7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』10月のゲストはシャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘さんです。今回は他国のワインにも言及します。安蔵さんがモーゼルのブドウ畑で思った「日本でワインを造るということ」とは?(全5回 4回目)
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辰巳:はいっ、今月のゲストはシャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘さん、今日は4回目です!
辰巳・安蔵:よろしくお願いします!
辰巳:そして、ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢の田鍋社長(以下ベーやん)とシェフの井村さんです。
ベーやん・井村:よろしくお願いしまーす!
辰巳:さ、まずは乾杯しましょー!
全員:カンパーイ♪
シャトー・メルシャン 北信シャルドネ 2018
辰巳:んーーー、なるほど、なるほど。これは「北信シャルドネ 2018」。メルシャンを代表するシャルドネ、ですよねー。フレッシュ感があるのにちょっとバタリーな香りもして、すごくコクがありますよね。
安蔵:そうですね、すごくバターの香りが。
ベーやん:香りがすごくいいですよね。
辰巳・安蔵:いいですよねって・・・笑。
ベーやん:(自分が)シロウトだってことが先週発覚したばっかなんで、コメントは控えておきたい笑。
辰巳:もっとシロウトらしい、例えば、わざとハズすとかね。
ベーやん:いいんですか、それで?
辰巳:元お笑い芸人なりに、立場上はボケの方をね笑。井村シェフはどう?
井村:スッキリしてるんですけど濃厚で、”バターの香り”っていうのがすごくよくわかる。
辰巳:で、今日はこのワインに合わせてブイヤベース?
ブイヤベース カマルグ風
井村:はい。通常のブイヤベースよりスープを滑らかに作ってありますんで、ワインとスープの喉越しがマッチするようにと思いまして。
辰巳:魚の出汁が入ってますか?
井村:はい、高速のミキサーで回してます。
辰巳:すんごく香ばしい感じ。(イタリア語でいう)「ズッパ・ディ・ペッシェ」ですよね?ホタテと鯛とエビが入ってます。
井村:あとジャガイモが入ってるのが特徴。プロヴァンスの中でもカマルグ地方のブイヤベースには必ずジャガイモが入るんです。
辰巳:あの辺確か塩も有名だし、あとカマルグって黒い馬が有名じゃなかったでしたっけ?
(調べました:黒ではなく白い馬が有名なようです)
井村:フラミンゴも・・・。
ベーやん:今日の質問いいですか?
辰巳:どうぞー♪
ベーやん:フランスのワイン造りはブルゴーニュだと単一品種、ボルドーだと複数品種っていうのあるじゃないですか?日本ワインはなんかそういう決まりがあるんですか?
安蔵:特に決まりはないですね。ブルゴーニュとボルドーも決まりがあるわけではなくて。ボルドーは非常に栽培面積が大きいシャトーが多いので、1つの品種だといっぺんに忙しくなるんですね。なので、収穫時期の違う品種を3つやっていると、ちょっと忙しい時間がずれる。ボルドーだと(赤の場合)カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルローっていう品種が多いんですけど、これらは1週間ぐらいずつ収穫時期がずれてるんですよ。なので、仕事のピークが分散できるという。
ベーやん:あ、そういう理由もあるんですね?
安蔵:あります!
辰巳:なんだー実はいい質問じゃない?
安蔵:核心を着いた・・・。
辰巳:もうちょっとピンボケかと思ったのに爆。安蔵さんが真面目にちゃんと答えてくれました。
安蔵:日本もそういう意味では、9月の頭から10月の末ぐらいまで、いろんな品種を分散するように醸造してます。
ベーやん:特に今後(日本で)設けるような動きとかあるんですか?
辰巳:日本の場合、まだまだ歴史が浅いからこれから何ができるかは試行錯誤の段階、、、。だから面白いんスよ。フランスはもう何百年の歴史がある中で色々淘汰されてきて、それぞれの地域がある程度固まってきてるし、その地域の特徴あるワインができてるんで。でも日本の場合はまだそんな段階じゃないという。
安蔵:逆に日本の場合はルールがないので、これから我々造り手と、ワインの業界の方々でルールを作っていく段階、ということですね。
ベーやん:じゃ、今日本(ワイン)は発展途上?
辰巳:まだまだ出発したばっかり!その中でも今日本のワインのトップランナーと言える、シャトー・メルシャンを率いてるのが安蔵さん。
ぁw、もう食べちゃいましたけどどうでしたか?今日の食事とワインのマリアージュは?
安蔵:すーごい美味しい♡。このシャルドネはけっこう重めのタイプでバタリーな感じもありますので、このコクのあるスープとすごい相性がいいですね。
辰巳:あ、パンとか必要ですか?それとも炭水化物ダイエットですか?笑。
安蔵:それはやらないといけない、もうゴハン大好きですから笑。
辰巳;ではこのワイン、「北信シャルドネ」について少し解説をしていただけますでしょうか?
安蔵:はい。北信、というのはですね、”北信濃”という意味で、長野県の北部がブドウ産地なんです。
辰巳:ラジオ聴いて”北信”をわかる人は(日本)ワインファンしかいないかもね。
ベーやん:埼玉県(←ベーやんの出身地です)では*北辰テストってのがありました。埼玉県民は今「あるあるあるある」って言ってますよ笑。
(*北辰テストhttps://www.hokushin-t.jp/test/hokushintest/hokushin_t.html#acc101)
安蔵:(”北信”の方の続き)その、長野市のあたりが長野県の北部になりまして、千曲川が流れてます。この千曲川は耳慣れない方もおられるかもしれませんが、もうちょっと北、新潟県に入ると信濃川って名前になります。
辰巳:千曲川がいちばん有名なのは”川中島の戦い”ですよね。(新潟ではなく)長野側。その少し山の方に、一大ブドウ産地が広がってるんです。
安蔵:シャルドネがたくさん栽培されていて、川を挟んで右側と左側、我々は右岸左岸と呼んでますけど。右側の方に小布施、高山村
あたりがありまして、左側には長野市。その両方のブドウをバランスよくブレンドしてます。
辰巳:昔は「北信シャルドネ」って1種類だったんですけど、最近”左岸””右岸”で別々に醸造して商品になってますよね?
安蔵:右岸はけっこう砂利の多い土壌で左岸は粘土なんですね。その味の違いはわかってたんですが、畑があんまり広くなかったので、右と左をブレンドしていたんです。でも「こんだけ味わいが違うので分けて出してみよう」っていう風に考えて。なので今はトップキュヴェは右と左に分けて出しています。
辰巳:へぇぇ。じゃ、今左岸の方も畑増やしてるんですか?
安蔵:右岸の方はちょっと増えてますね、左岸の方はそれほど。
辰巳:それは契約畑として?
安蔵:契約畑ですね。左岸の方は(栽培者が)高齢化しているので、若い方がやっていただけるならぜひ、お願いしたい感じです。
辰巳:ブドウ農家になりたい方はぜひ、シャトー・メルシャンの安蔵さんに連絡ください!ちなみにこのワインおいくらですか?
安蔵:これは右岸と左岸をブレンドしたもの。トップキュヴェで右岸左岸分けたら「ブレンドしたものも飲みたい」って意見もけっこうありまして、ちょっとお安く3250円(オープン価格)でお出ししてます。
辰巳:別々のやつは?
安蔵:6000円ぐらいします。
辰巳:6000円のやつをブレンドしたら3000円になっちゃう?笑。
安蔵:まぁ、いろいろ汗。出血大サービスです笑。
辰巳:まぁいいブレンド。(右岸:左岸)1:1じゃないでしょ?
安蔵:じゃないです。この年は右岸の方が多いです。
辰巳・安蔵:ブレンドって面白いですねぇ。
辰巳:このヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢にいらっしゃいましたらブイヤベースとともにお楽しみいただけます。
ではここらでリクエスト曲いきましょうか?
安蔵:はい、今日はですね、ミネラル感のあるシャルドネですのでクラシックで。バッハの「無伴奏組曲第1番」お願いします。
辰巳:クラシックもお好きなんですかー。
安蔵:けっこう好きですね。
辰巳:やっぱバッハですか?
安蔵:いや、だけでなくベートーベンとかマーラー。その辺りが大好きです。この曲(無伴奏組曲)は透明感のある感じがとっても好きなんです。
辰巳:ではいきましょう!
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番(ヨーヨーマVer.)
https://www.youtube.com/watch?v=IOB8Av9SumI
辰巳:はい、バッハの無伴奏組曲1番でございました。全部聴いてもらっちゃうと番組終わっちゃうのでスイマセン。(←少しフェイドアウトしました)でもワインとこの曲の整合性が見えて面白かったですねー。バッハといえば。バッハはドイツ人なんですけど、ドイツワインはどうですか?
安蔵:ドイツワインもとっても美味しいと思います。フランス(ボルドー)に住んでる時に車で800kmぐらいあったモーゼルに行ったんです。
辰巳:ドイツの高速だと速いでしょ?
安蔵:ですね。カミさんも運転するので2時間交代で行くとけっこうすぐ。
辰巳:ドイツのアウトバーンなんて普通に走ってて気づいたら180km
ぐらいってことありますもんね。日本の時間計算の半分で着くんですよ。
安蔵:確かに、空いてますし。で、モーゼルでは”斜面”を見たかったんです。写真では見たことあったんですけど、実際見てみたいと思って。ほんっとに凄いですね。車で上まで登って見下ろすと「よくこんなとこでブドウ作るな」と。
辰巳:畑には降りました?
安蔵:いや、もう怖くてできなかった。
辰巳:(畑の畝が)横になってる場合と縦になってる場合があるんですけど、縦になってるとこはホントに歩けないんスよ、怖くて。緯度が非常に高いんで太陽の光をできるだけ斜めに受けようとしてるんですけど。でも(そこでできる)リースリングって美味しいですよねー?
安蔵:美味しいですねー♡。あの時は「Geld Tropfen」”金の雫”というワイナリーに行って、ワイン飲みましたけど、ホントに美味しかったですねー、感動しました。
モーゼルのブドウ畑(参考画像)
辰巳:どうしてもワインはフランスから入るでしょうから、フランスワインが身近になると思うんですけど、他の国のワインはどうですか?
安蔵:他だとニュージーランドのワインとかはけっこう好きですねー、ピノ・ノワールとか。会社の仕込み時期の休みは日曜日だけなので、他の時期に休みが集中するんです。そうすると9連休ってのが年に何回もありまして、結婚する前は海外フラっと独りで行ってたんですね。で、1994年だったと思いますけどニュージーランドに行って。当時ピノ・ノワールを増やし始めてた頃だったと思いますが、、、。
辰巳:当時ニュージーランドはソーヴィニョン・ブランで有名になりかかった頃。
安蔵:やっぱいいとこだなぁと思いました。だからニュージーランドのワインは今でも意識してます。
辰巳::僕はさっきのリースリングが好きでねー。リースリングは日本では作ろうと思わない?難しいっすか?
安蔵:我々は(秋田県)横手でリースリングやってまして、横手市の大森。”気難しい品種”なので、いっつもいい状態で採れる訳ではないですけれど、天候がうまくいっていい品質の時にはすごく美味しいです。あと熟成していい香りが出てくる品種ですよね。
辰巳:もうずっとハマってて「何がいちばん好きですか?」って聞からたら必ず答える品種。多くの人は「メルロー、ピノ・ノワール」とかって答えるんですけど、20年ぐらい前リースリングって言ったのは僕と*石田くんぐらいだった、ような。
(石田博氏:2015 アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール優勝他、数々のコンクールで入賞している日本のトップソムリエの1人。)
で、ボルドーに4年間いらして、その間他でも仕事されてたんですよね?南米?
安蔵:南米は出張ベースで行ってたんですけれど。一時期ボトル物の品質管理を担当していて、その時はチリとかアルゼンチン、スペイン、イタリア・・・普通ではなかなか行かないところへ行きました。スペインならヘレス(メルシャンが扱うシェリーメーカー「ティオ・ぺぺ」を訪問)まで。遠かったです笑。
辰巳:世界中いろんなところでワインは造られてますけど、日本ワインってのは・・・この辺りまた来週になるかなぁ、でもこの辺りのちょっとサワリだけでも。
安蔵:さっきお話ししたモーゼルの斜面を見たときに「なんでこんなとこで(ブドウ)作ってんだろなー?」、と正直思いました。だって足踏み外したら大怪我するほどの斜面ですんで。自分はメルシャンに入ったとき友人たちから「なんで日本でワインなんか造ってんだ?」って聞かれたんですね。「フランスや南半球に移住して造ればもっといいのが出来んじゃないの?」と。でもそのモーゼルの斜面見たときに、その「なんでこの人たちここで作るのかなぁ」を何度も自問自答して、「ぁ、多分この人たちはこの地に生まれてこの地の畑に誇りを持ってるんだろうな」って思ったんですね。じゃ日本人だって一緒じゃないかな?日本に生まれて日本で生活してるので、「日本のテロワール、環境の中でいいワインを造りたい」、それだけでいいのかな?って思ったんですね。
辰巳:なるほど、ではその辺の話はまた次回聞くといたしまして。出身は水戸ですから、”水戸でワインを造ろう”ってなるんスかねー?
安蔵:いや、カミさんが山梨出身なのと、ブドウの産地ですので、、もう家も買いましたし、、、本籍地も山梨に写しましたので笑。
はい、山梨で頑張ります!
辰巳:じゃぁ、カミさんの話も次回のお楽しみということで、今日はこの辺にしようと思います。本日のゲストはシャトー・メルシャンゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカー、安蔵光弘さんでした!
全員:ありがとうございました!
お断り:番組のOAとこの原稿の掲載には時差があります。現在提供されているワインとお料理はお店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2020年10月22日放送分
- ワイナリー
シャトー・メルシャン
https://www.chateaumercian.com/aboutus/- 収録会場
★ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/