2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
9月のゲストは栃木県足利市、有限会社ココ・ファーム・ワイナリーの専務取締役 池上知恵子さんです。自称ココ・ファームの”女中頭”池上さんと「ココ・ファームは自身の日本ワインの原点」という辰巳さんの歴史と記憶を5回に渡ってすり合わせていきます。(全5回 1回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/
辰巳:はい、9月のお客様は栃木県足利市のココ・ファーム・ワイナリーの池上知恵子さんです!9月は木曜が5回ありますんで5回の収録になります。
全員:よろしくお願いします!
辰巳:(肩書きは)専務なんですけど、実際は代表というかオーナー、ですよね?
池上:いえいえいえ、そんな大それたもんじゃないです、”女中頭”でございます爆。
辰巳:それもピンとくるようなこないようないい表現ですね笑笑。
ココ・ファームはね、日本ワインの中でも独特な地位といいますか、実績を残されていて、僕も日本ワインを知った最初の頃から飲んでいて、とても思い出深いといいますか、縁も深いワイナリーです。ではワインを飲みながら話を進めていきたいと思います。
カンパ~イ🎶
2017 プティ・マンサン スパークリング
https://cocowineshop.com/SHOP/ADB-3577.html
辰巳:おいっし~ぃ!甘みはないのに甘い香りと深みのある酸が。これはどういうワインなんでしょうか?
池上:これはプチ・マンサンをね、遊びでスパークリング(ワイン)にしてみました。
辰巳:プチ・マンサンのスパークリングは僕は初めて、海外のやつも含めて。南仏とかではやってるんでしょうか?
池上:やってるでしょうね。ワインってそこがそれで有名だったりしますけど(←ご当地ではとても有名だけれどまだワールドワイドまでには有名ではない)。
辰巳:このプチ・マンサンていう品種は南仏で大人気、日本でもだいぶ増えてきましたよね。暑~い気候の中でもきちんと酸も残るし、味わいも深いし。で、”作りやすさ”はどうなんですか?
池上:意外と合ってるんです、この高温多湿の気候に。
辰巳:皮もわりと分厚いって聞きますけど?
池上:そうです、小粒で、
辰巳:、あまり病気にもならない。日本においてこのプチ・マンサンはこれからアルバリーニョとともにどんどん増えていくと思います。
今回も「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただきます。
井村:よろしくお願いします!
辰巳:池上さんとは?
井村:初めてです。
池上:でも私はなんとなく存じ上げてました。
辰巳:おそらく井村シェフのお料理を別の場所で食べたことがおありかと。このVillas des Marriagesの親会社とも深くて長い関係だという。ま、その話は後ほどということで。井村シェフ、このワインいかがですか?
井村:はい、このプティ・マンサンって(品種)初めて飲んだんですけど、ハーブとか青リンゴのようなすごいスッキリした香りで、フレッシュで、
辰巳:、一方で深みもある。
井村:このアッツい夏にはピッタリのワインだと思います。
辰巳:アッツい夏だからかどうか、シェフまた刈り上げました?笑。
池上:でもステキ、若い人のヘアスタイルね。(←池上さん、シェフ先日50歳になりましたー)
辰巳:なんかあったんですかー?
井村:いやいや何もありません、ただ暑かっただけー汗笑。
辰巳:でもさすが!フランスに(修行して)いただけあって、プチ・マンサンをちゃんと”プティ・マンサン”と発音しました。(←フランス語表記はPetit Manseng)ココ・ファームでは”プティ・マンサン”と言ってます?
池上:んーいろいろ、考えたこともなかった爆。どっちがステキ?
辰巳:日本語にすると”プチ”だったり、”プティ”だったり。。。ま、どっちでもいっか笑笑(←ぁ、終いには投げました)。
池上:最近はボルドーなんかでも「(プティ・マンサンを)育てていいよー」なんて*お達しが。(参考サイト:http://www.worldfinewines.com/news19/190616newvarietiesinbdx.html)
辰巳:あ、そうですよー。あの歴史あるボルドー地区がどんどん地球の温暖化で暑くなってきたので、今まで認められなかった品種にまで『OK!」が出たという。世の中もワイン界も変わってる、、、。そういう意味でもこれから頭角を現しそうな品種ですよね。で、このワインは瓶内二次発酵ですか?
池上:これ全部野生酵母で発酵させてるんです。だから詰め直すんじゃなくて、最初から発酵途中のものを瓶に入れます。そこで一回澱を抜いて・・・だから発酵一次も二次も瓶内で。
辰巳:んーなるほど。(ブドウ自体に)糖度があるから他の糖は加える必要がない?(池上:諾)アルコール度数は?
池上:12.1%。けっこうあるんですよ、補糖も補酸もしてないし。瓶内二次発酵のための糖も入れてない。収穫は2017年でしょ、で、デゴルジュマンしたのが2021年の1月。
辰巳:ボトリングしたのはたったの528本!?貴重なワインです。
池上:これは”遊びで造った”ので笑。
辰巳:確かに”遊び”の多いワイナリーです。
池上:スイマセン、遊んでばっかりで笑。
辰巳:今日のこのプティ・マンサンに合わせたお料理はなんでしょ?
トマトのヴァヴァロワと茄子のヴルーテ コンソメのジュレを添えて
井村:はい、今日は”トマトのババロワ”、上にはナスのスープが乗ってます。その上にはコンソメのジュレが。
辰巳:このお店でのコースは最初に”ヴルーテ”っていうちょっととろみのあるスープが出てくるんですけどその流れなんでしょうか?まずはいただきます!
ぁw、美味し♡トマトのプリン?ババロワ?ゼラチンでトマトを固めた上にはナスのブルーテ。
井村:そうです、ナスは焼かずに炒めただけ。
辰巳:そして上にコンソメジュレとハーブ、エディブルフラワーが乗ってすごく夏らしい。
池上:なんか南仏にいるみたい笑。
井村:ありがとうございます!
辰巳:これー、ワインとバッチリ合いますねぇぇ。ほんんんっとに残念ながら今は緊急事態宣言中なのでお客様には召し上がっていただけないんですが、本来ならば今ご紹介したワインとお料理の組み合わせをこのお店で楽しんでいただけるはずなんです。今年に入ってこの”宣言”が長いんで(数ヶ月前から)実現してないペアリングのお料理が溜まって来ちゃって笑。この番組始まってからもう70種類のペアリングがあるのに、、、これからどうしますか?
池上:これはみなさんにも是非召し上がっていただきたいですよね。
辰巳:もう少し大きなムーブメントにしなきゃいけませんよね。いつまでも我々だけで楽しむのは申し訳ない。宣言が開けた暁にはぜひ!
さ、今月は池上さんのお話を5週に渡ってお聞きしますが、ざっとココファームの歴史をラジオをお聴きの皆さんに1分か1分半ぐらいで笑、ご説明ください。
池上:1950年代に知的な障害のある中学生と*私たちが急斜面に畑を開拓、開墾しました。それが昭和33年ごろ。
(*池上さんのお父上、川田昇氏を始めとする有志、その後の経過の詳細はこちら:https://cocowine.com/about_coco/)
辰巳:はい、私が生まれたのがその年なんです。
池上:そうなんです。私たちの畑と(辰巳さんは)同い年なんです。
辰巳:そういう意味でも私の”日本ワインの原点”って感じがするんですよね~。川田先生は今のこころみ学園を開園する前?
池上:そう、中学校の教員で(今は特別支援学校と言われている)当時の特殊学級の担当だった頃。その知的障害のある子たちは、机の前ではションボリしてるのに山の中に入ると急に元気になって、チャンバラしたりおっきぃ声で歌ったり。まぁこういうところで生き生きさせてあげられたらいいなぁって思って。当時そういう子たちは「アナタは何もできないんだからあっち行ってればいい」って言われてたんだけど、父は「できれば思いっきりやらせたい」って思ってブドウ畑を開墾したんです。なぜかというと、、、たくさんの仕事を用意するため。(全員:驚!)だから今とはまったく逆の発想。
辰巳:仕事、わざわざ手間暇のかかる作業を作ろうという?
池上:そうそう、南側から草を刈りだして、北に行く頃にはまた南から草が生えてくるような広さじゃないと(生徒たちの)力が余ってしまうから。たくさんの力が出せるように、ということで。だから除草剤撒いちゃうと仕事がなくなっちゃうから(撒かない)。
辰巳:”除草剤撒くと仕事がなくなる”って深い話ですね。
池上:どっちかっていうと”仕事増やす”ための場所だったんです。そこにブドウを植えたのは「それがワインになるから」ってこともあったんですけどね。
辰巳:その時の川田先生は公務員として?
池上:そうです、教員として。
辰巳:じゃ土地はどうしたんですか?
池上:(川田氏が)購入したんです。でも平らなところだと(価格が)高いじゃないですか。急斜面だといくらか安いので笑。すごい急斜面、38度でね(←って笑っておっしゃいますが実際目の当たりにすると言葉を失う角度です)。
辰巳:その当時は生徒さんたち何名ぐらい?
池上:学級としては20人とか、その頃の有名な話はたくさんあって。
(ここからしばしかつての生徒さんの”武勇伝”です)
園長よりも先に免許(車の運転免許)とった子(生徒)がいるの。園長が「オマエ字も読めないのに筆記(試験)はどうしたんだ?」って聞いたらその子は「園長先生は文章を読むんかぃ?」って。「読まなきゃ○とか×とかつけられないじゃないか?」っていうとその子は「園長先生文章読んじゃダメだよ、(問題の最初に)カタカナがチョロチョロってあるのは正解で、漢字が最初にあるのはバツ」なんだって。とにかく”カタチ”で覚える。昔は問題集みたいのがあってそれの形で覚えるんですって、読んじゃうと間違えちゃうからって。「じゃぁ実技はどうしたんだ?」ってことになって。だって右も左もわかんないし。「園長先生、バックミラーはどこに合わせてるんかい?」「そんなの後ろに合わせるに決まってるでしょ!」っと返すと「ダメだそれじゃ!バックミラーは教官に合わせる。教官がちょっとでも変な顔したらその逆をやればいいんだ」って。すごいでしょ!?(全員:!!!)
辰巳:こんな話まだまだいっぱいあると思いますが、ここで曲を挟みたいと思います。今日のリクエストは何にしましょうか?
池上:はい、*古澤巌さんの、
(*古澤巌 :https://hats.jp/artist/iwaofurusawa/)
辰巳:ヴァイオリストでココ・ファームの取締役!
池上:「オブレビオン」
辰巳:ピアソラ!今年は彼の生誕100年になるんですよね。では聴いてみたいと思います、古澤巌のオブレビオン!
古澤巌 オブレビオン(2013年)
(こちらからダウンロードくださいhttps://mysound.jp/song/1538080/)
辰巳:やっぱりいいですね、古澤巌のヴァイオリンは。「ココ・ファーム」っていう名前を最初に聞いたのも古澤巌からだったんです。「足利(←古澤さんの故郷です)にとってもいいワイナリーがあるんだけどー」とか言ってココ・ファームのワインをいただいたのが四半世紀、いや、もっと前ですね。
池上:そう、30年近く前だと思います。だからその頃の認識は”辰巳さんは古澤巌さんのお友達”笑。
辰巳:そんな感じですね、まだ30代の半ばぐらい笑。
辰巳:先ほど川田先生が亡くなられたのいつだっておっしゃいました?
池上:2010年。
辰巳:生前僕は大してお話ししたこともなくご挨拶ぐらいだったんですけど、、、。
池上:だって辰巳さんが”日本ワイン”をおやりになり始めたのが?
辰巳:ちゃんと応援し始めたのが今から18年ぐらい前。
池上:じゃ、父の代わりに・・・。
辰巳:そうかもしれません。さっきの話の中でいちばん印象深かったのは、”(こころみ学園は)知的障害者の学園”なんですけども、”知的な障害者”なんです、本当に。我々が見えないものが見える、感じられないものを感じられてる、すごい能力の高い人たちという感じがしました。それと彼らのために「わざわざ手間のかかる仕事を作る」。ワインって「手間をかければかけるほどいいものができる」、これは真実です!
池上:そうです、特に畑ではね。
辰巳:いろんなこと思い出すと懐かしいし、(池上さんにとって)涙の出るようなこともたくさんあるかも知れませんけど、続きはまた来週以降伺っていきたいと思います。シェフはいかがでしたか?
井村:ワインの方は何ていうんでしょ?もうすごい料理に合わせやすくて緊急事態宣言がなければすぐにでもお出ししたい!
辰巳:いろんな意味で新ためて素晴らしいワイナリーだと思います。来週以降もよろしくお願いします。9月のゲストは栃木県足利のココ・ファーム&ワイナリーの池上知恵子さんでした。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、お招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが造るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、コロナ対策の政府の対応によってはこのサービスが提供できない可能性があります。詳しくはお店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2021年9月2日放送回
- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/