ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」 2024年2月29日OA

2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2024年2月のゲストは山梨県の「ドメーヌヒデ」代表取締役の渋谷(しぶたに)英雄さんです。
渋谷さんがワイン造りで実践しているビオディナミはなんと、ダイバー現役時代に体で覚えたそうです。
”潮の流れ”を読んで収穫するとハサミを入れる音が変わるって?興味深い話満載の最終回です。(全5回 5回目)

辰巳:2月最後、閏年なんでなんか1日儲けた感じもしますけど笑。山梨県南アルプス市の「ドメーヌヒデ」、渋谷英雄さんです。そしてこの会場「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフです。

全員:よろしくお願いします!!!

辰巳:今回も赤ワインです。まずは乾杯しましょう!

全員:カンパ〜イ🎶

【Sage V.V.2020】
https://www.domainehide.com/_files/ugd/eceed6_c3f0530496ff44cf80339878e58b4513.pdf/(←こちらのヴィンテージは2017です)

辰巳:ちょっと独特の香り。シェフどうですか?

井村:飲み口もスカっとしてながら赤ワインらしさが溢れていて、お料理にはすごく合わせやすいです。

辰巳:飲んだ瞬間スーッと入るんですけど奥で広がるというか、面白いワインですね。

渋谷:酸味もしっかりあってね。これはサージュのVVというワイン。

辰巳:サージュVV?サージュって?

渋谷:”賢者”。実はこれはマスカット・ベーリーAの樹齢60年の古樹です。

辰巳:それはどこに生えてる畑?自社畑?

渋谷:南アルプス市の、これは農家さんの持ってる畑なんです。

辰巳:そんな樹があったんですねぇ。それの2020年?

渋谷:はい。栽培は棚。日本にはここの2本しかないです。

辰巳:ってことはこれもちょっとしか造ってないですね?

渋谷:いや、これは600本とか渋笑。

辰巳:樽に入ってるんだったら2樽分ってことですよね。

渋谷:古い樹は珍しいのでだいじに・・・。黙ってても美味しくないワインはできないです、これに関しては。醸造が下手くそでも美味しくなるっていう笑。

辰巳:これはいつから造ってるんですか?

渋谷:2016年ぐらい、この樹に出逢ってから。

辰巳:醸造は?

渋谷:普通の醸造です。自然酵母、これは亜硫酸なしです。小樽を使ってるので少しそのニュアンスもありますけど。辰巳:なんか普通のベーリーAじゃない、ちょっと枯れた感じ。2020年だからまだ新しいんですが、熟成感というか。そこが古木のいいところなんでしょうねぇ。昔オーストラリアのヒル・オブ・グレースのヘンチキの畑。あそこも100年超えるシラーズかな。新しいワインなのに深〜い味わいがあって「古木は違うな」と感じたことがあったなと。なんかこれ飲んでそれを思い出しました。

渋谷:ありがとうございます。

辰巳:ちなみにこれはおいくらですか?

渋谷:年度によっても違いますが、これはそんなに高くなくて5000円から6000円台。

辰巳:前回前々回が20000円前後のワインだったんで”安〜い”っと感じたんですが、でも、日本ワインからすると高いですよね?

渋谷:そうですよね。少し値は張りますが、それなりのワインはできたかなと。

辰巳:さ、このワインに合わせたお料理はなんでしょ?

井村:牛肉です。肩ロースなんですけど、プロヴァンス風ということでラタトゥーユとかアンチョビの風味を効かしたポテトとかをつけ合わせてます。ソースは少しスパイシーなビネガーソース。

全員:いただきます!

【牛肉のオーブン焼きプロヴァンス風 じゃが芋のロースト添え】

辰巳:しっかりとしたお肉。

渋谷:アンチョビの塩味とワインの複雑さが合う、というか寄り添う感じですごくおいしい♡

井村:黒毛和牛にブラックペッパー、ホワイトペッパー、とピンクペッパーにアクセントでアンチョビです。

辰巳:それでプロヴァンス風になるんですね。ではこれをいただいているうちにリクエスト曲を。今日はなんにしましょう?

渋谷:石川さゆりの「ウィスキーがお好きでしょ」。

辰巳:ワイン飲みながらこの曲?笑笑。どういう趣味なんすか?

渋谷:もともとウィスキーも大好きなんで。このワインにも少し感じると思うんですけど、ウィスキーの樽の感じ。

辰巳:ウィスキーとワインはどっちが好き?

渋谷:昔はウィスキー結構好きだったんですけど、今はワイン。

辰巳:泡盛は?

渋谷:泡盛も一時期は大好きで(慶良間に管制官として勤務してた頃ですね)、造りたかったんですけど今泡盛は免許くれないんです。

辰巳:やりたいこといっぱい!(管制官→プロのダイバーからの)臨床心理士まで。

渋谷:カウンセリングで高校にも行ってましたよ。実は八王子の高校にも。

辰巳:なるほど〜。じゃ、僕が最初にお会いしたころは、まだ臨床試験士もやりながら、山梨に通ってブドウ作りも?

渋谷:ブドウを研修しながら大学で少しだけ心理学も教えたり。ダイビングはもうさすがに笑。

辰巳:管制官は?

渋谷:ないないないっ笑笑。

辰巳:じゃ、次はウィスキー?

渋谷:(仕込んで)美味しくなるころには僕は死んでますからね〜笑笑。

辰巳:ウィスキーはそれがありますからね、もっと若い頃だったらねぇ笑。では「ウィスキーがお好きでしょ♪」


石川さゆり【ウィスキーがお好きでしょ】(1991年)
https://www.youtube.com/watch?v=fpJc1jou7UU/

辰巳:いい歌です。コマーシャルソングとして30年ぐらい前に作られた曲ですけど、ちょっとウィスキー飲みたくなってきた笑。

辰巳:ワイン造りしながらビール、ウィスキーも飲んだりするんすか?

渋谷:ウィスキーとワインですかね。泡盛も少し。ビールはたしなむ程度。ビール飲むと酔っ払っちゃいますね。

辰巳:?、ビールいちばん薄い(度数少なめ)ですよ。グビグビ飲んじゃうんですね笑。なかなか聞けなかったんですけど、「自然派」の話。お店の名前も『月晴れる』だし、月の満ち欠けに合わせて(醸造)やる?それはどういうこと?、というか誰かに聞いて?

渋谷:もともとダイビングやってたんで、”月の満ち欠けで”産卵があったりだとか、生き物が大きく変化する。

辰巳:!? そうか、ダイビングから、

渋谷:ビオディナミ。ま、畑に行って満月の引き潮の時にぜんぶ枝を切るとか(しかも)午前中しか切れないとかありますね。

辰巳:「種を撒くのはいつ」「収穫はいつ」とか?

渋谷:収穫は”引き潮”ですね。塩が引くときに樹液が全部下がって、ブドウの濃縮差が出る品種があるのでそのときにバシバシって。

辰巳:満月の時?

渋谷:新月も同じですね。その大潮の時に。

辰巳:その時は(魚だったら)部類によっても違う?

渋谷:違いますね。魚の量も珊瑚の産卵も。ま、釣りやってる人はそこら辺は肌で感じてると思います。

辰巳:はぁぁぁ、ダイビングはものすごく興味あるしいろんな人から誘われたんですが、昔香港で占い師に見てもらったとき『水難の相がある』といわれ爆、だって失敗したら死ぬじゃないですかっ!?それからシュノーケリングぐらいにしてるんです。でもほんと、その占いの後、カヌーで保津川下りして死にかけた(歯ぁ折ったらしいです)。
「この占い信ぴょう性あるな」と思って、それ以降ダイビングはなんか踏み出せない。『女難の相』じゃなくてよかったですけど笑笑。だからすごく憧れますよ。でも”ダイビングやめてワイン造り”って!?

渋谷:ワイン面白いっすね。ダイビングはたまに趣味ぐらい、遊びでやってますけど教えたりはもうできないですね。

辰巳:自然を感じるという意味ではいっしょ?

渋谷:昔「電灯潜り」ってのがあって、電球点けながら夜イカを獲ったりとかしてて。やっぱこれも潮の加減でぜんぜん違うんで。”潮”の影響は植物も含めて生き物にいろんな影響あると思いますね。

辰巳:それはわかるんですけどー。でも天気にもよるでしょう?満月で晴れだったらいいですけど、雨降ったら、、、?

渋谷:土砂降りのときは雨に負けちゃいます。だいたい夜中なんですけど、引き潮の収穫のときは夜中に上潮に変わるんです。そうすると枝を切る音が変わります。最初’パキパキ’っていってたのが上潮になってからは’ジュワ’。昼間はそれわかんないすよ、いろんな音入るんで。夜中ならでは。私たちはそれを『樹液転流』と呼んでるんですけど。

辰巳:1日12時間毎に上潮引き潮?

渋谷:来ますね。ダイビングでは上潮といいますね。釣りの人は満ち潮といいますけど。

辰巳:海の上にいるか下にいるか・・・これは面白いなぁ。

渋谷:昔のビオディナミ(やってた)人たちは五感で感じてたんだと思います。だからいろんなロジック作ったんだと思いますけど。

辰巳:’ビオディナミ’っていう言葉はまだ新しいんですよ。だから’自然派’も新しい概念で。昔は有機肥料も農薬もなかったわけでみんな(ふつーに)ビオディナミだった。それが農薬できてそうじゃないのが増えてきたから逆に’自然派’と言われ始めたわけで。だから太陽暦より太陰暦のほうがよかったのかもしれない。今でも月の暦で農業やってり方もいらっしゃいますし。なんで太陽暦になったんすかね、よく考えたら爆。

渋谷:昼間の世界にね笑笑。

辰巳:そのへん知りたくなってきました。シェフそんなこと考えたことあります?満ち潮の時には包丁のキレが悪いとか笑?

井村:まぁそれはないぃぃですね笑。

辰巳:でもま、自然の摂理に合わせてブドウ栽培・ワイン造りをしている’自然派’はなんかわかる気がしました。

渋谷:100%カンペキはないですけど「合わせられるところは合わせる」。

辰巳:今回のこの話、いちばん響きました。つまり、本を読んだり、人伝に、流行に合わせて、「自然派になる」ではなしに”自分の体で感じてる”っていう。そう思いながらワインを飲むとより一層美味しく感じる。

辰巳:さ、50歳すぎてからワイン造り始めて還暦にならはってこれからどうする?今の日本ワインに思うこと?ありますか?

渋谷:これから多分日本ワインの造り手も増えると思うんですけど、同時にワイン好きな人も増えていくんだと思うんですね。親戚が飲んでくれたら嬉しいし笑。僕も60歳超えましたけど、まだまだお元気な人が多いので、地元のそういった人たちが日帰りで畑手伝ってくれたりだとか、”遊びながら農業”できると面白いのかなっていうのがあるので、宿泊所作ったりだとか最後の夢を。ホテルじゃなくて、簡易なシェアハウスみたいな。若い人たちも海外の人たちも年配の人もちょっと体動かしがてら。

辰巳:あのあたりは農業地域なんですか?

渋谷:下の方は街ですが上は中山間。

辰巳:次伺う時はホテルの建築が始まってるとか笑?

渋谷:まだもうちょっと、2年ぐらい先の夢で。

辰巳:収穫とかけっこう人は来てくださってると思いますが、駅はどこが一番近い?

渋谷:実は南アルプス、駅ないんですよ驚!「駅のない唯一の市」と言われてます笑。

辰巳:車で行くにはインターから近いんですよね?

渋谷:あとは新宿から高速バスに乗って3時間で目の前まで。

辰巳:3時間は遠くない?

渋谷:ま、(高速道路で)休憩20〜30分ぐらいありますんで汗。

辰巳:僕も収穫時の鋏の音の違いを感じたいなと思いましたし、ダイビングも新ためていいなと思いました。今回はいろいろと面白いワインをご紹介いただきましてありがとうございました!

全員:ありがとうございました!!!

お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)

Domaine Hide(ドメーヌヒデ)
https://www.domainehide.com/

News Data

ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」

2024年2月29日放送回

ワイナリー

Domaine Hide(ドメーヌヒデ)
https://www.domainehide.com/

収録会場

ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/

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