2020年7月から始まったラジオ番組『ヴィラ・デ・マリアージュpresents「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」』
2022年3月のゲストは社会福祉法人 サン・ビジョン「サンサンワイナリー」シニアアドバイザーの戸川英夫さんです。
今世紀頭マンズワインを退職。その後は国産ブドウ100%で造られる『日本ワイン』を昇華させるべく、
アドバイザーとして長野県塩尻のワイナリー数件から招聘されますが・・・。(全5回 4回目)
詳しい番組内容、出演者の情報はこちらから
https://775fm.com/timetable/tatsumi/
辰巳:3月のお客様は長野県塩尻市にあります「サンサンワイナリー」の戸川英夫さんです。
(いつも通り会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフにも同席していただいてます)
全員:よろしくお願いします!
辰巳:さすが「日本ワインのレジェンド」、話が面白い!マンズワインで『夫婦でワイン』を謳っていたCMの頃のワインは
南米(アルゼンチン)で戸川さんが造っていた、とかね。僕は写真でしか知らないんですけど、アンデスの雪山は綺麗な景色なんでしょう?
戸川:いや、もうすごいです。あの辺りはアコンカグアもありますし、羊を飼ってる草原もありますし。
ラプラタ川の河口へ行くと今度は海も見えますし。
辰巳:あの「The Platteres」のラプラタ?笑。(←先週の戸川さんのリクエスト曲「Only You」を歌うグループ名です)
富山も立山連峰なんかが見えて綺麗なんですけど。でもアンデスは倍近くの別格ですからねぇ。
まぁそういうところでワイン造りをして、日本に持ってきて(日本のワインと)ブレンドして(当時は)「国産ワイン」として造られてたんですけど、いつぐらいから日本ブドウ100%でいきたいなと?
戸川:キッコーマン(マンズワイン)退職してからですね。「日本の方々に日本のブドウ100%のワイン飲んでいただくには(原料=ブドウが)あまりにも少ない」。私がワインに携わった頃のブドウの生産量は年間30万トンぐらい、そのうちワインに仕向けられていたのは2万トン弱、足りない。今20万トンを切ろうとしてるんですけど、日本のワインはもう生食用のブドウを使おうとしてるレベルでもないので。
辰巳:なるほどね。30万トンということは×1000ですから全部ワインにすれば3億本になるってことですけど。
今20万トンってことは2億本になるはず。
戸川:でもほとんど(8割~9割)が生食ですんでワインの加工に回ってくるのは2割弱。
辰巳:まぁ2000万本もいってないぐらいですね。
戸川:そういうところで”外国からの力を借りる”のは納得できますけど、じゃぁ(当時の)国産ワインとしてはちっちゃなワイナリー(今でいう”ブティックワイナリー”)しかないだろうということで、「そっちの方向で行くべきではないだろうか?」と。
その後に辰巳さんの「日本のワインを愛する会」のような日本ワインを応援してくださる方が増えるにしたがって、「これは輸入ワインとのブレンド、これは純粋に国産ワイン」っと分けるようになって来ました。じゃぁこれと競争するには?
「ちっちゃいワイナリーでやってったほうがいいんじゃ?」っとなり退職後はそういうところへ行くようになりました。
辰巳:退職されてどれぐらい?
戸川:「2000年問題」を経てからですから2001年ですね。
辰巳:それからいろんなワイナリーから引く手あまただったと。
戸川:いえいえ。将来どうしようかな?って時に「長野が有望ではないかな」っと薄々・・・。
辰巳:なるほど。北海道は縁がなかったんですか?
戸川:なくはなかったんですけど、場所的に”遠い”ってのもありまして。。。
辰巳:お住いはずっと山梨?
戸川:山梨の山梨市。
辰巳:マンズワインの工場も近いですしね。
ちょっとお料理がやってまいりましたのでいただきながらお話を伺います。
ぁ、それより先にワインですよ笑、サンサンエステートの柿沢ルージュ。
まずはこれで乾杯したいと思います。
全員:カンパ~イ🎶
「サンサンエステート 柿沢ルージュ 2019」
サンサンワイナリーのワインリストはこちらwinelist
辰巳:シェフどうですかこのワイン?
井村:一言で言うと”濃い”。ドライフルーツとか深みがあって、スパイシーな香りがするなーと思いました。
辰巳:そう、ペッパー系のスパイシーな香りはあります。でもね、そんなどっしりした重みというより色は濃いんですけどある種の軽やかさは持ってる感じはします。戸川さん、これはどういうワインでしょうか?
戸川:標高840m~864mがサンサンワイナリーのヴィンヤードなんです。日照条件だとか温度条件だとかが赤ワインにとっては今いちばんいい条件。*黒ボク土なんですね。だからあまり肥料やらないで、早生栽培的なものでもいけるんじゃないかと。
”濃さ”を出すには粘土質じゃないとダメですけど、「軽やかな赤ワイン」を造るには黒ボクがちょうどいいんじゃないか?と。
(*黒ボク土 参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/黒ボク土)
辰巳:黒ボクってのはある種の火山灰系、でしょ?
戸川:だから窒素系のものは十分あるんですけど、それに極力肥料もあげないほうがいいんじゃないかと。
辰巳:品種は?
戸川:メルロー、メルローとシラーが10%ぐらいです。
辰巳:メルロー100%でやらないのはどうしてなんですか?
戸川:コンプレクシティーを出したい。
辰巳:なるほど。”複雑味”ですね。
戸川:メルローの綺麗なのはいいんですけど、お客様の「ちょっと物足りない」というご指摘もあったりして。
辰巳:カベルネ・ソーヴィニョンは作ってないんですか?
戸川:まさに!今後トライしようかと思ってます、試験栽培して”十分いける!”っと確信しましたんでね。
辰巳:(カベルネ・)フランは?
戸川:フランはやってないです。
辰巳:シラーとメルローって、前回のロゼもそうでしたけど「悪くないな」と思います。ねぇシェフ?
井村:いやぁ、これはいいですね。ベターっと重くなくスーッと入っていく軽さがあります。
辰巳:フルボディとミディアムの中間みたいな。
戸川:温暖化で各社・各県、シラーを指定される方々が多くて、
辰巳:山梨県はシラーやプティ・ヴェルドを推奨するところが増えてきましたよね。
さ、シェフ、今日のお料理は?
「シャラン産鴨胸肉とじゃが芋・菊芋のソテー フォアグラのソース」
井村:はい、今日は(フランスの)シャラン産の鴨とじゃが芋と菊芋をソテーしたお料理です。
辰巳:あら、ちょっと高級な食材。やっぱりシャラン産の鴨はいいですか?
井村:はい、鴨の中でも深みがありますから。
辰巳:ではいただきます!
戸川:柔らかい♡
井村:ちょっと分厚目に切ってはいるんですけど十分柔らかく食べられます。
辰巳:(ワインとお料理が)同じ方向性の香りですね、この’(鴨の)血’とワインが。食べながら飲むとワインの味も変わりますねー。いつも思うんですけどワインが(お料理に)寄ってくんです、もちろん相性がいいからなんでしょうけど。
戸川:こんな柔らかい鴨って初めてかも。
辰巳:御年もうすぐ80歳を迎える戸川さんですが、(食べ物の)好き嫌いはないですか?
戸川:ないですね。
辰巳:半分リタイアもされたようですけど、時々はワイナリーにも行かれるんでしょ?(戸川:頷)
若手にもちゃんと教えつつ、’美味しいものを食べる機会も増えた’と伺っております。
戸川:えぇ、増えました。食べ過ぎない努力をするって難しいですね笑、血糖値を見ながら笑笑。
辰巳:あれですか?血糖値ってことは痛風の気とか?
戸川:ありますあります。
辰巳:ワイン飲んでればダイジョブでしょ?
戸川:いやぁ、お医者様に簡単にバレちゃいます。数値が・・・笑笑。おっそろしぃですよね今の分析機器爆。
辰巳:とてもそのお年には見えない。今日もジャケットにベストに赤いネクタイで。(←オシャレなんです)
スイマセン、こんなセーターで来ちゃいまして汗。
戸川:テレビには映らないという設定だったんで。(←テレビに映るとしたら一体どんな格好になっちゃうんでしょう?)
辰巳:でも写真は撮りますからね笑。この番組の模様はHPにてお料理もワインも戸川さんの姿形も笑。
そちらで確認してください。(←おそらく当ページのことです)
ここらでちょっと曲を挟みましょう、鴨を食べながら。これまでずっと横文字の、懐かしの洋楽をリクエストしてくださってますけど、今日はなんにしましょう?
戸川:(先週の)The Plattersの続き笑。「Smoke Gets In Your Eyes 」、日本語でいうと”煙が目に沁みる”。
辰巳:ではお聴きいただきましょう!(←恒例の、食べながらの音楽鑑賞)
The Platters「Smoke Gets In Your Eyes」(1958)
https://www.youtube.com/watch?v=H2di83WAOhU
辰巳:いやぁお料理美味しかったです、この曲もいいですねぇ。仕事忘れて、っていうかほとんど”趣味”のような番組でございまして笑。
この会場が本当にいいお店なので。”日本ワインと井村シェフのお料理のマリアージュ”、コロナ禍が治ると全国から日本ワインファンが集まると確信しております。(←テレビ番組の影響もあり実際に殺到しております。)
戸川:井村シェフの”思い入れ”が素材に全部表れてる、ホントに。
辰巳:メルローと菊芋。
井村:メルローの土の香りと合わせてみました。
辰巳:日本の赤ワインはこれからこういう軽やかな方がいいんじゃないかなって、輸入品種でも日本固有品種でも。
このワインのアルコール度数は?
戸川:12%。これが限界じゃないでしょうかね。
辰巳:僕はそんなに度数上げなくてもいいっていつも思ってるんですけど。
マンズワイン退職後、最初に行こうと決めたのはどこだったんですか?
戸川:自身は特に決めてなかったんですけど、長野県の塩尻の方に*林さんという大先輩がいまして。
(*林幹雄氏:林農園(五一わいん)の現会長)
辰巳:!!! この人は”戸川レジェンド”の上をいく「生きた化石」。申し訳ない汗笑、素晴らしい方です。
戸川:そこには原木のメルローだとかあったんですけど、残念ながら「来てくれ」とのオーダーがありませんで。
辰巳:ぁ、本当は行きたかったんですか?
戸川:えぇ。でもワイン事業に失敗した会社が数件ありましたんで・・・。
辰巳:安曇野ワインと他には?
戸川:(ブツブツ・・・←言えませんよね)まぁそういうところから「来てくれ」と言われましたんで行ったんですけど、結果的にかき混ぜて出てっちゃうことになったんですね。「私は口を出さないから」と言いながら口を出すのがオーナー。
結局よくならない。
辰巳:安曇野ワインに関しては何年いらっしゃったんですか?
戸川:2年です。
辰巳:2年で喧嘩して?(戸川:頷)。でもね、結局はワイナリー潰れちゃって。
戸川:オーナー自身は元々牛を飼ってた酪農家だったんです。ただワインに関しては知識がなかったのと近くに相談する人がいなくて。
辰巳:まぁどの世界にもありますしね。やっぱり技術者と経営者がぶつかり合うのは多いでしょうし。
でもそこに2年間いらして次は?
戸川:信濃ワインです。ここも売り上げが年々少なくなって「何とかしてください」ということで行ったんですけど、最終的にはオーナーと(←お察しください)・・・爆。
辰巳:塩原さん。あの方もクセが強いですから。ワインってそれなりに個性が強い方がいいんですけどね。
戸川:向こうから言わせると”僕の個性が強すぎる”爆。ここも2年ぐらい。
*長野県の認証制度ってのが始まって、十数点のワインを品評会に出したらとても高い評価をいただいたので、それなりに礼を尽くしたんじゃないかなと思ってます。
(*長野県原産地呼称管理制度)
辰巳;それはそれでよかったじゃないですか、きちんと評価されたわけですから。
戸川:ケンカ別れではないんですが「失礼します」。でも狭い世界ですからケンカ別れしても次の日バッタリってことが笑。
辰巳:この続きはまた来週伺いたいと思います。今月のお客様は長野県サンサンワイナリー シニアアドヴァイザーの戸川英夫さんをお迎えしています。ではまた来週!
全員:ありがとうございました!
(お断り:番組の収録日、OA日、この原稿の掲載には時差があります。また、この番組はお招きしたゲストのワイナリーのワインと、収録会場の「Villas des Marriages 多摩南大沢」の井村貢シェフが作るお料理のマリアージュをみなさまにもお越しいただき楽しんでいただくのがコンセプトの一つですが、現時点でお店でお楽しみ頂けるワインとお料理のマリアージュの詳細については直接お店にお問い合わせください。)
News Data
- ヴィラ・デ・マリアージュpresents 「辰巳琢郎の日本ワインde乾杯!」
2022年3月24日放送回
- ワイナリー
サンサンワイナリー
https://sun-vision.or.jp/sunsunwinery/- 収録会場
ヴィラ・デ・マリアージュ多摩
https://villasdesmariages.com/tama/