八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」2020年2月20日放送分

今回のゲストはグレイスワインとしてお馴染み、中央葡萄酒 (山梨・勝沼)取締役 栽培醸造部長の三澤彩奈さん。
長男である弟さんに後継の期待を寄せていた実家でしたが、蓋を開けてみると・・・?5代目に就くまでのご縁とタイミングの妙、そしてワイン熱をしっとりと語ります。全2回(後編)。

辰巳:今回のお客様は前回に引き続き2回目、中央葡萄酒、グレイスさんの5代目になります三澤彩奈さんです!

辰巳・三澤:よろしくお願いしまーす!

辰巳:前回もいろいろと伺いましたけど、あっという間に時間がきちゃって、ぜんぜん彩奈ちゃんの「この業界に入るまで」とかね、聞けなかったので、今日は昔の話をちょっと聞きたいなと。
前回は物心ついた時からワインを飲んで、もとい、舐めてたと笑笑、そんな話を聞いたんですけど。ま、それは(環境的には)普通のことだと思うし、時効っちゃ時効なんですけど。
「ワイナリーの娘」として生まれて、兄弟は?

三澤:2人です。弟が今北海道(千歳ワイナリー)にいます。

辰巳:幾つ違い?

三澤:2つ違いです。

辰巳;(彩奈さんはワイナリーを)継ぐもんだ、とか、弟がいるから云々・・・どの辺りからこの道に入ろうと?

三澤:はい、もうホント、私と弟で期待度がぜんぜん違って。

辰巳:だからお姉ちゃんの方に期待してたんでしょ?

三澤:違うんです逆なんですよ。(辰巳:!)やっぱり(弟は)男の子だからっていうので、ぜんぜん期待度が違ってー。私はラベル貼りとかも好きで子供の頃から手伝っていたし(この業界に)憧れがあったんですけど、弟とは明らかに差別されていたので・・・。

辰巳:!!!そうだったんだ!?

三澤:そうなんですよ、これあんまり話したことなかったんですけど。

辰巳:弟はなに君っていうの?

三澤:カズシ(計史)といいます。

辰巳:で、なんと呼び合ってた?

三澤:向こうは”お姉ちゃんで私は”カズシ”と。
そんなんで期待度が違いすぎて私が醸造家になるとはぜんぜん思ってなかったです。

辰巳:まぁやっぱりね、日本の場合は今でもそうだけど男中心社会ですしね、(女性ももちろん)増えてきたとはいえ、醸造家もまだ男性中心ですよねー。

三澤:そうですねー。世界的にもまだ男性が多いなと思いますね。

辰巳:あ、世界的にも?だんだん女性が増えてきたイメージですけど。この間スイスやイタリア行った時も割と女性醸造家が増えててね、「世界は進んでるな」って感じはしたんですけど。

三澤:そうなんですか?

辰巳:で、子供の頃は(弟と)差別されて?

三澤:そうなんです、差別です笑。

辰巳:弟が継ぐもんだと思ってた。弟に身長を抜かれたのっていくつぐらいの時?ほら、子供の時は女の子の方が成長早いじゃない?

三澤:中学生の時には抜かれてたような気がしますねー。

辰巳:仲は良かったの?

三澤:仲もよかったです。私はプレッシャーとかもなかったんですけど、でも弟はすごくあったんじゃないかなーと、今思うと。。。
あと、ちょっと変な話なんですけど、つい最近祖母が大往生(93歳)で亡くなったんです。その時に『私が醸造家になって申し訳なかったな」と思った。1923年創業以来(初めて)の女性醸造家で、それで女性が継ぐのも初めてのことなので、
祖母は本当は弟に継いで欲しかったんじゃないかなーなんてことを心のどこかで思っていて、、、。
祖母は80歳過ぎても収穫とか選果とか来てくれてて・・・家族経営だからこその感情が亡くなってから湧き上がってきました。

辰巳:北海道にもう一軒「千歳ワイナリー」を作って、2つ持つっていう意味があったんじゃないですか?お父さんにとっては”2人の子供に”っていう思いが?

三澤:・・・そもそも私が入るとはあんまり思ってなかったので・・・。

辰巳:いつ入ったの?いつ踏み切ったの?

三澤:やっぱり憧れがあったんですよねぇ、、、お父さんやおじいちゃんが(自分が)子供の時から、まだ日本ワインも今みたいにブームじゃない頃から。父も祖父も家業継ぐ前は企業に勤めていて、都会から帰ってきてっていう選択をしたということに対して
「この仕事って何か意味があるんじゃないか」って子供の時から思っていたので。そういう(都会の)人生を振って、山梨の田舎に戻ってきてやってくってところに”魂”みたいなものを感じてたんですよねぇ。

辰巳:「お父ちゃんおじぃちゃんカッコいい!」と?おじいちゃん子だったの?

三澤:まぁ、田舎なので家族との関わりが、、、。母も凄く好きですし。

辰巳:大学はどちらに?

三澤:東京に行ってました。

辰巳:その頃はまだ継ごうとは思ってなかった頃だ?高校は地元?

三澤:高校は地元です。大学の時はワインスクールに通ってました。石井もと子さんが主宰していた”ワインスカラ”と、今は業態が変わってるかもしれないんですけど”JALアカデミー”に。なんてことはやってたんですけど。

辰巳:大学で勉強してたのは別のこと?

三澤:そうなんです、ぜんぜん別の学問。で、そうこうしてるうちにボルドー大学の先生とお会いする機会があって。ドゥニ・デュブルデュー教授と、、、

辰巳:彼も亡くなっちゃったですよねー。

三澤:そうなんですよ。

辰巳:それはどういうタイミングで?

三澤:ご縁があってドゥニ・デュブルニュー教授と一緒に甲州を造るというプロジェクトがあって、そのワイナリーの一つとして選ばれたのがグレイスだったんですよ。

辰巳:その頃まだ大学生?

三澤:いや、大学は終わって、グレイスワインに就職した頃です。

辰巳:東京に残りたいとかはなかったの?ボーイフレンドがいたからとか笑。

三澤:笑、うーん、なんかすんなり帰っちゃいました笑笑笑。ほんとにタイミングで。それからすぐデュブルニュー教授にお会いして。「醸造勉強したいんだったら(ボルドー大学に)おいでよ」って言っていただいて、「じゃ行ってみようかなー」って思ったのがきっかけです。

辰巳;その頃は2つ下の弟さんはまだ大学生で?

三澤:弟は高校卒業してアメリカに行ってるんですけども。

辰巳:へぇぇぇ、アメリカのどこ?

三澤:カリフォルニアに。

辰巳:デイヴィス?

三澤:あはは、デイヴィスは入ったんですけどすぐに辞めてました笑笑。

辰巳:ワインを勉強しに?

三澤:そうです、ワインの勉強で行くと。最初はそうだったんですけどね、長い間帰ってこなくて帰国したのは2011年。
(話の脈絡から想定するにおそらく10年ちょっとと思われます)

辰巳:弟さんがアメリカ行ってる間にー、お姉ちゃんが後継として取って代わった?

三澤:笑笑笑。

辰巳:その辺ワイン飲みながらちょっと話しましょ。今日は赤ワインを持ってきていただいたんですけども。知らないワインだなこれ。「あけの」というワインです。


あけの 2017

三澤:はい、そうなんです。これは初めての銘柄、新しいワインです。

辰巳:いい香りですねー。さぁ、乾杯しましょう!

辰巳・三澤:乾杯!

辰巳:いただきまーす。ん、まだ若い、樽もビシっと効いたフルボディ系のワインですねー。裏(ラベル)に日本語で5行ぐらい、英語が10行ぐらいでズラーっと書いてますね。これもちょっと読んでみましょうかね。字がちっちゃい!(そういうお年頃?)
『日本一の日照時間に恵まれた標高700m、明野町の三澤農場は山々に囲まれ、昼夜の寒暖差に恵まれています。除草剤と化学肥料を使用せず、垣根栽培にて丁寧に管理しています。
畑とワイナリーでの厳しい選果後、小仕込みを行い、品種ごと、ロットごとに貯蔵、フレンチオーク8ヶ月を経て、清澄や濾過はせず瓶詰めをいたしました。飲み頃は2020年』
これは2017年のファーストヴィンテージ。今年は2020年ですからそろそろ飲み頃に入ってくるだろうと。どういったワインなんですか?

三澤:これは初銘柄で、「キュヴェ・三澤」というワインを造ってるんですけど、そのセカンドになるんです。この前のヴィンテージまでは「グレイスメルロー」「グレイスカベルネ・ソーヴィニョン」とか品種名をつけたワインをセカンドにしてたんですけど、品種名ではなく、この「あけの(明野)」という産地を名前にしたいということで、これはアッサンブラージュです。

辰巳:いわゆるボルドーブレンド。ざっとどれぐらいの比率なんですか?

三澤:メルローが主体、半分以上でカベルネ、プティヴェールドも入ってます。

辰巳:本格派のワイン、ですね。これセカンドにするにはもったいないぐらい。

三澤:はい、皆さんにそう言っていただきます。

辰巳:ねぇ。パンチもすごくあるし。ちなみにおいくらですか?

三澤:オープンなんですけど、お店で7000円前後だと思います。

辰巳:7000円前後。セカンドでこの値段はすごいですよ、強気っていうか自信の表れっていうか、ですよね。「キュヴェ・三澤」はどれぐらい?10000円ぐらいでしたっけ?

三澤:もうちょっと上だと思います。

辰巳:最近日本ワインもどんどん高くなってきてるんですけどね。高いワインは別に高くてもいいと思うんですよ。きちんと市場を引っ張っていかなきゃいけないし。でもね、手頃で美味しいワインを造っていくことも大事じゃないですか、ワイナリーとして。。。
それにしてもこれいいワインだなぁ。熟成させるときっともっといいなぁ。

三澤:そうかもしれない、まだちょっと若いのかも。でも新樽は使ってないので、ちょっと今っぽいというか。。。今だんだん樽を使わなくなってきているので。

辰巳:そうなんですか?ちょっと新樽感はありましたけどね、一口目は。ワインが少し冷えてたからかな。
ここの樹齢はどれぐらいになった?

三澤:2002年に植えた樹がほとんどなので、、、。

辰巳:いい頃合いになってきましたね。

三澤:そうですねー。今すごく楽しいです。

辰巳:これから10年20年、ずっといいワインができてくでしょうね。
そうかー、すごくこだわったワインなんですね?収量制限とかも?

三澤:はい。価格もデラウェアで5000円だとちょっと高いなぁと思うんですけど、高いワインって理由がないといけないと思っていて。収量制限だとか単一畑だとか、あとは手摘みだとか。その辺のちゃんとした理由がないといけないと思います。

辰巳:それは確かにそうですね。
甲州がいちばん好きって前回はおっしゃってましたけど、2番目はなんなんですか?

三澤:カベルネ・フランです。

辰巳:そうなんですか?フラン!

三澤:フラン大好きです!

辰巳:フランの単独も造ってましたよね?

三澤:そうなんです、いい年は単独で造ってます。

辰巳:そっかー、いや、いいと思います。俺ももう歳のせいもあるけど、ロワールのあたりのフランなんかを久しぶりに飲むと美味いなぁと思うし。

三澤:柔らかいですよねー。

辰巳:だんだんカベルネ・ソーヴィニョンのタニックな感じが辛くなってくる、あるいは新樽のビシビシってのが辛くなってくる年頃なもんでね笑。

三澤:いえそんな笑、まだお若いですけど笑笑。

辰巳:まぁ(彩奈さんの)お父さんよりはだいぶ若いけど笑。お父さんはもう70になった?

三澤:はい、今年72歳になります。

辰巳:お父さんとだいたい一回り違うんです。お父さんがいてね、そのちょっと下に大村さん(丸藤葡萄酒工業)がいて、そのあとに有賀さん(勝沼醸造)がいて、、、。

三澤:そうですそうです。

辰巳:ずっと引っ張ってきた勝沼の3巨匠!

辰巳:さ、さっきの話にちょっと戻って、
弟さんがアメリカに行ってる間にボルドーに留学して、いつの間にかブドウづくりを本業にしようと変わってきた。そんな中での、家族の中での力関係はどういう風に移行した、変わっていったってのが非常に興味あるんですけど?

三澤:笑笑。そうですねー、20代で帰って来た頃には本当に栽培と醸造に夢中で。いつの間にかワインを造って、社内では父よりも権力を持つようになってた笑。

辰巳:ぇw、お父さんよりも!?会社の人たちはお父さんより娘の方に着こうと???

三澤:笑笑。そ、そこまではないですけど・・・。結局(ワインを)造っちゃったら勝ちというか、、、。

辰巳:造ったワインがお父さんよりも美味しいとか?

三澤:笑笑笑・・・。いえいえ、とんでもないです。例えばスパークリング。(父には)「甲州とかちゃんとやりなさい」と言われてたんですけど、もうちょっと遊びたくてスパークリングとかやってるうちに「あれ、いつのまにか商品化されてる」とか、そんなことがあって。

辰巳:で、それが美味しかったり賞も獲るしでどうしようもなくなった?

三澤:笑笑。いやいや、そんなことはなく。。。でも、自分の好きなようにやらせてもらって時期が長かったので。

辰巳:最初にスパークリング造ったのは2011年?

三澤:2008年ですね。その後しばらく熟成してたので世の中に出るのは少し遅かったんですけど。

辰巳:年に2回醸造したいと南半球にもいってたじゃないですか、南米の方に。時々(彩奈さんに)連絡すると「今チリで・・・」とか。

三澤:笑。そうですね、6年続けて行ってましたね。

辰巳:だから普通の人が12年かかることを6年に凝縮していろんな経験を積んできて。これはお父さんが行けっていったの?それとも自分の意思?

三澤:私がすごく行きたかった。フランスで勉強したので、新世界のワインも見てみたいっていうのがすごくあって。それで6年行ってたんですけど、最後の1年は「私もう若くないな」って思っちゃったんですよね、体力的に笑。
この生活するのには私はもう適齢を過ぎてるなって笑。

辰巳:適齢って結婚適齢期のことじゃなくて?

三澤:笑笑。やっぱり20代の時とは同じように動けない。夜のシフトとかに入っちゃうとぜんぜん寝られなかったり・・・。

辰巳:体力はあるほう?

三澤:自信あったんですけど、南アフリカから来ている20代の男の子の醸造家と一緒にチームを組んでやったりしてる時に、彼の仕事量の半分ぐらいしかできないから、「これはワイナリーにも申し訳ないな」と思って。

辰巳:でもね、力仕事だけが仕事じゃないもんね。

三澤:それはそうですね。
この間研修でアメリカ行ってたんです、1週間ぐらい。アメリカ人のメンタリティーってすごいなと思うのは、フランス人のワインの値漬けは後付け”ここの畑だからとかこのシャトーだから”(高いのには理由がある)。
アメリカ人って最初にどんなに高い値付けをしても、売れたらそれは正しかったんだっていうんです。私はまだそこまでは思えなくて。

辰巳:それも間違いではないんだろうけど、そうなってくるとワインがつまんなくなってくる感じはするよね。

三澤:確かに、ビジネスになり過ぎちゃってますよね。

辰巳:でも新しくワイナリー起こして借金もして回収しなくちゃいけないし。経営も大事だから難しいとこだと思いますよね。
いろいろお話伺えてよかったです。ホントはもう1回ぐらいお話伺いたかったところですが、お時間が来てしまいました。これからももっともっと美味しいワインを造り続けてください。お父さんにもよろしくお伝えください。
今回のゲストは勝沼の中央葡萄酒の5代目、三沢彩奈さんでした。

辰巳・三澤:ありがとうございました!

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八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」

2020年2月20日放送分

ワイナリー

中央葡萄酒

山梨の勝沼に1923年から続く家族経営のワイナリー。53年には現在も続く「GRACE(グレイス)」をブランド化。勝沼のワインを活性化させるべく「勝沼ワイナリーズクラブ」の発足や、世界への”甲州”普及活動「Japan of Koshu(JOK)」を発動し、

毎年ロンドンでプロモーションを行うなど、日本ワインの知名度アップに貢献しているワイナリーの一つ。

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