八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」2019年11月7日放送分

ゲストはサントリーワインインターナショナル、執行役員 生産研究本部長の渡辺直樹さん。
入社から三十余年、登美の丘ワイナリーでワイン造り一筋でしたが、現在はお台場のオフィスに単身赴任されています。
今回はそのオフィスから、登美の丘時代を振り返りながら「甲州愛」を語ります!2回シリーズ前編

辰巳:今回はサントリーの生産研究本部長、渡辺直樹さんにお越しいただきました!

辰巳・渡辺:こんにちは!!

辰巳:えー、”’前’登美の丘ワイナリーの所長”といったほうが一般にはわかりやすいかもしれませんね。

渡辺:そうですね、ありがとうございます!

辰巳:いつもお世話になっております笑(なんだか営業トーク)。
すいませんこんな声で(ちょっと声が掠れています)。舞台が終わってちょっと緊張感が切れてしまったのか?なんか大きな仕事の後やっちゃうんですよ。
あと年末年始とかね。今日僕そんなに喋りませんので(うそばっかり)笑。
(ここから本題です)
登美の丘ワイナリーにずっといらしたんですよね?

渡辺:そうですね、昭和の時代、昭和63年から。

辰巳:じゃぁサントリーひと筋三十余年?

渡辺:そうですね、ブドウ畑でワイン造ってました。

辰巳:最初からワイン?

渡辺:えーと、、、ほんとはウィスキーが造りたくて入ったんですけど、ま、入社当時(会社から)’ワインを造れ’と言われて。

辰巳:それは技術職として?

渡辺:そうです、新卒で。

辰巳:あの頃のサントリーの新卒(採用)はものすごい人気高かったですよね?

渡辺:ま、そうですね。私はどうだったか知りませんが笑。

辰巳;狭き門をくぐって入ってきた・・・。
(ウィスキーの)’山崎’を造ろうと・・・。

渡辺:家族がお酒好きだったんで喜ばそうと。そういう奴が家族に一人くらいいても、という思いで。

辰巳:ご出身はどちら?

渡辺:愛知県の岡崎、徳川家康のお膝元。

辰巳:そっから西へ行くか東に行くか?
今日はサントリーのお台場のオフィスで録音してるんですが、本社は大阪ですもんね。

渡辺:そうですね、僕には(サントリーといえば)’大阪’というイメージです。

辰巳:最初はどこに(赴任していた)?

渡辺:ちょっとだけ大阪にいて、そっからは山梨の登美の丘。
9月から2ヶ月新人研修やって(ブドウの収穫時期)「そのまんま山梨残ってください」って(上司から)言われてそのまんま・・・笑。

辰巳:でもウィスキー造りたいって言ったんでしょ?

渡辺:最初の研修(これは大阪)2週間の最終日に「君はワイン」って笑。

辰巳:(渡辺さんの)顔が’ワイン;だったん?笑

渡辺:ま、そうかもしれませんね笑。
’サントリー’ですからビールやウィスキーが大事なんですよ、特に当時は。

辰巳:でもその頃から「ch.ラグランジュ」(仏.ボルドー)を買収したり(当時のサントリー社長)佐治敬三さんが存命の時から徐々にワインに力入れ始めたんじゃないですか?

渡辺:ま、それもありますが、まずは優秀な奴はビール、ウィスキーにいって、体が丈夫そうな奴はワインにと。
そういうことだったんじゃないかと今ちょっと思ってるんですけどね笑。

辰巳;ホントですかぁ?笑。
それまでワインは飲んでたんですか?

渡辺:学生時代は仙台にいたんです。その時飲んでたのは、岸平さん(タケダワイナリー)の’蔵王スター’。

辰巳:じゃぁわりと早い時から日本ワインを飲んでたんですね。

渡辺:そうです、一升瓶ワインで。それとウィスキーかな。

辰巳:僕も京都で一升瓶でした。
で、いつからウィスキーよりワインが好きになりました?

渡辺:今でもウィスキー好きですよ。でもワイン造り始めて「ワインってホント面白いな」って1年経たない比較的早いタイミングで思いましたね。ただ、わからないことだらけ。
簡単にワインになるっていえばなるんですけど、どうすればどんなワインになるってのがわからない、なかなか思い通りのワインにならないってのが面白いなぁって。

辰巳:理科系でしょ?(渡辺さん頷)アルコール発酵はわかってる。

渡辺:素材の持ってる良さがどう活きてくるのか、が何回か造っていく中でわかってきて。その面白さですよね。

辰巳:そして登美の丘ワイナリーの所長になって。(所長の)期間はどれくらい?

渡辺:4年ほど。その前に技術長を8年くらい。甲州だとか、我々のフラッグシップである”登美”赤、白の品質向上を、ブドウ作りからワイン醸造までの技術開発・モノ造りを一貫して担当してきました。

(ワイン登場)

サントリー登美の丘 甲州2018

辰巳:そろそろワインを飲みたいと思いますが。持ってきていただいたのは”登美の丘甲州”。
(旧)日本ワインを愛する会に加担した16年ぐらい前からサントリーさんのワイン関係の方とお付き合いが始まったんですけど、
その時はまだ(登美の丘の)甲州なかったんですよ。その時から僕が「甲州やるべきだ」って言ってたの知ってますか?

渡辺:いや、知りませんでした。私も時を同じくして「甲州が大事だ」という話をしてました。
その頃はヨーロッパ系の品種を主に造っていたのでやっぱり’その道を行く’のが良くて、甲州で辛口を造らなくてもいいんじゃないかってそういう話もあったんですけど
「いや、そうじゃない、この先世界と戦って行こうとする時に(まずは国際品種で結果を出してワイナリーの実力を理解してもらった上で)’ここにしかない’オリジナリティーはなんなんだ?」
って思ったら、この甲州がすごく大事だなっと思ったんです。これからは本当に美味しい甲州を造らなきゃいけないよね、って話になったんですけど当時はなかなかね・・・。


渡辺さん、慣れた手つきで抜栓します

辰巳:ではちょっといただきながら・・・。
いわゆる”ジャパンプレミアム(シリーズ)”とは違うんですか?

渡辺:これは”登美の丘シリーズ”。山梨にある25haの自社畑のブドウだけで造られたワインですね。

辰巳:いわゆる’ドメーヌ’ものですね。”ジャパンプレミアムシリーズ”はどっちかというと’ネゴシャン’ものというかね。

渡辺:そうですね。ジャパンプレミアムは契約農家さんのブドウで造ってます。

辰巳:では乾杯しましょう!

辰巳・渡辺:カンパイ!

辰巳:甲州の中でも、割としっかりした・・・凝縮感があって、酸味もある。

渡辺:私たちの土地で甲州を造ると凝縮感もあるけれど柔らかさもあるんですね。

辰巳:登美の丘ワイナリーの中の畑ですよね?これは棚(栽培)ですか?

渡辺:ほぼ棚ですね。垣根も作り始めましたけど2018はまだ棚。これは1978年に植えた樹のブドウも入ってます。
(登美の丘ワイナリーは)1909年に開園、1936年にサントリーが継承、50年代にヨーロッパ品種を植えたんですね。
84年に寒さで樹が枯れちゃうってことがあったんですけど、欧州系はこのタイミングで植え替え、甲州は寒さに強かったのか、唯一生き残った品種なんです。

辰巳:直径20cmくらいありそうな太い樹ですよね。

渡辺:まさに!あまりたくさんは採らないしあまり早く収穫しない。10月の終わりくらいかな、でも今年の収穫は(全体的に)早かったんで10月の中旬になりましたけど。

辰巳:まったく甲州(ワインが)なかった時代から一気にダーーーっと増えてきてね。ジャパンプレミアムは(量産)日本一ですか?

渡辺:そうですね、(甲州)単体としては。マンズワインのスパークリングと競ってます笑。

辰巳:今これ(登美の丘甲州)何本ぐらい造ってるんですか?

渡辺:これは少ないです。数百ケース、1万本ぐらいかな。でも増えてますよ、自社畑を増やしてるので。

辰巳;ちなみにこれはおいくらですか?

渡辺:4000円。

辰巳:やっぱ強気ですね。さすがサントリー!ま、自社畑ですからねー、古木で造られた甲州ですから(渡辺さん苦笑)。
ジャパンプレミアムの甲州(のお値段)は?

渡辺:希望小売価格2000円弱ぐらい。

辰巳:倍くらい違いますけど、これはこれでちゃんと住み分けができてるんでいいんじゃないかと。
2003~2004年ごろにその頃のワイン事業部(現サントリーワインインターナショナル)のめっちゃ元気な部長、塩見さんとメシ食ったりいろいろしてた中で
「なんでサントリーは甲州造らないんですか!?」って散々言ってた覚えがあるんですよ。多分この頃でしょう(ワイン造りの体制が)変わったのって?

渡辺:90年代の終わりに(僕が)’甲州!’って言って、その時は(商品としては)採用されなかったんですけど、場内限定で辛口甲州を造ったんですよ。
それがベースになって、今度は甲州を樽で発酵させる’甲州樽発酵’っていうのを出してそれが全国販売になり、登美の丘甲州に繋がっていったんです。
一貫して自社畑なんですけど名前を変遷しながら・・・。
そういう意味ではメルロー、シャルドネ、シラーとかのヨーロッパ系品種中心ではあったけれど「甲州って大事だなぁ」っていう想いはずっとありましたよね。

辰巳:’登美の丘シリーズ’の甲州が出たのが2004年、でしたよね。
その頃に飲んだロゼ、ちょっと樽で発酵させた・・・。これ飲んでむちゃくちゃ美味しかった覚えがあるんですけど。

渡辺:アレ、私がやらせてもらったんです。一貫して登美の畑からどんなものができるかって考えて造ってたんですけど、
そのロゼは”登美”の赤(主にカベルネ・ソーヴィニョン)を造るときにセニエにしたジュースを樽に入れて発酵させたものだったんです。

辰巳:毎年は造ってないんですよね?

渡辺:造ったり造らなかったり、ほぼ場内限定みたいな感じで出してたので。まぁ知る人ぞ知る笑。それを褒めていただきありがとうございます。

辰巳:登美の丘ワイナリー、いいとこですよね。

渡辺:1909年に開園して今年で110年ですねー。1936年にサントリーが継承したわけですが、当時は”赤玉ポートワイン”を日本のブドウから造ろうと鳥井信治郎(当時の社長)が言い出して。
この登美と、塩尻の醸造所を立ち上げました。

辰巳:(’日本ワインの父’と呼ばれた新潟の岩の原葡萄園設立者)川上善兵衛さんがまだ存命だった頃ですか?

渡辺:そうです。サントリーが登美の丘を立ち上げる時に善兵衛さんも来てくれて、鳥井信治郎と一緒に畑を見て「私たちが手を携えて、一緒にブドウを、ワインを造ろう」と。
南に富士山が見えてね。

辰巳:勝沼はあんまり富士山見えないんですよね笑。

渡辺:勝沼は(富士山に)近いんで、ちょっと引かないと(見えない)笑。ぜひ富士山だけでも見にきてもらえれば笑。

辰巳:(渡辺さんは)岩の原にはまったく関わってないんですか?

渡辺:岩の原の取締役も一応。まぁ何を取り締まってるのかっていう笑笑。
もっといいブドウをどうやって採るのか、そっからどうやってワインを造っていくのかっていうことを一緒になってやってます。

辰巳:登美の丘に30年いて、今管理職、執行役員になって東京に本拠を移してどうですか?家は山梨でしょ?家族は向こうで(渡辺さんは)単身?

渡辺:ウィークデイはこっち(東京)で、金曜の夜山梨帰って月曜日にまた東京。いやぁ慣れないですねぇ、いつになったら慣れるんですかねぇ笑。

辰巳:作業服も着てないし。

渡辺:あの、オフィスで作業着着るとものすごく違和感があるんですよ、もっとも落ち着かない気分。やっぱりスーツが・・・。

辰巳:いや、(スーツ姿は)これはこれでお似合いですよ。
今日は渡辺さん東京にいるといいな、で無理やりお邪魔しましたが、次回も引き続きお話を伺いたいなと思います。
本日のお客様はサントリーワインインターナショナル株式会社、執行役員生産研究本部長、渡辺直樹さんをお迎えしました。

辰巳・渡辺:ありがとうございました!

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八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」

2019年11月7日放送分

ワイナリー

サントリーワインインターナショナル
登美の丘ワイナリー(山梨県)でのブドウ栽培・ワイン醸造、新潟県の岩の原葡萄園の運営など、日本ワインの普及・発展・品質向上を牽引するほか、
ボルドーのch.ラグランジュやch.ベイシュヴェルの経営、海外のファインワインの輸入等、グローバルな視野でのワインビジネスを目指す。

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