2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2022年3月のゲストは社会福祉法人 サン・ビジョン「サンサンワイナリー」シニアアドバイザーの戸川英夫さんです。
キッコーマンでの7年の研究所生活を経て、戸川さんのワイン造りがようやく始まります。
マンズワイン時代は研修やワイン生産などを半世紀前から海外で経験、「日本ワインのレジェンド」たる所以がわかります。
当時の懐かしいCM動画もお楽しみ下さい。(全5回 3回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/
辰巳:3月3回目の放送です。今月のお客様は長野県塩尻にあります「サンサンワイナリー」の戸川英夫さんです。
(いつもの通り「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席いただいています)
全員:よろしくお願いします!
辰巳:さぁ、今日はロゼです。そろそろ「戸川さんのワイン造り」を伺わなくちゃなと思っております。
(←前2週はお生まれになって育った広島、学生時代、マンズワインに入社したお話まででした)
まずは乾杯しましょう。
全員:カンパ~イ🎶
「サンサンエステート 柿沢ロゼ 2018」
(サンサンワイナリーのワインリストはこちら:https://sun-vision.or.jp/sunsunwinery/winelist/)
辰巳:このロゼは2018年、少し熟成が入ったロゼですがこれまた不思議な香りがします。これはメルローですか?
戸川:えぇそうです、メルローのセニエ。
辰巳:セニエというのは濃い赤ワインを造ろうとするとき、最初に水分を抜いてしまうという副産物(その抜いた水分がロゼになります)なんですけど、熟成してるしメルローの土っぽい香りもするし、なんか典型的なロゼって感じがします。
シェフ、このワインどうですか?
井村:いやぁこのワイン、他に2020ヴィンテージも飲んだんですけど私はこの2018年に惚れました笑笑。
飲んだ瞬間に「これだ!」と思いました。
辰巳:どの辺に惚れました?
井村:熟成した旨味、じわぁっと喉の奥に広がるような香りがすごく素敵で。
辰巳:あれ、この2018年、シラーもブレンドされてる?(戸川:頷)年によってブレンド比率が違う。
2020年はメルロー100%でしたけど、、、。
戸川:ご指摘にちょっとビクッとしましたけど笑。まさに、(シラー)混ぜてます。
辰巳:そんな気がしました笑。どれぐらい?
戸川:15%。シラー特有の*ロタンドンというスパイシーな香りが。
(*ロタンドン 参考サイト:https://wandsmagazine.jp/archives/2662)
辰巳:”ロタンドン”っていうのは化学物質?
戸川:はい、その香りに惹かれちゃいまして笑。15%ですけどやっぱりこの香りにいっちゃうんですね。
辰巳:2018年はいい年だったんですか?
戸川:そこそこ。
辰巳:で、2020年の方はシラー使ってないってのはどういうことなんですか?
戸川:シラー単独でもできるんじゃないか!?ってことで。
辰巳:なるほど。ところで「サンサンワイナリー」っていつできたんでしたっけ?
戸川:ワイナリーは2015年にできまして、畑は2011年に試験栽培が始まりました。
辰巳:戸川さんはいつから?
戸川:2012年からです。
辰巳:マンズワイン(キッコーマン)に36年いらして退職された後、まずは山辺ワイナリーにいらしたんですよね?
戸川:まず最初は安曇野ワイン、安曇野ワイナリーではありません。ちょうど経営がおかしくなった時にお呼びがかかって。
それから信濃ワインです。
辰巳:信濃ワインにも?いろいろなさってますね~笑。それから山辺ワイナリー、安曇野ワイナリー、そしてサンサンときたところで先週の続き、マンズワインに入って酵母の研究されてからの36年間のワイン造り。
その頃の話を伺いたいんですけども。その頃はある程度ご自分の好きなことやらせてもらえたんですか?
戸川:「海外で勉強して来い!」って言われて。昭和48年かな。
辰巳:入社が昭和41年で7年間研究所(キッコーマン)にいらしてからマンズワインの人事になって「まず行って来い」と?
どこに?
戸川:ドイツのガイゼンハイムというところに、ラインガウ(地方)です。そこのブドウ酒研究所の所長が、キッコーマン時代の研究所のトップと仲が良くて。そこの先生の元で酵母、ブドウ栽培を何ヶ月かやってこいと。
辰巳:何年おられた?
戸川:そこに3~4ヶ月いてその後フランスに行ったりUSデイヴィス行ったりグルグル~っと。
辰巳:フランスは?
戸川:ボルドーです。その後ボルドー大学には1年半ぐらい行きましたけど。おいしいフランス料理だとかワインをその時いただきました。
辰巳:やっぱりフランス料理は美味しかったですか?(戸川:頷)今でこそドイツも料理美味しいですけど、以前はねぇ、ほとんど美味しいものないと言われてましたからねぇ漏笑。
でもラインガウはワイン美味しいじゃないですか、僕もリースリング大好きですけど。
戸川:まだ日本人が「ワインといえば」ドイツの甘いワインに恋い焦がれてた時で、モーゼルだライン(地方の)だっていう*アウスレーゼや*カビネットに憧れてる時代。(*ドイツワインにおけるブドウの糖度の等級)
辰巳:僕もどっちかというとそっちでしたね。(その当時から)日本ワインの一升瓶も飲んてましたけど、でも’美味しいな’と思ったのはドイツワインからでした。
戸川:まさにその通りで、「こんな美味しいワインがあるのか?」と。今はだいぶドライになって、ハルプトロッケン(半甘口)もだいぶ美味しくなったし地球温暖化で赤ワインの美味しいのができるようになった。変わってまいりました、「ドイツ、美味しいな」と。
辰巳:では料理をいただきながらお話を続けたいと思います。シェフ、今日のお料理はなんでしょうか?
井村:今日はメバルの海草蒸し
「メバルのワカメ蒸しと春野菜 グリンピースのソース」
辰巳:てぇぇぇ!なんか黒いお皿の上に野菜畑みたいな。
井村:こういう春野菜を使った料理を”プランタニエ”っていうんです。フランス語で春という意味のプランタン。
辰巳:かぶら、菜の花、芽キャベツ、ロマネスコ、ケール、、、このグリーンのソースは?
井村:グリンピースにメバルを蒸した時の煮汁を入れてます。
辰巳:ではいただきます!
戸川:んまい♡(←戸川さんはメバルが大好き)
辰巳:ワカメも春ですよね。磯の香りがなんともいえない。
井村:このロゼとトマトの香りが被ったんでトマトのコンフィを添えてあるんです、ソースがわりにと思って。
戸川:最高ですね、これ。
辰巳:いいお店でしょ?
井村:実は今年で創業70周年なんです。
辰巳:*プリオホールディングスといって元々は群馬県の伊勢崎でお蕎麦やさんから始めた会社で。
今は結婚式場として関東、長野なんかに15軒あるんです。
(*プリオホールディングス:https://prior.co.jp)
戸川:群馬はどちらでしたっけ?
井村:伊勢崎です。
戸川:オートレース笑笑。
辰巳:そっちも詳しいんですか?笑笑。
会社としては70周年ですけど、この「多摩南大沢」はまだ2年?
井村:2年半です。
辰巳:シェフが乗り込んで来られた頃に笑、「日本ワインの店にしましょう!」っと僕が提案して、今このお店で使われているのはほとんど日本ワイン。結婚式場でもあるんですけど、お式では日本ワインはどうですか?
井村:ご要望があれば。私がアピールしております。
辰巳:ぜひ鬼プッシュしてください。
戸川:昨今はいいブドウができるようになって自信を持って使っていただきたい、温暖化で補糖なしで真っ当なワインができるので。
辰巳:そう、このロゼのアルコール度数が13%!
戸川:収穫をちょっと遅らせたら糖度がグッといっちゃって。
辰巳:10月半ばで無補糖で13%ってなかなかすごいですよね。セニエしても度数は変わりませんからね。
戸川:でもセニエするとどこか土っぽいというか土着性が出てきて「その土地のブドウだなぁ」と。
日本では白と赤を混ぜて造るのが’ロゼ’だったんですけど、近年フランス並みに赤(黒ブドウ)から造るようになった。
セニエして土臭いのは「認めていただいた」と思っています。
辰巳:もう少し(ワインとお料理を)頂きたいのでリクエスト曲を聴きながら。今日はなんでしょ?
戸川:「Only You」。
辰巳:今日は3回目ですけど、これまで全部横文字の歌。
戸川:針音、ハリオトというかシンオンというか、”レコード”の音が入る曲ばっかり選んでみました笑。
辰巳:ナガオカのレコード針みたいな笑。
戸川:今も健在です。
辰巳:最近ここの女性社長と知り合いになりましてね。この方も結構ワイン好きだったので今度何かの機会に笑。
The Platters「Only You」(1955)
https://www.youtube.com/watch?v=5p2k55F-uag
辰巳:これは1955年の歌らしいですね。ってことは中学生の頃から聴いてらしたんですか?
戸川:レコード自体は高校生ぐらいから成人になる頃なんです。アメリカに憧れがありまして、映画もそうなんですけど音楽も聴いてて、「コーラスもすごいな」と。
日本だとデュークエイセスだとかダークダックスだとか(←日本の男性カルテット)あったんですけど、「これちょっと違うんじゃ?」と思ってました。
辰巳:若い頃は女性関係も含めていろいろあったと思いますけど笑。結婚されたのはおいくつなんですか?
戸川:27歳です。
辰巳:あ、キッコーマンの研究所にいた頃?
戸川:えぇ、地元の人と笑。
辰巳:奥様もワインが好き?
戸川:残念ながらお酒は全くダメなんです。
辰巳:驚!?そうなんですか?
戸川:もうちょっと下調べが必要だったですね笑笑。
辰巳:でも飲むときは別の女性だっていいわけですからね笑。でも当時は『夫婦でワイン』というマンズワインのCMが流行りましたよね。
戸川:*メルシャンが松坂慶子さんでしたし、サントリーは『**金曜日にワイン』。
(*懐かしのCMはこちら:https://www.youtube.com/watch?v=8FUm6Bpto6E)
(**こちらもどうぞ:https://www.youtube.com/watch?v=Mm4IM-TS_4c)
辰巳:マンズワインは松本幸四郎さん、当時の市川染五郎(現松本白鸚)ご夫妻でしたよね?
これがいちばんインパクトあった。売れてたでしょう?
戸川:売れてましたねぇ。宣伝費用聞いてビックリしましたけど笑。「あの時間帯に10秒流してこれ!?(高っ)」
うちの設備(費用)に欲しい爆。でもテレビの威力はすごくて(CM)止めちゃうとバターーーっと↓。
辰巳:あの頃のテレビの威力はすごかった。僕はまだ未成年だったんですが、あの生活は憧れましたね。
戸川:その頃から甘味果実酒から脱却したんです。「ワイン」という言葉が各社で出てきた。
辰巳:でもまだ「日本ワイン」という言葉はなくて、輸入ワインと国産ワインのブレンドだったんじゃないですか?
戸川:そうです、うちももちろん。
辰巳:ブドウはどこの国のが多かったんですか?
戸川:白はスペインもありましたし特恵関税国(特恵適用国)の南米や共産圏。
辰巳:それと甲州を混ぜてた?
戸川:そうですね。赤はスペイン、アルゼンチン・・・。
辰巳:マスカット・ベーリーAはブレンドされてたんですか?
戸川:はい、混ざってました。”インターナショナルマリアージュ”です。
ただ、余剰のブドウで造ったワインを加工してるだけじゃ造り手として面白くない、積極的に造らないとということで、技術者をスペインやアルゼンチンに派遣して向こうで造ってました。
私もブエノスアイレスとかサンファンとかメンドーサで技術提携した大きなワイナリーで、ワインを造って輸入したら品質が格段に上がりました。
辰巳:そういう時代だったんですねぇ。この話ももう少し伺いたいんですが時間が来てしまいました。
この続きはまた来週。お客様は日本ワインのレジェンド、戸川英夫さんでした。
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2022年3月17日放送回
- ワイナリー
サンサンワイナリー
https://sun-vision.or.jp/sunsunwinery/- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/