、日本ワインを引っ張ってこられたわけですが。当時のマンズワインってどういう感じだったんですか?最初は小諸?勝沼?

戸川:最初は勝沼です。そのあと昭和46年ぐらいに小諸、栽培地としては福島県の南会津の方に。

辰巳:会津!?今もあるんですか?

戸川:今はどうでしょうかねぇ、もうないかもしれません。米作転換ってことで農家の方もいろいろ模索されてた時にちょうど目的が合致したんですけど、ちょっと時期尚早だったかも。。。

辰巳:甲州種は最初の頃からのワインは造っていらっしゃったと思いますが、シャルドネとか西洋品種はいつ頃から?

戸川:私が辞める頃・・・かな。けっこう最近です。テスト的には植えたことはあるんですが、商業規模になったのはそんなに古くはないですね。

辰巳:結局マンズワインには何年いらっしゃったんですか?

戸川:36年ぐらい。

(マンズワインの歴史はこちらから:https://mannswines.com/history/

辰巳:23歳から還暦ぐらいまでですね。定年で退かれてそっから山辺ワイナリー、安曇野ワイナリー、そしてサンサン・・・
ぁ、シダックス、中伊豆ワイナリーは関係なかったんでしたっけ?

戸川:そこは関係ないんですけど同僚が・・・・

辰巳:そっかそっか、*志村さん。同い年?同僚?
(*志村葡萄研究所所長 志村富男氏:https://www.dr-tomio.com/profile.html

戸川:はい、彼は栽培担当でマンズにいました。

辰巳:志村さんの方が?

戸川:後輩です。

辰巳:戸川さんの先輩ってどなたがいらっしゃるんですか?

戸川:今現役ではいないと思います。

辰巳:「どなたかのお父さん」、とかそういう世代ですね笑笑。

戸川:ですね、第一世代。今の方々のそのお父さんたち。

辰巳:その話もいろいろお聞きしたいんですが、ここでちょっとリクエスト曲。今日は何を?

戸川:「Love Letter in the Sand」というパット・ブーンの・・・

辰巳:ラブレター イン ザ ’サン’?

戸川:サンド。「砂に書いたラブレター」、ですよ。

辰巳:ぁ、そうか。てっきりまた’サンサン’ワイナリーにかけたものかと笑笑。

戸川:実はそれにもかけてました笑。

辰巳:あるいは’サン(sans)’はフランス語で「without」の意味もありますけど。
ではこちらの曲を聴いてみたいと思います。どうぞ。


Pat Boone「Love Letter in the Sand」(1931年)
https://www.youtube.com/watch?v=2ENzT9k1LRs

辰巳:この曲の思い出は?

戸川:アメリカ映画の虜になったんです、戦後の楽しみが少ない世代だったので。

辰巳:それはいつ頃ですか?

戸川:高校生時代です。浪人時代は映画三昧でした。

辰巳:その頃は映画全盛時代ですよね?映画人口が最も多かった時代。そのあとテレビが出てきて食われちゃって、だんだん斜陽産業になっていくんですけど。例えばどんな映画をご覧になったんですか?

戸川:例えば・・・喜劇もありました。「*ダニー・ケイ」だとか。
(*ダニー・ケイ (Danny Kaye):アメリカの俳優・コメディアン(1911-1987))

辰巳:西部劇は?

戸川:「*アラン・ラットのシェーン」とか「**オッケー牧場」(なぜか笑)とか。
(*アラン・ラット/シェーン 参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/アラン・ラッド)
(**「OK牧場の決斗」1957年のアメリカ映画)

辰巳:好きな女優さんは?

戸川:*ビビアン・リーはすごかったですよね。**デボラ・カーも。***エリザベス・テーラーはちょっと近づきがたい感じ。
(*ビビアン・リー(Vivien Leigh):イギリス(1913-1967))
(**デボラ・カー(Deborah Kerr):イギリス(1921-2007))
(***エリザベス・テーラー(Dame Elizabeth Rosemond Taylor):イギリス(1932-2011))

辰巳:そうか、そういう時代ですね。

戸川:フランスの女優さんも。ブリジッド・バルドー(Brigitte Bardot 1934-)やソフィア・ローレン(Sophia Loren(伊) 1934-)・・・。

辰巳:みなさんまだお元気みたいですからね。

戸川:すごいですね笑。

辰巳:何がすごいんだか笑笑。
さて、マンズワインに入られて酵母の勉強を7年されたあと、それからようやくワイン造り?

戸川:はい、それからマンズワインに配属されまして、

辰巳:ぁ、研究所時代はマンズワインではなく?

戸川:キッコーマンでした。

辰巳:そうですか。(千葉県)野田?

戸川:そうです。野田で7年間。お醤油、清酒の歴史はキッコーマンにあったんですけど、ワインはなかったので。
ドイツで勉強された方がトップにいまして、そこに6~7人集められてワインの研究をしてたんです。

辰巳:その頃からの人たちでワインにいかれたのは戸川さんだけなんですか?

戸川:そうです。

辰巳:(大阪)万博の頃?

戸川:真っ最中でしたね。(キッコーマンは)”水中レストラン”っていうのを万博に作ってまして、その時にワインを提供してました。
お醤油を使った日本料理に合わせるお酒としてワインを合わせました。それを契機に日本の人たちにワインが浸透したと思います。


「水中レストラン」(画像はキッコーマンHPより)

辰巳:こういう経験をなさってきてるのは本当に貴重ですよね。あれ、そろそろ(番組終了)時間かな。いい話になってくると時間がきてしまうという笑。
次週はその万博以降の、『夫婦でワイン』とかキッコーマンが仕掛けたお話、

戸川:(6代目 市川)染五郎さん。
(当時まだ松本幸四郎さんだった懐かしの動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=YEBl2QDCeKY

辰巳:現在の(市川)白鸚さんですね。そのお話も来週伺いたいと思います。3月のお客様は’日本ワインのレジェンド’「サンサンワイナリー」の戸川英夫さんをお迎えしてお送りしています。今日はありがとうございました!

全員:ありがとうございました!


(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)

News Data

ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2022年3月10日放送回

ワイナリー

サンサンワイナリー
https://sun-vision.or.jp/sunsunwinery/

収録会場

ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/

「日本のワインを愛する会」入会申込

登録無料

入会申込フォーム