八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」2019年10月17日放送分

宮城県仙台市にある日本屈指の温泉場、秋保。この地に4年前に設立した「秋保ワイナリー」の代表、毛利親房氏がゲストの2回シリーズ後編。
自身が考案したという「テロワージュ」という言葉の意味、その活動内容など、穏やかな口調ながら朗朗と語るのが印象的でした。
想像しながらお読みください!

辰巳:今回も、仙台の秋保ワイナリー、毛利親房さんにお越しいただきました!

辰巳・毛利:よろしくお願いします!

辰巳:毛利さんホントに不思議な方で、本来は全くワインと関係ない、お酒も強くない(建築)設計士さん。それがワイナリーを始めたという。。。
単にお酒好きとかワインのことばっかり考えているわけじゃなしに俯瞰的にいろいろ見られる人だな、と。そういう部分が今いい方向にいってるんじゃないかなと思うんですが。
ま、その中の活動として、最近”テロワージュ”という言葉が出てきてますけど。これ、毛利さんが造った言葉なんですよね?

毛利:はい、テロワールとマリアージュを足して・・・

辰巳:なんか最初は無理やりな感じはしてましたけど(笑)だんだん慣れてきて「これもありかな?」と思わせる段階まできましたね。
その”テロワージュ”に関して説明お願いします!

毛利:わかりました!我々がワイン会をする時には極力生産者の方に来ていただいてお話しいただくんですね。
で、それが漁師さんだったりハンターだったり農家の方々だったりするんですけど、その方々の苦労話もありますし、ポリシーも聞いた中で、(参加者の)反応がすごく良くて。
中には涙を浮かべて食事される参加者の方もいらっしゃるんですね。それは悲しいわけじゃなく、素直に感動・感激をしていらっしゃるんです。
その時は(その場に居合わせた)たった十数人としか共有できていないんですが、こんな素敵な話はいろんな人に聞いていただいて、
産地に足を運ぶとか、その生産者に会うとかして最高のマリアージュを味わってほしいな、と思ったんです。
コンセプトとしては「その産地に行って味合うマリアージュ」だなと思ってます。

辰巳:僕もいろんなワイン会、何百回と取材参加してますけど”地元の食材と地元のお酒”、これはもう世界共通の楽しみ方だ!という気はしますよね。
ま、そういうことを(毛利さんは)地元仙台、秋保中心に発信していらっしゃるわけですけど、これからはもっと広範囲に発信して行こうと思われているんですよね?

毛利:はい、そうですね。

辰巳:いまそれに賛同していらっしゃるワイナリーとかはどれくらいあるんですか?

毛利:今の段階では東北なんですが、だいたい10社くらいは。実はワインだけじゃなくて、日本酒もビールもウィスキーも・・・。
日本酒の蔵も5~6軒一緒にやってくださるところもありますし、宮城でいうとニッカウィスキーさんもミーティングには参加していただいてます。

辰巳:いろんな活動をしている中で、今力を注いでいる中で何に重きを置いていらっしゃるんですか?

毛利:そうですね、4:6で食とのテロワージュが大体4、こちらはボランティア、手弁当ですから。あとの6はワイン造りです。

辰巳;本業の設計の仕事は?

毛利:今はほとんどやってないんですが、実は担い手の育成もワイナリーでやっているので、
沿岸部の再開発のプロジェクトだったりいろいろ相談を受けたりして、アドバイスぐらいはしています。

辰巳:ま、そういう建築関係のアドバイスもしながら、また新しくワイナリーを立ち上げる人たちも受け入れて、一緒にワイン造りをしてノウハウを教えて輪をまた広げていこうと。
そういうことをちゃんとやってるっていうのがいいなぁと思うんですよね。

毛利:ありがとうございます。

辰巳:そういう毛利さんが造ったワイン。今日お持ちいただいたのは「秋保メルロー2017」。


AKIU MERLOT 2017

辰巳:これは?自社畑?ファーストヴィンテージ?

毛利:100%自社園です。実は(自社園としては)2016年にほんの少しだけ造ったんですけど。

辰巳:じゃ、2014年ごろに植えて、2017年からある程度の量が採れるようになった?

毛利:はい、そうです。

辰巳:ではそのワインを開けてみましょうか!

(辰巳さんが開けます。キィキィとしたコルク抜栓音が響きます)

辰巳:コルクもいいのを使ってます。

(ワインを注ぐいい音)

辰巳:さぁ、いただきましょう!

辰巳・毛利:カンパイ!!!

辰巳:新しい樽とかそんなニュアンスが・・・

毛利:樽には入れてないんです。

辰巳:ぇw、チップも?

毛利:はい、チップも(入れてません)。

辰巳:すごい樽のニュアンスあるんですけど。ぇw、ホントに?
どうしたんでしょうね、この香り、このタンニン分?

毛利:実はメルロー主体で、、、

辰巳:なんか入ってんですか?

毛利:シラーが9%と、タナが1%入ってるんです。タナのたったの1%でタンニンがしっかり入ってるじゃないかと。

辰巳:いやぁ、この渋み、収斂味がきっちりあって。。。

毛利:これ自体は発酵が終了して通常だとそのまま1ヶ月くらい置いて、種からタンニンを抽出させるんですけど、
これはそれもさせずに、発酵が終わってわりかし早く瓶詰めをしてます。

辰巳:プレスはわりとハードに?

毛利:通常ですよ。

辰巳:へぇぇ、いやぁ、ちょっと驚きました。

毛利:和食にも合うようなちょっと繊細なメルローを造りたかった・・・。

辰巳:いや、繊細というか、これもうちょっとこなれたらすごくいいと思います。
ゴツゴツとしたのと繊細なのと2つのタンニンがもうちょっとすると溶けて丸くなっていきそうな感じしますよね。これは驚きました。これ、何本ぐらい造ったんですか?

毛利:これがですね、確か、500本、ぐらい、だったですかね。

辰巳:(驚)ちなみにお値段は?

毛利:実は・・・この年は発売しなかったんです。うちでサポーターズクラブというのがあって、会員が今700人いるんですけど、
その方々のプレゼント用で。つまりお嫁に行く先が決まっていたものですから・・・。

辰巳:幻のワイン!
(自身のテレビ番組「BSテレ東「葡萄酒浪漫」の取材で数年前に秋保ワイナリーに伺った時に実はテイスティングしていたことがのちに判明しました)

毛利:その時は「ちょっとミネラル感があるねー」というコメントをされたと思います。
(さすが、お酒をほとんど飲まれない毛利さんの記憶力!)

辰巳:ワインって飲むタイミングで印象が変わるんですよねー、これがとっても面白いところ(汗)。

辰巳:秋保ワイナリーさんのワインはホントにヴァリエーションに富んでて、僕がよく飲んでるのはスチューベンなんですよ。
青森のブドウから造った白もロゼも赤もあってね。これは秋保の特徴の一つ?売りの一つ?とも思っているんです。
さっき(この収録の前の同会場でのイヴェント)飲んだシャルドネも美味しかったですけど、あれも樽使ってなかったですよね?
なんかキリッと酸もしっかりとしていつつ、なんか複雑味というか余韻のある造りですよねー。他業種から転入したとは思えないような仕上がり。
(前回の放送分での話)
震災復興の中でいろんな案を募る中、誰も引き受けなかったので結局’自分が’、ということになって本業ほったらかしになってワイナリー立ち上げに奔走して。
その後ワインを造るにあたっての誰かの指導とかどっかに研修に行ったりとかそういうことはなかったんですか?

毛利:まだ会社に勤めている時に’リフレッシュ休暇’って制度ができて、お盆でも正月でもない時に10日以上休みが取れたんです。
で、山形県南陽市の酒井ワイナリーに事情を説明して(実はその前にも酒井ワイナリーの植樹などのイヴェントには通っていたそうです)
泊まり込みでお手伝いをさせていただいたのがワインに濃密に触れた最初の機会。

辰巳:じゃ今から6年ぐらい前?

毛利:そんなもんです。

辰巳:秋保はわりかし宮城の中でも山形に近い位置ですしね。車に乗って蔵王越えれば山形まで小一時間で行っちゃう。
酒井ワイナリーに泊まり込み、にしては(秋保ワイナリーは)また違うタイプの造りですよね?

毛利:今うちは担い手の育成をしてるんですけど、講師の先生(山梨大学のワインコースの客員教授をされている先生)にも定期的に来ていただきながら
’サイエンス’というスタンスで基礎から教えていただきながら我々も一緒に学んでいるんです。

辰巳:温度管理とかタンクなどの初期投資もしっかり、素晴らしい醸造設備ですしね。グランドデザインがしっかりしているというか。

毛利:ありがとうございます!それと今はいろんな人と相談できる環境に恵まれてますね。困った時にすぐに相談できる環境にあるのはとてもいいです。

辰巳:ちゃんと濾過器もあるんでしょ?笑
(話ちょっと逸れます)
9月のこの番組のゲストがフジマル醸造所の木水さん(ここは濾過器の使用なくどちらかというと無濾過派)、
その前の月が勝沼の丸藤葡萄酒工業の大村さん(無濾過なんてありえない「濾過器買えよっ!」派)。
最近また自然派ということで無濾過の濁りワインとか多いじゃないですか?この辺り毛利さん的にはどう思われます?突っ込んだ話ですが笑。

毛利:そうですね。濾過は我々の場合ですねー、ちょっと安心材料ではあるんですね。
ただ、濾過前と濾過後では、濾過前の方が香りも味わいもいいです、顕著に。

辰巳:でもそれはその時の話でしょ?それが何年後かになった時にどうなるか?この辺りでしょ、おそらく???

毛利:そうですね。ま、ちょっと考えてるのは、一部無濾過なものを、瓶詰め前に(メインの)濾過したものとブレンドして、
それをきちんと温度管理(冷蔵保存)してもらえる飲食店さんに扱ってもらうとか。そんなことができたらいいのかな、と思ってるんですけど。

辰巳:いろんなことがあって今いろいろ軌道に乗ってきた。4年経ってある程度お金も集めたし投資もした。どうですか?だいぶ先は拓けてきました?

毛利:まーーーぁ、当初の計画より若干下をいってるんですけど、間違いなく評価が上がってきてますし、
我々も自信を持ってワインを皆様にお勧めできるようになってきてますので、これからいい方向に変わっていけるように頑張りたいなぁ。

辰巳;すっごく精力的にいろいろなイヴェントとかに参加されてますよね?東京にもよく来られてますし。

毛利:そうですね、最近少しづつそういう機会も増えて認知度も少しづつですけど・・・。でも東京のイヴェントに行ってもまだまだ知られていないですね。
東京も、これからは関西も営業をかけてみたいと思っています。僕らは地元の食材と一緒に営業しているので、食材共々営業していきたいと思っています。

辰巳:日本ワイン、我々が「日本のワインを愛する会」を新しく立ち上げて1年、日本ワインの今後の方向、可能性、毛利さん的にはどんなふうに考えてます?

毛利:初めて辰巳さんにお会いした時に「今和食ブームで、ヨーロッパでも和食が食べられるような時代になった。
現地の人たちは和食をワインに合わせるけれど、そのヨーロッパの力強いワインが和食の繊細な出汁の味をマスキングしてしまう。
一方日本ワインの場合は旨味だとか出汁を上手くマリアージュできるので、それをヨーロッパ人が最近気づきはじめてる」っとお聞きしてですねー。
あ、これってホントだなって最近感じるようになりまして。
日本ワインの評価も上がってきてますし、日本の食材とのマリアージュ、我々でいうところの”テロワージュ”も一緒に広げていきたいな、ただワインだけじゃなくて。

辰巳:毛利さんってね、話しやすい、し、聞き上手。いい加減⤴️いや、いい加減⤵️
なんか知らず知らずに人が集まってくるっていういい魅力がある。
これが秋保ワイナリーの大きな力でもありますし、もっと大きくなってほしいと思いますね。

毛利:頑張ります!

(先ほどテイスティングしていた「秋保メルロー2017」の話に戻ります。)

辰巳:あーさっきしっかりしてタンニンが早めにスーッと抜けてきた。だっからワインってわかんないよねー。
グラスの大小もあるし、ワインって一期一会ですね。

仙台に行ったら、ぜひ秋保温泉まで足を伸ばして、そして秋保ワイナリーに立ち寄ってください。観光コースとしてものすごく立地もいいですから。
とい言うわけで本日のお客様は仙台秋保ワイナリー代表取締役、毛利親房さんでした!

News Data

八王子FM「辰巳琢郎の一緒に飲まない?」

2019年10月17日放送分

ワイナリー

秋保ワイナリー
2015年12月設立。「究極のマリアージュは産地にあり」を謳い、ワインと地元食材を合わせた「テロワージュ」(テロワール×マリアージュ)を推進している。
ワイン産業の持つ力を活かし、人・文化・産業をつなぎはぐくんでいくことを目指す。
http://akiuwinery.co.jp

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